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エンクミボイスについて

2001/02/16

 遠藤久美子って子は、オレは昔から好きだったですよ。まぁ厳密に書けば、遠藤久美子というタレントの「容姿」が好きだった、ってコトなんですけどね。だってそりゃ、別に個人的に知ってるヒトってわけじゃないんだし、セーカクとかそんなの、分かるハズもないもんね。だいたいゲイノー人が好きだとか嫌いだとか言う時にさ、そんなの顔…、っていうか、ルックス以外のドコで判断するんだよって思うし。
 だから「キャプテン・ラヴ」の開発が始まって、雑君センセに泉久美子のデザイン発注をした時も「ここはひとつエンクミで!」ってな話もしたんだ。キャラの名前ソノモノが、彼女へのオマージュだよな。
 でも、オレ的には、実はそれはそれだけのことで、まさか本当に彼女がキャスティングの枠内に入ってくるとは思ってもいなかった。いやね、そりゃ確かに、赤坂で昼飯食いながら、初期プロデュースをしてくれた佐々木(無宇)さんに「エンクミ使いましょーよエンクミ!」とかバカなネタフリはしてたよ。彼女が(歌手として)東芝EMIからデビュー予定なの知ってたしさ。でも、その場にいた全員に却下されたし。オレ自身も冗談のつもりだったしさ。だからみんな、分かってはいたんだよね。

 ところが、ある日突然、ヒョータンからコマが出るわけだ。「エンクミ使えそうだけどどうします?」って。佐々木さんの後を引き継いでプロデューサーになった大原さんから電話かかってきてさ。…それからまあ、紆余曲折イロイロあって、彼女はメインヒロインの愛美を演じるコトになったワケだけど。で結果、お客さんに賛否両論をいただくコトになるんだけど。

 遊んでくれた人の感想をWebで読んだ限りでは、「賛」2に対して「否」8くらいですかね。…これはまあ、あらかじめ予想されたコトなので、結果についてはそんなに驚いたりはしてません。これまでフツーにゲームやったり、アニメ見たりしてきた人には、そりゃ確かに違和感のある声であり、芝居ではありますもんね。
 でも、そしたらナゼ、初期スタッフのほとんどがその起用に反対し、またオレ自身そう思ってたタレントに敢えて主役を演じさせたのか、って話になるのは理の当然ってもんで。
 「オトナの事情ってコトでご理解ください」と言うのは簡単だけど、で実際、その通りの部分もあるんだけどさ、制作側がそーゆーモノの言い方をするのはやっぱ違うだろ。「オトナの事情」に納得がいかないのなら、それを踏み潰せるだけの力(ないし策略の才)を得ておくべきなんだし、いったん仕事として決まった事柄を後でグチグチ言うなんてみっともないしさ。

 それにだいたいオレ自身が、ある段階で「まあいいか」と思っちゃったしな。「なんとかなるだろうし、なんとかしよ」って。そう思ったココロの中に、オレがエンクミ(のルックス)のファン(つーか?)であるという事実が全く反映されてなかったと言ったら、そりゃやっぱウソになるわな。うん、ここんトコは正直に書いとくわ。でも、実績の無いディレクター1人が「オレが好きだから決定!」なんてホザいてたところで必ずしもそうなるワケではないコトもまた、オトナの事情ではあるのだよ。だからこれは、少なくとも前向きにスタジオに臨めました、って程度のことでしかないよ。

 今考えれば、「愛美=エンクミ」がフィックスした時点で、愛美のデザインは変えるべきだったよな。彼女の(声の)芝居でも違和感がないように、こちらから擦り寄るべきだった。「遠藤久美子のキャプテン・ラヴ」で、全然問題は無かったんだ。それで、オレたちの作るモノの中身が変わるハズは無かったんだしさ。…でもこれは、それこそ「今だから」言えるコトで、当時のオレはやっぱ突っ張っちゃってました。そういう、柔軟な考え方が出来なかった。テンパってたし。「もうンなコトやってる時間なんてねえよ!」とかさ(実際、時間は無かったんだけど、無理を通せば道理は引っ込んだんだろうと思うわ)。

 「なんとかなるだろ」と思って、ま、お客さんの満足度的には、今ひとつなんともならなかったようなんだけど。これについては、彼女の声質云々以前に、自分の演出力の低さを痛感した次第でアリマス。あのねー。引き出せないのよ。限られた時間内で、まさしくタレント(才能)を引っ張り出すって能力に欠けてるわオレ。で多分、もうこの先一生欠けっぱなしでしょう。このヘン、プロの音響監督との違いなんだろうね。次回があるとしたら明田川仁さん希望(いやマジで)。
 あとオレ、ちょっと腹立つコトがあって、スタジオで荒れてたりもしたし。珍しいんですよ、オレが現場で怒るの。レコーディングエンジニアの梅ちゃんとは、もう10年近くの付き合いになるけど、彼にして「須甲さんがそんなに怒ってンの初めて見た」と言わせしめたくらいだから。怒る理由はそれなりにあったんだ。
 けどまあしかし、役者さん(この場合はエンクミ)のいる前でそーゆー態度を取るのは、(少なくともオレの)演出の流儀からしてもトンデモない話なワケで、ひょっとしたらそれで彼女を萎縮させちゃってた部分はあるのかもしれないな。(つーかオレ、その後で実際に、東芝EMI経由でアイントから文句言われたんだよね。『ウチの遠藤にもっと気持ち良く仕事をさせてください』って。あ、アイントってのは、エンクミの所属事務所なんだけどね。)

 とにかくそういうワケで、経緯はイロイロあったにせよ、オレ自身は納得してエンクミをヒロイン(愛美)として迎えたわけです。彼女に声優としての芝居が出来てないとしても、それは別に彼女のせいじゃありません。当然のことながら、それを決めた、そしてそれをさせた側の責任です。でオレは、その「側」の一員として、少なくとも「キャプテン・ラヴ」というゲームに関しては、彼女を擁護する義務と責任を感じているというワケです。
 穿った見方をするお客さんが「ヒロインへのラヴを貫き通す障害としてエンクミの声質を利用している」なんて分析をしてくれたりもしましたけど、いくら何でもそれは「読みすぎ」ってものです。もちろん、遊ぶ人によっては、彼女の演技は本当に「障害」になるのかもしれませんから、そういうものとして「ご利用」いただいても差し支えはありません。障害を乗り越えて目的を達成するというゲームです。今さらひとつふたつ増えたトコロで、どーってコトないでしょ?

 でもね、ココが大事なトコなんだけど、他の誰かが愛美を演じたとしても、彼女の性格は変わらないんだよ。だって、シナリオが同じなんだもん。愛美はある意味で、いつまでたってもヤな子のままです。で、もし声が違うからといって愛美に「転ぶ」人がいたとしたら、そりゃ「騙されてる」ってコトだよね。彼女の本質が見えてないんだ。(ってオレもこーゆーコト書いちゃうしさあ)

 最後に。遠藤久美子さんへ。
 あなたは、よく頑張ったと思いますよ。オレはもっと頑張ったけど(当然だ)。
 ただまあ、結果が出せなけりゃどんなに頑張っても評価はされないのが世の常だしね。「何を結果とするか」ってハナシはまた別にあるんだけどさ、オレに関して言えば、これからは「それなりの販売枚数と、それを期待できる作り込み」ってのをもっと意識しないとイカンと思うわ。
 では遠藤さん、あなたの課題は?
 あなたは反射神経に優れているタレントだとオレは思う。打てば響くっていうかさ。カンもいい。それゆえに、あの過酷なのべ3日間も乗り切れた。
 でも、お互いちょっと考えれば分かるように、「芝居」ってのはそれだけで済ませていいモンでもないんだよな。
 オレはあなたと、もう一生会うコトはないかもしれないけど、もし再びの機会があったら、今度はそーゆー話もさせてもらうよ。別にコレ、皮肉で言ってるんじゃなくて、マジ愛情ゆえよ? オレは「愛を語るゲーム」のディレクターなんだしさ、ウソなんかつかないって。
 ともあれ、今後のご活躍に期待しております。

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