A頚部の末梢神経障害による肩こり
特に変形性頸椎症(頸椎症性神経根症)による肩こりについて



★頸肩部のこりや痛みがある場合で、頸部を前後あるいは左右に動かして、頸肩部や上肢に痛みが誘発・増悪すれば、頸部の神経根の炎症が考えられます。ここでは、比較的発症頻度が高い、頚部の運動で愁訴が誘発・増悪することが多い、変形性頸椎症(頸椎症性神経根症)による肩こりについて述べることにします。
★上肢の挙上や下垂位でこりや痛みが誘発・増悪する場合もあります。この上肢の肢位により愁訴が誘発・増悪する場合は、鎖骨上方の筋部の緊張で、神経が刺激されて発症することが多く、胸郭出口症候群と呼ばれることもあります。本症は、比較的発症頻度が低いため、割愛いたします。
※本項の作成に当たり、主に「診察法と治療法(4):出端昭男:医道の日本社」から、図や記述を引用しました。


変形性頸椎症(頸椎症性神経根症)による
肩こりが発症するメカニズム
目 次
@頸椎症による肩こりは、神経根の炎症が主な原因
A変形性頸椎症の進行過程の概略
Bこりや痛みの位置による障害神経根の推定


@頸椎症による肩こりは、神経根の炎症が主な原因
★歳をとれば、多くの人が、肩こりや腰痛を感じるようになります。その発症プロセスを要約すれば、次のようです.
1.加齢により椎間板が変性する:背骨を構成する椎骨や椎間板は、20才を過ぎた頃から、次第に老化の道をたどります。特に、椎間板では毛細血管が減少し、椎間板への栄養補給は悪化します。老化による変化が、特に大きいのが椎間板で、弾力性が失われ、身体の重みでつぶれてきます(その結果、誰でも、高齢になれば、若い頃より身長が短くなるのですが)。
年をとると、椎間板への栄養補給は悪化する

年  齢 0才 10才 20才 30才 70才
栄養補給 血  管 あり あり 減少 なし なし
リンパ管 あり あり あり あり あり
椎間板
水分量
髄  核 88% 80%↑ 80%↓ 70%
線維輪 78% 70%

2.椎間孔が狭くなり、神経が炎症を起こす:椎間板がつぶれて、薄くなると、腰椎の関節である(椎間関節)が互いに食い込み、椎間板の後方にある、神経が出てくる孔(椎間孔)が狭くなります。末梢神経が椎間孔からでてくる部分を神経根といいますが、孔が狭くなると、神経根は圧迫や摩擦をうけ、当該神経は炎症・浮腫・循環障害を起こしてしまいます。

3.筋肉や皮膚に慢性的な痛み(こり)や痺れが発症する:神経の炎症により、その神経支配領域の筋肉や皮膚が刺激され、慢性的な痛み(こり)や痺れが引き起こされることになります。この時期に、首を動かす動作で、頸肩に痛みが走ることがあります。これは、首を動かす動作で稚問孔が狭められ、炎症を起こした神経根が圧迫されるからです。炎症を起こした神経根とこりや痛みの位置については、「Bこりや痛みの位置による障害神経根の推定」を参照してください。

A変形性頸椎症の進行過程の概略
★以下は、概略の進行過程で、多くの症例では、「第1段階の後頭部から頸肩におよぶこりや痛み」の状態で推移し、発症・緩解を繰り返すことも少なくありません。時に、発症直後から「第3段階の上肢の痺れや筋力低下を認める」こともあります。また、頸肩のこりが頻発してから、しばらくして(数週間から数年後、人によって異なります)から、「第3段階の上肢の痺れや筋力低下を認める」に移行することもあります。
★以下の経過は、あくまで目安≠ナあって、全ての症例で、このような経過をたどるとは限りません。

進行過程 症状
第1段階 ★「慢性的な、首から肩にかけて起こるこりや痛み」を認める状態です。首の動きが、ぎごちなくなることがあります
第2段階 首を後ろに反ったり、横に曲げると、痛みが誘発あるいは増悪します。朝の起床時や夕方の疲労時のこりや痛みが、この段階の特徴です
★朝の起床時や夕方の疲労時のこりや痛みは、神経根周囲の循環障害が原因です
第3段階 ★さらに進行すれば、肩から指先にかけて、痛み・痺れ・筋力低下なビが現われれることがあります。これは、神経根の炎症による症状で、首の運動で増悪するほか、咳やくしやみでも、痛みや痺れが増悪する事があります
★この段階になると、痛みや痺れの位置から、どの神経根が障害を受けているか、推定できることがあります。「Bこりや痛みの位置による障害神経根の推定」を参照
第4段階 ★次に、人によっては、多彩な自律神経症状が現われることがあります。たとえば、頭痛耳鳴りめまい吐き気集中力不足咽喉の違和感発汗異常手足の腫れなど、さまざまな症状があります
★これらの症状は、第1段階から認めることもありますが、全く認めないこともあります
脊髄障害 ★以上の第1段階〜第4段階までは、脊髄(木でいえば幹)からでた神経根(木でいえば枝)の障害でしたが、脊髄そのものが障害を受けた場合に、どのような症状を認めるか、について、参考までに掲載しました
★症状は、日常生活上の細かな動作(ボタンかけ、箸の使用など)が不随意(巧緻運動障害といいます)になり、下半身の脱力感・歩行障害などをきたすことがあり、進行すれば膀胱・直腸障害にいたることもあります
★この病変が現われるのはまれですが、骨の増殖や靱帯の把厚などで、脊髄そのものが障害を受け、発症します。本症では、保存療法以外に、手術が適用になることも少なくありません


Bこりや痛みの位置による障害神経根の推定
★頚部には、8対の脊髄神経があり、上方4対(第1頸神経〜第4頸神経)は頭頚部に、下方4対(第5頸神経〜第8頸神経)は頸肩部や上肢に関連します。それぞれの神経により、皮膚や筋肉の支配領域が異なり、極おおざっぱですが、痛みや痺れの位置から、障害神経根の推定は可能です。
★頸肩部や上肢を支配する4対の神経のうち、もっとも障害を受けやすいのは、第6頸神経(根)といわれています。

頸神経の障害による症状発現部位@

頸神経 コリや痛みの
発現位置
知覚障害 筋力の低下
第5頸神経 肩から肩峰
&肩甲骨内側
上腕外側
肩関節外転
第6頸神経 肩から上肢外側
&肩甲骨内側
拇指
(および示指)
手関節背屈
第7頸神経 頚部
&上肢背側
中指 指関節伸展
第8頸神経 頚部
&上肢背側
小指
(および環指)
指関節屈曲

※表の見方:たとえば、第6頸神経が障害が受けると、「こりや痛みが肩から上肢外側および肩甲骨内側に発現」し、「拇指尖に触覚あるいは痛覚障害が発生」し、「手関節を背屈する力が減少」することがある、とされています。なお、第6頸神経の障害で、これらの症状が全て発現する、というのではなく、当該部位のこりや痛みだけ、あるいは当該部位の知覚障害だけの場合もあります。ただし、これらの症状が全て発現する場合は、神経根の障害がやや進行していることが考えられます。


★一般的な対策

  1. 肉体的or精神的ストレスからの解放
  2. 温or冷湿布等で当該筋肉の緊張を緩和させる
  3. 運動・牽引・電気などの理学療法、投薬、注射
  4. 鍼灸治療:加齢による関節軟骨の変性は、避けられませんが、鍼灸治療は、頸肩部痛の主原因である神経根や椎関関節の炎症を鎮静化します。症状が強く、痛みが軽減しない場合は、鍼灸治療を検討するのも一方法です。慢性化している場合は、数回の治療後から、症状軽減の傾向が見られることが多いようです。


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