2002年6月の退屈な日々 もどる
読書の評価は ◎・・・めちゃ面白いがね。 ○・・・なかなか。 ◇・・・まあこんなもんかな。 △・・・つまらん。 ×・・・時間の無駄。
本は緑が読了本、赤が新刊本、水色が古本です。先頭の数字は今年になってからの購入および読了冊数。
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6月1日(土)
123◇久綱さざれ「ダブル」(学研四六)読了。
第1回ムー伝奇ノベル大賞最優秀賞作。。。。なんですが、個人的には優秀作の「想師」の方が面白かった。
実業家・戌井泰蔵の遺言は妻や子に厳しく、遺産の大半が愛人の子・小谷純一に渡るようになっていた。その純一にはダブルと呼んでいるドッペルゲンガーがいて、純一を傷つける者に危害を加えているらしい。泰蔵の顧問弁護士の倉崎は純一とともにダブルの謎を追っていく。。。。
いっけん推理小説っぽい展開ですが、そこはムーです。後半からどんどんオカルトというか荒唐無稽になっていきます。前半の謎をどう解決するのかと期待していたのですが、やっぱりムーですね。と書けば予想がつくでしょうか。そういうことです(笑)。
6月3日(月)
124○荻原浩「ハードボイルド・エッグ」(双葉社変形)読了。
ハードボイルドな探偵にあこがれる最上のもとへ持ち込まれるのはなぜかペットの動物探しの依頼ばっかり。秘書を募集すれば婆さんがやってくる。やっと探したハスキー犬の依頼者が夜逃げしてしまい、引き取り人のいなくなった犬を知り合いに預けにいって、ようやく念願の死体に出会いハードボイルド街道まっしぐらかと思いきや。。。
笑えるハードボイルドです。つうか、樋口有介の「木野塚探偵事務所だ」と似た雰囲気ですなあ。いずれにしても、わしの好みです。適度なユーモアとハードボイルド。「警官にさよならをいう方法はまだ発見されていない」・・・・。これを見るとあれを再読したくなりますね。そう「オペラ歌手にさよならをいう方法はまだ発見されていない」の名言のあれです。
そのうちシリーズ再読するかなあ。
6月4日(火)
125◇樋口明雄「武装酒場」(ハルキ新書)読了。
阿佐ヶ谷のガード下にある居酒屋「善次郎」にはおかしな酔っぱらいばかりやってくる。夫婦けんかの果てに妻を絞め殺してやけになっている吉田、サラ金から追われているギャンブル狂の西山、恋人から振られてやけ酒を飲みに来た園原淳子、ちんぴらやくざと警官、おかまなどなど。やくざ同士の抗争用に隠してあった銃器が「善次郎」で見つかったことから店は大騒ぎに。あわせて不発弾騒ぎまで起こってあたり一帯大パニックに。
スラップスティック小説。今までの樋口明雄はいったいどこに行ったんだ。「頭弾」や「狼叫」の樋口は。と言いたくなるような激しい落差です。あまりにバカバカしいのであっという間に読めてしまいます。
6月5日(水)
126○田中啓文「禍記」(徳間四六)読了。
田中啓文ってまじめなホラーも書いてるんだあ、驚き。てっきりダジャレホラーしか書いてないのかと思ってたよ。
禍記と呼ばれる幻の古書を元にしたホラー短編集。どれも、グロテスクな描写が実に巧い。読者のイマジネーションにまかせるのではなく、描写で気持ち悪く(あるいは恐がら)させるタイプです。
特に盲人の島に上陸した普通人の味わう恐怖を描いた「怖い目」は秀逸。こういうタイプのものをもっともっと書いてほしいなあ。
6月7日(金)
127◇恩田陸「ライオンハート」(新潮変形)読了。
後書きで「SFメロドラマ」と書いてあるとおりです。これ以上の説明はないよ。さすが作者。求め合う男女が時代を超えて、生まれ変わって求め合う。そんな話ばっかしの連作短編集。あまりにタルい作品なので半分読み飛ばし状態でした。同じような話を5つも続けられてもなあ。せいぜい3つくらいにしてくれ。 ところで、結局「ライオンハート」の意味ってなあに?。
6月8日(土)
128○五條瑛「紫嵐」(双葉社四六)読了。
革命シリーズ2冊目です。今回も亮司とかサーシャとか出てきます。ということは鉱物シリーズと同じ世界ということですね。あと、「プラチナ・ビーズ」の餓死寸前の北の子供がすみれとなって登場してるんですよね。だんだん全部が一つの五條ワールドとでもいうべきものに取り込まれていくのでしょうか。松岡圭祐みたいに。
今回の主役はカンボジアからの難民のキュー。キューと組んでいたタイ人のチューンがホストの花田を殺した容疑で裏社会から手配された。キューは北京系マフィア・嘉瀬からチューンを探すよう命じられる。そして、だんだん明らかになってくるチューンの裏の顔。女を使って金を稼いでいただけでなくドラッグに手を出そうとしていたことがわかってくる。。。。
このシリーズ最終的にどこに向かってるのかまだ見えないけど非常に期待大です。ちょっとヤオイ系が入ってきそうな気配もありますが、ま、そんなことはないでしょう。
ところで、あれですか、すみれはカリヤさんですか。
6月9日(日)
129○雫井脩介「栄光一途」(新潮四六)読了。
オリンピックを控えた男子柔道界にドーピング疑惑が。それは国際柔道連盟に届いた1通の密告から始まった。女子部のコーチ・望月篠子が真相解明のために疑惑候補の2人の周辺を探るが・・・。
スポーツ界といえども、世間と同じで権力争いやら派閥やらどろどろしてますね。生々しい内幕が描かれてるようですが、現実はもっとすごいんでしょうねえ。それでも、主人公の書き方がうまいのか意外とさっぱり感のある作品でした。
6月11日(火)
130◇永井するみ「隣人」(双葉社四六)読了。
小説推理新人賞受賞作「隣人」を含む短編集。96年から01年までに書かれた5編が入ってます。タイトル作は夫を殺した妻が、猫の餌の配達依頼のミスにより隣人から疑われるという内容なのだが、あれくらいのことで保険金殺人にまで結びつける隣人はものすごい名探偵か電波系かどっちかだよ。ふつうそこまで深読みしないって。「風の墓」も「雪模様」も推理モノというよりも恋愛小説に近いかな。
こういうのよりも日常的なミステリと呼ばれるたぐいのもののほうが面白いなあ。この作者。
6月12日(水)
131◇法月綸太郎「法月綸太郎の功績」(講談社新書)読了。
本格推理モノの短編集。「イコールYの悲劇」と「都市伝説パズル」はダイイングメッセージもの。「中国蝸牛の謎」は密室。断然「都市伝説パズル」が良い。「イコールYの悲劇」はひねくり回しすぎ。「縊心伝心」もいいなあ。トリックの解決は確かにアクロバティックなんだけど、読んでいて納得できる論理の展開のものはかなり好みなんだけど、強引な論理展開のものはやっぱり生理的にダメです。基本的にはこういうロジカルなものは空きなんですけど。
6月13日(木)
132◇吉村達也「幻視鏡」(双葉文庫)読了。
川口聖也は編集者・沢村聡子の裏工作でホラー大賞を受賞し作家としての道を歩みはじめるが、沢村はなにかと川口に干渉してくる。沢村に辟易してきた川口は彼女に内緒で「美涼」というホラー短編を書いて、別の社の編集者に見せようとする。そんなある日、作品の登場人物であるはずの美涼と名乗る女から電話がかかってくる。作中の人物が彼の現実世界に現れ始めたのはいったいどういう意味が。。。。
途中まではなかなか良かったんですが、最後にオカルトな現象をミステリとして現実的に解決しようとするあたりからつまらなくなりました。うーん、最後までオカルトなら○だったのだが。
6月14日(金)
魔界都市新宿を舞台にした秋ふゆはるシリーズ2冊目。世界を守っていると言われるマリファサ・ルピナの花をめぐる、花屋の主人・秋ふゆはると世界を破滅に導くゲニヤン師との戦い。はぁ、どうしてヒマラヤのマリファサ・ルピナは世界を守れるのに、新宿の地下にあるマリファサ・ルピナは世界を守れないんですか?。日のささない地下でも花が咲いてるのはどうしてですか?。どうして世界に2本しかないんですか?。などと、よくわからないことがいっぱいあるんですが、この本を読むときにはそういう瑣末なことは気にしてはいけないのでしょう。なにせ超人同士の戦いがメインの小説なのだから。
6月16日(日)
134◎北森鴻「狐闇」(講談社四六)読了。
「狐罠」の続編。冬狐堂の陶子はある市で青銅鏡を2枚落札するが、どこかですり替えられて1枚は三角縁神獣鏡になっていた。いわくありげな三角縁神獣鏡がもとで陶子は贋作や飲酒運転の罠にはめられる。「凶笑面」の連丈那智も登場して、明治時代に複製されたらしい三角縁神獣鏡をめぐる大きな陰謀をあばいていく。
前半いいですねえ。古物の真贋をめぐる推理とか。罠にはめられる陶子とか。後半は骨董業界というよりも、歴史ミステリになってますが、スケールの大きな話でなかなかグッド。それにしても、連丈先生出演は読者サービス?。
135○松尾由美「銀杏坂」(光文社四六)読了。
金沢をモデルにした北陸の架空の都市・香坂市を舞台にしたオカルトミステリー連作。幽霊、予知能力、念動力、生霊。そういうオカルトなものが日常の犯罪に関ってくるんだけど、これがちっとも怖くない。なんかほのぼのミステリになってるのは作者の力量でしょうか。
幽霊が出るというアパートの住人の宝石が盗まれた。状況からしてアパートの住民しか犯人足りえないのだが、宝石もどこにも見つからない。果たして幽霊の役割は?。という「横縞町奇譚」が良い。そして、最後あっと驚く結末が。いやー、良かったよ。
6月17日(月)
136◇倉知淳「まほろ市の殺人 春−無節操な死人」(祥伝社文庫)読了。
「真幌市」という町を舞台に4人の作家が春・夏・秋・冬とそれぞれ季節を分けて競作しているうちの1冊。巻頭についてる市の地図は笑える。隣の市の名前が「土井留市」「九陰市」「駄陰市」だったり浜辺が「舞久浜」だったり、流れている川が「鮎川」だったり「網州」という駅があったり。
とまあ、そんなことはどうでもいいのだが、肝心のストーリーは、マンションの7階に住む女性がベランダの外側から覗きこんでいる怪しい男をモップで突いて落としてしまったのだが、地上には落下した形跡もなかった。そして、その男は川から遺体で見つかるが、不思議なことにマンションから突き落とされる2時間も前に死んでいたのだった。。。。
魅力的な設定なんですが、それを150ページの中編にまとめてるので駆け足ぎみになっていてもったいないです。
137△我孫子武丸「まほろ市の殺人 夏−夏に散る花」(祥伝社文庫)読了。
同じ都市を舞台にしてますが、倉知淳の作品とのつながりはまったくなし。単に同じ都市を舞台にしてるというだけです。真幌市に住む新進作家・君村にファンレターがきた。君村は喜んで、ファンの女性と文通を始め、一度会うことになる。そして、会った直後から彼女の態度は硬化し、メールにも返事をくれないようになる。
友人と彼女の自宅まで出かけて行ったのだが、その友人が殺された。果たして彼女が殺人に関っているか?。
つうことで、トリックというか、ネタはよくあるパターンです。中編だとこれくらいのネタなんでしょうけど、「春」に比べるとがくっと落ちるなあ。
6月18日(火)
138◇有栖川有栖「まほろ市の殺人 冬−蜃気楼に手を振る」(祥伝社文庫)読了。
5歳のときに3つ子の1人を亡くした史彰と満彦は飲んだ帰りに事故死体のそばに転がってる3000万円を発見。自分のものにしようとする満彦は、警察に届けるべきだと主張する史彰を殺してしまう。そして、満彦のまわりに史彰の幽霊らしきものが現れるのだが・・・・。
ものすごい強引な設定(後でわかる)にあきれ果て。400円の中編だからなんでもあり、という考えで書いてるとしか思えないっす(笑)。
139○梁石日「裏と表」(幻冬舎四六)読了。
バブル崩壊前後の金券ショップの裏側を描いた金融小説。独立して金券ショップを始めた樋口の店「ラッキー」にはいろいろな金券が持ち込まれる。偽造券と知って安くたたいて買い取り、知り合いの運送会社に安く回す。そんなある日、親友の高瀬から高速券を金券ショップ間で回しての裏金つくりに協力してくれないかと持ちかけられる。それがうまくいくと、今度は計画倒産のための裏金つくりの話が・・・・。と、いろいろと金融の裏側がわかって面白いです。
ただ、金券ショップの女子店員2人の扱いが、細々と日常を描いてるわりにはたいした役割じゃないのがアンバランスだったなあ。
6月19日(水)
140◇折原一「樹海伝説−騙しの森へ」(祥伝社文庫)読了。
樹海の近くの民宿にやってきた大学のハイキングクラブの面々は宿の主人に樹海の「遭難記」を見せられる。翌日3人が樹海の探検にと入っていった。そして、樹海の遭難者が書き記したと言われる「遭難記」のとおりのことが起こりはじめ、メンバーの女性のストーカーも後を追っていた。。。。
と、まあ、折原を読んでいれば、ストーカーが「彼」でないことにはすぐに気づくと思うけど、ラストの展開はさすが折原、って感じでした。驚きはいまいちだったけど。
6月20日(木)
141○栗本薫「蜃気楼の彼方 グイン85」(早川文庫)読了。
イシュトはマルガを奇襲し、ナリスを人質に。グインはリンダを擁してマルガへと。ついにグインとイシュトの対決か?。ってことでこの巻はストーリーも進んでなかなかグッド。
ただ、ここのところ、作者の後書きがよくない。ぐだぐだと過去のぐちを言っては自分を正当化してみたり、自分を偉そうに書いてみたりと。
6月21日(金)
142◇黒田研二「笑殺魔 ハーフリース保育園推理日誌1」(講談社新書)読了。
ハーフリース保育園に売り込みきた営業マンの次郎丸は後輩の緑が保母として働いていたことから園にすんなり受け入れられるが、そのかわり事件にも巻き込まれてしまう。メインとなる事件が起こるまでに100ページ以上もだらだらと小さなエピソードを交えて登場人物紹介。これですっかり読む気がダウン。で、ようやく事件。今までの作品と違ってトリック主体じゃないのでちょっとすかされた気持ち。つうか、犯人に意外性がない。まあ、強いて言えば動機か。シリーズものということでキャラ作りに力が入ってるように見えるのだが、それで導入部が長いのか?。とりあえず、シリーズ2作目に期待ってことで。あと、主人公の秘密もこの作品では思わせぶりなだけで何も描かれてないが、これがたいしたことなかったらほんとにがっくしだよ。
6月22日(土)
143◇高橋克彦「ドールズ 闇から招く声」(角川四六)読了。
「ドールズ」シリーズの3冊目。江戸時代の人形師・泉目吉が現代の少女・月岡怜に転生し事件の謎を解く。前作から10年ぶりということで、わしは前2作はもちろん読んでますが、すっかり忘れてます。
怜と叔父の恒一郎は遊びにいった見世物小屋で惨殺死体を見つける。たどっていくと怜の父親・真司の友人・進藤に関係しているらしい。怜(というか、目吉センセーなんですが)が積極的に事件に関っていこうとして、どんどん踏み込んでいく。そして、恒一郎の車に犬の生首が・・・・。
高橋克彦得意のホラー・オカルトではなく、スプラッター系できました。血みどろ&内臓ぐちゃぐちゃ、グロさ170%です。食事しながら読んでるとなかなかなものです。いや、平気ですけど。
あまり書くとネタばれになりそうなのでやめときますが、こう、なんというか、後味の悪さが好き。
6月23日(日)
144○野尻抱介「太陽の簒奪者」(早川新書)読了。
西暦2006年、水星から鉱物資源が吹きあげられ、太陽をとりまく直径8000kmのリングとなって地球への日照を阻害しはじめた。科学者の白石亜紀ら一行はリングを解体に向かう。。。。リング解体後にわかったことは太陽系外からの生命体が太陽系に向かうために設置した機械であったことと、今現在、何者かが太陽系に向かっているということ。。。
久しぶりにストレートなハードSFを読みました。後半のファーストコンタクトテーマのあたりがいいです。アイデアもハードで良いし、物語も小気味良く進んでいく。ただ、白石以外のキャラがたってないのが残念。
6月24日(月)
145◇歌野晶午「館という名の楽園で」(祥伝社文庫)読了。
大学時代の友人から招待状が来た。招かれた4人は三星館と名付けられた西洋館で推理ゲームを付き合うことになるが・・・。ネタばれしないで感想を書くことは無理です。はい。以下反転【えー、いくら初めて入った館であっても、右と左の区別くらいつくでしょ。WとEとMの位置関係さえ把握できれば、こんなトリックは絶対に成り立たないよ。ぷんぷん】しかし、ミステリツアーをそのまま小説にしてしまうというアイデアはそれなりに評価しますが。これが400円文庫でなかったら【きっと(小説内での)実際の殺人も起こしてるだろうなあ】。
6月25日(火)
146○山本甲士「どろ」(中央公論四六)読了。
泉山市役所のステージフェスタ事務局に勤める岩室とペット葬儀社の営業課長の手原は隣同士。息子の喘息が気になる岩室が手原家の雑草がこっちの敷地にまで入り込んでいるのを注意したら、逆に岩室家の犬の鎖の音が気になると言われた。普通ならそこで終わるはずのささいな出来事が、岩室家の取ってる新聞が2日続けて届かなかったことから、手原のしわざと考えた岩室は報復手段に出る。それは、犬の糞を手原家の玄関にばらまくこと。。。。そして、お互いにどんどんとエスカレートしていって、ついに・・・。
岩室はステージフェスタ事務局で優柔不断な上司からその場しのぎの仕事を押しつけられ、手原は営業課長の役職がついてるものの、たった3人の会社で一番下っぱでこれまた、理不尽な命令ばかりされていて、2人ともフラストレーションが溜まっていて、それがお互いのいやがらせに発散されていくのが面白く描かれてます。なかなかすかっとする小説です(笑)。わしも、絶対にバレないんだったらやりたいっ(笑)。特に【育毛剤のサンプル容器に脱毛剤を入れてチラシとともに郵便受けに入れておくなんていう】いやがらせはなかなかオススメです。
147◇藤田宜永「転々」(双葉文庫)読了。
サラ金の取り立てから逃げている大学生の文哉は取り立てにきた福原から奇妙な提案を受ける。それは、一緒に東京を歩き回って霞ヶ関まで行ってくれたら100万円くれるというのだ。そうして、文哉と福原の2人の奇妙な東京散歩が始まる。2人が東京を歩き回るうちに文哉の恋する女のことが、福原の東京を散歩する意味がだんだんと明らかになってくる。
ロードノベルなんですが、いかんせん徒歩なんでスピード感がありません。でも、そのぶんなんだか不思議な味があります。今まで読んできたロードノベルとまったく違ったロードノベルといってもいいでしょう。ラストは半分くらい想像したとおりでしたが。
6月28日(金)
148○浅田次郎「闇の花道 天切り松闇がたり1」(集英社文庫)読了。
「天切り」の二つ名をもつ盗賊松が雑居房の中で語ってみせる大正時代のピカレスク人情ロマン。短編集です。帝都東京の裏社会を束ねた仕立屋銀次の跡目を継ぐ目細の安吉親分一家の松にとっての兄貴分たちの活躍を人情交えて語る。ゲンノマエのおこん、黄不動の栄治、書生常など魅力的な人物たちが動きだす。ラスト2編は松の姉さよの話で、これが作者得意の人情噺。これで泣けない読者は人間じゃないとでもいわんばかりの人情もの。いや、わしは泣けないけどね。
プリズンホテルよりも人情味を強くしたユーモアピカレスク。泣かせよう泣かせようとする「鉄道員」よりも好きです。
6月30日(日)
149○佐々木敏「龍の仮面」(徳間四六)読了。
中国のオリンピック開催と台湾独立問題を絡めた国際謀略小説。CIAに嵌められたアンナの役割は整形手術をして絶世の美女となり、中国海軍少佐の孔義済を誘惑しアメリカの思うがままに中国を操ることにあった。軍部による無血革命を経て軍事政権をとった孔義済の理想は、それを理解できない軍部の反発を招く。
2008年北京オリンピック開催と台湾独立問題、さらに日米ミサイル防衛網までからんで、スケール大きな物語になってます。うん、面白い。あまりに孔義済が正義漢すぎるきらいはあるが、読者を納得させるだけの物語の展開がグッド。
150○川島誠「800」(角川文庫)読了。
800メートルランナーの2人の高校生、真面目で緻密な広瀬と、陽気でがむしゃらな中沢。2人の友情と恋と800メートル走を通して描かれる青春。こうやって書くとなんか、いまさらな青春小説みたいだけど、決してそんなことはなく、おやぢなわしが読んでもなかなか楽しめる爽やか系青春モノでした。いやー、青春モノっていいよね。たまには。
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