|
三十〜四十歳代の女性の間で、かかりつけの鍼灸(しんきゅう)院を持つ人が目立っている。日常生活や仕事のストレスが原因の肩こりや慢性疲労の回復だけでなく、生理不順など女性特有の症状を改善するため、はり・きゅうを選ぶ人も少なくない。女性専門院が出始め、女性の鍼灸師も増えた今、鍼灸との上手な付き合い方を探った。
横浜市内に住む会社員の坂根亜紀子(34)さんは、二〜三週間に一回のペースで会社帰りに東京都大田区のFUIIe治療院ではり治療を受けている。ひどい肩こりでマッサージに通い効果を実感できずにいたところ、後輩から、はり治療を紹介された。
パソコン作業中はどんな姿勢でもすぐ疲れる状態だったが、三カ月近く通ったころから体が楽になり、肩の奥のこりのほぐれを実感した。最初は週一回だった通院も、徐々にこりがたまらなくなったことでペースが落ちた。「鍼灸師が女性で、体の状態を相談しながら治療できた。心配していたはりの痛みもほとんどない」と満足げだ。
改善まで数カ月
はり・きゅう治療は、ごく細い専用はりを打ったり、きゅうで全身のツボを刺激することで体調を整える東洋医学の療法の一つだ。東京女子医科大学付属東洋医学研究所の吉川信鍼灸室長は「刺激を通じて体の表面に現れたゆがみや筋肉の緊張状態をほぐすことが基本」という。これらの負荷がたまると、こり以外にも頭痛や目まいなどの二次症状が起きやすい。
約三十年の経験を持つ、はり・灸クリニック杏鈴堂(東京都文京区)の鈴木由紀子院長は「鍼灸の適応症は幅広い」と話す。例えば筋肉の深部にたまった慢性的な肩こりや腰
痛、冷え性、オフィス機器の利用による眼精疲労やテクノストレスが原因の頭痛なども、数カ月で症状の改善がみられることが多い。パソコンに向かって前かがみになり、内臓が圧迫されて起きる消化器不調の治療でも効果が上がっているという。
さらに月経困難症など、女性特有の体調不良を改善するためにも多くの女性が院を訪れている。職場の人間関係の緊張によるストレスで生理不順を抱えた女性が駆け込むことも多い。
4分の1に常駐
治療中は個室で鍼灸師と一対一となる。直接肌に触れるため、女性患者の間では「鍼灸師が女性である方が安心」(東京都港区の女性専門院、表参道ビオ東洋医学センターに通う井本真美さん)と望む人が少なくない。
女性患者の声に対し、社団法人日本鍼灸師会の仲野弥和理事は「女性鍼灸師の活躍で、患者の選択の範囲が広がっているのではないか」と話す。同会が運営する検索サイト「鍼灸ネット」(http://www.hariq.net/)に登録する治療院のうち、すでに四分の一に女性スタッフが常駐。また女性医療の充実を鍼灸の立場から支援する女性鍼灸師フォーラム(http://homepage2.nifty.com/womf/)も活動している。これらの変化が、若い女性が
鍼灸院に足を向けやすくなった理由の一つだ。
治療は問診とツボの刺激、マッサージなどを組み合わせて行う。例えば消化器官の不
調では背中から腰にこりが生じることが多い。その場合、背中のツボを中心にはりを打
つ。FUIIe治療院の伊藤富士枝院長は「悩み事などをこぼしていく人も多い」と明
かす。院によって費用は異なるが、おおむね一回五千円前後。医師の同意書があるなど
の条件がそろえば健康保険の対象になることもあるぺ一度通うと長い付き合いになることが多いため、鍼灸院は慎重に選びたい。杏鈴堂の鈴木院長は口コミで院の評判を聞き、症状や治療方針をきちんと説明してくれる鍼灸師を選ぶべきだと話す。男女どちらの鍼灸師でも相性が大切であることは間違いない。
《Home》
|