The Solar System

木 星

 

木星の構造

木星の主成分は太陽と同じく水素が90%を占めている。残りのほとんどはヘリウムである。

太陽は温度が高いため水素がガス状になっているが、木星は温度が低いので水素が液体状または金属状になっている。木星の中心部には鉄や岩石からなるコアのまわりに厚い液体金属水素の層がある。この部分で起きている対流が木星の強い磁場を作っている。

木星の中心部の温度は約30,000度である。水素が熱核融合してエネルギーを放出するために必要な温度は1,000万度である。木星の中心部が1,000万度に達するには太陽の1/10の質量が必要である。

木星は地球の317倍の質量があるが、太陽の質量の1/1,000でしかない。かりに木星が今の100倍近く重い星であれば核融合反応が起こり太陽と同様に光り輝く恒星となり、太陽系には太陽と木星の二つの恒星が存在することになる。

銀河系では太陽が2つある連星が半分以上を占めている。太陽系のように単独の星のほうが少ないことから見ても、木星はもう少しのところで恒星になりそこねた惑星かもしれない。

木星の自転周期は9.9時間。つまり木星の1日は10時間弱である。地球の317倍も質量のある天体が、地球の2倍以上のスピードで回転しているのである。自転速度と同様に大気の気流のスピードも速く、場所によっては秒速100mを超えている。地球のジェット気流のように速い気流によって木星の特徴である縞模様ができる。

速い自転のために赤道部が膨らみ、極方向がつぶれている。その差が9,000kmもあるので小口径の望遠鏡でも見ることができる。

木星データ・リンク


木星とシューメーカー・レビー第9彗星

1994年7月17日から22日の6日間にわたって、シューメーカー・レビー第9彗星の分裂核が次々に木星に激突し、世紀の天文イベントとして多くの天文ファンを熱狂させた。
人類の科学的天体観測史上初めて天体同士の衝突、事前に衝突の起きる時刻を知りながら観測できる惑星と彗星の衝突、1,000年か10,000年に1度くらいの極めて珍しい天文現象である。

小惑星や彗星等の小天体は、太陽系の過去の情報を持つものとして、太陽系の起源や進化の謎を解く鍵になる可能性のある重要な天体である。衝突の結果から得られるデータの詳細な分析は、惑星に関する天文学の研究の発展に重要な情報を与えることになることは間違いない。

シューメーカー・レビー第九彗星は微小な天体である。シューメーカー夫妻とレビー氏が1993年3月24日パロマー山天文台の46cmシュミット望遠鏡で発見したものである。
発見場所はおとめ座、明るさは14等、木星から約4度離れたところに見られた。しかし、形が異常であった。通常の彗星は星の様な核の頭部と尻尾のように伸びる尾があるが、シューメーカー・レビー第9彗星は頭部が棒状で、その棒状の中に多数の光点が見られた。
この彗星がどこからやって来たのか明らかでないが、現在の軌道から計算したところでは西暦1800年ごろまで土星軌道付近で彗星として運動していたが、土星や木星に接近することで軌道がだんだん小さくなり、約30年前に木星に捕獲されたと考えられている。

シューメーカー・レビ第9水星データ・リンク


日本のアマチュア天文家は、世界の小惑星発見数の1/4をも発見しているほど優秀で研究熱心である。彼等が探している小惑星の明るさは16等前後と、シューメーカー・レビー第9彗星の明るさの1/4から1/5しかない暗い天体である。

優秀な日本の小惑星ハンターが太陽と反対方向にあり、太陽の光を受け通常よりも明るくなっていたこの彗星を写真撮影していたのだが、新彗星として発見することができなかった。

シューメーカー・レビー第9彗星が発見された場所はおとめ座である。
天文現象に興味がある人には周知のことであるが、おとめ座はほかの星座と違い各種の銀河が非常に多く存在している特殊な場所として知られている。
アマチュア天文家の持っているような小口径の望遠鏡には、シューメーカー・レビー第9彗星は多数の棒状銀河とそっくりに写っていたため、新彗星とは全く気がつかなかったのであった。

シューメーカー・レビー第9彗星の軌道が不正確な時点で、この彗星が1994年7月に木星に衝突することに気づいたのが、彗星や小惑星の軌道計算で世界的に有名なアマチュア天文家中野主一氏である。彼はアメリカ・スミソニアン天文台に招かれ、当地のコンピュータープログラムを全て書き換えたほど、世界のプロ天文家でも右にでるものがいないほどの実力の持ち主である。
中野氏の計算が示す彗星の木星衝突という劇的な予測により、世界中の天文関係者が一斉にこの彗星に注目することになった。
その後、世界各地の天文台でシューメーカー・レビー第9彗星の観測がされた結果、詳しい軌道が決定され、中野氏の計算が示すように木星に衝突することが100%確実になった。軌道が決まった時点で短周期彗星(200年以下の周期で太陽を回っている彗星)として改めて登録された。

アメリカのハッブル宇宙望遠鏡の観測によると、シューメーカー・レビー第9彗星は小さいものまで含めると21個も棒状に連続している珍しい彗星であることが確認された。つまり、木星との衝突は1回だけではなく、彗星の破片の数だけ続々とそれぞれ違った経度で木星に突入していくという非常に興味あるできごとになったのである。

彗星は小さいといっても大きさは1〜5kmくらいはあると思われ、衝突速度は超音速である。衝突で放出されるエネルギーは広島型原爆に換算すると約1億〜100億倍にもなると計算されている。
地球上の全核兵器を集めてもこのような膨大なエネルギーにはならない。爆発規模があまりにも大きいため、きのこ雲は熱エネルギーで完全電離したフラズマ雲となってしまうと予測されていた。

シューメーカー・レビー第9彗星は木星に激突する時、猛烈な速度のため木星大気との摩擦により強烈に発光する。衝突時は、衝突位置の関係で木星の裏側にある衛星や環が、爆発光により一瞬ものすごい閃光を浴びることになる。
今回の衝突時の閃光は、木星の衛星イオの光度よりも明るく、カメラの測定可能光度を超えてしまうほどになった。

実際の衝突ポイントは、地球から見えなくなるギリギリの木星の裏側縁、南緯44度付近であった。彗星の大型の核は木星の大気層で大規模な爆発を起こし、世界各地で強烈な閃光が観測された。

ハッブル宇宙望遠鏡は衝突部分に立ち上る3,000kmにも達する巨大なきのこ雲の鮮明な画像の撮影に成功している。

当初の予想では、小口径望遠鏡では衝突痕は見えないだろうと思われていたが、実際の衝突痕は予想外に大きく、アマチュアの小口径望遠鏡でも十分に観測できる大きさと構造を持っており、大小様々な黒色の衝突痕が数珠つなぎ状に観測できた。木星面に次々と衝突核の巨大な黒い斑点が出現し木星面を移動し、衝撃波面と思われる地球の直径よりも大きい半円孤模様までも確認された。さらに衝突に伴う木星電波の変動も観測されている。


ロッシュの限界半径

二つの天体が、ある特定の距離に接近すると潮汐力により強度が弱い天体は破壊されるという理論半径である。

太陽と月の重力の関係で、地球の潮の干満を引き起こす力が潮汐力である。
潮汐力を引き起こす重力がどんどん強くなれば、天体の形は潮汐力のかかる方向にどんどん伸びて歪が大きくなり、天体の強度を越えると破壊してしまう。これが
潮汐破壊という現象である。

フランスの天文学者ロッシュは潮汐破壊を理論的に研究した結果、破壊される天体が潮汐力を及ぼす惑星と同じ密度であれば、その惑星の半径の約2.44倍まで近づいた時に破壊の可能性があることを見出した。
潮汐力は距離の3乗で強くなるから、天体の重力が大きいほど、またその天体に接近するほど大きくなる。

シューメーカー・レビー第9彗星は、1992年7月に太陽系で最も大きな惑星である木星にその半径の約1.2倍の距離まで接近した。これはロッシュの限界半径の内側に入ったため木星の強い引力で粉々に引き裂かれ21個もの破片に分裂したのである。


月面チェーンクレーター

月面には天体の衝突時の放出物によってできた2次クレーター列や、火山性のクレーターなど多数のクレーター列がある。
2次クレーター列はその供給源である親クレーターの付近に見られるし、火山性クレーター列は地溝上に並んでいるので、断層に沿って爆発的噴火が起きたことが推定される。
火山性でもなく、2次クレーターでもないクレーター列(デービー列、ミューラー列、アブルフェッダ列等)は、原因不明の謎のクレーターとして知られていた。

これらのクレーター列は、シューメーカー・レビー第9彗星が木星の潮汐力により破壊されたのと同様に、月または地球の潮汐力によって破壊された天体が連続的に衝突してできたものであると考えられることで、その謎が解明されたようである。

木星の衛星ガリレオ、カリスト、ガニメデにも鎖状のクレーター列が多数見られる。このクレーター列は木星の潮汐力により破壊された彗星が、破壊直後に衝突したことでできたものと思われる。

シューメーカー・レビー第九彗星は、1992年7月に木星に接近した時に分裂したものであるが、木星衝突前には分裂核の相互距離が全長約400万kmに広がってしまったため衝突しても鎖状クレーター列はできない。

地球は木星に比べて質量は小さいが密度が4倍も大きいため、潮汐力分裂には有利に働くと思われる。地球の歴史では総数約40万個、過去10,000年に1個の割合で地球に接近した彗星が、潮汐力により破壊されたと推定されている。破壊された彗星は、地球や月に衝突してクレーター列を作ったと思われる。

カナダのあるクリアーウオーターレイクス・クレーターは地球の潮汐力により分裂した彗星が衝突したものである可能性が高く、直径32kmと22kmの二つのクレーターが並び、3億1000年前に生成されたものと考えられている。

月の潮汐力により分裂した彗星が衝突してできた可能性の高いクレーター列は、アポロ11号着陸地点の近くに見られるサビンとリッターと呼ばれるクレーター列である。地球の潮汐力により分裂した彗星が月面に衝突した場合は、衝突までに少し時間がかかることから分裂破片間の距離が開き、直線状の鎖状クレーターができることになる。