土星の輪とロッシュの限界半径
ガリレイが1610年最初に土星の輪を発見したのであるが、望遠鏡の分解能が低かったため、彼は輪とは気がつかず「耳のある惑星」と観測記録に記述している。
ホイヘンスは1655年に、これが輪であることを発見した最初の人である。彼は同時に衛星タイタンも発見している。
土星の輪は内側から
D・C・B・A・F・G・E 環と分けて呼ばれている。通常の望遠鏡で観測できるのは、C・B・A の三環だけであり、長い間 C・B・A
の3環以外の存在は知られていなかった。
D環は1969年に赤道表面上空に極めて希薄な環として発見されたものであるが、
C 環の一部と考えられている。 F・G・E 環はパイオニア11号とボイジャ11号により発見されたものである。
土星の各環、カッシーニの間隙および第1・第2衛星の距離関係
D
環 赤道表面上空12,000km(C 環の一部)
C
環 赤道表面上空14,170km・幅17,500km(クレープリング)
B
環 赤道表面上空31,570km・幅25,600km
カッシーニの間隙 赤道表面上空57,170km・幅4,700km
A
環 赤道表面上空61,870km・幅14,600km(含エンケの空隙)
F
環 赤道表面上空79,880km・幅490km
G
環 赤道表面上空105,470km・幅8,000km
第一衛星ミマス 赤道表面上空125,190km
E
環 赤道表面上空127,670km・幅290,000km(非常に希薄)
第二衛星エンケラズス 赤道表面上空177,690km
土星の半径は、約60,000km(地球の約9.5)である。ロッシュの限界半径は、天体の半径の2.44倍であり距離の3乗に比例するから、土星の場合は中心から約15万kmである。
ロッシュの限界半径内に、他の天体が入ると粉々に破壊される。仮に、ロッシュの限界半径内に彗星や小惑星が入って来ても、破壊されてしまい衛星として存在することはできない。すなわち、土星の表面から約9万km以内に他の天体が入ると土星の重力により生じる潮汐力で「潮汐力破壊」されることになる。
土星の輪はG環・E環以外はロッシュの限界半径内にある。
土星の輪の厚さは平均150m最大でも900m以内で、主成分は氷の粒である。
氷の粒の大きさはミクロン単位の微小なもの、数m位のもの(約86%)10m位のもの(約14%)まで多様である。
B
環のように密度が高い環では、粒子が相互に衝突して細かい数ミクロン程度の粒子となると考えられている。C 環は薄暗い半透明な環であり密度が低いことから、粒子も直径数mものが多いようである。
G
環は、第1衛星ミマスの軌道のすぐ内側から始まっている。ミマスには直径の約1/3にあたる130km、深さ10kmという巨大なクレーターが見られる。直径の1/3以上のクレーターを作る天体の衝突では天体そのものが破壊されてしまうことが実験で確認されている。ミマスは天体衝突による破壊寸前のところで留まり、衝突の破片が土星の輪の一部になっている可能性も考えられる。
土星の輪は、内環(B
環)と外環(A 環)に分かれその間に明白なすきまが見られる。このすきまは1675年にパリ天文台長のカッシーニが発見したものであり、カッシーニ間隙と呼ばれている。地球からの観測では長い間カッシーニ間隙の中には何もないと思われていたが、ボイジャー2号の観測でこのすきまの中に5本の細い環が発見されている。
カッシーニ間隙を代表に、土星輪のすきまには粒子がほとんど存在していない。
すきまの部分が生じるのは、土星本体の引力の他に、ミマス・エンケラズス・テチスなど土星の大きな衛星の引力相互作用により、土星輪の一部から粒子が排除される結果である。
カッシーニ間隙の公転周期はミマスの公転周期の約1/2、エンケラズスの約1/3であることから、この間隙はミマスとエンケラズスの摂動による影響で形成されていると考えられる。
土星輪消失現象
土星輪と土星の赤道面は一致しているが、公転軌道に対しては26.73度傾斜している。このため観測時に土星輪の消失現象が起こる。
1995年は5月22日、8月11日、11月19日の3回、1996年は2月11日地球から見えなくなった。
今回はハッブル宇宙望遠鏡が、約15年おきに起きるこの現象について、輪消失の正確な時期決定及び主要な環の厚さを観測している。輪消失の正確な時刻の決定は土星の歳差周期算出の精度向上になる。
今期最初の消失現象が見られた5月22日にハッブル宇宙望遠鏡が土星を撮影した写真に4個の新衛星らしい天体が写っているのが見つかった。この内2個は確実に新衛星であると確認されたが、残りの2個は確認されていない。次回の消失現象の時に確認観測が行われる。もしすべて新衛星ならば土星の衛星は22個に増えることになる。
土星の衛星18個のうち13個が、1665年から1980年までの輪消失の時に発見されたものである。輪消失の時期は、輪の強烈な反射光によって見えなくなっている暗い衛星を発見するのに非常に適している時である。
輪消失現象は約15年毎であるが、2009年と2025年は土星が太陽に近すぎて観測できない。今回のように好条件で輪消失が観測できるのは、40年以上先の2038年になる。
土星は9個の衛星を持つことが古くから知られていた。ボイジャーが発見したのは第10衛星〜第15衛星の6個である。このうち第12衛星・第13衛星・第14衛星は次のような特別な関係が見られる。
第四4衛星(ディオーネ)と第12衛星(ヘレネ)は土星の赤道面内の同一円軌道上を運動している。公転周期はどちらも2.7369日である。ディオーネの半径560kmに対してヘレネの半径は16kmに過ぎないので、作用はディオーネからヘレネに対して一方的に及ぼされる。この2衛星の運動には、木星のトロイ小惑星群と呼ばれる約100個の小惑星の運動理論(ラグランジュ・ポイントー制限三体問題の特別の場合)と同様な関係が見られる。
第3惑星テチスは第13惑星テレストと第14惑星カリプソと同じ公転周期(1.8878)である。テチス(半径530km)を木星としてテレストとカリプソ(どちらも半径15km)をトロイ小惑星群と見ればこれも同様な関係になる。
土星の衛星タイタンは半径2575kmと土星の衛星中最大である。太陽系惑星の水星(半径2439km)より大きい。また太陽系の中で唯一大気(窒素・メタン・アルゴンなど)を持っている衛星である。原始的な生物が存在するかもしれないと思われていたが、惑星探査機パイオニアの探査によればこの可能性はないようである。
土星は木星に次いで太陽系では2番目に大きい惑星である。木星とよく似た内部構造をしている。外側から気体水素、液体水素、金属水素そして鉄・ニッケル合金・岩石からなる核がある。木星に比べて重力も小さく、内部圧力も小さいために金属水素層は木星のものよりはるかに小さい。
土星の自転周期は約10.5時間である。木星の自転周期約9.9時間と同様速いスピードで自転していることで遠心力が大きくなり赤道部分が膨れ上り、赤道半径は極半径より約10,000km長くなっている。 これは木星と同様の現象である。
土星の金属水素層のダイナモ作用により、木星磁場の約1/30の磁場が発生している。土星の磁場そのものはかなり大きいが、磁場源である土星内部の金属水素層と表面の距離が大きいため、土星表面の磁場は地球のそれより小さい値になっている。土星の磁気圏は荷電粒子の数は少なく強力ではないが、木星と同じ位の広がりをもっている。