2002年10月の退屈な日々  もどる

 読書の評価は ◎・・・めちゃ面白いがね。 ○・・・なかなか。 ◇・・・まあこんなもんかな。 △・・・つまらん。 ×・・・時間の無駄。
 本は緑が読了本赤が新刊本水色が古本です。先頭の数字は今年になってからの購入および読了冊数。

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10月1日(火)
241○森福都「セネシオ」(小学館四六)読了。
 なぜか出ると買ってしまう森福都ですが、今までの中国ものとはがらっと変わって「コージー・ホラー」だそうです。コージーとホラーってどうやって結びつくんだ?。「霊幻道士」とか「バタリアン」みたいなイメージかなあと思って読みました。
 セネシオと名乗る少女によって自分がサイコキネシスであることを自覚した梅原はその超能力を使って遺伝子操作ができることを知る。彼の超能力は念動力。しかし、動かせるのは分子とか遺伝子とかのサイズのものだった。しかし、超能力を使用すると、どこからともなく超能力者を排除しようとする動きが発生するのだ。それはプレゼンターと呼ばれる能力をもった人物からキラーと呼ばれる殺人者に情報がわたり、彼の能力を抹殺しにくるのだ。遺伝子操作のできるサイコキネシスとか、抗原・抗体の設定は面白いと思うんですが、エンハンサーとかプロモーターの役目はなくてもいいんでは?。
 あと、分子を操作できるのなら自分の下半身不随も神経をつなぐくらい出来そうに思うんですが。

10月2日(水)
242◇今邑彩「よもつひらさか」(集英社文庫)読了。
 ホラーとミステリの短編集。ホラーはなかなか出来のいい作品がそろってます。なかでもタイトル作「よもつひらさか」は特に良かった。ミステリも「家に着くまで」なんかはよくまとまってる作品です。
 しかし、どうせなら、ミステリだけ、ホラーだけでまとめたほうが良かったように思う。作品の並び順もホラーとミステリをきちんと区別してそれぞれをまとめたほうが分かりやすいのになあ。

243◇綾辻行人「最後の記憶」(角川四六)読了。
 若年性の痴呆症にかかった母親は日に日に記憶を失っていき、最後には一番強い思い出だけが残るという。そして、母親に残されるのは「すさまじい恐怖の記憶」だという。バッタの飛ぶ音、白い閃光。そうした母親の記憶に有る恐怖の形が自分にもフラッシュバックして見えたり聞こえたりするのはなぜか?。母親の痴呆症は遺伝病なのか?。心配になった波多野森吾は母親の出生の秘密を探る決意をする・・・。
 恐怖の記憶だけが残されるというイメージはそうとうに怖いものがありますが、ラストまで読んでしまうとそれほど怖くないのはこの作品がミステリ的にきちんとまとまってしまってるからだと思います。ホラーは合理的に説明できない恐怖が怖いのであって、恐怖の源がわかってしまうともうそれで怖くなくなってしまうのです。だからこの作品はミステリ的には成功していてもホラー的には成功してないのでしょう。

10月3日(木)
244◇平谷美樹「呪海」(光文社新書)読了。
 岩手県にある人形供養で有名な神嶋神社では100年に一度の大祭の時が迫っていた。祭の手伝いを頼まれた聖天神社の神職見習いの聖天弓弦は大祭に隠された真の目的を探ろうとする。一方、大祭の始まらんとする時に、新進漫画家から処分を頼まれた人形を持ってアシスタントの頼子が神嶋神社に呼び寄せられるようにしてやってくる。供養されたはずの人形たちが海からよみがえってくるホラー小説です。壊れた人形が大挙して海からやってくるイメージはなかなか怖いものがあります。しかし、払い屋のほうがどうも、伝奇小説風になってしまうのでなかなかホラーとして読めない点がマイナス要因です。伝奇小説として読むと、払い屋の実力が不足気味。
 しかし、法印空木なんかは続編を意識して書かれているようなので、ここは続編に期待しましょう。

10月6日(日)
245◎飛浩隆「グラン・ヴァカンス」(早川四六)読了。
 いつの時代かわからない電脳空間にある、「数値海岸」を持つ「夏の区界」ではAIたちだけが1000年以上にわたって終わりのない夏を過ごしている。「大途絶」と呼ばれる災厄が過ぎた後には人間のゲストは一人も訪れなくなってしまったのだった。夏の区界に住むジュールとジュリーの2人は硝視体(グラスアイ)を探しに数値海岸にやってきたとに「飢え」が具体化しい蜘蛛の怪物に襲われる。それは夏の区界に襲いかかる災厄の前兆であった。AIたちは鉱泉ホテルに集まり蜘蛛を迎え撃とうと団結する。。。。
 ああ、これは面白い。電脳空間のAIが飢えに喰われてなくなっていく描写とかイメージが最高です。しかも、夏の区界のAIたちの役割と存在意義が明らかになったあと、蜘蛛の戦術の意味がはっきりしてなるほどと思いました。いろいろと書きたいのですがネタバレしないと書けないのでやめておきますが、これは面白い。わしのツボにはまりました。一歩間違うとファンタジー系になってしまうんですが、うまくSFの中に収まってます。今年のベスト入りの1冊ですね。

10月7日(月)
246◇西尾維新「クビシメロマンチスト」(講談社新書)読了。
 大学に戻った戯言使いの「ぼく」を慕ってくる同級生・葵井巫女子に連れて行かれた誕生パーティーの後、部屋に残った女性が首を絞められて殺された。その事件とは別に12人もの連続刺殺事件も発生し京都の街は連続殺人鬼の闊歩する危険な街となっていたのだった。そこで、我らがいーちゃんは連続殺人鬼の零崎と危険な出会いをして知り合いとなる。
 傍観者でいようとする主人公の思考回路はかなり親しみを感じるのであるけれど、なんか現実感が薄いというか、あまりにも作り事めいた世界観が前作よりも強くなってきているみたいに感じます。だから余計に物語の世界についていけなくなってるのかもしれません。わしが大人だから?。うーん、それは違うか。

10月8日(火)
247◇中島らも「空のオルゴール」(新潮四六)読了。
 大学の教授の指示で、伝説の奇術師ロベール・ウーダンの足跡を訪ねてフランスを訪れた大学生・トキトモはウーダンに詳しいフランソワというマジシャンを紹介されるが、フランソワは「反奇術同盟」に暗殺されてしまう。それをきっかけに「反奇術同盟」はウーダンの流れをくむ奇術師たちに襲いかかる。ってことで、奇術対テロリストのアクションものなんですが、奇術を使ってテロリストを翻弄するわけでもなく、なんで奇術師なんだよーとの疑問がうずまいてました。反奇術同盟が奇術師たちを皆殺しにしたいと思う動機も理解できないし、テロリストにしてもものすごく自己掲示欲の強いキャラばかりで、とても殺人にはむいとは思えない。まるで物語の中にしか存在しないキャラ(いや、これ自体が物語なんだけど、それでもあまりといえばあまりではないですか)だし。

248△中島望「十四歳、ルシフェル」(講談社新書)読了。
 いじめで殺された中学生が脳と眼球だけを残してサイボーグ化されてよみがえり、自分を殺した暴走族に復讐したり、まきぞえをくった同級生の彼女に害を加えそうな者を力ずくで排除したり、圧倒的パワーを手に入れた男がいかに暴力に酔うかというような。
 復讐するのにあんなに簡単に殺しはしないだろ。もっともっと苦しみを長引かせるような残忍さが足りないよなあ。わしだったら銃や刀で一瞬のうちに殺すなんてもったいないことはしないでじわじわとやるんだがなあ。
 あと、いくら人間の皮膚に近い材質であっても見た目人間と区別がつかないようなまでの表情の動きなどは無理だろ?。と思うんですけど。

10月11日(金)
249○田中啓文「蓬莱洞の研究」(講談社新書)読了。
 学園伝奇駄洒落小説とでも言うお笑い小説。古武道《独楽》の達人・諸星比夏留は私立田中喜八学園高校の1年生。吹奏楽部に入るつもりがなぜか民俗学研究会に引き込まれ一癖もふた癖もある先輩たちと洞穴に残る伝承の謎を追いかける。
 作者得意の駄洒落攻撃は今回も健在でした。ライトな表紙絵とさし絵がなぜか本文にマッチしていてイメージもつかみやすくなかなか笑える作品です。それにしても「黒洞の研究」の駄洒落にはまいりました(笑)。いや、そうくるとは。あまりの馬鹿馬鹿しさに思わず本を投げ棄てそうになりました。いい意味で。

10月12日(土)
250○黒岩研「真闇の園」(幻冬舎四六)読了。
 沖縄の無人島を改造して作ったリゾート地「アイランダー・ビレッジ」に高校時代の初恋の女性カメラマン葉月と、彼女に付き添って乗り込んだ遠藤はすすり泣きのような声を聞いた者たちが恐怖の幻覚を見て死んでいく現場に遭遇する。自分が一番怖いものの姿でそれは現れてくるのだった。鮫に襲われた幻覚をみたダイバーはナイフで同僚に切りかかり、トイレで嫌いなコオロギが体にたかってくる幻覚をみた男は自分の顔をガラスで傷つけてしまう。そのすすり泣きの正体はいったい何か?。島に伝わる伝説とはなにか関係が有るのか?。
 と、まあホラー物の正統派路線を踏襲しながら物語は進むんですが、、、、このラストは何?。ここからネタバレになるので反転(鯨と人間との間に子供なんて産まれるのか?。遺伝子的な問題はいったいどうなってるの?。あまりに荒唐無稽すぎですがね。)。というラストの部分に目をつむれば、かなり面白いです。この部分を許せるかどうかで評価がわかれるところではないでしょうか。
 ところで、この「自分が一番怖いものの形となって現れてくる」というのは「恐怖の惑星(プラネット オブ テリブル」とかいうホラー映画があったと思うんですが。

251○瀬名秀明「あしたのロボット」(文春四六)読了。
 ヒューマノイドロボットの未来を描いた連作SF。SFというよりも希望的予測に近いかもしれんな。人がロボットを身近で使う時、なぜ、ヒューマノイド型を選ぶのか?。ペットロボットの限界は?。ロボットに心はあるのか?魂は?(このあたりはすでにSFですが)。人とロボットの間に真のコミュニケーションは可能か。なかなかしんみりさせられる物語ばかりでありましたが、特にラストの「アトムの子」は鉄腕アトムをリアルタイムでみていた世代であるだけになんか考えさせられましたね。うんうん。

10月13日(日)
252◇佐々木譲「黒頭巾旋風録」(新潮四六)読了。
 幕末の北海道東部。一人の若き僧が副住職として着任するためにアッケシの港についた。そこでアイヌが虐げられているのを見て、助けようとするが周りからは逆に白い目で見られてしまう。僧・恵然は身元を隠すために黒覆面を着けて、愛馬にまたがり鞭を武器に悪辣な支配者を懲らしめる。。。。って、怪傑ゾロのような表紙が思いっきりイメージを固定してますが、読んでもそのとおりでした。しかし、主人公が殺生を禁じられている僧侶なので、すかっと解決というわけにはいかず、禍根を残すようなお仕置きしか出来ないのがいまひとつまどろっこしい。しかし、それだからこそあのラストにつながるんでしょうけど。
 佐々木作品の「雪よ 荒野よ」「北信群盗録」の系列に入るアイヌウエスタンとでもいう作品。

253○ヒキタクニオ「ベリイ・タルト」(文春四六)読了。
 元ヤクザの経営する芸能プロにスカウトされたリンはその魅力的な瞳で一躍アイドルへの階段を登り始めた。しかし、大手プロダクションの目にとまり移籍をめぐってヤクザが乗り出してくる。。。。
 スカウトした少女がいかにしてアイドルになっていくのか。あるいはプロダクションはいかにしてアイドルを売り出していくのか。その過程が面白い。もちろん、部下の小松崎、メイクの仁など脇役もそれぞれ個性的でいいんだけど、主人公のリンの魅力がいまひとつ伝わってこない。というか、きっとリンがわしの好みのタイプじゃないんだろう。かなり面白かったです。

10月14日(月)
254×恩田陸「図書室の海」(新潮四六)読了。
 「六番目の小夜子」の番外編を含む短編集ということで期待してたのですが、そうとうに大ハズレ。個人的に。作品のかもし出す世界についていけません。「オデュッセイア」だけはちょっと良かったけど。あとはダメダメです。こういう短編の良さがまったく理解できません。くぅーっ。

255◇安藤能明「死が舞い降りた」(新潮四六)読了。
 タイトルからしてジャック・ヒギンズか?。と思いきや、近いっ。鷹を使った復讐劇なのでした(違うじゃん)。しかし、狙う側と狙われる側の因果がなかなか解き明かされないので、いまいちのれません。
 鷹狩りの鷹の飼育方法については勉強になりました。それだけか。

10月15日(火)
256△明石散人「鳥玄坊 ゼロから零へ」(講談社文庫)読了。
 いつの間にやら超伝奇SFになっていたとは吃驚です。しかもいつの間にやら三部作だし。今までの2冊は単なる前振りだったんです。三重交点に閉じ込められたウルトラモササウルスは今にも出てきそうだし、O−157をベースに作られた細菌兵器SH70は日本中の子供を殺し、韓国軍は日本上陸を狙ってる。という混沌状態を打開すべく鳥玄坊一派は動き回るが、鳥玄坊をしのぐ超能力者・義円はこの世の真実を求めて鳥玄坊と対立する。。。もはや収集がつかなくなってしまったよう。
 ここまで荒唐無稽な展開とは思ってもみなかった。「根源の謎」のころのオーパーツの解釈クラスでとどめておけばそれなりにまとまりがあってよかったと思うのだが。 

10月16日(水)
257◇森巣博「ジゴクラク」(光文社新書)読了。
 カジノじゃなくてカシノが正しいのですね。たしかにCASINOですからねえ。現役の国際的博打打ちである作者の日常をフィクション的に描いたものらしいです。
 赤坂のアングラカシノで知り合った18才の舞ちゃんは毎日10万円ずつカシノにつぎ込んでいた。そして、私は舞ちゃんに逆張りして稼ぎ彼女は1000万円ほど負けが込んでいた。そんなある日、舞ちゃんから「今日だけは逆張りしないでくれ」と頼まれる。この日を最後にカシノから足を洗うのだという。。。。
 ギャンブルなんてパチンコとか麻雀くらいしかやったことがないのでこういう世界はよくわかりません。ギャンブルの持つ魔力にもはまったことないし。それでも、現役博打打ちが感じてるであろう賭ける快楽は伝わってきます。でも、でも、バカラの楽しさは伝わってこない。きっと興味がないからなんだろうけど。バカラというゲームを体験したことがないからなのかな。

10月17日(木)
258◇浦賀和宏「地球平面委員会」(幻冬舎文庫)読了。
 名探偵エラリー・クイーンの孫で大学に入ったばかりの大三郎・クイーンは、興味半分で覗いた「地球平面委員会」なる怪しげな同好会の委員長・宮里真希から熱烈な入部勧誘を受ける。そして、入部を保留しているうちに放火や盗難事件、はては殺人まで起きる。いったい「地球平面委員会」にはどんな秘密が?。
 と、まあタイトルだけみてB級SFかと思ってしまったがミステリでした。というか、途中までミステリだとも気づかなかったし(^^ゞ。しかし、この動機はあまりにもすごいよ。エラリー・クイーンの孫ってことですっかり本格推理ものかと思ったんですけど。その外し方が見事です。口あんぐりです。

10月18日(金)
259○谷甲州「遠き雪嶺」(角川四六)読了。
 昭和11年、立教大学山岳部のヒマラヤの処女峰ナンダ・コートの初登頂を目指す遠征隊の記録を描いた山岳小説。もうそれ以上説明の要はありません。冬期山岳物が好きなわしにはたまらない作品でした。ただ、あまりにもノンフィクション風に押さえ気味なところが地味といえば地味。地味に良い。

10月19日(土)
260○二尋司「松本五十勝計画」(文芸社四六)読了。
 プロ野球界の異端チーム・ハウンド・ドッグス。万年最下位なのになぜかリーグ優勝してしまった。物語はその翌シーズンから始まる。そのシーズンに引退を決めている松本投手を名球会入りさせようとチームメイト全員が一丸となって松本投手のシーズン50勝を取りにいくのだ。勝ち星も優勝も二の次、全ては松本50勝のために。。。。個人プレーとチームプレーの微妙なバランスで成り立っているのでしょうか、野球というスポーツは。もともとチームプレーをするスポーツに興味がないんでプロ野球も全然見てません。それでも、物語として充分に楽しめる内容になってます。もうちょっとチーム内でのごたごたとかあると盛り上がると思うんですけど。

10月21日(月)
261○島村匠「上海禁書」(祥伝社新書)読了。
 昭和14年の上海。上海の図書館から1冊の本が盗まれた。それは紫禁城の財宝のありかを記した「金記奇誦」(きんききず)と呼ばれる禁書だった。禁書をめぐって義賊、軍閥、裏社会、日本軍、ユダヤ資本などが入り乱れての争奪戦。陰謀につぐ陰謀、裏切りにつぐ裏切り。さらにはロマノフ王朝まで絡んでいったいどこに着地するのかと思いきや・・・・。
 紫禁城から移送された隠し財宝というネタをうまいことひねくりまわして面白い作品になってますが、川島芳子ばりの天野とか間抜けの代表・張小林とかけっこう漫画的キャラが多いのが難点。ネタがいいんだからキャラはもうちょっと渋くてもいいんじゃない。これはこれで充分に面白かったけど。
 どうでもいいことなんだけどP104に後藤が青いカナリヤを飼ってるとありますが、青いカナリヤっていないんじゃなかったっけ?。

10月22日(火)
262◎平安寿子「グッドラックららばい」(講談社四六)読了。
 全員がマイペースな一家を描いた家族小説。父・片岡信也、地元信用金庫の庶務係長。とにかく事を荒立てたくない人。何事にも様子見で対応。母・片岡鷹子、ある日突然家出をして何年も家に帰らず。姉・片岡積子、どうしようもないダメ男に惚れてばかりの刹那主義者。妹・片岡立子、とにかく立身出世第一主義の現実派。それぞれが自分のことだけを考えてバラバラにみえる一家の20年間を描いた傑作。自分が個人主義なのでこういう家庭ってうらやましい。うんうん。何事にも口出ししてくる佐代子伯母がリアルに鬱陶しく感じられるくらいに片岡家に肩入れできます。はい。今年後半で一番面白かったです。

10月25日(金)
263○清水義範「博士の異常な発明」(集英社四六)読了。
 「発明」というテーマでくくられた短編集。こういうテーマできちんと中身がまとまってるとやっぱり嬉しいですね。特にこの作者の作品は幅広いので1冊にいろんなものが入ってるとどうもまとまりがなくていけませんが、こうやってまとめてあると安心して清水ワールドを楽しめます。

10月26日(土)
264○川端裕人「竜とわれらの時代」(徳間四六)読了。
 風見大地は弟の海也と高校時代に偶然発見した恐竜の化石を自力で発掘すると決意していた。そして、月日は流れ、大地はアメリカの大学に学び、恐竜学の泰斗クリス・マクレモア教授の指導のもと、件の化石の発掘に携わることになる。発掘された化石は全長40メートルを超える世界最大の首長竜の化石であることがわかり北陸の田舎町は大いに沸き立ち、ついには近隣の町とともに恐竜博を立ち上げるのだった・・・・。
 「夏のロケット」を思わせる、「夢の実現に向けての努力」みたいな感じですが、そこに宗教テロがからんで物語は緊迫感を出してます。宗教テロは余分な気がしますが。特に後半の恐竜博の宗教色のパビリオンはあまりにも非現実的ですよ。
 恐竜化石発掘物語にしては爽やかすぎです。そこが川端裕人の良いところなんですが。

10月27日(日)
265◇古川日出男「13」(角川文庫)読了。
 先天的に左目だけ色弱のために常人とは違った世界を見ていることに気づいた橋本響一は色に対して非凡な才能を発揮する。舞台はアフリカのザイールと10年後のアメリカ。神を色で表すことは可能なのか?。響一の作り出した映像は臨死体験を引き起こすという。。。。
 うーん、なんと評価していいのかよくわからない小説です。面白いと思えば面白いし、面白くないと思えば面白くない。わしの中では面白いんだろうなあとは思うんだけど、いったいどこがどう面白いのか具体的に説明できない。じゃあ、読んでいて途中で投げ出したくなるようなつまらない小説かというと全然そんなことはなく、続きを読むのが楽しみなんですが、それは面白いから読むのか、と言われるとそうでもないんですな、これが。
 きっと万人向けの小説ではないんでしょう。でも古川日出男の他の小説も読んでみたいとは思わせる作品です。わし的には。

10月28日(月)
266○半村良「獄門首」(光文社四六)読了。
 半村良の遺作となる未完の小説。八代将軍・吉宗の時代の盗賊の話し。4才で道中師夫婦の生き道具として使われているところから始まって、細工師としての表の顔を持ちながら盗賊として生きるところまでをこの1冊にまとめてます。物語はこれからというところで終わっていて実に惜しいのですが、もう続きを読むことは出来ないのですね。
 かなり早いテンポで物語が進むので途中で終わってはいるのですが、あまり不満は残りません。
そんなことよりも、メリットの「ムーンプール」の続編の「フォックス・ウーマン」が未完のままだということのほうが残念です。

10月29日(火)
267◇五條瑛「君の夢は もう見ない」(集英社四六)読了。
 作者が今まで書いてきた葉山シリーズの外伝ぽい連作短編集。主人公は、葉山の勤める「極東ジャーナル」の下の階にある「中華文化思想研究所」の所長・仲上。彼に届く手紙から事件が始まり、それはどれも伝説のスパイ、ラウル・ホウにつながり、それは中国がらみの事件だ。
 というだけのことで、なんかとりとめのない中間小説っぽいものばかり。隔靴掻痒というか、スパイ活動の核心にふれる物語がないだけに、読んでいてもどかしい。というか物足りない。

268△赤城毅「紳士遊戯」(光文社新書)読了。
 昭和初期を舞台にしたコンゲーム小説。伝説の詐欺師・四条君隆に弟子入りした詐欺師初心者の立見広介は四条とその孫娘・るぅと組んでまずはバイオリンを売りつける詐欺を計画する。
実はコンゲーム小説は好きなんですが、これは期待はずれでした。コンゲームに期待するものは読者をあっと驚かせるその手口です。しかし、この小説にはそれがない。キャラクター造詣に力を入れてるのかもしれないけど、一番肝心の騙しのテクニックに新しさが感じられないのではお話しにならないです。

10月30日(水)
269○奥田英朗「マドンナ」(講談社四六)読了。
 40代半ばの中年を主人公にしたオフィス小説の短編集。17才も年下の部下に惚れてしまった課長の悩みは?。同い年の女性が上司としてやってきた課長の立場は?。部ぐるみで不正をしている総務部に配置替えされた課長のとるべき道は?。息子がダンサーになりたいと言い出したらどうする?。など、いろんなシチュエーションをユーモアまじりにさくっと読ませます。軽いタッチでいながらけっこうシビアな問題を面白く読ませるのはさすが。

10月31日(木)
270○加納朋子「虹の家のアリス」(文春四六)読了。
 「螺旋階段のアリス」の続編。といっても短編集なので設定が同じということですが。で、今回も仁木探偵の助手、というか安梨沙がホームズ役で日常の謎を解決していきます。読んでいて爽やかなミステリーの良品です。ただ「幻の家のアリス」は結局、何が言いたい作品なのかよくわかりません。解決のない作品を読まされてるような気がしました。


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