・浄水器は本当に必要か?

 浄水器を売っている側からこのように答えてしまってはいけないとは思うが、一般的な答えとしては「No」である。

 まず指摘しなくてはいけないことは、販売する側、される側の知識がとても少ないことである。言葉がきついかもしれないが、浄水器は持っている人にとって、ほとんどの場合、宝の持ち腐れと言われても仕方がない状況ではなかろうか?

 ROについて言えば、ROを使って作った水をどのように処理して使えばいいのかという議論が未解決のまま残っていると言って差し支えない。ディスカスに話を限定しても、各種コンディショナーを使う、水道水とブレンドする、RO製産水のみを漸次添加する(ROの製産水を直接水槽に添加しオーバーフローさせる)などの方法が提唱されている。

 水道水とブレンドするのは浄水器を使う意味を根底から否定するくらい矛盾していると言わざるをえない。そんなことをするくらいならROなんて最初から使わないほうがましである。水道に含まれる各種汚染物質の基準値は通常ppmのオーダーでの話である。水道原水をRO製産水で半分に希釈したところで何ら問題の改善にはならない。

 また、RO製産水をオーバーフローさせるやり方(「RO垂れ流し」と称しされている)もそれを実践されている人たちの話を聞く限りではかなり乱暴な方法に思えて仕方がない。何故なら、その方法が何故上手くいっているかの説明が非常に貧弱だからである。ROで出来た水は水以外に不純物を含まない。このような水では浸透圧が低いが故に魚にとってはかなりの負担となるのは明白である。「RO垂れ流し」の場合、成功失敗のキーポイントは餌にあるように思える。「RO垂れ流し」派で上手くいっている人々はディスカスハンバーグを自作している人たちが多いように見える。現状でのハンバーグ作成方法論も実はかなりいい加減で、大体は牛ハツベースに乳酸カルシウムをはじめいろんなものをごちゃ混ぜに添加している。この雑多な添加物が実は水の浸透圧を上げる正体、つまり「RO垂れ流し」で上手く魚を飼える秘訣だと言える。もちろん、これらの餌からの流出物は貧栄養な環境水(本来、魚は水から様々なものを摂取している)の改善にも役に立っているし、必要な栄養を内的(消化管経由で)補強しているわけでもある。

 RO製産水に添加剤を入れて魚を飼える水を作るという方法が一番ベストであるといえるが、現状では、なにをどのくらい入れれば良いのかという議論が貧弱である。この辺の議論は追々詰めていかなくてはいけない課題であるが、例えば人間に必要なミネラルはなにかということを例にとってみても、未だに半分の種類以下しか分かっていないのが現代社会の科学の本当の実力なのである。その生体内での働き、役割がちゃんと解明されているミネラルの数いたってはほんの少数になる。人間にとって役割でさえ、解明がこの程度しかされてないので、魚にとって、まして観賞魚にとってのミネラル、ビタミン、アミノ酸など必要性の解明には気の遠くなりそうな時間を要するであろう。

 浄水器(特に熱帯魚の世界)に対する巷での理解でさらに滑稽なのはいわゆる「プレフィルター」の使われ方である。実際のところ、「プレフィルター」はROの「前処理」と言う意味で「プレ」フィルターなのである。ROに流すちょろちょろとした流量(50GPDのROで0.65L/分しかない)に対する前処理として対応できる能力が「プレフィルター」の求められる能力なのである。ROの前処理には日本で通常市販されている「プレフィルター」と同じ大きさの10インチの長さのセディメントやカーボンで事足りるのであって、その小さなフィルターにホースを繋いで水道と同じ感覚で使おうと言うのは蓋し無茶である。浄化能力が落ちる温湯の処理にでも使おうものなら処理能力はさらに低下するのはおわかりなのであろうか。フィルターカートリッジの種類にもよるのであるが、通常の10インチプレフィルターの処理能力は5−6リッター/分が限界なのである。いわゆるプレフィルターを湯沸かし器の後に繋いで水槽にドバドバ水を入れるのは正直、なにも付けないに等しいものがある。プレフィルターは魚の為でなく飼育者の自己満足(つけていることに対する安心感)の為に使われているのが現状である。

 次に言えるのは、日本の水を全般的に考えた場合、通常飼育する上で浄水器が絶対的に要るほど水が悪いところは限られている。但し、水質が悪いところにおいてはROを使って水を一から作りなおさなければならないほど水が悪い。水質の善し悪しは主に地質的な影響(特に石灰分)、生活排水の混入、治水・水力利用設備の不整備などが原因である。自分の所は風光明媚な山村地域だからと言って水が必ずしも良いわけではない。

 浄水器の購入はご自身の飼育目的(ただ観賞用に飼うだけか、それとも繁殖を目指すのか)と供給される水道の水がどんな水質なのかを良くお考えになってから決断してほしい。また、飼育がうまく行かない場合、水を良くする必要もあるかもしれないが、今まで述べてきたような温度や餌への工夫、そして濾過方法、水換え方法なども併せて検討すべきであろう。