The Solar System

地球磁場の逆転周期・ポールシフト


磁場の逆転

 
地球の過去の歴史に地磁気の逆転という興味ある事実があったのではないかということは、岩石の残留磁気が測定されるようになったころから考えられていた。
地球の過去の磁場は残留磁気という形で記憶されている。噴火した溶岩の磁鉄鉱やチタン鉄鉱などの強磁性物質が冷えて固まる時に、地球磁場の方向に磁化し、強度に比例するのであるが、これは
「熱残留磁気」と呼ばれ非常に安定した磁気である。
  
フランスのブリュヌが、今世紀のはじめ頃、比較的新しい時代に噴出した火山の溶岩の残留磁化を調べていた時、ほとんどは現在の地球磁場と同じであるが中にはこれらとちょうど正反対に近い方向を向いているものがあるという興味ある事実を発見した。
京都帝国大学教授の松山基範(1929年)は、日本、朝鮮、満州の各地から多数の第四紀火山岩資料を採集しその残留磁気を測定した結果、現在の地磁気の方向と同じ物と、逆向きの物とが得られた。松山教授は地磁気の逆転は、数万年あるいは数十万年単位の時代による変化があったのではないかと考えた。地磁気の逆転が時代によるとの概念は初めてのことであり、この考えかたは後に大きく発展することになった。
岩石の帯磁が逆転するのは、磁場が逆転するのか岩石自体の自己反転によるものかは、1950年代から1960年代にかけて未解決の問題として学会内で大きな関心を集めていた。


バイン・マシューズ理論

人工衛星が打ち上げられ、宇宙からの地球観測ができるようになるまでは、地球に関する重大な情報はいずれも海の調査から得られていた。

大陸と海底では地殻構造にかなりの違いが見られる。陸地の地殻は花崗岩質の層の下に玄武岩質の層があり30〜40kmの厚さをもっているのに対して、海底では薄い堆積物の層の下に直接玄武岩質層だけが続いており、花崗岩質層は見られない。そして海底地殻全体は海水の部分も加えて12〜13kmに過ぎない。
海底の年令は大陸に比べて格段に若く、また海底に薄い堆積物しか存在していないことが大きな特長である。

海洋観測が盛んになってきた1950年代に、世界中の海に海嶺と呼ばれる巨大な海底山脈が連なっていることが明らかにされた。また海嶺直下はマントル対流の上昇部で温度が高いので熱膨脹をして地形的に高くなっているが、海嶺から離れるにつれて海底は冷却し海は深くなってくる。

マントル対流によって海嶺から海底が分れて広がってゆき、海溝でマントルに戻ると考えれば海底の様々な観測事実をうまく説明できるというのが「海洋底拡大説」という考えである。

1963年、ケンブリッジ大学のバインとマシューズはインド洋のカールスバーグ海嶺の付近で観測された地磁気データを調査していた時、
磁気異常が強弱強弱と交互にあらわれるのは、過去に地球磁場が逆転したのではないかと大胆な仮説を発表した。

海洋底拡大説では、海底地殻が中央海嶺で生成される時に高温から冷却されて熱残留磁化を獲得し、時間と共に海嶺の両側へと拡大していくと主張した。

マントル対流の上昇流が海嶺で表面に達し、そこから左右に別れて海底を形作る。海嶺直下は、1100度にも達する非常な高温であり岩石の一部は溶けているマグマと考えられる。
海底は0度に近い低温であり、そこに高温のマグマが上昇して出来た新しい海底は即座に冷却される。この時陸上の溶岩と同じく海底地殻の玄武岩も残留磁化を獲得する。

地球の磁場が過去何度も逆転を繰り返しているのであれば、海底の形成された時期により現在と同方向の残留磁化(正帯磁)と反対方向を持つ部分(逆帯磁)が出来ることになる。
海底の拡大がほぼ一様に起こっているならば、これらの正帯磁と逆帯磁の部分は海嶺を中心にして左右対称平行で帯状に分布するであろう。

海嶺付近で観測される
縞状磁気異常は、この正逆の磁化の帯によって作り出されたものであるというのが、バインとマシューズの主張であった。

アメリカ東海岸のラモント研究所と西海岸のスクリプス研究所が、当時海上での磁気測定データを大量に持っていたのであるが、両グループはバインとマシューズの考えを初めのうちは信じようとしなかった。しかし、
アイスランドのレイキャネス海嶺の検証で決定的な証拠を見せ付けられ信じざるを得なかった。

溶岩の持つ残留磁気は、現在の磁場と同じ方向のものと、正反対のものとがあり、その中間の方向を示すものは殆ど見られない。
地磁気の逆転が事実であったならば、その時代には地球上のどの場所でも地磁気の方向は現在のものと比べてほぼ逆向きだったはずである。同じ時代の岩石が世界中のどこから得られても、すべて同じ極性を示し、正逆の極性の時が明らかにされるならば、地磁気の逆転は間違いないと結論できるのである。

アメリカ地質調査所の、コックス、ドエル、ダーリンプルおよびオーストラリア国立大学のマクドーガルらがこうした考えを徹底させたのであった。彼らは、若い火山岩に的をしぼり広範囲から採集された試料の残留磁気の測定を実施した。

年代測定法は、カリウムーアルゴン法が使用された。この測定法は1950年代に技術的大進歩をとげ、良好な岩石資料であれば地質学的に若い100万年以下のものでも十分測定可能となってきた。
彼らの測定データが増えるに従って、逆転の時間表は正確になり、1965年頃迄には地磁気逆転の同時性は世界的な広がりをもち、確実なものとなった。




 
過去450万年間の地磁気調査記録

 
現在の地磁気と逆向き
  松山期・約70万年前から約240万年前
    その内以下の数万年間は短期反転し現在の地磁気と同じ向き
      ハラミオ短期反転期(約90万年前)
      ギルザ短期反転期(約170万年前)
      オルドバイ短期反転期(約200万年前)
  ギルバート期・約330万年から450万年前

 現在の地磁気の向きと同じ
  ブリュヌ期・約80万年前から現在まで
  ガウス期が・約240万年から330万年まで
     以下の数万年間は短期反転し現在の地磁気と逆向き 
      マンモス短期反転期(約300万年前)
 
このように最近の研究から、磁場の逆転は数万年から数十万年に一度起こっているということが確実である。

岩石磁化については、過去500万年間位の広範囲の記録があり、ある特定の岩石層が磁気異常のパターンを示せば、それはどれかの岩石磁化記録と一致することで年代測定ができるのである。