2007年9月
|
2007/9/1 九月 こころして九月のコーヒー淹れにけり 暦がかわって、朝夕めっきり涼しくなってきた。味覚ももどってきたらしく、コーヒーがおいしい。 暑いだの、くたびれただのと、もう文句は言うまい。また生きはじめるような心地する九月。 |
|
2007/9/3 草の花 ここもまた浄土なりけり草の花 温泉街の場末に咲く花を見て案じた句だが、どこでもいい。草の花咲くところ即浄土なり。 |
|
2007/9/3 カレー 夏惜しむべしカレーなお辛くせよ 毎年この時季になると、カレーが無性に食べたくなる。 今年は、近所からもらった夏野菜がたんまりと余っていたので、それを大量に放り込んで惜夏カレーとした。 野菜のカレーって、こんなにおいしかったっけ。 |
|
2007/9/18 秋の朝 秋風立ちぬ一夜老いたる心地して 暦の上ではずいぶん前に秋に入ったが、いっこうに涼しくならない折、ある早朝に開けたまま寝ていた窓から秋風が吹き入った。ようやく季節の歯車が回り始めた。 その感触が老いるという感慨を呼んでしまうのが、いささか哀しい。 |
|
2007/9/18 野分 野分すぎて人語聞こゆる夜しずか 当地は台風の通路からはずれていて、めったに直撃されないが、先日はめずらしく頭上を通過。JR冗談線、いや、常磐線はそのあだ名の通り、あっさりと終日不通になった。ちょっとしたことで何かというとすぐ不通になるので、地元民は冗談線と尊称している。 朝から日のなかいっぱい、風雨吹き荒れた後の夜。 |
|
2007/9/18 秋祭り 秋まつり御酒余したるおさげ髪 九月十五日は鎮守様の祭礼。かつては旧暦でやったが、いまは新暦。しかも、平日では人が集まらないというので、十五日前の週末にやるとなれば、今年は九日となる。 いかになんでも、残暑厳しき折、秋祭りというにはいささか早い。 参拝に来た村人に御酒がふるまわれる。オヤジ連中はおかわりを所望するほどの勢いだが、少女は顔をしかめてわずかばかりの酒を飲み込んだ。 |
|
2007/9/28 秋景 雨あがり阿武隈山系秋気立つ 市内の最高峰は海抜八百メートルしかない平べったい土地柄だが、それでも山は山。古来山岳信仰をはぐくみ、平地とは別界をなす。秋の訪れが遠望できた日。 |
|
2007/9/28 望月前夜 待宵と知らで光の中に眠る 中秋の名月の前夜を、とくに待宵(まつよい)という。昔の人は、前夜からすでに名月を迎える心の準備をしていたらしい。 ものの本には、翌夜天候が悪くて名月が見えなくても心残りがないように、一日早いけれど疑似名月を見ておくのだ、という説もある。いずれにせよ、名月というのがビッグイベントだったことがわかる。 それなのに、わたしときたら、その夜が望月前夜だなんてつゆ知らず、妙に明るい夜だなあとちょっとだけ思って、即寝てしまった。ああ、無粋。 |
|
2007/9/28 名月 影連れて月夜の酒を飲みにけり 薄雲を透く月光の滴かな わが影も今宵は月の滴かな ほろほろと酔へば月下に死なんとす 悪心は影となりけり月中天 悪鬼の如き影したがひて月夜かな さて、名月。知らぬふりもできず、よちよちと句を重ねてみる。 「影連れて」は、例によって飲んでいたら、李白の「月下独酌」の吟が思い出され、詩仙にご挨拶。 「ほろほろと」は、いささか酔いが進んでいるらしい。西行は「花の下にて春」というけれど、月の下もいいのではないか、と。 「悪心は」は、もうすっかりできあがりつつある。独酌のともであったはずの影氏が、とうとう悪心の化身となってしまった。 |
|
2007/9/28 十六夜 仕事果て十六夜の月高し 朝早くから出張に出て、出先でようやく仕事が終わった。すでに夜半。しかし、まだ素面。 十六夜は「いざよい」。 |
|
2007/9/28 立待ち あらためて立待ち月の欠けたるを 十七夜の月。月の出が日々遅くなってくる。 今年は旧暦の日付と月齢がずれていて、十七夜になっても欠けたようには見えない。ま、そういうこともある。 |
|
2007/9/29 居待ち 居待ちといふ月なき夜の無聊酒 十八夜の月。残念ながら月見えず。 それにしても、名月周辺には季語がありすぎる。毎晩詠んでみようと思ったが、息切れしてきた。 無聊は「ぶりょう」。 |
|
2007/9/30 残暑 むっつりと足見て歩く秋暑し 今ごろ残暑でもないのだが、今年はつい最近まで暑さが居残っている。暑い秋の記念に句とする。 |