永久凍土と森林の共生関係
シベリア永久凍土の広大な面積は、針葉樹の森林(タイガ)に覆われている。
NOAA衛星画像によると植生は、北緯47度から増大をはじめ北緯52度で最大となる。これは永久凍土の分布域と一致する。
タイガ地域は降水量は約260ミリメートル程度に過ぎず、砂漠かあるいは半砂漠の成立条件と同程度である。何故にこのような寒冷地で降水量も砂漠程度の地域に森林が生育するのか不思議である。
タイガの下には400メートルまでの厚い永久凍土が存在している。夏には表層から1メートル程度が融解し、これを活動層と呼ぶ。
永久凍土は全く水を透さないため、わずかな降水や融雪水は活動層内に保持され、これを有効に利用してタイガが成立している。
永久凍土側から見ると後氷期の温暖化で、永久凍土は融解しやすくなっているのを、森林が密に繁茂して、夏の日差しを遮り、表面の過熱とそれによる融解を防いでいる。
永久凍土とタイガが相互に存在を助け合う関係を共生関係と呼び、後氷期以降1万年以上も継続している。

日本の面積の約20倍で世界の森林面積の約30%を占めるシベリアの大森林タイガも今危機的な状況にある。
それは伐採と森林火災で加速度的に森林が消えている。
森林火災の原因も、落雷などの自然現象によるのは30%にも満たない。残りの大多数は人為で引き起こされている。人々がタイガに入り、不注意で火災を起こしているのだ。
衛星画像から火災を読み取ると、毎年数万箇所で火災が発生してる。
2002年夏には火災による焼失面積は200万ヘクタールを超えたと推定されている。火災の強度の異なる場所での測定結果から、平均して1ヘクタールあたり51トンの二酸化炭素が大気に放出されたことになる。
一方火災を受けなかった森林は、平均して1年間に1ヘクタールあたり1〜0.5トンの二酸化炭素を吸収している。そこでもし森林の1.9%が焼失すると、火災による二酸化炭素の放出量が、焼けなかった森林の吸収量を上回ってしまう。これは地球の温暖化をさらに加速する影響を意味する。
森林火災の発生頻度が増加すると、再び森林更新が起こらなくなることもある。シベリアタイが地域は、もともと乾燥した地域でもある。
東シベリアのヤクーツクの年間降水量は260ミリメートルに過ぎない。これは砂漠の出現する限界値200ミリメートルに近い。
これだけ乾燥していても世界最大の森林が成り立つのは地下の永久凍土が存在するからある。凍土は水を通さないために、わずかな降水は下方浸透せず夏の1メートルほどの融解層に保持される。これを有効に利用して森林が成り立っている。しかし、度重なる火災で森林で森林が失われると、その下の永久凍土も深くまで融解し、十分な土壌水を保持できなくなる。さらに卓越した乾燥のために、土壌表面に塩類が集積してくる。この状態になると再びタイガが回復することはない。つまり後戻りできない(不可逆的な過程)が発生し、タイガの復元力が失われてしまう。
「流体的地球像 著者:福田正巳・濱田隆士」