東京都のカラス対策を検証する
日本野鳥の会嘱託研究員・松田道生
はじめに
カラスに関わって5年たった。私がカラスに関わるようになったきっかけは、日本野鳥の会東京支部が1999年から開催しているカラスシンポジウムである。当時は、まったく五里霧中、カラスの生態がわかいなかでの活動であった。しかし、このシンポジウムをきっかけにカラスに関わる研究者や調査を行っている人たちとの交流が行われ、おぼろげながらカラスの実態が把握できてきた。
それにもまして、ここ5年間のカラスを取り巻く状況の変化はすさまじいものがある。年々歳々周囲の状況は変わって行く。そのようななかで東京都はやっと重い腰を上げてカラス対策に乗り出した。しかし、その対策に疑問、問題が多い。まず、大きな問題は出発点である。石原都知事の「カラスをパイにして喰ってしまえ」という発言でもわかるように、そこから出発した対策は感情的なもので、客観的な見地にたった科学的な方策とはとうてい思えないのだ。
私も含めシンポジウムに関わった者は、首都圏のカラスをどうにかしなくてはという意志の強さは東京都には負けないものがある。シンポジウム開催の目的に一つに、カラスの習性を科学的に解明することで問題を解決することができるのではないかという思いもあった。この科学的な見地から出発した論点から東京都の方策を見ると、どうしても批判的にならざるを得ない。カラス問題を解決するために、できうる限り科学的に論評したのが本文である。
なお、ここで言うカラスとはハシブトガラス(Corvus macrorhynchos)のことである。また、東京都とは断りのない限り、2001年度までは東京都経済局林務課、それ以降は環境局計画課のプレスリリースなどの発信、発言である。→マークは、注記として読んでいただければと思う。
1.捕獲についての実態−全国編
まず、駆除についての実態を知っていただきたい。
カラスはここ10年間の傾向として、全国で年間40〜47万羽殺されている(表1、図1)(「鳥獣関係統計」環境省自然保護局)。
実際にはヤミ駆除もあると思われ、これ以上の数が殺されていると考えて良いだろう。しかし、カラスが減ったという報告を聞くことはまれである。
また、現在発表されているデータは2000年までのもので、東京都が行った駆除数は加算されていない。仮に東京都が駆除した12,000羽を加えても全国で50万羽近くが殺されていることから、全体的にはさほどの影響があるのとは思えない数字となる。
銃猟による駆除の結果、減ったという報告を聞くことがある。たとえば、神奈川県のある市では、1,000羽のカラスがいて銃猟により駆除されたのは10数羽、そしてカラスがいなくなった言う。これらは、銃声による追い出し効果によるもので、カラスの個体数が減ったわけではない。カラスは、他に移動しただけのことであって移動した地域で問題が生じるだけのことである。
過去の報告でただひとつ駆除による減少の報告がある。それは北海道池田町のもので、ねぐらに集まる約10,000羽のカラスを対象に1986-1990年の間に17,600羽を駆除した結果、減少したというものである。この報告では、駆除の効果が現れるのに4年かかっていること、生息数以上の個体数を駆除しなくてはならないことがわかる。これは、流入による増加、繁殖による増加したものを年を越えて駆除して行かなくてはならなかったことがわかる。ただし、東京と事情が異なるのは、対象が一つのねぐらに集まるカラスであること、周辺で銃猟による駆除も積極的に行われたことがある。さらに、その後の経過が報告されていないのでリバウンドがあったどうかは不明である(「カラス係長奮闘記」深松登著、1998、北海道新聞社出版局)。
なお、全国的なカラスの狩猟、および駆除数はハンターの数と比例している(図1)。ハンターは、1980年の431,877人をピークに年々、減少している。今後、この傾向は変わらないし高齢化により、より加速されるだろう。そのため、まずは狩猟、銃猟による駆除は期待できないという事実がある。
表1 近年12年間の捕獲数(全国) 鳥獣関係統計・環境省自然保護局発行
| |
年 度 |
1989 |
1990 |
1991 |
1992 |
1993 |
1994 |
1995 |
1996 |
1997 |
1998 |
1999 |
2000 |
| 狩 |
ハシブトガラス |
72418 |
69295 |
68509 |
70449 |
64494 |
63902 |
58689 |
60924 |
56457 |
60044 |
50984 |
48619 |
| 猟 |
ハシボソガラス |
37207 |
38948 |
36010 |
38103 |
38399 |
38335 |
35452 |
38112 |
36277 |
34542 |
32751 |
32034 |
| |
ミヤマガラス |
5526 |
5225 |
4668 |
6210 |
4149 |
3800 |
4971 |
4543 |
4029 |
3603 |
3593 |
3109 |
| |
小計 |
115151 |
113468 |
109187 |
114762 |
107042 |
106037 |
99112 |
103579 |
96763 |
98189 |
87328 |
83762 |
| 駆 |
カラス類 |
355772 |
341667 |
377041 |
353805 |
354552 |
355144 |
332336 |
352471 |
347033 |
335398 |
313102 |
318499 |
| 除 |
ハシブトガラス卵 |
1463 |
1791 |
2005 |
2855 |
2796 |
2554 |
2596 |
3198 |
2646 |
3037 |
3605 |
2851 |
| |
ハシボソガラス卵 |
770 |
1180 |
1030 |
1015 |
1180 |
1893 |
1158 |
1598 |
2000 |
2055 |
1484 |
2305 |
| |
小計 |
358005 |
344638 |
380076 |
357675 |
358528 |
359591 |
336090 |
357267 |
351679 |
340490 |
318191 |
323655 |
| |
合計 |
473156 |
458106 |
489263 |
472437 |
465570 |
465628 |
435202 |
460846 |
448442 |
438679 |
405519 |
407417 |
| |
ハンター数 |
288290 |
289525 |
258826 |
259751 |
266403 |
243940 |
246142 |
246604 |
227216 |
230672 |
233681 |
210234 |
図1 近年12年間の捕獲数(全国) 鳥獣関係統計・環境省自然保護局発行
2.捕獲についての実態−東京都編
1)巣落とし
東京都経済局林務課は、平成12(2000)年度よりカラス対策事業を開始した。
このなかで具体的な対策は巣落としで、下記のようなもの。
実施時期 平成12年6月15日〜平成12年8月14日
実施体制 専門業者(5社)への委託による
実施場所 23区内の民有地100ヶ所
予算 5,000,000円
これにより、67個の巣が落とされ83羽の雛を駆除した。
翌年の平成13(2001)年度は、約2000万円の予算が確保され、対象地域も23区だけではなく多摩地区まで広げ対応することになり、484個の巣を落とし雛1064羽、卵105個を駆除した。
2002、2003年度も実施されているが、実績は公表されていない。
東京都の見解では、巣落としは緊急対策という位置づけで、これは繁殖期に人に攻撃を行った場合に限り、「有害鳥獣駆除」の許可申請を東京都が行い、東京都が予算を使って業者を派遣し駆除するというもの。そのため、カラスが人に体当たりをし、巣が個人の所有地にある(公園や街路樹、公共施設など自治体管理の地域は対象外)などの条件が必要である。ちなみに、個人で巣落としを業者に依頼した場合、約100,000円(TVニュース報道による)かかると言われている。
なお巣落としについては、カラス全体の数字に比べてあまりに少ない数であるためにカラスの生息数を左右するものとは思えない。そのため東京都も人への攻撃をなくすための緊急対策と位置づけている。
2)カラス対策プロジェクトチームの発足と報告
東京都では2001年秋、抜本的なカラス対策を講じるためにカラス対策プロジェクトチームを作り、対策案について施策を行った。
・カラス対策プロジェクトチーム(以下、PT)の経緯
2001年8月3日に石原都知事がPTの設置を表明。庁内公募によりメンバーを募集。
9月3日 PT発足
9月6日〜12日 都内のカラス被害やカラスの生態について現地調査(御徒町・上野公園・明治神宮等)
9月28日 PT報告書「東京のカラス問題を解決するために」を発表。PT解散。
10月1日 報告書を当ホームページに掲載。
10月26日まで都民から意見・提案を受けた。
縦割りの行政のなかで、組織の壁を越えた職員を募集し、管理職を加えず、年齢も若い人を起用し、検討したことは評価される。しかし、1ヶ月という短期間で専門的な知識のない者が、果たして適切な方策を提案することができるのかの疑問は大きい。
PTの報告については、下記の東京都のサイトに公表されているので参照してほしい。
カラス対策について
http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/sizen/karasu/index.htm
PTについて
http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/sizen/karasu/report.htm
PTによって、提案された具体的な対策は下記のようなものである。
4 具体的な対策
4-1 カラスを捕獲する
対策1 トラップによる捕獲
対策2 巣の撤去による捕獲
対策3 複合的な捕獲の実施
4-2 餌を断つ
対策4 餌を取らせない
対策5 ごみを減らす
対策6 餌をやらない
このように具体的な対策にはごみ対策が併記されているが、実際に行われている対策のメインは捕獲事業となっている。
(財)日本野鳥の会では、PTに会合において黒沢令子(当時・日本野鳥の会研究センター)、私、松田道生(当時・日本野鳥の会嘱託専門員)が専門的な立場からカラス生態と対策についての考え方を講演した。しかし、意見が反映されているとは思えず、下記のような意見書を石原慎太郎知事宛に2001年10月24日に提出している。
http://www.wbsj.org/sitemap/index.html
このうち、具体的な対策案は
●緊急対策(年度内に達成可能なこと):
「カラス・生ごみブレイン会議」の召集(カラス研究者とごみ・リサイクル対策の専門家の力を結集する)
区市町村のごみ対策フォーラムを開催(基礎自治体の連携の基盤を用意する)
公園・緑地・駅前広場などでごみと餌やりの徹底管理(雇用の促進、都市環境の整備、生態系の知識を徹底する)
繁華街などのモデル地区で新規ごみ収集方法の実験(夜間収集や効果のある回収方法の徹底的な実施)対策前調査、モニタリング調査(効果測定のため)
●中期対策(2〜3年度内に達成可能なこと):
カラス被害の実態分析(ごみ散乱、人への攻撃)
カラスの基礎生態の研究(対象を良く知るための;ねぐら調査、生息密度調査、行動圏調査、個体群動態と増加要因の解析等)
ごみ収集方法の開発・実施促進(補助金制度など)
継続的な効果測定(モニタリング)
カラスとごみ対策のための普及・教育プログラム(マスメディア、出版、学校における総合学習など)地域におけるごみ減量モニターや調査ボランティア制度
ごみ出し方法検討委員会(市民参加でアイディアを募る)
七都県市による「ごみ・カラスサミット」の開催(広域連携)
●長期対策(数年以上をかけて実現して行くこと):
生ごみリサイクル促進(補助金制度、プラント建設、農家との提携など)
都立野生生物保護管理センター(仮称)を設置(普及・教育・調査の拠点施設)
3)捕獲事業
東京都は、都市鳥研究会1985(昭和60)年に行ったカラスのねぐら調査の数字、約7,000羽を減少の目標として捕獲事業を開始した。7,000という数字の根拠は、昭和60年当時は担当部署にかかってくる電話が少なく仕事に支障がなかった状態であったからであるとのこと。
そのため、現状と経緯を把握するために、都内におけるカラスの生息数を日本野鳥の会に委託し調査を行った。都市鳥研究会の調査と同様にねぐらに集まるカラスを数えた。この結果は、36,500羽(2001年12月〜2002年1月調査)となった。
2001年度の捕獲実績
・捕獲数 4,210羽(2001年12月18日〜2002年3月31日までの合計)
・設置トラップ数 100基(2001年12月から2002年1月末までの間に順次設置)
・主な設置場所 代々木公園、井の頭公園、小金井公園などの都立公園、恩賜上野動物園など
2002年度の捕獲実績
・捕獲数 12,000羽(2002年9月1日〜2003年3月31日までの合計)
・捕獲トラップ数 120基
・主な設置場所 代々木公園、井の頭公園、小金井公園などの都立公園、恩賜上野動物園など
2003年度の捕獲目標
・捕獲目標 13,000羽(2003年8月1日〜2004年3月31日)
・捕獲トラップ数 都内110基
都外(埼玉県・千葉県・神奈川県)10基
2002年度に使用された予算は取材によると
2002年度・捕獲に使用された東京都の予算
トラップのメンテナンス 8,500万円
巣落とし 1,500万円
トラップの移転 400万円
生息数の調査 1,800万円
雑費 100万円
合計 1億2300万円
2002年度の捕獲の効果、現状の把握のために、東京都はカラスねぐら調査を継続することとし、(財)日本野鳥の会に調査への参加を求めてきた。(財)日本野鳥の会は、専門家により調査結果を客観的に評価、検討する委員会を設置してカラス対策を科学的に行うことを東京都に提案した。これは、野生動物の被害対策を行う際に、常識的に行われている施策である。しかし、東京都はこの提案を拒否したため、(財)日本野鳥の会は調査への参加を断り、結局、東京都は調査協力への要請を取り下げてきた。その後、2002年度の調査業務は競争入札とされ、民間のコンサルタント業者(プレック研究所)が落札して調査を行った。その結果は、35,400羽と報告された。
3.東京都の捕獲事業の検証
a.本当に減少したのか
ねぐら入り数と捕獲数の影響を見るためには、ねぐら調査が行われた12月から翌年の12月までデータを見なくてはならない。
2001年12月18日〜2002年3月31日 4,210羽
2002年9月1日〜2002年12月16日 5,425羽
を考慮して、
2001年12月〜2002年12月の捕獲数は、約9,600羽となる。
と言うことは、
2001年冬のねぐらの数→この調査の間の捕獲数→2002年冬のねぐら数→減少した数1,100羽
約36,500羽 約9,600羽 約35,400羽
おおざっぱに言えば、1万羽を捕らえたが、その1割の千羽しか減っていないことになる。
東京都は「対策を講じた結果初めてカラスが減った」と発表している。しかし、野生生物、とくに野鳥を扱っている者から見ると、万単位の鳥を数えた場合、1,100羽と言うのは誤差範囲内の数字と思うのは周知のこと。たとえば、池に浮かんでいる1,000羽単位のカモ類を数えた場合、調査者による誤差は5-7%はある。飛んでいるカラスの調査であるから10%の誤差があると言っても過言ではない。と言うことは3,500羽以上減って、初めて減ったと言える数字となる。
また、日本野鳥の会の会員の通報によると、八王子市に東京都が調査対象としていないカラスのねぐらがあり、そこには1,000羽ほど集まっていると言う。この調査漏れも加味すれば、東京都のカラスは減っていないことになる。あるいは、増えているのかもしれない。
なお、プレック研究所による2002年度の『平成14年度カラス生息状況調査委託報告書』(東京都・未発表)には「前年比の96.5%でほぼ同程度であった」と書かれ、減ったとは言っていない。また「多摩地区は、都心のねぐらに比べ数が少なく、未確認のねぐらが存在する可能性もあり、実数はもっと多いと考えられる」とも書かれている。
このように、調査結果の評価に疑問を持たざるを得ないコメントが東京都よりリリースされる以上、野生生物の管理を行っている専門家によって評価してもらう場が必要であると考える。そして、正当な評価を得て、次のステップ、対策の施策が行われなくてはならない。あやまった調査結果の評価からはあやまった対策が行われる危険性があるからである。
具体的には、科学委員会の設置であり、(財)日本野鳥の会ではこれを強く希望をしてきた。東京都は、このように自由にデータを評価したいがために、第三者による委員会の設置を拒否し続けていると言われてもしかたがない。
b.1羽捕獲するのにどれだけお金がかかったのか
1羽捕らえるのにかかった費用
(トラップ代[去年度]300,000円×120台)+(メンテナンス8,500万円)=
12100万円÷12,000羽=10,083円
1羽減らすのにかかった費用
1億2300万円÷1,100羽=111,818円
ただしトラップ代は、数年は使えるものと考えられるのでもう少し安いことになるだろう。しかし、メンテナンス代だけを見ても、1羽当たり7,083円かかっていることになり、これを安いと見る人は少ないだろう。
1羽減らすのにかかった費用の計算は、いささか意地悪なものであることはいなめない。しかし、事実は減っていないのだから調査費用以外、約1億円がムダになっていることになる。
図2 六義園におけるカラスの死体発見数 (松田道生・未発表)
4.なぜカラスは減らないのか
1)若鳥を捕まえていた
考えられる可能性は、もともと死亡率が高い若鳥を高い予算をかけて捕らえて殺していたのではないかという懸念である。1.で述べたように全国で50万羽近くも毎年、捕獲されていてもカラスの減少したという報告がないという事実がある。東京都の例で言えば、36,500羽のうち9,600羽を捕獲しているのに、なぜ26,900羽、少なくとも2万羽台にならなかったのかという疑問を考える必要がある。答えは、その年に生まれた若鳥が加わり、さらに他からの流入があるからと考えるのが順当である。
捕獲実績は数字として9,600羽となっているが、問題はこの中身。自然教育園では、カラスにタグを付けるために長年同様の捕獲を行っている。これによると、捕らえられるのは若鳥が99%と報告されている。ハシブトガラスは繁殖年齢に至るまで約3年かかると言われている。要するに、捕獲されたものはまだ繁殖年齢に至っていない個体であり、繁殖可能な成鳥を捕らえない限り効果は少ない。
さらに、野生生物全体に言えることだが、若者の死亡率は高い。筆者による六義園の記録では、2002年に44羽の死体が発見されており、50羽程度は死んでいるものと考えられる。さわれる状態の死体を見る限り、痩せていることが多く、額の羽毛の成長程度から若鳥が多い。死因の多くが餓死であると考えている。また、死体の多い時期は、成鳥が繁殖期に入いる時期と一致している。成鳥のなわばりが確定することにより食べ物を取れなくなった若者が死亡すると考えられる。と言うことは、東京都の捕獲作戦で12,000羽が駆除されたが、この多くが若鳥であった可能性が高い。どうせ、死ぬものを予算を使って殺していたことになる。
不思議なことだが”カラスの死体は無い”=カラスは死なないというイメージがある。事実、いつもたかっているごみのそばに死体を見ることはまずないので、そのような都市伝説が生まれることになる。そこから、殺さなくてはならない、捕獲すべきであるという論法に繋がっていることは想像にかたくない。しかし、ねぐらでは上記のように死体を見ることは少なからずあるのだ。
→六義園における最近のカラス類のねぐら個体数は、東京都により2001年12月の1,043羽、2002年2月の2,003羽、2002年12月の602羽と報告されている(東京都・未発表)。ねぐらに集まる個体数に大きなバラつきがあるために割合を算出することは難しいが、おおよそ2,000羽として2.5%、1,000羽として5%、600羽として8.3%のカラスが自然に死んでいることになる。
2)流入してきた
日本野鳥の会東京支部の調べでは、首都圏には多数のカラスのねぐらがあり、推定生息数を13万羽としている(図3)。当然、鳥には国境がないと言われるよう行政区画とは関係なく移動をする。事実、多摩川を越えて川崎市から都内へ、板橋区付近の荒川を超えて都内へ、江戸川を超えて千葉県市川市へ、多摩湖から埼玉県の狭山湖に向かうものなどが確認されている。東京都で駆除をしても、カラスにとっても生息条件(環境容量)に変わりない限り流入する。
図3 首都圏50km圏内のカラスのねぐらの位置と規模(川内 博 2004)
1.環境容量を下げる
→生産数が下がる(繁殖率が落ちる)
→死亡率が上がる
ここでの環境容量は、食べ物、繁殖場所となる。
主な環境容量である食べ物の量を減らすことで、数は自然に減り周囲からの流入も少なくリバウンドもしない。
図4-2
2.駆除した場合
カラスの数は、食料の量によって決まる。捕獲しても食料の量が多ければ他の場所から流入してしまって減ることはない。
(「自治体担当者のためのカラス対策マニュアル」環境省、2002)
3)これ以外、考えられる理由
若鳥が減ったことで、天敵がいなくなった。
カラス自身がカラスの天敵を担っている部分がある。六義園では、2000年以来巣落としを行っている。筆者は、巣の数、巣落とし時の巣内の雛、卵数を記録している(延べ87巣を調査)。これによると、巣の数が増加していること、さらに巣内の雛と卵の数の平均が増えていることがある。六義園は、夏でもねぐらが消失せず、そのためねぐらの出入りの際カラスが騒がしい。これは、捕食をさける親鳥の防衛が行われるためと思っている。また、巣を落とすと抱卵を確認しているに関わらず、雛も卵もない例が多い。これは、若鳥に捕食されているものと考えられる。
ところが、東京都が捕獲を行った次の年の2003年の繁殖期は、巣の数も多い上に巣内の卵と雛の数も多く、若鳥による捕食によるプレッシャーが減少したと考えられる。
→六義園では、266羽が捕獲されている。
→ただし、若鳥が巣を襲う現場は観察していない。
図5 六義園における巣落とし実績(松田道生・未発表)
同様のことは、同時に行っている駒込千石地区の営巣調査でも同じような傾向がうかがえる(延べ142巣を調査)。ただし、今年度は巣落としがさかんに行われた。その結果、1巣あたりの巣立つ雛数が多くなった。これは、巣落としがされることにより、実質的な間引きが行われることと同じとなったと考えられる。周囲で残って繁殖しているものにとっては、より有利に食べ物を得ることができるようになるためと考えることもできる。かよう、カラスはしぶといのである。
図6 駒込千石地区の営巣調査(松田道生・未発表)
4)減ったという評価は、どう行われなくてはならないのか
現在の東京都におけるカラスの個体数の動向は、冬のねぐらに集まる数を数えることによって検証しているつもりでいる。東京都としては、2002年、2003年冬に予算を投じ、独自の調査を行った。それ以前のデータは、都市鳥研究会が5年に一度行っているボランティアによる調査の記録である。
当然のことながら、この冬のねぐら調査を行って行く必要はあるだろう。しかし、果たしてこの数字だけで、都内のカラスの個体数の増減を語ることができるであろうか。たとえば、千葉県の松戸市には5,000羽のねぐらがあり、葛飾区の水元公園のものはその方向へ飛行している。また、市川市にも3,000羽近いねぐらがあり、東京都側から江戸川を超えて行くことが確認されている。また、2002年にねぐら調査のおり、大規模なねぐらについては12月と1月に2回行った。このデータを比較してみると、12月27,700羽、1月27,200羽とその差わずか500羽でほとんど変わらない。しかし、自然教育園では1,300羽減り、六義園では1,000増えている。と言うことは、カラスがねぐらを移動していることが十分考えられる。そのため、都内のねぐらの個体数の1,000羽くらいの増減は、周辺ねぐらへの移動とも考えられる。首都圏のねぐらに集まるカラスを数えない限り、増減は語れないのである。
隣接県のねぐらのカラスが、朝にねぐらを立ち都内の繁華街、住宅地でごみを荒らす限り、苦情は減ることはないだろう。また、繁殖期を迎えれば都内に散り、なわばりを構え繁殖する限り、人への加害も減らないことになる。
筆者は、前述のように文京区から豊島区にまたがる駒込千石地区と六義園におけるカラスの営巣調査を4年継続して行っている。これによると、駒込千石地区のおよそ1.5km×1.5km(実際は不定形)の範囲内に28〜46個の巣が作られるいる。また、約300×300m四方の公園、六義園では17〜22個の巣が作られている。住宅地では、近いところで数10m、離れていても100mに1個の巣があり、公園では近いところでは数m、離れていても数10mに1個あることになる。そして、わずか4年間の調査であるが、増加傾向が認められている。
渋谷のセンター街などの繁華街に群れで早朝やってきて、ごみを荒らすのものは、若鳥の群れの可能性が高い。しかし、住宅地のごみを荒らし多くの住民の悩みになっているのは、このようになわばりを構えている繁殖可能な成鳥である。また、繁殖期に人への攻撃を行うのもこれらの成鳥である。
この住宅地における営巣数が減らない限り、ごみ荒らしも攻撃の問題も解消しないし、住民からの苦情が減ることもない。しかし、住宅地における営巣状況の把握はまったく行われていない。
冬のねぐらの個体数、そして住宅地における営巣数が、同時に減ってこそ、減少の傾向を初めて語れるものと思っている。
表2 駒込千石地区における営巣状況 (松田道生、星 維子・未発表)
| |
2000 |
2001 |
2002 |
2003 |
平 均 |
合 計 |
| 繁殖成功 |
15 |
9 |
11 |
16 |
12.75 |
51 |
| 巣立ち1羽 |
6 |
2 |
8 |
4 |
5 |
20 |
| 巣立ち2羽 |
2 |
3 |
1 |
10 |
4 |
16 |
| 巣立ち3羽 |
6 |
4 |
2 |
1 |
3.25 |
13 |
| 巣立ち4羽 |
1 |
0 |
0 |
1 |
0.5 |
2 |
| 雛合計 |
32 |
20 |
16 |
31 |
24.75 |
99 |
| 1巣平均 |
2.13 |
2.22 |
1.45 |
1.94 |
1.94 |
|
| 成功巣の割合 |
46.88% |
32.14% |
30.56% |
34.78% |
36.09% |
|
| 放棄 |
5 |
6 |
10 |
12 |
8.25 |
33 |
| 放棄巣の割合 |
15.63% |
21.43% |
27.78% |
26.09% |
22.73% |
|
| 試作・不明 |
6 |
6 |
13 |
6 |
7.75 |
31 |
| 試作・不明の割合 |
18.75% |
21.43% |
36.11% |
13.04% |
22.33% |
|
| 巣落とし |
6 |
7 |
2 |
12 |
6.75 |
27 |
| 巣落としの割合 |
18.75% |
25.00% |
5.56% |
26.09% |
18.85% |
|
| 合 計 |
32 |
28 |
36 |
46 |
35.5 |
142 |
図7 千石駒込地区のカラスの2003年の営巣状況。数字の先端が巣の位置を示している。六義園園内は一括表示[図8参照]。(松田道生、星 維子・未発表)
表3 六義園における巣落としされた巣内状況 (松田道生・未発表)
| |
2000年 |
2001年 |
2002年 |
2003年 |
平 均 |
合 計 |
| 巣落としされた巣 |
17 |
22 |
19 |
21 |
19.75 |
79 |
| 繁殖進行していた巣 |
4 |
10 |
9 |
7 |
7.50 |
30 |
| 進行率(試作不明除く) |
40% |
71% |
60% |
47% |
55% |
|
| 卵の数 |
1 |
4 |
3 |
9 |
4.25 |
17 |
| 雛の数 |
4 |
19 |
14 |
9 |
11.50 |
46 |
| 卵+雛の合計 |
5 |
23 |
17 |
18 |
15.75 |
63 |
| 1巣当たりの平均 |
1.25 |
2.30 |
1.89 |
2.57 |
2.00 |
|
放棄
放棄巣の割合 |
6
60% |
4
29% |
6
40% |
8
53% |
6.00
45% |
24
|
試作・不明
試作・不明の割合 |
7
41% |
8
36% |
4
21% |
6
29% |
6.25
32% |
25
|
図8 六義園におけるカラスの2003年の営巣状況。数字の先端が巣の位置を示す。(松田道生・未発表)
5.なぜ、ごみ対策が行われないのか
東京都との話のなかでは下記のような、事情がうかがえる。
1)ごみ対策は区へ移管したので、都からいろいろ指示することはできない。
→指示をするということは予算を付けなくてはならないことで協力をお願いするだけ。上から下へお願いはできない。
2)担当部局の持っているカードは、「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」に関わる「有害鳥獣駆除」が使いやすい、と言うかこれしか権限を持っていない。
要するに、カラスの習性や生態に基づいた対策ではなく、行政の都合により対策が講じられていることになる。カラス対策PTの設置については、縦割りを超えた人材を集め自由な意見交換がされたはずだが、こと対策の実施となると元の縦割り、さらには横割り行政の悪弊が浮き上がっている。
これは、カラス対策を司る担当者には、同情をせざるを得ない。
行政の縦割り、横割りの弱いところをカラスにつつかれていることになる。
6.捕獲に対する批判をかわすための東京都の発言を検証する
これは、私自身が直接、聞いた発言についての検証である。
1)ごみ対策を講じて東京がカラスが棲みにくくなったら、他へ行ってそこで問題が起きる。
鳥類の特性は移動性に富んでいることである。カラスも例外ではない。自然教育園の調査では、目黒で放鳥されたものが、もっとも長距離で八王子、藤沢などで記録されている。また、PHSを付けた調査では、都内を広範囲にわたって移動をしていることが確認されている。そのため、東京都内のごみ対策が行われた場合、周辺へ飛来し被害をもたらすことがまったく考えられないことではない。
しかし、ごみという食料が無くなった場合、あるいは減少した場合、餓死による死亡率が高まることの方が大きいのではないだろうか。前述のように餓死と思われる死体の発見は少なからずある。死亡個体が、増えるだけのことと思っている。
また、いっせいにカラスが移動をするほど、ごみ対策を講じることができるのであろうか。たとえば、23区内で1ヶ月間まったくごみを出さないという施策ができるのであろうか(カラスは貯食をするので短期間では効果はない)。あるいは、カラスがごみを食べられないような容器をいっせいに使用、あるいはいっせいに夜間収集に移行すると言うような広範囲、かつ確実な方策を現在取れるとは思えない。仮に我々が主張しているごみ対策が講じられたとしても、じわりじわりといった広がりと効果であろう。その場合、ボディブローのようにカラスの個体数に影響を与えて行くといった方が現実的であり、その方が拡散を防ぎ減少して行くことになるだろう。
また、ごみという食べ物の減少は、繁殖率の低下をもたらす効果も期待できる。1巣あたりの巣立ち数が減少して行くことがカラスの減少につながって行くことになる。
2)ツバメなどの野鳥がカラスに捕食されても良いのか。
他の野鳥がカラスによって捕食される例は、報告されている。筆者もツグミを捕らえたところを見たことがある。ただし、カラスのよって特定の種類の鳥類、あるいは生物が減少したという報告は見あたらない。
かろうじて予想できるのはツバメで、営巣場所が建物の奥(ガレージなど)に入る現象が報告されている。しかし、ツバメの減少はカラスによる捕食より、人がツバメの食べ物であるカなどの昆虫が発生する水路を覆ってしまったことのほうが大きいだろう。さらに建物の構造、とくに外壁がのっぺりしたものが多くなり、巣をかけにくくなった営巣条件の悪化の方が影響が大きいと考えられる。
また、ごみが無くなったら小鳥を襲いはじめても良いのかといった発言もあった。これも1)同様、それほどまでの効果が出るほどのごみ対策が講じられるとは思えないこと、それ以前に餓死個体が増えて自然死することにより数が減少する効果の方が大きいだろう。
さらに付け加えれば、野鳥はもとより野生生物は、捕食される損率を考えて子孫を残している。スズメもツバメも、そのために2回繁殖し雛を大量に巣立たせている。私の見たカラスに食われたツグミは、経験の浅い若鳥か、傷を負った成鳥、あるいは寿命をまじかな老鳥、あるいはぼんやりした成鳥であったかもしれない。そのような個体は、カラスに食われなくても近々死を迎える運命にあったと考えられる。
都市という自然の仕組みのなかで、それぞれの生き物が歯車となり、ダイナミックな生態系を形作っている。増えたり減ったりするにはそれぞれ理由があるわけで、良くマスコミが使う枕詞の「異常発生」とか「異常増殖」という言葉は当てはまらない。カラスの場合、この仕組みのなかの人の営み、その営みから排出されるごみ、そのごみを食料とするために繁栄してしまっている現状をまず理解する必要がある。自然の仕組みを知るものから見れば、首都圏でカラスが増えているのは何の不思議でもないし、さらにそこから他の生物への影響も自然の仕組みのなせるが業であり、あくまでも自然が自然たるゆえによる結果なのである。この自然観から出発しなくては、対策を見誤ることになる。また、この自然の仕組みのなかでは「ツバメが減るのは困るけどカラスは減って良い」という人間による種に対する好みは排除されるのは当然である。
最近では東京都は「赤ちゃんが襲われる」ともTVで発言している。だから捕獲するというわけなのだが、前述のように捕獲による効果は出ていないし、捕獲の問題点は先に指摘したとおりである。それにもかかわらず、ごみ問題を放置して仮に人命にまで被害が及ぶようになれば、これは方策をあやまった責任を問われてもしかたがない。
7.捕獲の効果が現れる可能性
もちろん捕獲によってカラスが減る可能性がまったくないわけではない。
たとえば、前出の北海道の池田町の例から検討をすると、10,000羽のねぐらを消失させるため17,600羽を駆除している。この例を東京都に当てはめた場合、36,500羽であったのだから1.76倍の64,240羽を駆除すれば良いわけである。ただし、現在の年間12,000羽のペースであるならば少なくとも5年かかることになる。
また、東京都の言うように、現在の捕獲ペースでは年間1,100羽減少して行くとするならば、単純に比例按分すれば、(36,500羽−7,000羽)/1,100羽で26.8年かかる。この計算だと、累計の経費は32億円となる。
当然、これらの条件を満たすためには、コンスタントに捕獲ができなくてはならない。現在のカラスの習性を考えると、捕獲檻の効果が継続するも思えないし、密度が減ればそれだけ捕獲効率も下がって行くことになる。いずれもしても「すごくうまく捕獲ができた場合」の計算となる。
これはもちろん机上の論理であり、池田町はおそらくハシボソガラスが多かったと思われること、周辺でも銃猟を行ったこと、ねぐらが一つであったことで効果を上げたと考えられる。しかし、東京都の場合、狩猟はできないし、ねぐらの数は都内だけの40、首都圏では50を超えている。なによりもカラスが高密度で生息している地域が広範囲にわたることが大いに異なる。その結果、池田町と同じ効果があるとは思えないのである。
また、現状の方法による捕獲で捕らえられるものの多くが若鳥である以上、現在繁殖をしている親鳥たちが寿命を迎えて死んで行くことで初めてその効果が現れることになる。しかし、親鳥たちもごみという食糧事情の好転により寿命が延びている。かつ繁殖率が高まっている以上、その効果が現れるのには何年もかかることだろう。それを考えるとあながち上記の26.8年という計算も机上の空論とは思えなくなってくる。
ただし、このような計算については、カラスの寿命が不明なこと、現在の個体群の年齢構成が不明なためにシミュレーションができない。専門家も明確な解答を持っていないのも事実であるが、すでに2年かかっており、少なくともあと1年、合計3年で解決できないことは明確である。
8.捕獲事業がもたらした社会的な影響
カラスフォーラム2003の報告で、気がかりな報告があった。それは、板橋区の担当者からのもので、2年前にある学校で巣落としがされた。そのときは、子供たちが可哀想と言って涙を流した。しかし、今年は悪者を退治したというムードであったと言う。果たして教育現場では可哀想と言って涙を流す子がいなくなる現状をどのように評価するのであろうか。また、捕獲事業の推進により邪魔者を消せといった風潮が蔓延することをよしとするのであろうか。これは、世の教育者の方々の意見を聞いてみたいところである。
もうひとつカラスフォーラム2003における自治体担当者から東京都の巣落とし事業、捕獲事業がはじまってから苦情件数が増えたという報告があった。カラスの個体数が比例して増えてはいないので、東京都の事業の結果、カラスは自治体がなんとかしてくれるものという風潮が市民のなかに広まってしまったことになる。
カラスの減少をもたらすごみの減量化、ごみ出しマナーの徹底などは、市民ひとり一人が行わなくてはならないことである。カラスがうるさい、ごみを散らかす、怖いと思ったらその日からごみ専門家になってもらい環境保護論者になってもらえる良い機会なのだ。このせっかくの機会を東京都の捕獲事業がつぶしていることになるだろう。
おわりに
東京都のサイトでは、このカラスの捕獲を「緊急捕獲」としている。しかし、効果があったと言う東京のカラスの3分の1以下の池田町の報告でも4年かかっている。捕獲による対策は、緊急や短期決戦では解決しないのである。もし、捕獲は短期決戦で解決できると言うのであれば、それは間違いであり、都民をミスリードし予算を浪費していることになりはしないえだろうか。
また、東京都がめざすように東京のカラスがかりに7,000羽になったとしても、カラスが人を恐れなくなった習性の原因となるごみがある限り変わらない。そのため人の近くで繁殖し、攻撃するといった苦情は無くならないだろう。さらに、カラス問題については巣落としをするなどの広報により、行政に苦情を持ち込めばなんとかしてくれるという風潮を助長してしまった。そのためカラスは減っても、その数に比例して住民からの苦情が減るとは思えない。
いずれにしてもカラスは野生動物であり、生態系の仕組みに則って増減をしているのであり、その仕組みを科学的に解明しての対策こそが問題の解決への道である。
まず、東京都は36,500羽のところ、9,600羽を捕獲しても約35,400羽、誤差としか思えない1,100羽しか減らないという事実を検証すべきである。なぜ減らないのか、その科学的な事実が理解できれば自ずから次の方策が出て、しかるべきなのである。
私は、野生の生き物の駆除対策の話を聞くたびに思い出すことがある。それは、沖縄でサンゴを捕食するオニヒトデが増殖した時の対策である。このとき、採取したオニヒトデを5つに切って海に捨ててしまった。そのため、オニヒトデは5倍に増えて、サンゴの被害を広げてしまったのだ。私程度の生物の知識でも棘皮動物が再生することを知っている。なぜ、その時に海洋生物の専門家のアドバイスを受けなかったのであろうか。東京都のカラス対策は、このオニヒトデ対策と同じことをやってはいないだろうか。
事実、専門家の意見を聞き調査を行い解析し対策をたてるのは、たいへん面倒なことである。そして、時間もお金もかかる。そんなことをしないで、とっとと捕まえてしまえという気持ちもわかる。しかし、捕獲の効果についての疑問がこれだけある以上、もう一度、出発点に立ち返り検討すべきであると考える。
■改訂記録
2004年1月15日 起稿
2004年1月22日 Bさんによる指摘により一部改訂
■参考文献
唐沢孝一、他 1995 第3回 都心に於けるカラスの集団塒の個体数調査(1995) Urban Birds Vol.13 No.1 都市鳥研究会
川内 博 2004 東京圏におけるカラスのねぐら調査にご協力下さい ユリカモメ No.578 p18-19
川内 博、遠藤秀紀 2000 カラスとネズミ 岩波書店
川内 博、松田道生・編 1999 とうきょうのカラスをどうすべきか 第1回シンポジウム報告書 日本野鳥の会東京支部
川内 博、松田道生・編 2000 とうきょうのカラスをどうすべきか 第2回シンポジウム報告書 日本野鳥の会東京支部
川内 博、松田道生・編 2001 とうきょうのカラスをどうすべきか 第3回シンポジウム報告書 日本野鳥の会東京支部
環境庁 2001 自治体担当者のためのカラス対策マニュアル 環境庁自然保護局
国松俊英 2000 カラスの大研究 PHP出版
柴田敏隆 1980 カラス−その生態と被害対策− 住環境の有害鳥獣対策リポート
東京都林務課 2000 平成12年度カラス緊急捕獲事業 出動基準等 東京都経済局林務課
日本野鳥の会研究センター 2001 カラスフォーラム2001・配布資料
深松 登 1998 カラス係長奮闘記 北海道新聞社出版局
松田道生 1995 六義園の野鳥 自費出版
松田道生 2000 カラス、なぜ襲う 河出書房新社
松田道生 2001 カラスの社会学 愛鳥教育 No.64
樋口広芳、森下英美子 2000 カラス、どこが悪い!? 小学館文庫
由井正敏、阿部禎、他 1992 鳥獣害の防ぎ方 農山漁村文化協会
■謝辞
(財)日本野鳥の会自然保護室室長の古南幸弘さんと同室の成末雅恵さんには、拙文のチェックをしていただき、助言を受けた。
日光野鳥研究会のBさんからは、表現上の不備、脱字などの指摘をいただいた。
この場を借りてお礼申し上げる。