2007年2月



光の海へ二月の鴎遠ざかり



2007/2/1 山茶花

山茶花の朱やいとほしき心弱りて

 花の少ない時季に咲く山茶花は貴重な花。この花の朱は独特で、毒々しくて鬱陶しい感じのすることもあり、慰められる気になるときもある。この日は後者。
「山茶花」は「さざんか」。「さんさか」が転じたともいう。


2007/2/3 十八歳

十八といふ未熟こそよし冬鴎

 親からみれば、危なっかしくて見ていられないが、たぶん自分が十八歳の頃も、あんな風だったのだろう。誕生日、おめでとう。こんな句を作っているなんて、本人には内緒だけど。


2007/2/7 根深汁

失踪をくわだて根深汁熱し

 みそ汁は熱くなければならぬ。体によくないなどと言われても、ぬるいみそ汁なら飲まない方がいい。
「失踪」は「しっそう」。「根深汁」は「ねぶかじる」で、長ネギのたっぷり入ったみそ汁のこと。


2007/2/9 白梅

知らぬ間に梅七八輪の日向あり

 暖冬だとはわかっていたが、油断していたら、庭の白梅が開いていた。殺風景な陋屋の庭が少しだけ華やぐ。
 「七八輪」とあるが正確には七輪。半開きは除外した。ちゃんと数えましたよ。


2007/2/13 ホットカーペット

傷を病む猫ありホットカーペット

 床暖房としてもよいのだが、たまたまわたしの部屋ではホットカーペットなので、句にしてみた。
 椅子とテーブルの暮らしが腰には具合がいいとわかっていながらも、畳に寝ころぶ快楽を捨てきれない。冬ともなればホットカーペットのお世話になって、ぬくぬくと寝転がるのである。
 ただ、いかにも行儀が悪く、人間様の威厳にも乏しい気がする。また、快楽をむさぼるというより、治癒を待つ姿と見えなくもない。貧相な老猫といったところか。
 ホットカーペットなどという季語は、おそらくどの歳時記にも載っていない。でも、季節感があれば使える。
 惜しいかな、愛用している人が少なくなっている気がする。愛用者が多くいれば、やがては歳時記に載るかもしれないのに。(まさかね)


2007/2/15 雨の音

杯に春の雨音見つめをり

 この冬は、今日まで雪が降っていない。降っても雨。
 昨日も昼から雨になったが、雨音が今までとは微妙に違う。春の雨の音がする。
 テレビを消して、聴き入る。


2007/2/17 早春

春浅し夢をたよりとする夜は

 これまで雪が降っていない、と書いたら、その夕方ちらちらと雪片が落ちてきた。
 こころ屈することありて、珍しくだれかに話をきいてほしい気持ちになった。いよいよ老いの衰えが出てきたか。
 春なお浅きとき。


2007/2/19 野焼き

身中の虫焼き尽くす野焼きかな

 当地の冬は、連日乾燥注意報が出るような土地柄。朝露が乾く頃合いをみはからって、あちこちに火を放てば、ほどなくゴウゴウたる炎が立ち上がる。
 ダイオキシンが発生するとかの理由で、都会ではたき火でさえままならないようだが、田舎では野をおおうばかりのモウモウたる煙がたなびく。往来を行く車が、突然の濃霧に巻き込まれてノロノロ運転になる。ガンになるぞ〜、などと囃しながら、村人は嬉々として火を付け回る。
 いっとき、野火に焼かれるような錯覚をおぼえる。


2007/2/19 旧正月

寧日や祖母思ひ出づ旧正月

 二月も十八日になって、ようやく旧正月が来た。祖母がいなくなって以来、旧正月でも小正月でもなにもしない。
 今になって、いろいろなことを聞いておけばよかったと思うことしきり。


2007/2/21 春の星

汝がためにいま春星はしづくせり

 人生にはいろいろなことがあって、そして、いろいろな人生がある、という当たり前のことをしみじみと思う。天はすべての人の上にある、ということも。
 春一番が吹いた日、東京でも星が見えたらしい。
 嘆くなかれ。泣いてもいいけど。
「汝がため」は「ながため」。「春星」は「はるぼし」。


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