書評 新城和博『うっちん党宣言』ボーダーインク
「あれ?なんだこりゃ〜。」この本のページを最初にめくった時の印象だ。途中から、戦争と基地の話題がかなり続くのだ。いままで僕の「新城和博イメージ」はやっぱり、沖縄ポップ。書名の「うっちん党宣言」とは、いわゆる「転向」なのか?いやちがう。多分、これがいまの彼にとって、最もフィットした〈沖縄〉の語り口なのだろう。そして、そのポップさは依然健在だ。
昨年末、新城が十五年間続けたボーダーインクの雑誌「Wander」が終刊した。インターネットの影響などもあるが、何より新城自身が、初期のように〈沖縄〉をネタにして笑えなくなった。八九年の『キーワードコラムブック』以来、彼は沖縄の生活文化に、ポップな面白さを次々に発見・提示していく。この「ベタのネタ化」としての笑いは、「青い海だけじゃない」と叫ぶカウンターカルチャーでもあった。だが時代を下り、二〇〇〇年頃から本土メディアが「元気な沖縄」を売り出したとき、「ネタのベタ化」が進み、新城に笑えない違和感を残した。
もう一つ、背景がある。基地問題だ。昨年秋、基地移設の辺野古沿岸案が浮上、地元ぬきの日米合意に至った。私たち大学人を含む有志が「合意してない」を訴えていた矢先、「Wander」終刊の話は届いた。即座に思った、彼も「合意してない」んだな、〈沖縄〉の現状に。
「うっちん党」とは、現状にうっちんとー=うなだれてしまう沖縄県民のために立ち上げた、非政治非武装南風寄り結社のことだ。「暗い話はより暗く、明るい話はより明るく。」沖縄のいまと過去を真摯に受けとめ、かつポップに語り続ける、タフでクールな新城の覚悟がうかがえる。
「なぜ沖縄で戦争したの」「なぜ基地があるの」と聞く娘に、この複雑な現実を説明できない新城。僕は自分を重ねてしまう。
そして、彼が戦争に向き合う時、彼は戦争を直接体験していない。そこで編み出した手法が、〈ンパッ・フィクション〉。新城は、沖縄戦で最初の捕虜になった父の体験を、物語にして想像する。そのリアルさに、目頭が熱くなった。すべての沖縄関係者に、おすすめしたい一冊だ。
(多田治・琉球大学助教授)