「紙への道」 コラム

   68,紙・板紙「書く・拭く・包む」シリーズ(3)
     ティッシュペーパーとトイレットペーパーについて(その1)

 私が日常生活で紙に最初に接するのは、朝食のときのティッシュペーパーです。食事中とか、終わったときに口元を拭いたりするのに使いますが、習慣になっており、必ず1、2枚使ってしまいます。次は新聞、そしてトイレットペーパーという具合です。今回の「書く・拭く・包む」シリーズは皆さんにも身近なティッシュペーパーとトイレットペーパーです。

   はじめに

 いま、AさんとBさんの二人が会話をしています。ちょっと聴いてみましょう。

A:「この暑い時期に泳ぎたいが、僕は泳げないんだぁ。」
B:「どうしてなの。」
A:「水が苦手なんだ。泳ぐと身体が骨抜きになって、ばらばらになってしまんですよ。」
B:「それは大変だわ。私は大切に育てられた『箱入り娘』なの。色白でしょう。しかもスリムで肌も柔らかなの。でも、芯はしっかりしてて、水にも強いのよ。」
A:「それは羨ましいね。水には弱いが、僕だってしっかりと働いているんだ。君のように強いのは、僕たちの職場ではトラブルを起こしやすく、向かないよ。」
B:「そうなの。けど、私だっていっぱい働くところがあるわ。」
A:「それはいいね。どんなところなの。」
B:「家はもちろんのこと、各部屋やいろんな職場、車のなかでも働いているのよ。」
A:「へぇ、楽しくて忙しそうだねぇ。」
B:「そう、大変忙しいのよ。時にはこき使われることもあるわ。」
A:「僕だって、働くところがずいぶんと増えたし、居ないと困るし重要な存在なんだ。」
B:「私たちがいると、みんなに安心と温もりを与えているようね。」
A:「そうだね。有り難味が分かっていると嬉しいけどね。やたらと使う人がいるけど、『大事に、いたわり』感謝の気持ちで使ってもらえるといいね。」
B:「本当にそうね。私、きれいになりすぎたのかしら。みんなに重宝がられ、身近において何でも私を使うのよ。お給料も安いので、もう少しあげてほしいわ。」
 ・・・、まだまだ会話は続きそうです。もうお分かりでしょうが、それではA、Bのどちらが、ティッシュペーパーかトイレットペーパーでしょうか?

   品種分類上は衛生用紙、微増中


 上記の答えは、Aがトイレットペーパーで、Bはティッシュペーパーです。如何でしたか。それではここで基礎的なおさらいをしておきます。
 まず品種分類から説明します。日本製紙連合会の
「紙・板紙の品種分類」により、「紙」は新聞巻取紙、印刷・情報用紙、包装用紙、衛生用紙および雑種紙と「板紙」に分類されていますが、ティッシュペーパーとトイレットペーパーは「衛生用紙」に属します。ここで衛生用紙とは、主に一般家庭で使用される、いわゆる家庭紙といわれるもので、ティッシュペーパー、トイレットペーパー以外にタオル用紙や、生理用紙、ちり紙などがあります。
 なお、
「紙・板紙の品種分類」も変遷があり、現在の「衛生用紙」以前は、1968(昭和43)年1月の改正時に新設された「家庭用薄葉紙」でした。そのときはティッシュペーパー、京花紙、ちり紙、トイレットペーパー、生理用紙、タオル用紙、その他家庭用薄葉紙に区分されていました。それが20年ぶりの1988(昭和63)年1月の改正で家庭用薄葉紙から「衛生用紙」に呼称が変更になるとともに、量的に少量になった京花紙は「その他衛生用紙」へ統合されました。さらにその後の小改正で「生理用紙」(平成9年)と「ちり紙」(平成14年)は削除、「その他衛生用紙」へ統合されており、現在の衛生用紙は下記のように4区分に分類されています。


表1.衛 生 用 紙 の 分 類
日本製紙連合会「紙・板紙統計年報」
. 説    明
ティッシュペーパー ドライクレープがかかった吸水性のある衛生紙(標準坪量13g/㎡)で、2プライで連続取出しされるようになっている。
トイレットペーパー 晒パルプあるいは上級古紙を原料として抄かれ、ロール状にしたもの(標準坪量20g/㎡)。
タオル用紙 トイレや台所で使用され、平判、ロール状のものがある。
その他衛生用紙 上記以外の衛生用紙。京花紙、ちり紙、テーブルナプキン、生理用紙、おむつなど。

 ティッシュペーパーとトイレットペーパー以外について簡単に説明しておきます。

・タオル用紙…業務用の手ふき紙、家庭の台所用タオルとに大別される。柔軟で、吸水性がきわめて高いのが特徴である。
・京花紙きょうはながみもともとはよく漂白した薄い楮(こうぞ)製の手漉き和紙で、婦人用懐中紙や上等な鼻紙として用いられたが、今は化学パルプを原料とする機械すきの薄葉紙が主流である。
・ちり紙(塵紙)…品種分類用語では、上級古紙を原料として抄かれ、平判で主としてトイレ用に使われる(標準坪量23~24g/㎡)、と説明されている。近年は洋式トイレの普及に伴い、減少傾向にある。
 もともとは楮の外皮の屑で製し、表面に塵滓
(かす)がある手漉き和紙のことで、屑紙(故紙、今の古紙)で作られたものもあり、鼻紙や落し紙として用いられた。
(注)手漉き和紙において「ちり」という場合、ごみや汚物などの意味ではなく、コウゾなどの樹皮の黒皮や繊維の太い結束などをさす。例えば、製紙工程でちり取り(除塵))作業とよばれるものは、黒皮や結束を取り除く作業をさす。したがって本来のちり紙は、上等な白い紙をすくために取り除いたコウゾ皮の甘皮部分や表皮、黒皮などですいたものをいい、十分に砕けきれずに残ったコウゾ皮のかすや黒皮が紙面に現れている。また毎日の紙すき作業の終りの紙料液には、すく際に除いたちりが多量に含まれており、この残液ですいた紙もちり紙となる。こうした自然なちり紙は、昔ならば日常生活用の鼻紙、袋紙、落し紙、下ばり紙などに使われたが、大変に強靭で、混入した黒皮などの変化がおもしろく、素朴な雅味もあって愛好者に珍重され、茶室などの壁紙や襖(ふすま)紙、本の表紙などの装丁用紙、書画用紙などにも使われた。現存のものとしては、小川和紙(埼玉県)の黒四つ塵、黒谷紙(京都府)のねなし紙などがある。通常の紙料に黒皮を混入して、作為的にすくちり紙(ちり入り紙)もあり、民芸味にあふれた装飾紙、出版用紙、畳(たとう)紙、さらにカード用紙として海外にも盛んに輸出されている。装飾的な意図がさらに進められ、蕎麦がらなどの植物や華やかな金銀砂子などを混入することも行われている。
・テーブルナプキン…食事時に胸や膝にかけたり口を拭ったりする紙製のもの。布巾もある。
・生理用紙…脱脂綿の代替品、パット、テックスに加工されるもの。生理用ナプキン、タンポンなどに使用される紙である。衛生的で吸水性が高く、逆に防水性や水に溶けやすいことも要求される。最終製品はこの紙を何層にも重ね、パルプや高分子吸収剤などを混合して製造される。

   衛生用紙の位置づけと品種別の盛衰

 次に衛生用紙の生産量推移を次表2に示します。下段の( )値は紙全体(板紙除く)に占める衛生用紙の構成比です。

表2.衛生用紙の生産量推移(単位:千t)
. 1970年 75年 80年 85年 90年 95年 2000年 05年 06年
衛生用紙 498
(7.0%)
621
(8.1%)
899
(8.5%)
1,089
(9.2%)
1,366
(8.3%)
1,558
(8.9%)
1,735
(9.1%)
1,764
(9.3%)
1,793
(9.4%)
紙合計 7,135 7,711 10,536 11,790 16,429 17,466 19,037 18,901 19,062

 衛生用紙の比率は全般に年々、漸増傾向にあり、昨(06)年の紙全体(板紙除く)に占める比率は約1割弱 (9.4%)になっています。衛生用紙はほとんどが生活必需品となっており、需要が急激に落ち込むことが少ない反面、「ちり紙」のように生活様式の変化などによって需要が減ることがあります。また、需要増に伴なって設備投資による供給面での過剰感が出ることもあり、日常品としてスーパーマーケットなどで客寄せの「特売商品」とか「サービス商品」、「格安品」「乱売品」として扱われることがあります。

   伸びるトイレットペーパーとタオル用紙、
    ティッシュペーパーはピークを過ぎ飽和状態へ


 それでは衛生用紙の品種別生産量の推移を表3に、また表4にちり紙の生産量推移を示しますが、品種によって浮き沈みが見られます。

表3.衛生用紙の品種別生産量推移(単位:千t)
下段の( )値は衛生用紙全体に占める構成比
品 種 1970 80 90 2000 05 06
ティッシュペーパー 47
(9.4%)
246
(27.4%)
463
(33.9%)
566
(32.6%)
545
(30.9%)
520
(29.0%)
トイレットペーパー 99
(19.8%)
360
(40.0%)
672
(49.2%)
936
(53.9%)
986
(55.9%)
1,022
(57.0%)
タオル用紙 7
(1.3%)
12
(1.3%)
60
(4.4%)
115
(6.6%)
140
(7.9%)
153
(8.5%)
その他衛生用紙
(京花紙、ちり紙など)
345
(69.3%)
281
(31.2%)
171
(12.5%)
118
(6.8%)
92
(5.2%)
97
(5.4%)
衛生用紙合計 498 899 1,366 1,735 1,764 1,793

 品種別の動向は1970年基準で比較すれば、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、タオル用紙とも2006年の生産量は大幅に増加しています。すなわち、対70年で06年はティッシュペーパーは11倍、トイレットペーパー10倍、タオル用紙22倍と大きく伸びています。この中でもトイレットペーパーは、衛生用紙全体に占める構成比も70年当時の約20%から6割近くの57%と大きく躍進しています。また、タオル用紙もパイが小さいながらも量、構成比とも着実に大きくなっています。反面、ティッシュペーパーは97年の584千t(表には不記載)をピークに数量、構成比とも低下傾向にあります。それでも構成比はおよそ3割と依然大きなウエイトを占めています。

   ちり紙は大幅減少

 次の表4に、ちり紙の生産量推移を示しますが、もう少し細かく区切って、ティッシュペーパー、トイレットペーパーと比較として掲げます。1970年の「ちり紙」は量、構成比とも衛生用紙(当時は家庭用薄葉紙)の中で最大の位置づけにあり、半分以上(50.8)の割合を占めていました。それが次第に減少していき、2001年には2.0%と大幅に少なくなってしまいます。そのため前述のように、翌年の02(平成14)年には独立品種から削除され、「その他衛生用紙」へ併合されてしまいました。
 なお、1960年までは「ちり紙」が家庭用薄葉紙(現在の衛生用紙)の3/4(75%)以上を占めていたとのことですが、生活様式の変化にともなって、上記のように減少していき、現在ではティッシュペーパー、トイレットペーパーがその位置を占めるようになっています。そう言えば、戦後のころはちり紙や
京花紙ばかりで、テイッシュペーパーやトイレットペーパーという呼び名もありませんでした。衛生用紙も変わってきているわけです。

表4.ちり紙の生産量推移(単位:千t)
下段の( )値は衛生用紙全体に占める構成比
. 1970 75 80 85 90 95 2000 01
ちり紙 253
(50.8%)
236

193

141
(12.9%)
92

59

39
(2.2%)
35
(2.0%)
ティッシュペーパー 47
(9.4%)
115

246

318
29.2)
463

528

566
(32.6%)
545
(31.9%)
トイレットペーパー 99
(19.8%)
186

360

517
(47.5%)
672

814

936
(53.9%)
939
(54.9%)
衛生用紙合計 498 621 899 1,089 1,366 1,558 1,735 1,710

   ティッシュペーパーとトイレットペーパーの語義・定義、
   対応英語など比較


 これからティッシュペーパーとトイレットペーパーについて説明していきますが、最初にそれぞれの語義・定義、対応英語などを対比してまとめ、表5に示しておきます。

表5.ティッシュペーパーとトイレットペーパーの語義・定義、対応英語など
. ティッシュペーパー トイレットペーパー
一般的な意味 主に鼻をかんだり、化粧などの用途に使われたりする紙。 トイレット(便所)で使用する紙。
広辞苑
(岩波書店)
薄く柔らかい紙。本の挿絵の上に差し挟んだり、美術品などの包装に使ったり、また化粧紙・塵紙などに用いる。ティッシュ。 ちり紙。おとし紙。特に、ロール状のもの。
(対応英語)tissue paper (対応英語)toilet paper
日本工業規格(JIS) (JIS用語番号6114)
1)木材パルプを原料としドライクレープ加工を行った薄葉衛生用紙。柔軟で湿紙強さがあり、ふきとり紙などとして用いる。
2)セルロース繊維から成る薄いクレープ紙を1枚又は数枚重ねて作ったもの。クレーピングは、通常、乾燥後に行われる。
(JIS用語番号6119)
1)さらし化学パルプ、高収率パルプ、古紙などで円網、長網ヤンキー式抄紙機で抄造し、ヤンキードライヤ上でクレープを施した紙。紙質は柔軟性、吸収性などが要求される。
2)トイレットで使用する紙。
(対応英語)facial tissue、soft tissue (対応英語)toilet tissue paper
英和辞典 スピリッツ(小学館) tissue paper…薄葉紙(果物など傷みやすいものを包んだり本の挿絵などを保護するために使う透明に近い薄紙)。日本でティッシュペーパーと呼んでいるものは下記tissueの④に相当。 toilet paper…トイレットペーパーのこと
・toilet…(水洗式の)便器、洗面所、化粧室、浴室、トイレ、便所など
(参考)tissue①(生物体の)組織、②薄織物、③織り交ぜて作ったもの、④水を吸収する柔らかな薄紙(日本でティッシュまたはティッシュペーパーと呼んでいるもの)、⑤tissue paper(ティッシュペーパー)のこと、⑥カーボンコピー用紙 (参考)
・toilet roll…巻きトイレットペーパーのこと

・bathroom tissue…トイレットペーパーのこと(米国)

   ティッシュペーパーとトイレットペーパーの違いは?

 次に、よくある質問や疑問点で
「ティッシュペーパーとトイレットペーパーの違いは?」がありますが、この点について触れます。
 ティッシュペーパーとトイレットペーパーはともに身近な紙として使用されています。その特性は、ティッシュペーパーは柔らかくて感触がよくて、吸水性もよく、水に対して適正な強さを持っていることです。またトイレットペーパーは、適度の柔軟性があり、水にほぐれやすくいことです。そして両方の共通点は衛生的で、薄くて柔らかいことです。
 このように両者は似たような紙ですが、日常的にうまく使い分けされているようです。まず、製品の形態がトイレットペーパーは、普通は円筒状に巻いたロール(巻取り紙)になっているのに対して、ティッシュペーパーは紙自体が矩形
(くけい)状のシートになっており、何枚(組)か単位でボックス(箱)に入っており、外観的にも見分けがつきます。
 またトイレットペーパーには、今や日本語になっている「トイレ」(トイレット)という言葉がそのまま使われており、「おとし紙用(便所用)」と用途がはっきりしていることも間違えにくくしています。しかも、ティッシュペーパー入りのボックスには
「このティッシュペーパーは水に溶けにくいので、水洗トイレでは使用したり捨てたりしないでください」と注意書きがあり、誤使用されないように喚起されています。これも見た目で両者の使い分けや使い道を間違えないようにしている方策のひとつです。なお、「紙が水に溶ける」という表現について説明しておきますと、これは正確な表現ではありません。しかし便利な表現なので、このように使われることがあります。「溶ける」とは液体にある物質が混ざって溶解し、均一な液体になることで、食塩などが水に溶解するときに使います。これに対して、紙の主原料であるパルプ繊維自体水に溶けないで、水中でほぐれてバラバラに散らばった状態になります。これを分散と言います。従って、繊維が分散している水をろ過するとろ紙上に残り、繊維を回収することができます。

   大きな違いは水に対する抵抗性

 ここで、このほかの両者の主な違いについて列記しておきます。①シングルかダブルか、すなわち1枚のシングルのもの(1-ply、ワンプライないしシングルプライ)か、2枚のダブルのもの(2-ply、ツープライ、もしくはダブルプライ…2枚重ね)か、②クレーピングとエンボス加工、③水に対するほぐれやす、④パルプ原料差などですが、以下に順不同で説明していきます。
 このなかで「両者の大きな違いは何か?」。それはティッシュペーパーは水に溶けにくく、トイレットペーパーは水に溶けやすいことです。これは持って生まれた品質で、見た目や感触では分かりにくいのですが、水に浸
(つ)けてほぐして見れば分かります。この水に対する耐性(抵抗力)の差が両者の大きな違いと言えます。この性質はそれぞれの用途に必要な最重要品質であり、それに合うように造られているからです。
 ティッシュペーパーは主に鼻をかんだり、化粧時や、時にはテーブルを拭いたりするなどにも使われ、トイレットペーパーはトイレで用を足したときの後始末に使用されますが、このような用途に適した造り方がされています。すなわちティッシュペーパーは、鼻をかんだときなどに水を含んでもすぐにほぐれたり、破れないような強さが最も要求されます。これに対してトイレットペーパーは使用時にすぐに溶けてしまっては困るし、使用後、トイレ(配水管)が紙で詰まらないように、水に流したときにすぐに溶けなくてはは困ります。そのために、そのように製造されています。この性質が両者の品質上の大きな違いです。
 そしてその性質を付与するためにティッシュペーパーには、製造の過程で
「湿潤紙力増強剤」(湿潤強力樹脂)と呼ばれる柔らかい薬品が加えられ、パルプ繊維同士を結合しています。これによって耐水性を持ち、水に対してすぐには破れにくい強いくなり、しかも肌ざわりが柔らかく弾力がある紙となります。
 そのためティッシュボックスに、上述のように「このティッシュペーパーは水に溶けにくいため、(水洗トイレで流すと、配水管を詰まらせる危険がありますので)水洗トイレでは使用したり捨てたりしないでください」などと使用上の注意が表示されているわけです。なお、この
「水洗トイレでは使用したり、捨てたりしないこと」の注意書きは、日本工業規格(ティッシュペーパー JIS S3104)で名称、寸法、枚数などとともにティッシュペーパーの箱に表示しなければならないと決められています。
 これに対してトイレットペーパーは水に溶けやすいことが必要ですので、ティッシュペーパーのような「湿潤紙力増強剤」は添加されていません。
 それでは、ここでティッシュペーパーとトイレットペーパーの比較写真を次に掲げます。この中で水に浸したときの写真1を、また写真2には、それぞれの表面写真を示しますが、各々について説明していきます
写真は王子製紙株式会社 製紙技術研究所資料)

ティッシュペーパーとトイレットペーパー
の比較写真
. ティッシュ
ペーパー
トイレット
ペーパー
写真1
…(約70倍)
写真2
…(約10倍)
 写真1は紙を水に浸して、軽くかき回した場合の拡大写真ですが、ティッシュペーパー(左)のパルプ繊維の絡みはまだしっかりしています。これに対して、トイレットペーパー(右)のほうは繊維の絡みがほどけやすい状態になっています。このようにティッシュペーパーはトイレットペーパーより水に強いことが分かります。逆にトイレットペーパーは、かき回せば水中でほぐれてバラバラになりやすいわけです。
 それでは湿潤紙力増強剤が含まれていないトイレットペーパーは、どうやってくっついているんでしょうか? それは「薬品」でなくて「パルプ繊維同士」が
水素結合して、結びついているのです。もちろん、ティッシュペーパーは「パルプ繊維同士」の結びつきがある上に、適正品質付与のために「薬品」添加が加わって増強されているわけです。
 蛇足ながら、もう少し説明します。紙が形を保ち、強さを保持しているのは、繊維間の絡み合いによる機械的な力だけでなく、セルロース分子間に水素結合という化学力が働いて繊維同士が引き合っているからです。この化学的な力が働いて繊維同士が引き合って紙が形成されるのもワイヤーパートからドライヤーパートの過程でできあがります。
 この場合の水素結合は、セルロース分子内にある多数の親水性である水酸基(ヒドロキシル基、OH基)の酸素原子が余分の電子を持って、他から水素原子核を引き付けるために起きます。そして近くにある水酸基間で、相互に水素を介した酸素の結合(-O-H…O< 水素結合…の部分)ができあがります。
 その結合力は通常の化学結合(共有結合)よりは弱いのですが、長い高分子が無数の水素結合を行うと全体では強い力となり、紙になるときに、この水酸基はシートを形成して強度を発現させるという重要な役目を果しています。すなわち紙製造の段階で、紙料から脱水の過程でお互いにセルロースが接近しますが、水の表面張力で繊維同士がくっつき、さらに水の蒸発にしたがって、ますます繊維同士が引き寄せられます。
 例えばドライヤーで乾燥しますと、次第に水分が蒸発して繊維同士が接近してくるわけですが、接近しますと水酸基と水酸基の間で、水素結合と呼ばれる結合が発生し、これが紙の強度を高めます。このように接着剤(薬品)を使わなくてもセルロースの持つ水酸基間で自己接着性が発生するわけです。そしてほどよい乾燥を受けるとセルロースから水和していた水が除かれて繊維本来の柔軟な硬さにもどり、弾性を持った紙の組織ができ上がります。これが製紙の原理です。なお、乾燥し過ぎると、水和していた水分子が喪失して、弾性を失い紙は次第に硬くなります。
(注)水和…水分子(H2O)が水素結合して、セルロース中の親水性の基である水酸基と容易に結合し、一つの分子集団を作る現象。

 それでは「薬品」でなくて「パルプ繊維同士」が水素結合して、結びついている通常の紙を水に浸けたらどうなるのでしょうか。写真1のトイレットペーパー(右)の説明になるのですが、ちょっと触れます。紙を水に浸けると、水が繊維と繊維の隙間に入り、繊維と繊維を結びつけていた水素結合は解消してしまいます。かき回せばやがて、絡み合っている繊維がほぐれて水中に散らばり、ドロドロしたパルプの懸濁液ができます。これが離解で、紙造りの逆を行っているのです。本来紙は水に弱いものなのです。
(注)ほぐれる(解れる)…もつれたり巻きついたりしていたものが、とけはなれる(広辞苑)。ここでは絡み合っているパルプ繊維がバラバラになり水中に分散することの意。

 このように紙は水に浸すと弱くなる性質を持っていますが、「湿潤紙力増強剤」を加えれば、水に対する抵抗性が強まり水に浸けてもある程度の紙力を保たせ破れにくくする性質が付与されます。なお、湿潤紙力増強剤はティッシュペーパー以外にも紙タオルやお札など使用されています。

   「ほぐれやすさ」について

 次にトイレットペーパーの
「ほぐれやすさ」について説明します。トイレットペーパーの品質は、使用に際しての衛生性と適度のふき取り性および水に対するほぐれやすさを確保するため、日本工業規格(トイレットペーパー JIS P4501-1993年(平成5年3月1日改正)に、使用上の欠点がない項目とこれらを数量的に規定した坪量、破裂強さおよびほぐれやすさが下記のように規定されています。
 トイレットペーパーは、衛生的で適度の柔軟性があり、水にほぐれやすく、すきむら、破れ、穴など使用上の欠点がなく、決められた試験方法によって試験し、次の品質の規定に適合しなければならない。
品   質
坪量 g/㎡ 破裂強さ kPa(10枚) ほぐれやすさ s
18以上 78以上 100以内
 ここで坪量は紙1枚の1㎡当たりの目方を示し、柔軟性への要望に対応して、以前は20g/㎡以上でしたが、18g/㎡以上と改正されました。しかし、紙の強度(破裂強さ)は、坪量を低減しても弱くならないように従来のままに設定。また、トイレットペーパーの水に対するほぐれやすさの試験方法は次のように規定されています。

 ほぐれやすさの試験は、水300m(水温20±5℃)を入れた300mlのビーカーをマグネチックスターラーに載せ、回転子の回数を600±10回転/分になるように調整する。その中に一辺が114±2㎜角の試験片を投入し、ストップウォッチを押す。回転子の回数数は試験片の抵抗によって、いったん約500回転に下降し、試験片がほぐれるに従い回転数は上昇し、540回転までに回復した時点でストップウォッチを止め、その時間を1秒単位で測定する。ほぐれやすさの結果は、試験を5回行い、その平均値で表す。

 ほぐれやすさの数値は100秒以内と上限値だけが決められていますが、あまりほぐれすぎても使いにくくなりますので、下限値の規定が必要です。これについては今後の検討課題とされています。

   もうひとつの違いと特徴、紙表面へのクレープ付けとエンボス加工

 ここで上掲の写真2の説明をします。写真2はそれぞれの表面写真ですが、ティッシュペーパーの方にはクレープ(しわ、ちりめん皺)状の凹凸が見えます。一方のトイレットペーパーはクレープのほかに、肉眼でも分かるエンボス加工による少し大きめで深めの凹凸があり、そのため紙表面にデコボコが目立ちます。ところで新聞用紙やコピー用紙、チラシなどに使われている塗工紙などの印刷される紙の表面は、デコボコが少なく手で触っても滑らかで、むしろ平滑な紙が好まれるのですが、ティッシュペーパーやトイレットペ-パ-には凹凸があります。しかもこの凹凸は製造の段階でわざわざ付けられているのです。何故でしょうか。
 それは紙に柔軟性を持たせるためです。ティッシュペーパーやトイレットペ-パ-が柔らかい感触を持っているわけは、このデコボコしている表面のエンボス構造にあるのです。
 それでは各々について説明します。まずティッシュペーパーですが、薄く抄きあげた湿紙は大きなヤンキードライヤーで乾燥されます。そのドライヤーから紙を剥がすのに、クレーピングドクター(皺つけ掻き取り装置)と呼ばれるブレード(刃)が使われますが、そのドクターでクレープと言われる細かなしわ(襞
(ひだ))がつけられます。それによって薄い紙は膨らんで、弾力を持った柔らかい紙が出来上がります。
 またトイレットペ-パ-には、このクレーピング(しわつけ)に加えて、さらに紙に凹凸のある型を押し付けて、エンボスといわれる凹凸を入れます。この加工法を
「エンボス加工」と言いますが、このエンボスによってさらに柔らかくて肌触りがよく、フンワリとボリューム感のある紙に仕上げられます。なお、ティッシュペーパーの標準坪量13g/㎡に対して、トイレットペ-パ-は20g/㎡ですので、重いほど柔軟性が下がりますが、これをエンボス加工で補っているわけです。
 ところでティッシュペーパーやトイレットペーパーへのクレープは、ドライヤーとリールの間にわずかな速度差をつけて、すなわち「ドライヤーパートまでの回転速度」>「巻取り(リール)の回転速度」として、ドライヤーに当てたクレーピングドクター紙を剥がすときに作られますが、しわ(皺)の深さやピッチなどの程度は掻き取るブレードの角度で調節します。この場合、紙を完全に乾燥した後にしわを付けるので「ドライクレープ」と呼ばれています。

   ティッシュペーパーは2枚重ね、その効果は


 次にシングル、ダブルかについてです。トイレットペーパー製品には、1枚のシングルのものと2枚のダブルのもの(2枚重ね)があります。シングルものを使うか、ダブルのものを使うかは、購入する人や使う人に選択できます。これに対してティッシュペーパーは3枚重ねもあるということですが、1枚ものはなく、そのほとんどは2枚重ねです。これもトイレットペーパーとの違いのひとつであるといえます。それではどうしてティッシュペーパーは2枚重ねになっているのでしょうか。その理由は、薄いことにあります。
 ここでティッシュペーパー2枚(1組)を取り出していろいろと観察しましょう。その1枚を見るわけですが、まず、どちら側が2枚重ねのときの外側の面か内側の面かを確認しておきましょう。それではティッシュペーパー1枚を目の前に立てて透かしたり、少し斜めにして見てください。さらに表裏(外側の面と内側の面)を手で触ったり、またルーペ(拡大鏡)があれば、それで見てください。表(外側の面)のほうがツルツルで、少し艶があり手触り感がよく、逆に反対面(内側の面)はガサガサして毛羽立っている感じのはずです。すなわち2枚重ねの外側の手や肌が当たる面は滑らかで、感触がよくなっております。しかし、逆の面はざらざらしており肌触りがよくありません。また1枚を透かせば、スカスカ状に見えますが、2枚重ねにすれば、透けにくくなりしっかりした紙になります。しかも柔軟性はさほど変わりません。
 少し脱線しましたが、2枚重ねの理由は薄いと鼻をかんだときなどに破れたり、鼻水がしみ出たりします。それを防ぐために強く、滲みにくく2枚重ねにしてあるわけです。それでは何故、薄くしなければならないのでしょうか。ティッシュペーパーは鼻紙や顔の化粧落としなどの用途に使われますので、柔らかくて肌触りがよくなくてはいけません。厚ければ丈夫になりますが、ごわごわした紙になり嫌がられます。そのために薄くして柔軟性を持たせますが、あまり薄くすると、強度が劣り破れやすく、滲みやすくなりますので薄くするにも限度があります。
 なお、トイレットペ-パ-のように深めの「エンボス加工」は薄過ぎるので不適です。そこで考え出されたのが、薄い紙の2枚重ねです。しかもティッシュボックスから2枚重ねにして、連続的に取り出せるようにポップアップ式の折り方が工夫されています。2枚を合わせると1枚の紙よりも、間に空気層の隙間ができ、ふんわり感が増し、より柔らかくできるからです。また、水分の吸収性を高める効果もあります。
 ほかに2枚合わせのメリットは、2枚重ねのほうがお互いに絡み合って、同じ厚さの1枚の紙よりも破れにくくなることです。これはよく例えに出されますが、1本の太い紐(ひも)よりも細い糸を撚り合わせた紐の方がより強さが増すという具合です。
 さらに2枚重ねすれば、紙の裏面同士を合わせて表面
(おもてめん)だけを外側に出すことができます。そうすることによって上記確認していただいたように、滑らかで感触のよい面を2枚重ねの外側、しかも両面に持ってこれるわけです。こうした工夫により顔などに当てても肌触りのよい、しかも強度のあるティッシュペーパーが出来上がります。
 これまでにも述べましたが、薄くすることによって柔軟性が増し、感触がよくなる反面、破れやすくて、ほぐれやすいという強度面は低くなり、しかも滲みやすくなりますが、2枚重ねは柔軟性と強度・滲みを両立させるための手段であったわけです。


   さらにパルプ原料の違いも

 両者の製造工程はどちらも似たようなものですが、パルプ原料の違いがあります。その違いのひとつは、木材パルプ100%か古紙パルプ100%かです。日本で生産・消費されるティッシュペーパーは、木材から直接得られたパルプ100%を原料につくられたものがほとんどで、古紙配合製品のシェア(5~6%程度と推定)は伸び悩んでいます。一方トイレットペーパーは、原料に木材パルプを使うものと古紙を使うものに分けられます。もともとトイレットペーパーは中小メーカーで製造される古紙パルプ100%でつくられた製品がほとんどを占めており、1988年ころまでシェアは80%を超えていました。ところが、大手メーカーの進出により純パルプものが徐々に増え、古紙製品のシェアが94年以降は70%を切るようになっています。なお、使用される古紙は上質系古紙が多く、飲料パックも古紙原料として使われています。
 一般的に製品を古紙から製造した場合、木材をパルプ化して製造する場合に比べて総エネルギー消費量や総CO2排出量は減少します。さらに古紙製品の方がパルプ製品よりも一般的に安価であり、経済的なメリットもあります。しかし、他の用紙では古紙利用が進んでいるのに、トイレットペーパーではじわじわと古紙製品が減り続けています。いわゆる「再生紙物」が好まれなく、価格が高くても純パルプものが伸びているのは、清潔、綺麗好きの日本人の感性に合ってのことですが、使われたら二度と再生されることのないティッシュペーパーやトイレットペーパーの問題点と言えます。例えばトイレットペーパーは、ドイツでは灰色の「再生紙物」が使用されており、日本のものは世界で最も質が高いということです。

 もうひとつは使用する樹種が針葉樹主体か、広葉樹主体かの違いです。すなわちティッシュペーパーには、ほぐれにくくして破れにくくするために、パルプ繊維同士が絡み合って強くなる繊維の長い針葉樹が主原料として多く使われます。逆に、ほぐれやすさが必要なトイレットペ-パ-には、ティッシュペーパーに比べて長繊維である針葉樹より、繊維長が短い広葉樹の割合が多くなっており、水に浸けたときに繊維の絡みがほどけやすい状態になるよう造られています。
 ここでもう一度、紙を見てみましょう。ティッシュペーパーとトイレットペーパーの各々1枚を縦側と横側に沿って別々に手で破ってください。如何でしたか。
 一方向に沿ってほぼ直線状に破りやすく、その直角方向は蛇行状になり裂けにくかったのではないでしょうか。比較的容易に直線的に破れ、毛羽だちが少ないほうが紙の縦方向(抄紙機の進行方向)です。反対に抵抗があり、真直ぐに破りにくく蛇行状になり、裂け目部の毛羽だちが割りと多いほうが横方向(抄紙機の横方向)です。ティッシュペーパーサンプルの長辺方向が、またトイレットペーパーの巻取り方向が比較的破れやすかったと思いますが、この方向が縦方向で、抄紙機の進行方向です。真直ぐに破りにくかった逆の側が横方向です。なお「横紙破り」という諺は、この破りにくい横方向を無理して破ることに由来するのは有名ですね。ところで、ティッシュペーパーとトイレットペーパーを比べると、羽のように軽くて薄いティッシュペーパーのほうが、むしろ破りにくかったのではないでしょうか。また、裂け目部の繊維状の毛羽だちもトイレットペーパーより目立っていると思います。これは上記のように、ティッシュペーパーのほうに長繊維の針葉樹が多く使用されていることに起因しています。それでは、ほかにも新聞紙、コピー用紙など、いろいろな紙で試してみてください。

 以上がティッシュペーパーとトイレットペーパーの主な違いであり、特徴です。それではここで少し語句のまとめをしておきます。

(注)用語説明
用 語 説    明
湿潤紙力増強剤とは  水に濡れたときに紙力低下を抑える熱硬化性樹脂のこと。抄紙のときに主原料であるパルプ繊維に添加して、本来ならば水に対してバラバラにほぐれやすい繊維に定着させることで、水に濡れても繊維と繊維の結合を保持し、ほぐれにくくし、破れにくくするなどある程度の強さを持つような効果がある。
 湿潤紙力増強剤として、ポリアミド・ポリアミンエピクロルヒドリン樹脂とポリエチレンイミン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂などが使われる。
水素結合とは

 分子間結合の1つで、酸素・窒素のような電気陰性度の大きい原子2個の間に水素原子が介在することによりできる結合。水素結合はO—H…Oのように、点線の部分で表される(実線は共有結合)。その結合力は普通の化学結合より弱く、分子間力(ファンデルワールス力)による結合より強い。すなわち水素結合の強さは、約5kcal/molであり、分子内の共有結合O-H(約100kca/mol)と分子間に働くファンデルワールス結合(約0.5kcal/mol)の大体中間にある。
 しかし、水素結合が多くあると強い力になり、しかも、適度に乾燥した状態のときにはある程度の結合力を持つようになる。例えば、紙には水素結合が他の結合よりも多くあり、強度を保つ重要な役目をしている。しかし、水の介入によって水素結合は簡単に切断され、結合は弱まりバラバラになり、強度が低下するとともに形が崩れるようになる。ちなみに、氷は水分子同士が水素結合という弱い結合でつながってできた結晶である。

パルプ100%製品とか、牛乳パック100%の意味  湿潤紙力増強剤などの薬品が使用されており、厳密には100%ではありませんが、「パルプ100%製品です」とか、「牛乳パック100%を再生利用したティッシュです」「古紙パルプ配合率100%」などと表示されている。これは例えば、パルプ100%という記載は、パルプ質として古紙を使っていなく、バージンパルプのみを使用しているという意味である。
バージンパルプとは  木材など(ケナフ等の栽培植物を含む)を原料としてつくられた新しいパルプのことで、リサイクルされてつくられた古紙パルプに対して言う。「フレッシュパルプ」とも呼ばれる。
ヤンキードライヤーとは

 プレスパートを出た湿紙をドライヤーパート(乾燥部)にある蒸気加熱した金属製のシリンダードライヤーに押し付けて乾燥するが、その形式に数十本のドライヤー(直径1.2~l.8m)を用いる多筒式ドライヤー方式と1本の大径ドライヤー方式がある。後者の大径ドライヤーのことをヤンキードライヤー(Yankee dryer)と呼ぶ。
 ヤンキードライヤーは表面が鏡面仕上げされた1本のドライヤー(直径3~5.5m)で乾燥が行われるが、このドライヤーを持つ抄紙機をヤンキー抄紙機(Yankee paper machine)という。例えば、ワイヤーパートの型式が長網式(フォードリニア)のヤンキー抄紙機を長網ヤンキーマシンといい、ティッシュや片艶包装紙などを抄く。
 なお、プレス工程を出た湿紙は、ヤンキードライヤーに張りつけて乾燥させるので、片面だけ艶のついた片艶紙になる。また、ティッシュの場合はクレーピングドクターをドライヤーに当て紙を掻き取るので、クレープの付いた紙となる。
(参考)ヤンキードライヤーの由来…定説はないが、いくつかの説を紹介する。なおヤンキーの意味は、米国でニューヨークに住むオランダ系移民が、北東隣のコネチカット州に住むイギリス系移民を呼んだ「あだ名」(Jan Kees(ヤン・キース))という説が有力である。以下、ヤンキードライヤー由来の諸説である。
・オランダ語のドライヤーを意味する言葉をアングロサクソン流に発音した。
・1900年初期、米国で抄紙機が製作される前は、ドイツから輸入していた。つまり用語はドイツ語が用いられた。米国で抄紙機のビジネスを始めた時ドイツ語を取り除こうというはっきりした努力がされたと言う。これからドイツ製のドライヤーを自国名で呼ぼうとする愛国心からヤンキードライヤーと呼んだ。
・米国で初期の抄紙機はほとんどベロイト社で製作され、ヤンキーマシンと呼んだ。ヤンキードライヤーの呼び方もこれに由来すると思われる。
ヤンキードライヤーの由来…紙の博物館「百万塔」第115号「ちり紙からティシュへ 衛生用紙生産技術 五十年の歩み」福井勝衛著から引用)

ドライクレープとウェットクレープについて  「巻き取りの回転速度」<「ドライヤーパートまでの回転速度」として、抄紙にわずかな速度差をつけて、ドライヤーにクレーピングドクター(刃)を当てて紙を掻き取る。そうすると、紙にクレープ(しわ)がでる。このクレープは完全に乾燥した後に付けるので「ドライクレープ」という。ティッシュペーパーやトイレットペーパーは、この製法で作る。
 これに対して、「プレスまでの回転速度」<「ドライヤーパート以降の回転速度」として、プレスロールにドクターを当てて紙を掻き取ると、湿紙にクレープができる。この場合、湿紙の状態でクレープを付けるので「ウエットクレープ」という。タオルペーパー等は、この製法で作る。
 どちらも紙に柔らかさ与えるが、ドライ式はウェット式よりも柔らかさが出やすく、嵩も出る。これに対してウェット式は平滑が出る。
エンボス加工とは

 紙、布、皮革、金属の薄板などの表面に凹凸模様を与える加工法をエンボス加工(embossing)という。なおエンボス(emboss)とは、紙・生地などに凹凸を付け、模様・図案などの浮き彫りをすることをいう。
 紙などの基材の表面に型付けを行う片面エンボス、表裏に型付けを行う両面エンボス、ふわっとした感じでボリューム感を出し、よい肌触り手触りが必要なトイレットペーパーや立体感が要求される鋼板の型付けが可能なスチールマッチエンボスがある。
 片面エンボスの場合、模様(絹目、布目、梨目など)を彫刻した凸凹のある金属ロール(エンボスロール)と弾性ロール(バックアップロール)との間に巻取紙を通し、加圧(型押し)して模様を付ける。両面エンボスの場合は、彫刻したロールを押しつけて弾性ロールに雌型の模様をつけてから紙を通す。コート紙を使用し、壁紙や小型パンフレット類などに利用される。
スチールマッチエンボスは上下合わせのエンボスロール(2本)の間に紙などの基材を通す。なお、弾性ロールにはペーパーロールとコットンロール、不織布ロールなどがある。

ティッシュペーパーの引火性について
 「引火を避けるため、火気のそばに置かないでください」と、ほとんどのティッシュボックスに記載されている。他の紙製品にはあまり見かけない注意書きですか、何故でしょうか。紙や木などの有機物が燃えやすいと言うことは一般的によく知られた事実なので、あらためて「引火しやすいので・・・」と注意することは行われていない。しかし、ティッシュペーパーの場合、紙の締まり具合を表す密度(緊度)は0.2g/3くらいで非常に小さく、ラフで普通の紙よりは薄くてスカスカな紙なので空気が通りやすく燃えやすくなっている。(参考)紙の密度…新聞用紙0.6g/㎝3、上質紙0.8g/㎝3、コート紙1.2g/㎝3
 ご存知のように物が発火するには、(1)燃える物質(可燃物)があること、(2)燃焼現象(酸化反応)を起こすための空気(酸素)があること、(3)着火源があり発火点以上の温度に熱せられること、の3つの条件が必要である。これに対しティッシュペーパーは可燃物であり、(1)の条件を満たしており、かつ非常に通気性のよいので(2)の条件である空気(酸素)が十分補給される。このように燃えやすいティッシュペーパーのそばに(3)着火源としてなんらかの火気があれば、引火して発火、燃焼する危険性が大きい。その危険性を喚起し、防火のための注意書きがしてあるわけである。


 以下、続きます
(2007年8月1日)

(参考・引用文献・ウェブ)
日本製紙連合会「紙・板紙統計年報」
・JISハンドブック「紙・パルプ」紙・板紙及びパルプ用語(JIS P 0001)、トイレットペーパーJIS P4501、ティッシュペーパーJIS S3104(日本規格協会発行)
・「広辞苑(第五版)…CD-ROM版」(発行所:株式会社岩波書店)
・世界大百科事典(第2版 CD-ROM版)…日立デジタル平凡社発行
・紙の博物館「百万塔」第115号「ちり紙からティシュへ 衛生用紙生産技術 五十年の歩み」福井勝衛著(2003.6)
・「紙パルプ2005 50年史と近未来」紙業タイムス社(´01年2月)
・ホームページぷりんとぴあ
・ホームページ【紙生活】身の回りの紙について
・ホームページ株式会社トーヨホームページにようこそ生産体制 紙ができるまで
・ホームページトイレットペーパー豆知識-トイレットペーパー-楽天ブログ(Blog)
・ホームページティッシュペーパー - Wikipediaトイレットペーパー - Wikipedia
・ホームページグリーン購入ガイドライン
「ティッシュペーパー」「トイレットペーパー」
・ホームページ古紙ネット-トイレットペーパー情報
古紙ネット-古紙トレペは増えている?
・ホームページ由利ロール機械株式会社

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