・電気伝導度(Conductivity)という尺度

 電気伝導度とは読んで字のごとく、どのくらい電気を通すかである。電気抵抗の逆数(電気伝導度=1/電気抵抗)である。

 1cmの距離の電極間の電気抵抗値をΩcm(オーム・センチ)と言うが、その逆数を比電気伝導率という。さらにその値に100万をかけた数字が通常我々が使っている電気伝導度(マイクロジーメンス:μS/cm)である。1cmあたりの電気抵抗が100万Ωcmであれば、比電気伝導率は100万分の1であり、電気伝導度はそれに100万をかけた1μS/cmとなる。

 このややこしい定義を覚える必要はことさらないが、この尺度がかなり漠然とした意味あいのものであることは必ず覚えていてほしい。

 最近の熱帯魚の世界にはある種の電気伝導度神話みたいなものがあってこの値が小さければ絶対的に良い水で、大きければ絶対的に悪い水という風にどうも勘違いされているようである。この関係付けはほとんどの場合は正しいのであるが、そうでない場合もある。なぜなら、この値が単に水が電気をどのくらい通すかということだけの測定値であって、水中にどのようなイオンが含まれているかという質的なことをいっさい考慮していない尺度だからである。

 例えば鉄が100グラムと綿が100グラムの双方が秤に乗せれば同じ100グラムである(図1)のと同様に、塩水であろうが石灰水であろうが100μS



/cmを呈するものは100μS/cmという測定値になる(図2)のである。同じ測定値を持っていてもその中身は随分と異なるのである。同じ100μS/cmの測定値を呈しても、溶存物質の種類、分量は各検査対象(サンプル)で様々なのである。同じ電気伝導度の水でも、その中身によっては魚にとって負担になる水もあれば、そうでない水もあることを認識する必要がある。

 また、例えば糖類のようなものを例に上げると、これらの多くは水に溶ける訳であるが、分子状のままで水に溶けてしまうので、イオン性物質ほど電気伝導度を上げないのである。従って電気伝導度が低いからといって必ずしも純粋な水とは言えないのである。  電気伝導度はこのようにあくまでも目安としての測定値であって厳密な意味を持ち得ない。単に水がどれだけ電気を通すかだけのことである。一般的に水が悪ければ電気伝導度が高くなることは確かではあるが、この尺度への過信は禁物であるということを知っておいて貰いたい。