4 書風の統一感を養うには
【質問】
小学生の時以来,ほとんど筆を持ったことがなかったのですが,思い立ち,一年ほど前から手習いに通っております。
さて,素人の疑問で,失礼とは存じますが,ひとつ質問させていただきたく存じます。
自分の書きたい言葉を,どのような字体で書こうかと考え,書道字典を開いてみたのですが,個々の字は色々載っているのですが,一連の言葉として書く時,統一のある字体なのかどうかがよく分かりません。
どのような勉強をすれば,そういった感覚を得ることができるのでしょうか。
特に,具体的なテキストなどを教えていただけると,非常にありがたいです。【回答】
○書道字典の性格
書道における文字の書きぶり,これを「書風」といいますが,当然のことながら書いた人の数だけ書風があります。
我々が使っている書道字典には,これまでの書の歴史の中で数多くの人々が,それこそ無数に残した書跡の中から,優れた文字を選び取って載せてあります。つまり書道字典には,異なった書風の文字が相互に脈絡なく並べられているわけです。
ですから,書道字典から文字をそのまま取ってきて,これを並べてみても,書風の違いが邪魔をしてどうしても統一感あるものとはなりません。○古典を習い込む
それでは,どうやって書風の統一感を養うかですが,基本は古典を習い込むことです。
自分の気に入った古典を選んで,よく観察し,繰り返し臨書をするのです。そうすることによって,その古典の書風が自然に身に付いてくると同時に,他の古典の書風との違いもだんだんに分かってきます。○「集字」をする
ある程度その古典の書風に慣れてきたら,その古典の文字を集めて,自分が書きたい言葉を書いてみます。その古典にある文字はそのまま拝借し,ない文字は偏や旁を組み合わせて文字を作ります。それを手本にして,字間のゆとりや全体バランスなどにも気を遣いながら書いていきます。
こうしたやり方を「集字」(しゅうじ)と言います。なお,集字の手助けになるものとして,ある特定の書者あるいは同系統,同傾向の文字だけを集めた書道字典があります。私も昔,呉昌碩の行書が好きだったので『呉昌碩書法字典』を買って集字をしたことがあります。
書店の書道コーナーにはこうした字典が並んでいますので,ご自分が好きな書風の字典があったら使ってみるのもよいでしょう。○「倣書」をする
さらにその古典の書風が身に付いてくると,集字をしないでも,自然にその書風で書けるようになります。これを「倣書」(ほうしょ)と言います。
倣書はその古典の書風を借りて書くわけですから,自分の作品とは言えませんが,技法的には自分自身の作品を書けるレベルになった段階といえます。なお,先生に師事している人の場合には,先生の書風(これを「師風」といいます)の影響というのはきわめて大きく,時には先生と寸分違わぬ作品を書く弟子もいるほどです。これなどは「究極の倣書」とでも言えるでしょうが,しかしそうなると,肝心の自分自身がどこかへ行ってしまいます。
やはり,倣書ができるようなレベルに達したら,意識的に古典や師風から離れ,自分自身の書風を模索していこうとする気持ちの切り替えが必要でしょう。○参考図書はお好みで
以上述べたことは,ご自分の趣味とペースに合わせて好きなようにやっていけばよいのですが,最近では古典を基にした作品作りの方法を解説した参考図書も出ています。
ちょっと書店を眺めてみただけでも,「書道技法講座」,「創作へのみちしるべ」,「書作品のまとめ方」などがシリーズものとして出ています。それぞれ特徴がありますので,ご自分で実際に手に取り,気に入ったら使ってみるのもよいでしょう。