2002年8月の退屈な日々  もどる

 読書の評価は ◎・・・めちゃ面白いがね。 ○・・・なかなか。 ◇・・・まあこんなもんかな。 △・・・つまらん。 ×・・・時間の無駄。
 本は緑が読了本赤が新刊本水色が古本です。先頭の数字は今年になってからの購入および読了冊数。

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8月3日(土)
178◇戸梶圭太「the TWELVE FORCES」(角川四六)読了。
 地球の環境破壊をくいとめるために大金持のランドルフは、アマゾンの奥地で発見した「二酸化炭素を吸収するオルキーディア」という謎の物体を活性化しようと世界中からスペシャリストを集めて現地で研究にあたらせる。という環境SFっぽい設定なんですが、そこはそれ作者のことですから当然のごとくB級SFのノリと展開でもうメチャメチャ。登場人物が間違った日本趣味のランドルフを始めとして濃い人ばっかり。内容はというとオースチンパワーズと思えばいいのか(笑)。

179○明野照葉「闇の音」(ハルキ文庫)読了。
 翻訳家の吉田真昼は静かな環境を求めて新しい部屋に引っ越した。しかし、人よりも鋭い聴覚を持つ真昼は、真上の部屋の住人のたてる音からその男は殺人鬼ではないかと思い込み始めてしまう。そんな折りに知り合いから紹介された省吾と付き合いはじめるが、彼が上の部屋に住む殺人鬼と同一人物ではないかという疑惑にかられ。。。とまあ、これだけなら普通のホラーなんですが、ここから二転三転していく展開はなかなか良かった。あまり他人の心の中までわかってしまうと付き合ってはいられないのだね。たとえ、恋人でも。
 ただ、「ぎくり」とした心の動きまでも「聞こえる」というのは無理じゃないのか?それはもはやテレパシーの領域では?。

8月4日(日)
180○林譲治「ウロボロスの波動」(早川四六)読了。
 ハードSF短編集。しかも、年代記になったもの。西暦2123年から2171年までの宇宙開発にまつわる物語。ミニブラックホールからエネルギーを取り出すことを目的としたAADD(人工降着円盤開発事業団)の科学者たちと地球人達との間の確執をいろいろと描いてます。「エウロパの龍」はアイデアがいいなあ。このシリーズは今後もどんどん書いてほしい。谷甲州の航空宇宙軍史の後を継ぐ正統派ハードSFとして期待してます。

181◇倉阪鬼一郎「首のない鳥」(祥伝社新書)読了。
 古い歴史をもつ光鳥印刷で校正を仕事にしている辻堂玲子は社が受けた極秘業務をこなすために特別室で仕事をすることになり社のシンボルのついたバッヂを渡される。その時から誰かに見られているような感覚が玲子を襲う。そして、同僚の山添は「狙われています」という謎の伝言を残して会社を辞め、有佳里は失踪する。仕事の応援でやってきた城野は会社の謎を探りはじめるが・・・・。
 前半なかなかいい調子ですが、ラストで大コケ。収集つかなくなって放り出したようなイメージを受けてしまいました。きちんと着地させて欲しかったなあ。いや、このラストが作者のきちんとした着地であればわしの読み方が悪いんだけど。

182○大倉崇裕「ツール&ストール」(双葉社四六)読了。
 殺人のない日常の謎を解く形式の短編集。お人好しの大学生・白戸修はそのお人好しの性格のせいで事件に巻き込まれるはめに。タイトル作は友人がかけられた殺人事件の犯人の容疑をはらすために動きはじめるとその裏には。。。友人に代わってステ看貼りのアルバイトをして業者同士の争いに巻き込まれる「サインペインター」。お金を降ろしにいった銀行にたまたま銀行強盗が入る「セイフティゾーン」。買ったばかりの携帯電話にかかってきた電話から私立探偵の手伝いをするはめになる「トラブルシューター」。スーツを買いにいったデパートで万引き犯に間違われる「ショップリフター」。いずれもほのぼの路線ですが、解決にいたる論理はしっかりしてます。「ショップリフター」の万引きの罠に嵌める流れが一番グッド。
 前作が北村薫なら今回は倉知淳という感じですな。

8月6日(火)
183○伊坂幸太郎「ラッシュライフ」(新潮四六)読了。
 新興宗教にいかれてしまった男・河原崎、リストラされた中年・豊田、一匹狼の泥棒・黒澤、不倫相手の妻を殺そうとしている京子、そして全てを金で解決できると信じている戸田。彼らのそれぞれのドタバタ人生が交差し一つに収斂するとき、何が。。。。とまあ、恩田陸「ドミノ」ばりの話かなあと読んでいったのですが、実は(以下反転)「ドミノ」+折原一でした。と書けばわかってしまうでしょうか。よく考えられてるんですが、結局、拳銃を持った老年夫婦は何者だったんでしょうか?。それだけが謎なんですが。

184○諸田玲子「あくじゃれ瓢六」(文春四六)読了。
 時代物の連作長編。長崎で輸入品の目利きをつとめていたという瓢六は江戸を騒がす強請事件の黒幕と思われて捕まり座敷牢送りになるが、その素性を知った北町奉行所の菅野は手下の弥佐衛門の手伝いを命じ、難事件の解決に当たることになる。そして、難事件を解決するや、これは使えると判断した菅野は瓢六の吟味もあいまいにしてそのまま牢に留め置き、さらなる事件の解決に使おうとするのである。無骨な弥佐衛門、やきもちやきのお袖、牢名主の雷蔵。脇役もいいし、物語も人情味あふれる話ばかりで良かった。

8月7日(水)
185○高野和明「グレイヴディッガー」(講談社四六)読了。
 八神俊彦は自分の生き方を変えるために骨髄ドナーとなって白血病患者の命を救おうとしていた。そして移植手術の2日前、友人の部屋を訪れたがそこには手足を縛られて殺された友人の死体が。殺人犯の濡れ衣をきせられそうになった八神はとっさに逃走をはかり病院へと向かうが、謎の一団に襲われる。。。。そして、中世の異端審問で使われた拷問そのままに殺される第二の事件が。八神を追う謎の一団の正体は。そして、連続殺人を犯す「グレイヴディッガー」の正体は。。読みはじめたら止まらないノンストップ・スリラー。面白いよ。出だしが唐突なのと、本来悪党のはずの八神が骨髄移植にとことんこだわる理由がいまいち弱いと思うけど。前半の不可思議状態での殺人でホラーものかと思わせておいて、後半ちゃんと現実に着地させてるし。
 ○印だけど、今年のベストに入るかも。オススメ。

8月8日(木)
186○坂東眞砂子「善魂宿」(新潮四六)読了。
 明治中期のころの岐阜白川郷の合掌造りの家を舞台にした連作長編。明治時期の田舎の物語というだけで「山妣」を思い出してしまい期待してしまったのだが、期待どおり良かった。
 さびれてしまった合掌造りの家にまだ幼い息子と住んでいる母。そこへ、旅人がやってきては語る物語の数々。それぞれが独立していながらその時代をはっきりと浮き上がらせるいい話ばかり。特に最後の2編は4軒あった合掌造りの中で生きてきた、その独特の家族制度が崩壊しいてくさまをリアルに描いており最高です。これも今年のベスト入りですな。オススメ。

8月10日(土)
187◇今野敏「殺人ライセンス」(メディアファクトリー四六)読了。
 「殺人ライセンス」というネットゲームのとおりの人物が相次いで殺された。ゲームと殺人の関係に気づいた高校生の永友久は、リストラされて探偵を始めた同級生の親に調査を頼むが・・・・。
 なかなか魅力的な設定なんですが、いったい主人公は誰?。永友?、相沢?、それとも丸谷&永吉コンビ?。どれも中途半端。帯の「新登場!リストラ探偵」って、彼はほとんど役にたってないじゃん。視点が何人も変わるのでどうも感情移入しにくい。誰か主人公決めて、一人の視点でこの物語を読みたかった。物語自体はいいと思うんだけどねえ。

188○夢枕獏「キマイラ Z」(朝日ソノラマ四六)読了。
 久鬼が語るキマイラをめぐる過去の話。物語は1900年初頭の西域に。ようやく、文庫のキマイラ最新刊に追いついてきました。再読ですが、やっぱり面白いよ、このシリーズ。どこまでもついていきます。

189○西澤保彦「人形幻戯」(講談社新書)読了。
 チョーモンイン神麻嗣子シリーズ最新刊。短編集です。昔はもっと嗣子と保科のかけあい漫才が面白かったはずなんだけどなあ。この短編集はそういう遊びの部分がなくなって、論理の展開中心になってるみたい。それはそれでいいんだけど、このシリーズの持ち味ってやっぱりキャラ同士のかけあいじゃないですか。
 完結編に向けての伏線らしきものが2つくらい入ってましたが、あれが伏線なんですよね、きっと。

8月11日(日)
190○戸梶圭太「トカジノフ」(角川四六)読了。
 戸梶って短編のほうが面白いよ。特に、チンピラとか拳銃ふりまわす警官とか最高。暴走する小市民てやつですか。なかでも「交番トライアングル」は傑作だよ。思いっきり笑えます。戸梶のこういう突き抜けた短編は好きだなあ。

191○新野剛志「」(幻冬舎四六)読了。
 かつて父親を殺した男・脇坂修は成田空港のパーキングで働いている。ある時、所長の大額に嵌められて、密出国する男を1週間かくまうアルバイトをすることに。期限の前日、隠れ家に3人組の男たちが現れ、大額が殺されてしまったことから脇坂の逃亡生活が始まる。自分にかけられた容疑を晴らそうと愛する女・朝子とともに都内のホテルを転々としながら、謎をさぐっていく。。。。
 脇坂の動きが敵に筒抜けなのは(以下反転)朝子から全て町村に流れていたということでいいんでしょうか?。いまいちはっきりしないんですけど。
 これまた、ストイックなハードボイルド。新野の作品てこんなストイック系なハードボイルドが売りだったっけ。いや、嫌いじゃないですけど。なんかデビュー作からするともうちょっと違うイメージを持っていたので。これの前に読んだ「もう君を探さない」もそうだったし。
 ところで、成田空港の密出国ってそんな簡単に出来るものなの?。 

8月12日(月)
192○岩井志麻子「魔羅節」(新潮四六)読了。
 明治時代の岡山を舞台にした短編集。「ぼっけえ、きょうてえ」や「岡山女」とよく似てはいるんですが、これはホラーというよりも、幻視という感覚ですね。怖さはまったくないです。虐げられてきた女の悲しみがひしひしと伝わってくるいい作品です。タイトルは最悪だけど(笑)。なにせ「乞食柱」「おめこ電球」「金玉娘」「片輪車」「きちがい日和」なんてタイトルがずらずらと。絶対にテレビドラマ化は無理だな、このタイトルでは(笑)。
 しかし、タイトルに惑わされずに読むといいです。今まで読んだ岩井作品のなかでは一番良かった。

8月13日(火)
193◇清水義範「どうころんでも社会科」(講談社文庫)読了。
 社会的な生活をしているかぎり、どこに行っても歴史はあるし、その土地がそういう発展をしてきた理由というものはちゃんとあるのだよ。だから漫然と見ているだけじゃなくて、歴史の必然性を考えると面白いよというようなことがきっと書いてあるんでしょう。
 「面白くても理科」とか「もっと面白くても理科」あたりと比べるとやっぱり社会科は地味だなあ。

8月15日(木)
194◎日明恩「それでも、警官は微笑う」(講談社四六)読了。
 第25回メフィスト賞受賞作なんですが、これはいい。なんでこんなにいいのがメフィスト賞なの?と言いたいくらいにいい。この作品はメフィスト賞受賞作というだけで損をしてるような気がする(笑)。
 密造拳銃による事件を追う池袋署の武本巡査部長と磯崎警部補のコンビは目をつけていた容疑者・石塚を逮捕するが、麻薬取締官の宮田もその男を追っていたことからことは複雑に。
 ストイックでタフガイの武本は今までいやというほどお目にかかったタイプの刑事だけど、コンビを組む磯崎は今までになかったニュータイプの警部補で、この2人のコンビが実にいい。不思議に読みやすいリズムの文章とあちこちにあるお遊びが楽しい。実にオススメ。今年のベスト入り。

8月16日(金)
195○高橋克彦「ゴッホ殺人事件 上」(講談社四六)読了。
196○高橋克彦「ゴッホ殺人事件 下」(講談社四六)読了。
 フランスでキュレーターをしている加納由梨子の母親の遺品が貸金庫の中から出てきたが、それはゴッホの作品リストだった。イスラエルの諜報機関モサドのアジムとサミュエルはナチスが収集したと言われるゴッホの未発表作品を追ってスイスにきていたが、容疑者が死亡してしまう。そして、ゴッホのリストはオルセー美術館の研究員の手にわたり、ゴッホの師の謎を解明する論文としてまとめられ、未発表作はゴッホの真作との結論が出る。モサド以外にゴッホの作品を追う謎の集団により、由梨子に危機が。。
 ゴッホの拳銃自殺に対する新解釈と未発表作の真贋をめぐる陰謀。後半は塔馬双太郎も登場して面白い。特に真贋をめぐる解釈は傑作短編「歌麿真贋勝負」を思い出させます。

197△森博嗣「奥様はネットワーカ」(メディアファクトリー四六)読了。
 某国立大学工学部化学工学課を舞台にした連続殺人事件。登場人物は6人。それぞれの視点から物語が語られていくのであるが、はっきり言ってつまらん。ところどころにはさんである意味不明な詩的文章も読むリズムに合わない。これは、ミステリではないのか?。
 それにつけてもネットワーカーの語尾をのばさないネットワーカってちょっと変だよね。と思うのはわしだけでしょうか。

8月17日(土)
198○三浦明博「滅びのモノクローム」(講談社四六)読了。
 2002年度江戸川乱歩賞受賞作。広告代理店に勤める日下は仙台の骨董市で古い釣りのリールを買った。おまけでつけてもらったフィルムをあるCMに使おうとすると。。。一方、孫娘が無断でリールとフィルムを売ったことを知った月森進之介は絶対に取り戻すようにと雑誌記者の苫米地と孫娘の花に頼み込む。フィルムには戦争時代の日本の汚点が焼きつけられているのだ。
 淡々とした物語ですが重いテーマをうまく処理した作品です。最近の乱歩賞の中ではかなりいい。

8月18日(日)
199◇菅浩江「五人姉妹」(早川四六)読了。
 SF短編集。ロボットをテーマがおおいですな。ロボットや人工知能は果たして人間にどこまで近づくことができるのかを作者は描きたいのでしょうか。いろんな角度から書いてます。
 あの「博物館惑星」ものも1編入ってます。「異形コレクション」シリーズで読んだものも2編ありました。シュレディンガーの猫をテーマにした「箱の中の猫」が良かったよ。

200○松樹剛史「ジョッキー」(集英社四六)読了。
 競馬界を舞台にした第14回小説すばる新人賞受賞作。騎手の中島八弥はどこの厩舎にも属さないフリーの騎手だが、そのせいで生活はいつもおっつかっつ。懇意にしてもらってる千葉厩舎からの騎乗依頼や調教の手伝いでなんとか暮らしている。そんな中島の騎手生活を描いたもので、普段からミステリを読んでる身としては、中島が厩舎に泊まり込んだりすると夜のうちに事件でもあるんでは?と深読みしてしまうんですが、小説すばるではそんなこともなく、単なる騎手小説でした。競馬界の内幕がよくわかっていいんですけど、主人公の中島は他の騎手ではひきだせなかった馬の能力を的確に引き出したりしてる割には三流騎手として埋もれていたりとか。普通、それだけ馬の能力を目一杯引き出せたらどこからも引く手数多じゃないんですか?。なんか設定が破綻してるような気がするんですが面白いからいいです。前半は細かいエピソードの積み立てで読ませて、後半は前半の伏線で大ネタで読ませます。

8月20日(火)
201◇歌野晶午「放浪探偵と七つの殺人」(講談社文庫)読了。
 探偵・信濃譲二が主人公の短編集。いろんなシチュエーションに探偵を登場させるとなると、こういう設定のフリーター探偵というのは結構便利かも。しかし、探偵そのものにあまり魅力がないので印象が薄いです。

8月21日(水)
202○神林長平「永久帰還装置」(朝日ソノラマ四六)読了。
 永久追跡刑事の小鴨蓮角はボルターと呼ばれる犯罪者、フヒト・ミュグラを追って火星に到着した。ボルターは世界を改変する力があり、永久追跡刑事はそれを防ぐためにボルターを追っているのだ。戦略情報局に捕らえられた蓮角は局員のケイ・ミンの存在を再構築して彼女とともにフヒトを追うが・・・。
 「言葉」にこだわり続ける作者ならではの「言葉の力」を描いたSF。ボルターの作った擬似世界の人間に惚れてしまう蓮角も、蓮角の荒唐無稽の言葉を信じるケイ・ミンも、「言葉」の「力」にとらわれているのでしょう。と、書くと難しそうな作品に思えるがそんなことはなく、アクションものに近い展開で、スリリングな物語でした。 

8月22日(木)
203◇栗本薫「運命の糸車 グイン86巻」(早川文庫)読了。
 アムネリスが子供を産んで、イシュトはグインと直接対決。それにしても、あの人がああなるとは。いよいよ終盤という感じで盛り上がりつつあるんですが、相変わらず展開が遅いよ。
 関係ないんですけどこの巻の表紙は誰なんでしょ?。

8月23日(金)
204△初野晴「水の時計」(角川四六)読了。
 今年の横溝正史賞なのでミステリだと思って読んでいたら、全然ミステリじゃなかった。ミステリじゃないのになぜこの作品が横溝正史賞に?。
 事故で脳死状態に陥った少女は月の光を浴びたときだけ機械を通して意思を伝えることができる。自分の臓器を移植して他人の役に立ててほしいと願う彼女の意志を暴走族のリーダー高村が得意のバイクで移植先に届ける。臓器をもらう側の物語3編をはさんで本編なのですが、結局この物語のメッセージは何なのでしょうか。物語の主眼がどこにあるのかよくわかりませんでした。特別感動するような物語でもないし、臓器移植に対するメッセージがこめられてるようにもとれなかったし。一番の問題はミステリじゃないことかな。横溝正史賞受賞作でなければ◇印でした。横溝賞なのにミステリじゃないので△です。 

8月24日(土)
205○平谷美樹「君がいる風景」(朝日ソノラマ文庫)読了。
 10年前の中学3年生に意識だけタイムスリップした高村哲哉は、親友の聡史、雅和とともに、好きだった美鈴の死を回避しようとするが。。。しかし、タイムスリップのせいか、美鈴のがいつどうやって死んだのかを忘れてしまう。中学3年の夏休みに死んだという記憶だけを頼りに必死に彼女の死を回避しようとするのだった。果たして美鈴は死なずにすむのか?。
 昔々の「タイムトラベラー」や「謎の転校生」みたいな雰囲気をうまくだしてると思います。ジュニアSFの佳作といって良いでしょう。

206○宮部みゆき「あかんべえ」(PHP四六)読了。
 時代物でオカルトもの。江戸は深川の料理屋・ふね屋の一人娘おりんは生死をさまよう大病をしてから亡者が見えるようになってしまう。そして、ふね屋には5人の亡者が住み着いていた。ふね屋ができる30年前はお寺で、住職が大量殺人をした過去があるらしいということがわかってきて、亡者もその関係者ではないとかおりんは過去探しを始める。。。。
 ちっとも怖くないオカルトものです。自分の心を反映する亡者しか見えないっていうところが新しいポイントかな。でもって得意のホロリ攻撃。泣かせどころをよく押さえてありますが、わしには通じないよ。500ページという厚さにもかかわらず読みやすいのは文章がうまいからなのか、時代物だからなのか。現代ものはなかなかさくさく読めないのに時代物はさくさく読めるのはなぜでしょう。

8月25日(日)
207○重松清「熱球」(徳間四六)読了。
 妻が研究留学で1年アメリカへ出発したのと期を同じくして会社を辞めて娘と一緒に故郷の周防へ20年ぶりに帰ってきた僕。20年前に捨てたはずの故郷は、東京への未練をもったまま暮らすには難しすぎる街だった。かつて、高校野球県大会決勝前日の不祥事で辞退した過去を今もひきずりながら暮らすクラスメートたちといったいどう付き合えばいいのかわからない。。。。
 どこにでもありそうななんでもない物語なのにしみじみと読ませます。こういう物語はいいねえ。嫌って出てきたはずの故郷に戻って一からやり直すだけの決意も、東京に戻って再出発するという判断も中途半端にしたままずるずると故郷で腐っていく。そして、それを自分で認めている僕の心理もよくわかる。いいねえ。

8月26日(月)
208○井上剛「マーブル騒動記」(徳間四六)読了。
 第3回日本SF新人賞受賞作。ある日突然、牛が知能を持ち人間に対して牛権を主張してきた。それに対して人間は牛権認める派と認めない派に分かれてああでもないこうでもないと。
 人は知能を持った動物を食べることが出来るのか?。難しい問題ですな。わしは食べると思うけど。世の中の動物、植物は人間に食べられるために存在してるのだよ。
 物語の中で、意識を持ち牛権を保障された牛をどうして今までどおり家畜として餌を与えて飼っているのか、わかりません。肉牛として売るために育てていたのに、売れなくなったんだからもう飼っておく必要はないと思うんですけど。牛が権利を主張するなら権利に付随する義務もあるわけで、なぜ人間が今までどおり餌をやって世話をしなければいけないのか。そのあたりちょっと不明でした。
 また、牛の意識が全部同じというのはちょっと理解不能。

8月27日(火)
209△竹内真「じーさん武勇伝」(講談社四六)読了。
 80過ぎたじーさんがありあまるパワーで沈没船の宝探し。80過ぎて再婚はする、子供はできる。戦えばアメリカ海兵よりも鮫よりも強い。そんな漫画みたいなスーパーじーさんの活躍を漫画みたいに描いてます。というか、活字で描かれた漫画。
 あまりに能天気な小説でとてもこの世界に入り込めませんでした。うーん、もうちょっと現実寄りなものがいいなあ。というか、リアルなもの。スーパーじーさんでもいいから、いかにもありそうなくらいで止めておいて欲しかった。

8月28日(水)
210◇明石散人「鳥玄坊 時間の裏側」(講談社文庫)読了。
 前作「鳥玄坊 根源の謎」の後日。右翼系ジャーナリストの鈴木と助手の大道寺はリュウグウノツカイが打ち上げられた浜で石神亜玖梨に出あう。そして、鳥玄坊一族の長寿の謎に踏み込んでいく。。。浦島太郎の伝説や墨子の仙薬、空飛ぶ円盤などの謎を解き明かしていくのですが、一介の右翼ジャーナリストであるのに、国宝絵巻きの原寸大カラーコピーを苦もなく手に入れたりできるのはなぜ?とか、助手の大道寺も古代史などに精通しすぎてのはどうして?という疑問は鳥玄坊の謎よりも大きいと思います。雑学ネタとしては面白い。

8月29日(木)
211○光原百合「十八の夏」(双葉社四六)読了。
 花をモチーフにした連作ミステリーと帯にありますが、ちっとも連作じゃないよ。単なる短編集だよ。ま、独特のじんわりほのぼの感はいっしょだけど。
 朝顔に名前をつけて育ててる女に恋した僕の推理は・・・タイトル作「十八の夏」。これが一番いい。「ささやかな奇跡」と「兄貴の純情」は単なる恋愛小説だ。
 前作「遠い約束」とはまるっきり違った作風の作品でした。いや、こういうのもたまにはいいですが。


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