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・上手な繁殖の仕方(鰓吸虫とハンバーグシンドローム) 繁殖を目指す方がぶつかる一番大きな壁、それがハンバーグシンドロームである。稚魚がハンバーグを食べられるほどの大きさまでは成長するのであるが、以降一日に数匹ずつ死に始めやがてほぼ全滅と言った経過をたどる。残った魚にしても鰓が大きく開いた魚になり、とても鑑賞には耐えないし、このような魚を大きくなるまで育てることも困難である。これは主に鰓吸虫による障害であると言われている。 ディスカスに寄生する鰓吸虫はダクチロギルス(Dactylogyrosis)と呼ばれる単生虫である。一般的にこれを鰓吸虫(gill fluke)と称するが、実際の寄生虫の分類から言うと吸虫には属さないので、これについての文献検索を行う際などにはお気をつけいただきたい。(この部分の記載は過ちのようです。「単生網」は「扁形動物門」→「吸虫亜門」に分類されていますので、鰓吸虫を吸虫と称するのは正しいです。1999年9月9日追補) この虫の最大の特徴は寄生虫一般に見られる中間宿主無しに最終宿主から最終宿主へダイレクトに感染するという点である。寄生虫が卵から孵化し自由遊泳をしている間に魚の口から吸い込まれ鰓に寄生する。キンギョやコイなどの魚が保菌していることが多くディスカスからだけでなく他の魚種からも感染することに注意されたい。他の魚種やディスカスの多くの潜在的な感染の場合、典型的な鰓寄生虫症状を呈さないので、他の水槽から魚を導入することは、即この病気の持ち込みの原因であると考えていた方がよい。また、ダクチロギルスには沢山の種類(国内では15種類)があり、さらにシュード種(偽種:こちらはウナギなどに寄生)も存在し、薬剤に対する感受性(薬の効き方)も一様では無いようである。 この寄生虫は一対の大きな錨鉤(フック)と周辺小鉤(マージナル・フック)が存在し、このフックで魚の鰓に寄生する。魚への害は、このフッキング自体による損傷に加えて食害による組織増生、粘液分泌と吸血による貧血などである。魚の鰓の開閉が早くなり、重篤な寄生の場合には鰓が開きっぱなし(エバー・オープン)になる。貧血によるためか遊泳が不活発になったり、ふらふら泳いだりということが多い。 ディスカスの稚魚はこのような鰓吸虫の被害を受け易く、一度に100匹ずつ孵化する稚魚たちが櫛の歯が一つずつ欠けるように日に日に死んでいく。この死滅を防ぐ一番の方法は、繁殖親魚での段階でこの虫を駆虫しておくことである。なかなか根治することは難しい相手であるが、トリクロルフォンの規定量(0.5ppm)程度を10日程度使用するかホルマリン散布を行う。いずれにせよ卵には無効であるので親虫体と卵から孵化した幼虫体の両方の駆除が必要になるのでかなり長期間の薬浴となる。 なお繊毛虫であるキロドネラ(Chilodonella)でも鰓吸虫と似たような症状を呈するので本来ならば顕微鏡による鑑別が必要である。キロドネラ(熱帯魚の場合はChilodonella Hexastichaが多い)は比較的小さく(30〜40ミクロン)で有るのに対して、ダクチロギルスは0.3〜2mm有るので肉眼でも確認できるかもしれない。キロドネラはホルマリンやマラカイトグリーン(6mg/100リッター)で治療する。ただ、ダクチロギルスはホルマリンを使っても良くならないことは多いので、海外では鰓吸虫の治療にはフルベンダゾールなどのイミダゾール系駆虫剤を使うことが多いようである。 これらの駆虫の他、水槽の中を清潔に保ってやる、すなわち頻回の水換えを実行することや、ROを使って換え水の水質を改善してやることも有効である。また、ブラインを与えすぎて水を悪くしたりすることもあるし、ブラインを与える際に殻を綺麗に除去してやらないと問題が起きることになる。稚魚はブラインの殻を消化するキチナーゼと言う酵素を持たないため、ブラインの殻を摂取することで内臓を傷つけ弱ることが多くそれが負担になることが多いのである。 そういう意味ではシェルレス・ブラインも有効であろうと思う(私のところでは未検証)。これはブラインを漂白剤等で脱殻したものである。殻の害を低減するとともに、漂白剤を使うために無菌的な飼料であり、バイオロジカル・プレッシャーを低減する役目を果たす。さらにブラインについて言えば、ブラインを育てる際にディスカスの稚魚に必要な養分を取り込ませ、稚魚の健全育成を計ることも一助になる。 もちろん、親魚に十分な栄養をとらせ卵巣で発育中の卵時点での養分を強化することも忘れてはならない。卵から由来するヨークサックの中身を強化することにより稚魚の健全化と生き残りを計るわけである。特に親につかない場合にはハンバーグの中身を見直してやる必要が絶対にある。稚魚は孵化後親につくまでの間数日間は自身のヨークサックを栄養源として発育、分化し、活動する。ヨークサックが不完全な魚は力尽きてしまうだろう。 この項の参考文献は文献8、15、16、17。 |