■ 渡辺美香のマイ・フェーバリット・シングス ■

CBCラジオ/2004年6月14日放送

O 大野雄二 M 渡辺美香

BGM/銭形ロック

M さて今晩のゲストはピアニストの大野雄二さんです。こんばんは。
O こんばんは。
M もう皆さんにはルパンシリーズでもお馴染みで、スターアイズなどでのライブでもね、「すごく良かったですー。もうそれからライブハウスに行くようになっちゃいました」なんてfaxもいっぱいいただいて、この番組でジャズが好きになったって、きっかけ作りにものすごい実は貢献してくださっているんです。
O そうですか。それは嬉しいですね。
M どうもありがとうございます。今回も素敵なアルバムを持ってきてくださってるんですが、その前にね、大野さんがこうして色々なジャズピアニストの活動から、作曲家、CMプロデューサーみたいなああいう音楽まで作られて、そしてまた今こうやってジャズピアニストの世界に戻ってこられたこの経緯に含まれるかどうかわからないんですが、師匠と言ってこれはいいというようなピアニストの曲を選んで持ってきてもらいました。
O はい。
M レッド・ガーランドですよ。
O そうですね。
M 大野さんはレッド・ガーランドだったんですね。師匠が。
O もう、そうだったどころじゃないですね。
M だったどころじゃないという熱い思いを、まずちょっとこの曲を聴いていただきながら後ほどお話ししていただきたいと思います。1958年の録音です。
(二人そろって)「ブラックアウト」。どうぞ。


ブラックアウト

M このレッド・ガーランドのトリオのすごさというのは、実はベースのポール・チェンバースとの掛け合いのすばらしさ、そしてドラマーがアート・テイラーであることなんですってね。
O うん。僕の解釈ではね、レッド・ガーランドのトリオで有名な代表曲っていったら「ビリーボーイ」。それがベースはポール・チェンバースですけどね、ドラムスはフィリー・ジョー・ジョーンズ。それがまたすごい演奏だと思うのね。
M はい。
O だけど、またこういうフィリーじゃない、アート・テイラーが入ったトリオの良さというのも、また全然別の大人の考え方って・・・
M ものすごく控えめな、音数の少ない・・・。これは初めて聴く人はすごくシンプルな演奏だなぁって・・・
O うん。聴きやすい感じで、それはそれですんなり入れるでしょ。だけどもっと深く聴くと、もっとその奥には三人が色々考えた上で音数を減らしているというのがわかるんです。
M すっごく色々早弾きもできるような人が、あえてそこを弾かずに耐えるって結構大変な事なんじゃないんですか?
O やっぱり僕がよくいう言葉ですが、グルーブするっていうのは一種のお互いのがまん。勝手に全部やったらグループなんかしないんですよ。要するに、いい状態になってきたという時はね、そういう状態をキープしていくっていう事で、みんながすごくいい状態、いい気持ちになっていく訳ね。そうするとね、それがもっと続きたいなと思うと余計な事なんかができなくなった状態がグループなんです。
M はぁー、なるほど。やりたいようにやって、あーすかっとした、じゃないんですね。
O それじゃダメなんですね。でね、ひとりでにそういう方法がなってくると、誰かがそういう時にちょっとしたアイデアを出すと、それがものすごくいい状態でみんなにねオーバーじゃなく伝わると、それによって道はどんどん展開していくんですけど、なんか誰か無理やりね、こじあけようとするような感じでやると、グループは壊れちゃうんです。
M はぁー、人間同士の会話でもそうかもしれませんね。
O ま、会話なんですよ。
M だから、こうして二人で向かい合って話してて、もう一人が割ってすごいでかい声で笑い声が入ったら、やっぱり話はとまっちゃいますし。
O うん。だから三人で会話をするっていうことはね、やっぱり誰かが一人聞き役になってたりっていう感じじゃないとごちゃごちゃになるでしょ。そういうところ、このトリオでは、アート・テイラーっていう人がちょっと無口な役。それから後ね、わかるよって色々後ろの方でうなづいてくれてるような暖かさっていうかね、で、それの援護をうけてポール・チェンバースとレッド・ガーランドが存分に語り合っている。
M そういう風に言われて聴いてみると、これまた奥深いというのがわかりますよね。
O 僕はだから、本当これはすばらしいアルバムでね、すばらしい演奏だと思うんですけども。このレッド・ガーランドのトリオのメンバーっていうのはほとんどこのメンバーでやってるんです。
M 大体60年代前後に名盤が出てる・・・
O ま、50年代の55年ぐらいからレッド・ガーランドがマイルス・デイビスのバンドにポール・チェンバースと入ってね。それ、55年の秋ぐらいなんですよね。それからね3、4年が絶頂期ですね。
M わかりました。ちょっと私も早速メモってですね、レッド・ガーランド、全部聴いてみたいと思ってますけれども。


BGM/黒いオルフェ


M そしてこの大野雄二トリオで、ドラマーのアート・テイラー的なポジションというと村田さんですよね。
O そうですね。
M 名古屋の方なんですよね。
O うーん豊橋かな。
M はーい、なんか嬉しくなっちゃうんですけどね。
O 本当彼はすばらしいドラマーですよね。
M はい。そして今回のこのアルバムのタイトル、私全部好きな曲ばっかり、「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」「アンド・アイ・ラブ・ハー」「セントルイスブルース」「銭形ロック」「ミスティ」「サンバ・テンペラード」「黒いオルフェ」「ディープブルーシャッフル」「素顔のままで」「ア・ローズ・タトゥー」この10曲入り。5月26日にリリースされました、「ルパン・ザ・サード・ジャズ PLAYS THE "STANDARDS"&OTHERS」。いい曲ばっかりです。
O (嬉しそうに)そうですかね。
M でもこれかなりやっぱり、大野さんも弾きの極意っいうのを、ピアノを弾くのではなくて、あえて弾かずにつまり気持ちを弾くっていうやりとり・・・
O それはだから、そう心がけてはいるんですがね。ついね興奮して、こう違う感じになっちゃったりもするんですけどね。
M こんなすばらしいアルバムを作っておきながら、もう終わってしまう嫌になっちゃうんですか?
O 嫌になっちゃうっていうか、なんかもっとうまくいったのになぁ、みたいなね。今度やる時はもうちょっとやるぞみたいな感じにはなりますね。
M はい。もうなんか次のこと考えちゃうとおっしゃってますもんね、いつも。
O 終わるとそうですね。終わるとね、あの僕ね、物でもそうですけどね、あの紙とかなんかで色々書いてあることありますよね、そういうこと用事が終わると、も、すぐ捨てるのね。なんか後でとっておいた方がちょっとなんかの時いいかなって思って失敗することもあるんだけど、連絡先とか。でもね性格的に全部ね、後ろは嫌なんですよ。
M もう振り返らない
O うん。
M じゃあちょっとこう聴いて、ああ今度こうしたいっていうのも次の作曲活動に・・・
O うん、作曲でありね、ま僕らはその作曲の時にね、技を使ってやるとかそういうんじゃなくてね、なすがままでやってますから。それがどういうことかっていうと、自分がね昔のまんまではダメなんです。やっぱりプラスアルファのものをなすがままでやってるってことは、ナチュラルにやるっていうことだから、それは自分が栄養をとっとかないとやっぱりダメでしょ。だから昔のこと考えてると、なんか昔はよかったなとか言ってると違うんですよね。
M はぁー、なんかでもそうやって次から次っていう風に走っていけるのは、ある意味アーティストの人たちの中にもすごくうらやましいっていう思いが皆さんあるんじゃないですか?
O それはわかんないけど、僕はそういう風にずっとやってきてるんで、なんかねどうしてもそうなっちゃうんですね。
M 私の大好きなオープニングのナンバー「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」。これもそらで歌えるぐらいなんですけども・・・
O そうなんだ。
M 過去にものすごい思い入れがあって、でもこのバージョンは今回本当に最新の、二度と演奏できない曲ですよね。
O いやまあ、これはわりとアレンジしてありますから、わりとこういう感じでやりますけどね。でも多分ちょっとたつとまたこの感じを、「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」はやるけども、このアレンジでやっていない可能性はありますね。
M そうですか。
O スローでやったりとか。
M 学生時代ナイトクラブ、キャバレーでやってたっていう頃は、どんな感じだったんですかね?
O これはだからね、ものすごくはやった曲なんですよ。もう本当に異常にはやった曲。だからちょっとなんかこの曲が嫌なんじゃなくて、しょっちゅうやってるから嫌だっていう感じは・・・
M (笑いながら)それぐらいヒットした。まさにね、アポロが月に行った頃にヒットした曲ですからね。じゃ聴いていただきたいと思います。大野雄二トリオのオープニングナンバーに入っています、「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」。


フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン

M どうしてこんなにアドリブが心地よいのかと思った時にひとつ演奏する大野さんにポイントがあったんですね。
O うーん、そうですね。まあアドリブやる時にコード進行重視だけじゃなくて、メロディっていうものを一番大事にして、それを崩していく形からやっていくっていうのを決めてやると、多少変わるのかなと思いますけどね。
M ものすごく高いところから低いところまでガーッと弾くのもありだけれども、そうじゃない、メロディを歌いながら弾いてみたらどう?っていうのもひとつあると。
O そうですね。やっぱりメロディの変形をやっちゃう訳ですからね、アドリブっていうのは。
M もうね、「ルパン・ザ・サード・ジャズ PLAYS THE "STANDARDS"&OTHERS」、このアルバムの中ではすべての曲が口ずさめる、これがまた嬉しいところです。


BGM/小さな旅

M そして同時にNHKで放映されている、ちょっとこの地方ではその番組は放送されていませんが、「小さな旅」という番組の中からスペシャルアルバムが出ています。「TOKYO CITY LIGHTS」。これはまたぐっと雰囲気が違うそうですよね。
O うん、これはストリングスとかも入ってますしね。ただジャズですよ。ジャズですけども・・・
M 夜景がジャケットに。
O もうそのジャケットの感じですよ。
M 大人の感じで。これも是非聴いていただきたいと思います。いつもブルーノート満員ですよね。
O そうですね。ありがたいです。
M 本当に若い女性が多いじゃないですか。
O 最近増えましたね。
M ちょっとなんでそんなに若い人にもてるか、自分ではなにか心当たりはありますか?
O まぁ、やっぱりルパンのおかげでしょう。
M ルパンのおかげと、やっぱりちょっとね心地よい、そしてきれいなピアノの音色・・・
O 僕のやってる音楽はね、なるべくシンプルにね、ジャズの入り口になってくれればいいなと思ってるんでね。そういうことなんじゃないでしょうかね。
M はい。是非また楽しみにしてますんで、名古屋のライブいっぱいやってくださいね。
O あ、ありがとうございます。
M また遊びにきてください。ありがとうございました。
O はいどうも。