2005年1月

1月1日

家中の女ども、喪中をいいことにすべて出払いて

  父と子の男正月カレーかな


1月2日

  訪(と)ふ人もなき昼酒や喪正月


1月3日

  はや三日気にかかること思ひだし


1月4日

終日電話鳴らず。


  誰も我に言ふことなくて初仕事


1月5日

小寒。


  へそ曲がりの背に小寒の昏(く)れゆけり


1月6日

恥ずかしながら誕生日。夜、雨。


  四十五やそこで生きよと冬の雨


1月7日

喪とはいへ正月あけ、七草粥とは名ばかりの鳥雑炊を食ふ。


  いまどきの正月七日はや古び



1月8日

近在の北辰妙見尊の縁日。
沿道にだるま屋の露天がならぶ。


  冬晴れや老老男女達磨市

  今さらに神頼みなし達磨市


1月9日

本来ならば年末に行う障子貼りかえ、
喪正月をよいことに今頃になってようやく。


  障子貼りひとたび昨日を忘れけり



1月10日

久しぶりにライカに冬の光を吸わせる。


  天空の蒼(あお)つかみをり枯れ欅(けやき)

  高みへと魂(たま)持ち上げよ枯れ欅



1月11日

年末より歯痛起こり、耐へ切れず歯医者へ。


  歯痛して実存知れり湯豆腐食ふ



1月12日

  容赦なき業(わざ)こそ歯医者寒鴉(かんガラス)



1月13日

明朝氷点下の予報を聞き、水道凍結に備へる。

  大寒波来たれ水汲み置きしかな



1月14日

雪を厭ふようになつたのはいつからか。
昔日練馬の独居を懐旧する。

  雪待つや石神井川は青年は

深夜俄かに世界がしずまりて。

  しじま深くあしたの雪をおそれけり



1月15日

新暦の十五日では新年最初の満月とはならないものの。

  父ありき今日の去年や小正月



1月16日

冬深まりてなほ柿落ちず。空は鈍色。

  冬柿や深紅なる幸(さち)残りたり



1月17日

十年前神戸に大地震ありき。

  よみがへるとも廃墟の声す冬の街



1月18日

山道をゆけば突如凍った沼があらわれ。


  恩寵のごと一月沼の輝けり



1月19日

深夜の四倉駅


  零時発幻の国行き銀花降る

  凍星(いてぼし)や世の果てのごと無人駅



1月20日

大寒


  大寒の中傲然と歩みゆく



1月21日

この冬はじめて湯たんぽを使ふ


  湯たんぽや依怙地心を解くごとく



1月22日

  いさかひて花の八つ手は寂しかり



1月23日

  梅一輪をんな怒れる家の庭



1月24日

  風花の崖を墜ち行く魂(たま)ひとつ



1月25日

出張の朝、東京行きのバスを待てば。


  雪見へとふと誘はれし会津行き



1月26日

徐々に梅開花。例年より早し。


  早梅や秩父の里に便りして



1月27日

  冬日傾きなべて遅きか午後三時



1月28日

  霜一面大日輪の生まれけり



1月29日

  親らしきこと子の風邪を引き受けし



1月30日

恒例の野焼きあり。朝風なきに、村の古老俚諺をつぶやく。


  野焼き待つ坊主と風は十時から



1月31日

野焼きの寒者、身中を侵し、風邪悪化。
日本海側大雪の報を聞く。


  病みふして雪沓(ゆきぐつ)さがす男なり


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