5 印泥の色と値段について
【質問】
先日,初めて印泥を購入したのですが,店の主人に相談したところ,2千円程のものを勧められ,そのとおりに致しました。
私のイメージでは,印は朱色と思っていたので,その旨を言うと,朱色より,勧められた暗い紅色の印泥のほうが値段も高いし,書では一般的だといわれました。
先生の作品をHP上で拝見させていただくと,やはり朱色のように見えるのですが,2千円ほどのものと,1万5千円(とお書きになっていますね)のものとでは,そもそも全く異なるものなのでしょうか。
なお,私が求めた印泥は,箱に「上海西冷印社」とあり,器の蓋の裏に,シールで,「美?(爾という字をもう少し簡略にしたような感じの字)朱砂印泥 三十克装」とあります。【回答】
○印泥の種類
一般に販売されている印泥としては,上海西冷印社の「光明(こうみょう)」,「美麗(びれい)」,「箭鏃(せんぞく)」の3種類が多いようです。
お買いになった印泥は「美麗」ですね。中国では簡体字といって,漢字を簡略化した字形で表すものがあります。「麗」も下の「鹿」を省いて上の部分だけの形になっています。
「三十克装」というのは,30グラム入りと言う意味で,別に「一両装」とも言います。
なお,値段は「光明」が一番安く,次いで「美麗」,最も高いのが「箭鏃」となります。○色の選択はお好みで
印泥の色は大別して,赤みがかった「赤口」と黄色みがかった「黄口」に分けられますが,実際の色はもっと微妙です。
「光明」は明るい朱色で,漢字・仮名作品のどちらにもよく合います。「美麗」は落ち着いた濃い目の赤色で,漢字作品によく合います。「箭鏃」は黄色っぽく鮮やかな品のある朱色です。下に画像を掲げましたので,色を比べてみて下さい。
さて,気にしておられる印泥の色ですが,これは全く個人の好みで選んでいただいてかまいません。印泥にはここに掲げた3種類以外にもたくさんあり,それぞれに色が違いますので,ご自分で実際にご覧になって,気に入ったものを選ばれるのがよろしいかと思います。
光明(こうみょう) 美麗(びれい) 箭鏃(せんぞく) ○値段の違い
最後に,印泥の値段の違いについて触れておきましょう。
印泥は,朱砂(丹砂ともいう),モグサなどの植物繊維,木ロウや松脂などを原料とし,これらをひまし油などの油で練り合わせたものです。
印泥の値段の違いは,これらの原料の質の違い,そして製法の違いからくるものです。
例えば,印泥の朱色を出す元となる朱砂は,水銀と硫黄を焼きしめて作られますが,純粋なものほど重く,いつまでも変色しないという利点を持つ反面,当然価格も高くなります。
また,印泥の製法も肝心なところは秘密にされていて,価格にはそうした秘伝の技術料も含まれています。
お買いになった2千円の「美麗」も立派な印泥ですから,どうぞ大切に使ってあげてください。