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ブランド戦略に関する考察 <全6回>


本稿は、オーナーが某誌に掲載予定の「ブランドパワー・アセスメントのすすめ」と題した論文です。

ま、文字数制限やその他の論文との兼ね合いもあって、本稿のみを読んでくださる方には若干わかりにくい部分があるかもしれません。そこんとこ、ご容赦願います。何か質問や意見があれば、申し付けていただけるとありがたいです。さらなるリライトを繰り返し、ブラッシュアップをしていきたいものです。
なお、論文掲載された情報誌をご希望の方は無料で差し上げます。メール、または掲示板でご連絡ください。
<第一回> ブランド戦略構築プロセス

<第二回> 市場浸透力のアセスメント

<第三回> 市場訴求力のアセスメント

<第四回> ブランド・イメージ分析

<第五回> 消費者の非合理的行動

<第六回> 総括 〜アセスメントの狙い


<1>ブランド戦略構築プロセス

 インターネットを利用する際、私は必ずヤフーを利用する。何故か?自分でも気がつかないうちにヤフーのブランドに引きつけられているのだ。ブランドパワーとは顧客を引きつける力に他ならない。本稿では、そのブランドパワーを測定し、結果をマーケティング戦略〜施策にフィードバックすることによって、様々なマーケティング課題を解決するためのシステムを提案したい。それにより、私のように気まぐれでわがままな顧客のハートをグリップする力、いわゆる真のマーケティング力を強化することが可能となるのである。

 そもそもブランドパワーとは、企業のマーケティング行動が顧客に与える影響力を指す。例えば、知名度や好感度は広告宣伝によって築き上げられることも多い。したがって、このブランドパワーを構成要素毎に定点観測・評価することによって、企業のマーケティング戦略・施策の健全度・有効性を把握することができる。更に、その結果からマーケティング力強化への打ち手を見出すことが真の狙いと言えるだろう。

◆企業のブランド戦略構築プロセス
 まず企業が顧客の創造〜獲得〜囲い込みを行うためのブランド戦略構築プロセスを整理しておこう。

【ステップ1】コンセプト確立
 ブランド戦略構築はブランドコンセプトの構築、つまり「ターゲット顧客」「提供価値」「訴求ポイント」等を明確化することからスタートする。強いブランド構築のための全ての原点がここにある。

【ステップ2】メッセージ発信
 次に、伝えたいメッセージ(コンセプト・商品内容・特徴・イメージ等)を的確に顧客に向けて伝えねばならない。商品、販売チャネル、広告等々、企業のマーケティング行動は全て顧客に対するメッセージ発信である。それらが顧客のマインドに影響を与え、認知(記憶に残る)、理解(商品を理解する)、好意(好きになる)等々、ブランドパワーを構成する要素を生み出すことになる。

【ステップ3】アセスメント
 前述の通り、ブランドパワーは全てのマーケティング行動の結果である。したがって、ブランドパワーを評価することでマーケティング戦略・施策の成果を多面的に把握することができる。また、一時的には最適なブランド戦略を展開していたとしても、環境変化によって戦略が有効でなくなることも多い。特に気まぐれな顧客は、今日好きだと思ったとしても、明日はもう興味を失っていることも決して珍しいことではない。

【ステップ4】フィードバック
 アセスメントの結果を踏まえ、必要に応じてブランド戦略・施策の修正を行う。イメージ変更に伴うプロモーション政策の修正等はよく行われるが、時には商品ラインそのものを変更しなければならないこともあるだろう。

<ブランド戦略構築アプローチ>

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<2>市場浸透力のアセスメント

 冒頭で述べたとおり、ここではアセスメントを定点観測することを提案したい。常に顧客と自社ブランドとの適合度をウォッチしつづけることに重要な意義がある。ブランド価値については、アーカーの文献で「ブランドエクイティ」として論じられているので詳細は省略するが、ここではブランド価値を市場浸透レベルとロイヤルティレベルから構成するものと解釈した。(図1)

@市場浸透力アセスメント

 まず、市場浸透に対する量的なブランドパワーを評価する。市場浸透は、未認知・再認・再生・理解・試用・再購入の6レベルで評価することができる。最下部に示した(図3)を見ていただきたい。このチャートはあるヘアケア商品における2大ブランドの市場浸透を調査した結果である。この2ブランドの市場浸透のパターンには大きな違いがあるのが解るだろう。両ブランドとも市場認知度に大きな違いはないが、理解層から格差が見られ、結果としてマーケットシェアは2倍以上の差がついている。つまりBブランドは、知名度はあるものの商品の特徴を伝えきれていないことが致命的なマーケティング政策の弱点とも考えられる。

 そのような市場浸透パターンを表す別の方法としてグレイブヤードモデル(図2)が用いられる。一般に、再認と再生は相関性が高いが、なかにはXやYに位置づけられるブランドがある。Xは「知る人ぞ知る」ニッチブランドと位置づけられる。市場全体からみると再認率は低いが、特定領域では有名で、強く顧客に記憶されていることになる。結果として顧客支持度は高いと言えよう。実は、前述のヘアケア商品Bブランドはニッチブランドであった。若年をターゲットとし、そこで強いブランドパワーを発揮することによって、戦略的には十分な成功を収めている。

 一方、Yの位置づけはグレイブヤードと呼ばれ、広範に知られてはいるものの、再生できるほど強く印象づけられていないことを物語っている。いずれもブランドの個性なので、一概にどちらが良いとは言えない。たとえグレイブヤードブランドだとしても、ブランド指向の弱い普及品、例えばティッシュペーパーであれば、買い物メモにクリネックスと書かれなくても、店頭の商品陳列を見て「クリネックスは有名だから安心」と認知してもらえれば良い。そのような市場浸透パターンを狙うなら、再生率はともかく、徹底的に再認率を高めることに投資をすべきかもしれない。

 いずれにしても、再認と再生をそれぞれ把握し、自社ブランドの個性として活かしていくことが重要である。もっとも強いブランドパワーを持つクリネックスは、買い物メモにも登場するかもしれないが。


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<3>市場訴求力のアセスメント

 ブランドパワー評価のもう一つの側面は、顧客に訴求している質的内容に関する評価である。ここでは市場訴求力を次の3つのファクターによって質的評価することとした。

リーダーシップ
 顧客からの人気や話題性等がブランドのリーダーシップを形成する。そのリーダーシップを顧客はブランドパワーと感じ、購買意欲を促進する。ソニーに対する根強い人気などはその好例と言えよう。特に、ソニーの場合は「デザインの先進性」「技術の独自性」等のリーダーシップを発揮していると考えられる。

知覚品質
 知覚品質は購買意欲に大きく影響するが、顧客は正確に品質を判断できるとは限らない。事実、消費者による品質評価テストを行うと、顧客が如何に事実とは異なった品質イメージを有しているかに驚かされる。もちろん実態を伴わない高品質イメージは、やがて化けの皮が剥がれるが、企業として高品質を顧客に伝えるマーケティング努力は不可欠である。一般にステイタスブランドは品質を訴求している場合が多いが、一方では品質の均質性も評価されることがある。マクドナルドのハンバーガーが支持されている理由のひとつは、常に当たり外れのない安心できる味、いつでも親しみやすい空間(騒いでいても許される空間)にあると言われている。その結果、高校生や小さな子をもつ30歳代母親層の顧客に圧倒的支持を得ている。

パーソナリティ・イメージ
 好感度はそのブランドが持っているイメージによって生まれ、それがブランドパワーとなり、顧客からの支持をもたらす。ブランドイメージとはブランドのポリシー、使用者の属性イメージなど様々な側面から構築される。この好ましいイメージは、商品・顧客・時代によって大きく変化するので、よりきめ細かな分析が必要となるであろう。そこで、分析手法として、弊社独自のRCP分析を用いることによって、イメージ形成上の課題を明らかにするアプローチを次章にて紹介する。

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<4>ブランドイメージ分析

 RCP分析(イメージ課題構造分析)

 イメージを分析する際に、(R)顧客欲求(リクアイアメント)、(C)ブランド訴求点(コンセプト)、(P)顧客イメージ(パーセプション)という3つのファクターのギャップを分析し、どこにマーケティング課題が存在するかを明らかにすることが狙いとなる。

@コンセプト適合度分析(RC分析)

 そもそも当該ブランドのコンセプトがターゲット顧客の欲求に合致しているか検証する。当初は顧客ターゲットに合わせてコンセプト設定していたとしても、時間の経過によって顧客が変化している可能性は高い。

Aイメージタイプ分析(CP分析)

 企業が意図したコンセプトが的確に顧客に伝わり、認知〜記憶してもらっているかを分析する。これまでのメッセージ発信活動の有効性を明らかにすることができる。

Bブランドイメージ分析(RP分析)

 右記二つの視点からギャップ測定をした結果、最終的に、顧客の当該ブランドに対する評価が明らかになる。これらの3つのギャップを最小化することが目標となるが、ギャップが発生している場合、どの部分にどのようなギャップが発生しているのかを明確にし、迅速に修正を試みることが求められる。

B総合指標としてのロイヤルティ尺度

 質的評価の総合指標としてロイヤリティ尺度を用いる。具体的指標としては、価格プレミアム(購入検討者対象)、顧客満足(使用経験者対象)等で確認できる。


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<5>消費者の非合理的行動

◆ロイヤルティ/購買行動マトリックス

 ロイヤルティが高ければ、購買行動につながる可能性は高い。(図3)のマトリックスでは、ゾーン@がそれに相当する顧客であり、逆にゾーンAはロイヤルティが低く、購買行動につながっていない顧客を表す。これらの顧客は合理的な行動と考えられるが、ゾーンB(ロイヤルティが高いのに購買していない)やゾーンC(ロイヤルティが低いが購買している)の顧客層は感情以外のファクターが購買行動に影響していると考えられる。

 ロイヤルティが高いのに購買していないというゾーンBの理由としては、「好きなブランドだが、買うきっかけがなかった」「購買したいが入手方法(店舗等)がない」などが考えられる。つまり、プロモーションやチャネル政策上の問題が障壁となっているわけである。このような顧客が多い場合、マーケティングミックスの見直しでかなり試用者を獲得することができそうである。

 また、ロイヤルティが低いにも関わらず、購入している顧客が多いという現象(ゾーンC)は、「できれば他のブランドを購入したいが入手チャネルがない」等、ゾーンBの顧客の裏返しである可能性が高い。購入につながってはいるものの、他ブランドの政策ひとつでこの顧客はブランドスイッチしてしまう可能性が高い。

 つまり、このマトリックスで顧客分析すると、チャネルの市場カバレッジや購買動機付け政策の観点を加えてマーケティングミックスを再検討しなければならないことがわかる。


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<6>総括 〜アセスメントの狙い

◆アセスメントが示唆するもの
 これらのブランドパワー・アセスメントによって、以下のマーケティング上の課題に有効な示唆を与えることができる。

@ブランドの顧客適応度把握
 ブランドの健全度も定期検診する必要がある。気がつかないうちに顧客ニーズとミスマッチしていることは意外と多い。そのようなことを防ぐためにもブランドパワーアセスメントは定期的に実施することが望ましい。

A更なる成長への梃子の発見
 強いブランドはそのパワーを更なる成長につなげることが可能である。そのための方策を見出すために現状の強みを認識し、その資産の活かし方を検討することが必要となる。

Bブランド陳腐化における打開策立案
 ブランドが陳腐化し、その強みが発揮されなくなってきた場合、新たなポジショニングにシフトすることも検討しなければならない。

Cブランド拡張の可能範囲見極め
 成長の方法として、新製品・新ラインの投入・商品改廃等が考えられるが、同一ブランドで展開するメリットとデメリットを明確にし、適切な商品構成を見出さねばならない。

 このように、ブランド評価とは単にパワーが強いとか価値があるという結果にとどまることなく、今後のマーケティング成果に直結する建設的な取り組みでなければならないはずである。


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