慢性膀胱炎・間質性膀胱炎
残尿感・頻尿・排尿痛・陰部の痛み、これらの症状を訴えても「気のせい・精神的」と診断されてしまう悲しさをお察しいたします。

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 慢性膀胱炎・間質性膀胱炎の誤解

          【慢性膀胱炎の教科書的定義】
 慢性膀胱炎の定義に関しては、細菌性慢性膀胱炎のことしか定義されていません。
例えば、医学書院 標準泌尿器科学(第6版)211ページでは、
「無菌性膀胱炎:細菌感染によらない難治性の膀胱炎である。原因は不詳である。」
この定義によると、尿検査が正常で細菌感染が認められない慢性膀胱炎様症状は、「気のせい・心因性・精神的」と診断されても仕方がないことになります。

          【間質性膀胱炎の教科書的定義】
 同じく医学書院 標準泌尿器科学(第6版)211ページでは、
「間質性膀胱炎:感染症ではない。自己免疫疾患または膠原病といわれている。正確な原因はわからない。」
何とも情けない定義です。
 医歯薬出版株式会社 エッセンシャル泌尿器科学(第6版)60ページでは、
「中年女性に多く、粘膜下層、間質に慢性炎症を認める疾患である。原因は不明であるが、遺伝、アレルギー、リンパ系のうっ滞などが疑われている。近年では自己免疫疾患とする説が有力である。炎症が高度のものでは膀胱の萎縮をきたす。欧米には比較的多い疾患であるが、わが国ではきわめてまれな疾患である。」
日本ではまれな病気と位置付けされていますが、実際は想像以上に多いことが最近判明してきました。



               【誤解の背景】
 泌尿器科の教科書的専門書でさえ、上記のように定義しているのですから、慢性膀胱炎を急性膀胱炎の慢性化と思っておられる医師や患者さんが多くても仕方がありません。そのため、普段の生活の注意として、水分をたくさん摂り、我慢せずにおしっこに直ぐに行くようにしましょうと言われます。常識とお思いでしょう? この注意点は、細菌感染が原因の慢性膀胱炎の時の注意点です。

 私のように外来診療経験が長いと、細菌感染が原因の慢性膀胱炎の患者さんには滅多にお目にかかったことがありません(大学病院や総合病院の勤務医の頃は別ですが)。ですから、細菌感染の慢性膀胱炎は慢性膀胱炎の患者さんの中でもごく少数派でしかないと思えて仕方がありません。ほとんどの慢性膀胱炎の方には細菌感染が認められないのです。
 上述の定義に出て来る細菌感染の基礎疾患といえば、
・脳梗塞・脳出血で膀胱の働きが低下した神経因性膀胱
・腎結石や膀胱結石
・膀胱結核
・癌の放射線治療後の後遺症である放射線性膀胱炎
・子宮癌や直腸癌が膀胱に浸潤している
・糖尿病で寝たきり状態
などの重篤な基礎疾患です。
このような患者さんはすでに基礎疾患が分かっているので、慢性膀胱炎症状で苦しむことはありません。なぜって?それは基礎疾患の方がはるかに苦しいからです。

               【本当の原因】
 では、外来診療の多数派である細菌感染のない慢性膀胱炎の患者さんは全て神経症やノイローゼなのでしょうか。そんな馬鹿な話はない筈です。私は多くの慢性膀胱炎は細菌感染が関与していないと断言します。では、慢性膀胱炎の本当の原因は何でしょうか?
 長年数多くの慢性膀胱炎の患者さんを拝見していますと、その原因がまず年齢で分けるられることに気付きます。つまり、
●若年型:20歳前後から40歳代
●更年期型:50歳代から高齢者
です。膀胱鏡検査で膀胱の中を拝見すると、どちらの年齢層も「膀胱三角部炎」の所見が見られます。
 膀胱三角部とは膀胱の中で二つの尿管口と膀胱の出口を結んだ三角形の部分を云います。この部分は膀胱の感覚神経が比較的多く集まる場所です。言い換えると、膀胱の「尿量知覚センサー」のような場所です。この膀胱三角部が炎症を起こすと、センサーの働きが過敏になり残尿感や頻尿などの症状を誘発するのです。
 膀胱鏡検査で観察できる若年型の膀胱三角部炎は毛細血管増生・顆粒状変性・白苔(はくたい)変性が見られます。更年期型は濾胞(ろほう)状変性・嚢胞(のうほう)状変性・リン酸塩沈着結痂が見られます。

         【更年期型慢性膀胱炎の原因】
 更年期型慢性膀胱炎は女性ホルモンの低下による、膀胱粘膜萎縮が原因と考えられます。ですから女性ホルモンの補充療法を治療として行うことにより、膀胱粘膜は潤い、みずみずしくなり、若返るので症状が改善します。
 しかし、若年型はそう簡単に原因が分かりませんでした。「分かりませんでした」と過去形で表現したのは、今はその原因が分かったからです。いや、恐らくこれが原因だろうと思えて仕方がありません。泌尿器科学会にも発表していませんから、私の自論として参考にお読み下さい。

          【若年型慢性膀胱炎の原因】
 膀胱鏡検査で膀胱三角部炎の所見を認めたものの、それは結果であって、何故そのようになるのか原因が分かりませんでした。膀胱三角部炎で過敏になった膀胱三角部をレーザー光線で部分的に焼灼することで、患者さんの苦しみを軽快させることは容易にでき、患者さんには感謝されたのですが、何かシックリ来ないのです。原因が見えてこないからです。
 それまで、私も教科書の定義通り何らかの細菌感染が原因か、体質で慢性膀胱炎になるのだろうと漠然と思っていました。しかし、明らかに基礎疾患がない健康な20歳前後の頻尿・残尿感に苦しむ女性を何人も見る度に、『これではいけない!何かおかしい』と自問自答していました。

       【慢性膀胱炎と間質性膀胱炎との間には・・・】
 無菌性の慢性膀胱炎の終着駅の一つが間質性膀胱炎だというのが私の自論・仮説です。これから無菌性慢性膀胱炎の原因が排尿障害であるという自論を次項で展開しますが、その排尿障害の終点が二つの形に分かれます。一つは神経因性膀胱で二つ目が間質性膀胱炎です。どちらも排尿障害に対する膀胱の退行変性障害と考えると理解しやすくなります。そして慢性膀胱炎も間質性膀胱炎も排尿障害を早期に治さないとどちらの病気も治らないことになります。

               排尿障害
                ↓↓↓
            ★無菌性慢性膀胱炎
             ↓↓        ↓↓ 
     神経・筋肉の過伸展  細胞間のコラーゲン増加
           ↓↓↓       ↓↓↓ 
       神経・筋肉の断裂   膀胱伸展性の低下
           ↓↓↓       ↓↓↓
       神経・筋肉の麻痺   膀胱容積の縮小
           ↓↓↓       ↓↓↓ 
         神経因性膀胱   ★間質性膀胱炎
           ↓↓↓       ↓↓↓ 
           残尿増大     極端な頻尿
           ↓↓↓       ↓↓↓ 
       細菌性慢性膀胱炎  日常生活への支障


 慢性膀胱炎と排尿障害

               【隠れ排尿障害】
 慢性膀胱炎の患者さんは、世代的には20歳前後から40歳代の女性の方がほとんどです。症状の多くは、頻尿・残尿感などの尿路症状ですが、おしっこが出にくいと訴えて来院される患者さんは少数派です。たまに、おしっこが以前から出にくいのだが、泌尿器科専門医に症状を訴えても、「若い女性でおしっこが出にくい訳がない!気のせいだ!」と言われてあきらめていた患者さんがほとんどです。
 そのように訴えられた慢性膀胱炎の患者さんに尿流測定検査と残尿測定を行っていただくと、明らかな排尿障害と残尿が認められたのです。「慢性前立腺炎のページ」で説明したように、慢性前立腺炎のような軽微な炎症疾患にもかかわらず排尿障害が存在し、その排尿障害を治療すると慢性前立腺炎の症状が軽快したのをヒントに排尿障害の検査を慢性膀胱炎の女性患者さんにも行うようになりました。
 慢性膀胱炎の患者さんには全例、排尿障害を捜す検査(尿流測定検査・残尿測定検査)を行うことにしました。するとどうでしょう!全員と言っていいくらいに排尿障害が見つかるのです。慢性膀胱炎のような軽微の炎症では物理的・機能的な排尿障害があってはならないのです。慢性膀胱炎と呼ばれる病気は、実は排尿障害の症状だということが分かってきました。

            【炎症性ポリープの存在意義】
 そこで、内視鏡検査を行うと、もっと明解な答えが得られました。膀胱と尿道の移行部、膀胱頚部と呼ばれる膀胱の出口の開きが悪いか、狭い(すぼまっている)のです。そして、女性の膀胱鏡検査では一般的に行わない尿道鏡で観察すると、膀胱頚部にポリープが多発している患者さんを多く見かけます(写真)。今までは無価値な「炎症性ポリープ」と診断し、私も含め、炎症性ポリープの存在意義を深く考えもしなかった泌尿器科専門医でした。しかし慢性前立腺炎の項目で説明したように、生体反応で意味のない反応はない筈だという私の信念の元、この炎症性ポリープは尿のジェット流を生じる排尿障害の二次的変化であると、私は仮説を立てて論理を構成していくと、矛盾なく病状が説明できるようになりました。
 「炎症性ポリープ=尿ジェット流=膀胱頚部開口障害=排尿障害」という図式です。
 また、炎症性ポリープの存在がなくても、膀胱三角部炎や膀胱肉柱形成の存在が確認できれば、間接的に膀胱頚部開口障害があると断定しても誤りではないことが、治療成績で判明しました。
 排尿障害から慢性膀胱炎に至る流れを簡単に図式で表すと下図のようになります。


        【排尿障害から慢性膀胱炎への流れ】

              膀胱内尿道口狭窄
                 ↓↓↓
                 排尿障害
                 ↓↓↓
             慢性的な物理的刺激
                  ↓↓↓
            膀胱の慢性的物理的障害
                  ↓↓↓
               膀胱三角部炎
                 ↓↓↓
               膀胱の知覚過敏
                 ↓↓↓
            慢性膀胱炎様症状(無菌性)
                 ↓↓↓
   大脳中枢・脳幹部中枢・脊髄中枢の興奮の持続と過敏
                 ↓↓↓
              多彩な症状と難治性
                 ↓↓↓
     「慢性膀胱炎・神経性頻尿・心因性頻尿・気のせい」
                と診断される


 慢性膀胱炎の検査

高橋クリニックで行う慢性膀胱炎の検査には、次の五つの項目があります。

1.尿検査
2.超音波検査
3.尿流測定検査
4.残尿測定検査
5.膀胱鏡・尿道鏡検査

               【尿検査】
 尿には様々な物質や成分が含まれています。異常な成分として、タンパク・赤血球・白血球・細菌・カビ・円柱などが上げられます。慢性膀胱炎の場合には、今までお話した通り正常の方がほとんどです。ですから、この尿検査だけでは病気の診断には不十分です。

               【超音波検査】
 痛くない検査として有名な超音波検査で、膀胱内の結石・腫瘍などを確認することができます。慢性膀胱炎の場合には、膀胱粘膜が厚くなります。特に膀胱三角部の粘膜の厚みが増加した所見と、粘膜下に浮腫が認められます。ただ、超音波検査の経験があり正常と診断されたとしても、漫然と検査をする医師が存在しますから、その診断の信憑性は疑問です。
●写真:膀胱粘膜の肥厚と粘膜下の浮腫が確認できます。

               【尿流測定検査】
 慢性膀胱炎の検査で他の病院で行われないのが、この尿流測定検査です。通称「ウロフロ uro-flow-metry」と呼びます。簡単に言うとおしっこの勢いを診る検査です。一般的に前立腺肥大症の男性患者さんの排尿障害の診断に利用されています。
●写真:治療前と治療後の尿流測定検査結果です。縦軸が尿流速度(ml/秒)で横軸が排尿時間(秒)です。スタートスイッチを押してから排尿開始までの時間も重要になります。
 排尿障害がある場合、尿流曲線のグラフの山は高さが低く、裾野が広く、頂がなくギザギザの山脈になります。治療後は、山の高さが高く大きな山型のグラフになります。

               【残尿測定検査】
 排尿後に、超音波検査で膀胱に尿が残っていないか(残尿)を確認し、残っていればその量を測定します。尿流測定検査とこの残尿測定検査の2つで排尿障害の存在を証明できます。
●写真:治療前の残尿は38ml、治療後の残尿は4mlです。

               【膀胱鏡検査】
 内視鏡検査を初めて行ったのが泌尿器科医であったことをご存知ですか?内視鏡検査=泌尿器科専門医なのです。しかるに、最近の泌尿器科専門医はこの膀胱鏡検査を行いません。検査を行わないから、慢性膀胱炎の所見が確認できずに「心因性頻尿」などと誤診してしまうのです。
●写真:若年型慢性膀胱炎に多い膀胱粘膜白苔変性が主体の膀胱白板症3例です。また、膀胱内尿道口狭窄によって二次的に生じる炎症性ポリープ3例です。

               【尿道鏡検査】
 尿道鏡検査は尿道の長い(約20cm)男性のための検査で、尿道の短い(4cm前後)女性には意味がないと思われていました。しかし女性にも全て尿道鏡検査を行うと、今まで見えていなかった事実が次第に見えて来ました。
●写真:内尿道口の開きが十分でないと、膀胱からの尿流がジェット流になります。ジェット流の環境では乱流が生じます。その乱流を整流化させるために、生体反応としてポリープ状の尿道粘膜の変性が起き、写真のようにたくさんのポリープができます。このようなポリープが確認できれば、例え内尿道口が正常に見えても普段の排尿時には十分に開いていないと云えます。


 慢性膀胱炎の治療

 慢性膀胱炎の治療には次の6つの方法があります。

1.内服治療
2.解熱鎮痛剤坐薬
3.神経ブロック
4.膀胱内薬剤注入
5.膀胱拡大術
6.手術治療

               【内服治療】
 慢性膀胱炎の内服治療で使用される薬剤には下記のような種類があります。
・抗生剤
・頻尿改善剤(ブラダロン・ポラキス・バップフォ)
・精神科薬剤(セルシン・デパス・トフラニール・デプロメール)
・胃潰瘍薬剤(プロテカジン)
・αーブロッカー(エブランチル)
・抗アレルギー剤(IPD)

 慢性膀胱炎の治療として細菌性膀胱炎を疑われ抗生剤を長期間投与されるのが一般的です。そして治りが悪いと頻尿改善剤、精神科薬剤



               【解熱鎮痛剤坐薬】
 残尿感・頻尿は膀胱の痛み感覚の転換と考えることが出来ます。そのために何らかの形で痛みを和らげることが出来れば、残尿感や頻尿が軽減するのです。内服の痛み止め(消炎鎮痛剤)を飲んでいただいてもなかなか症状が軽快しませんが、痛み止めの坐薬(肛門から挿入する弾丸のような軟膏の固まり)を使用すると、直接膀胱に効くようで残尿感や頻尿の症状が軽快します。この坐薬だけで症状が軽快して、その後まったく薬を使用しなくても日常生活が普通に戻った方がおられます。  
                
               【神経ブロック】
 慢性膀胱炎の経過が長いと、仙骨部の副交感神経が過緊張状態に陥り、神経回路が下り坂をブレーキが利かなくなった自動車のような状態になります。私が得意とする仙骨神経ブロックは、この状態にブレーキを掛け神経興奮の悪循環を断つには最適の治療です。
               【膀胱内薬剤注入】
DMSO(ジメチルスルフォキシド)
ヒアルロン酸

               【膀胱拡大術】

               【手術治療】
●膀胱三角部レーザー光線焼灼術
 過敏になっている膀胱三角部を少しでも鈍感にするための治療です。膀胱の感覚は膀胱三角部に比較的多く集中しています。もちろん膀胱全体に膀胱の感覚センサーは広がっていますが、膀胱全部を焼灼することはできません。そこで少なくとも膀胱三角部だけでも治療すれば、膀胱感覚の最大公約数的な治療になる訳です。
 膀胱三角部レーザー光線焼灼術は、膀胱三角部を静めるための治療ですから、更年期型慢性膀胱炎にも若年型慢性膀胱炎のどちらの治療にも補助的に利用できる効果的な治療です。
●膀胱頚部切開術
 若年型慢性膀胱炎の主要原因は膀胱頚部の拡張障害(膀胱排尿筋尿道括約筋協調障害・膀胱内尿道口狭窄)と私は考えております。開きの悪い膀胱頚部を電気メスで切開すれば、排尿障害は改善され、慢性膀胱炎は治ります。


               【治療の難しさ】
 私が治療した慢性膀胱炎の患者さんは100%治っています、と言いたいところですがそんなわけはありません。治療した患者さんの内、5割の患者さんが非常に良く治り4割の患者さんの症状が軽快しています。残り1割の患者さんの症状は変わらないか不満を訴えておられます。その理由は三つあると思います。

 《第1の理由》について説明します。膀胱感覚の「尿意」は本来、膀胱に尿が溜まることによって起きる膀胱伸展の「痛み」です。尿が溜まるたびに膀胱が痛いのでは、生き物として尿をするのが嫌になり最後には水分を取らなくなってしまいます。すると生き物としては致命的ですから、膀胱伸展の「痛み」を脳中枢の神経回路で「尿意」に変換して意識させるのです。この「神経回路」がキーポイントです。
 排尿障害が潜在化すると、排尿のたび毎に膀胱収縮による圧力が膀胱壁に直接跳ね返ってきます(作用反作用の法則)。毎日その刺激を受けていると膀胱も辛くなり少しでも楽な方向に逃げようとします。そのために少ない尿で排尿させようと膀胱システムがフル稼働します。それが膀胱の過敏になり頻繁な尿意すなわち「頻尿」や「残尿感」になるのです。
 「神経回路」が長期間負荷を受け続けると誤作動を起こし始め、膀胱伸展痛が尿意に変換しなくなり、本来の「痛み」、「しびれ」や膀胱以外(尿道・会陰部・下腹部・腰・大腿など)の症状を作り上げてしまうのです。さらに経過が長くなると、この「神経回路」の誤動作は修復しにくくなります。ですから手術で排尿障害を改善しても脳中枢の「神経回路」が修復されない限り症状は改善しないのです。
 治療として「神経回路」の誤動作を和らげるために精神安定剤・抗うつ剤・漢方薬が作用します。排尿障害を治療しなくてもこれらの薬がある程度効き目があるのはこの「神経回路」の存在のためです。
 また、膀胱・前立腺の過敏を和らげるために解頻尿改善剤・解熱鎮痛剤座薬・サプリメント・低周波治療・仙骨神経ブロック・温熱治療・膀胱内薬剤注入(ヘパリン・DMSO)・膀胱三角部レーザー照射などがあります。

 《第2の理由》について説明します。第1の理由で頻尿が継続すると膀胱は膨らまなくなります。ちょうど病気で寝てしまった老人がしばらくすると足腰が弱くなって歩けなくなるのと似ています。いわゆる筋肉の廃用性萎縮・関節の拘縮です。膀胱が膨らむのを忘れてしまったと言ったらよいでしょうか。膀胱にとっては膨らまずに縮こまっている方が楽です。
 そうすると、膀胱が硬くなり本当に膨らみません。膀胱容量の極端な低下です。例えば尿が100ml溜まると、膀胱は硬いのでそれ以上膨らまなくなります。すると膀胱内圧力はぐんぐん高くなり500ml以上溜まった時と同じ圧力になりますから強い尿意になり頻回にオシッコに行くようになるのです。
 治療として仙骨神経ブロックまたは硬膜外神経ブロック麻酔下で行う膀胱拡大矯正術の定期的治療があります。
 
 《第3の理由》について説明します。以上の「神経回路の誤動作」「膀胱・前立腺の過敏」「膀胱容量の低下」と先日説明した「隠れ排尿障害」の4つの要素が複雑に絡み合い、非細菌性慢性前立腺炎と言われる症候群の患者さんの多様な症状に結び付いていると考えられます。
 私が治療し治った4割の患者さんは「隠れ排尿障害」要素の比重が高く他の要素が低かったからでしょう。症状が軽快した3割の患者さんは「隠れ排尿障害」要素の比重が比較的高く他の要素も同じくらいに高いので「軽快」程度の治り方だったのでしょう。
 3割の無効患者さんは出発点である「隠れ排尿障害」要素は比重が低く、他の要素に主役を奪われ、排尿障害の治療をしても症状の改善を得られなかったのだと考えます。ただし、慢性膀胱炎に対する考え方は私独自の考え方です。正しいか否かは後の世でわかるのだと思います。


 慢性膀胱炎の実例

 慢性膀胱炎といっても皆同じ症状ではありません。また治療経過も様々です。下記に高橋クリニックに実際に訪れ、診察・検査・治療なさった患者さんの記録を要約しました。脚色は全くしていません。患者さんの苦悩・決断・勇気・喜びと、医師である私の涙ぐましい根気・努力を知っていただきたい!しかし診断や治療法はまだまだ発展途上です。これからも切磋琢磨・研究精進します。ご期待下さい。

【実例1】 カルテ番号14336○○○美子さん36歳女性の場合
 10代の頃より1時間に1回〜2回の頻尿と5分毎の尿意頻拍で悩んでいました。医師に相談しても、尿検査で異常がないので気にしないようにしなさいと言われるのみ。そのうち持病の躁鬱(そううつ)病が発症し精神科で治療を始めました。精神状態は薬でコントロールできていますが、尿の症状は治りません。でも精神科の病気があるので、尿の症状も心から来るものとあきらめていました。
 たまたまインターネットで高橋クリニックのHPで慢性膀胱炎について知り、当院を受診しました。尿流測定検査で尿の勢いはひどいものです。本人も尿流曲線のグラフを見て「ひどい!」と叫びました。「心のせいではなかった!」と喜びました。手術治療で排尿状態は改善しました。手術後、内科と精神科の医師に心の病気のせいではなかったことを伝えると喜んで帰宅されました。
●総合評価:
ウロフロではご覧のようにチョビチョビしか尿が出ていません。残尿も38mlありました。膀胱三角部もハッキリした白板症です。レーザー光線でこの白板も含めて膀胱三角部を焼き、膀胱頚部を広げる手術を行いました。手術後のウロフロは別人と思うくらいに勢いよくなり、残尿も4mlしかありません。


【実例2】 カルテ番号13542○○○奈子さん20歳の場合
 5年前より恥骨部・尿道の激痛が毎日3回突然襲ってきます。激痛の持続時間は30分です。その間ジッと我慢しなければなりません。S大学病院・K大学病院・A大学病院・某労災病院を転々と受診しましたが、特に異常なく、精神的なものと診断され、精神薬を処方され毎日を過ごしておられました。激痛がいつ襲ってくるか分からないので、外出や旅行ができずに悶々とした毎日を過ごしておられました。
 インターネットで慢性膀胱炎を手術で治すことを知り、藁をもつかむ気持ちで来院されました。この女性は頻尿症状は特になく、排尿障害も自覚していませんでした。検査してみますと、1回尿量が544mlと十分なのですが尿流曲線がギザギザの山型で裾野も広がっている排尿障害を認めました。また、残尿も50mlとかなりの量でした。
 治療により排尿状態は極めてよく残尿も5ml以下になりました。毎日3回あった激痛が早朝の始めの排尿後に1回だけに減少したのですが、その1回がなかなか治ってくれません。前述の「治療の難しさ第3の理由」の症例に属します。ここで、日常生活について更に詳しく聞くと、この患者さんは必要以上に水分を摂っていることが判明しました。「誤解の項目」でご説明したように、急性膀胱炎の治療として水分をたくさん摂るという方法がありますが、慢性膀胱炎の場合、細菌感染が原因ではないのでまったく無意味です。そこで寝る前の大量の水分摂取を止めていただきました。すると早朝排尿後の激痛がなくなり、安定してきたのです。やれやれ・・・。
●総合評価:
ウロフロ検査では一見尿の勢いは良いのですが、超音波エコー検査で残尿を測定すると残尿50mlと大量です。手術で狭い膀胱頚部を広くしました。手術後のウロフロではご覧のように勢いがさらによくなり、残尿はわずかに2mlになりました。


【実例3】 カルテ番号12691○○○々さん22歳の場合
 3年前より1日20回前後の頻尿で苦しんでいました。泌尿器科専門のクリニックを2軒、J大学病院婦人科、某ウィメンズクリニックを受診しましたが、特に異常なく、やはり精神的なものと診断せれあきらめていました。
 インターネットで高橋クリニックを知り来院されました。来院時に頻尿日誌をつけていただくと、1日21回の頻尿と1回の尿量の平均が120mlです。来院した当初は、私もまだ慢性膀胱炎の原因が排尿障害とは考えておらず、膀胱三角部炎にだけ注目していて、レーザー光線で敏感な膀胱三角部を焼灼しただけの治療を行いました。しかし、一時的に頻尿症状は軽快するのですが、数ヶ月すると、やはり元の頻尿症状に戻ってしまうのです。仙骨神経ブロックを行い膀胱拡大術を定期的に行いますが、行った直後2ヶ月程は頻尿が抑えられる程度で、また元の頻尿症状に戻ってしまいます。
 この女性も特に排尿障害を訴えていませんでしたが、尿流測定検査を行うと、明らかな排尿障害があり、またわずかではありますが残尿も認めました。そこで患者さんと話し合い、膀胱頚部の切開手術を行いました。すると、自覚していなかった排尿障害を手術後「こんなにおしっこの勢いが良かったんだ!」と初めて自覚できたのです。
●総合評価:
ウロフロ検査では勢いはあるものの、赤く記したように山が三つあります。これは、排尿障害が隠れていて腹圧を利用して排尿している証拠です。残尿は8mlと少なかったのですが、患者さんと十分にお話をして手術を行いました。膀胱頚部を広げると、手術後のウロフロは非常によくなり、患者さんの喜びに結びつきました。


【実例4】 カルテ番号13556○○○子さん28歳の場合
 1年以上前より1時間に6回の頻尿で苦しんでいたご婦人です。始終尿意頻拍が襲ってきて外出が出来ません。婦人科クリニック1軒と泌尿器科専門クリニックを2軒行かれましたが治りません。それまでの処方された薬は次のようです。
・抗生剤:クラリス・パンスポリンT
・頻尿改善剤:バップフォ・ポラキス
・精神科薬剤:グラダキシン・メイラックス・トフラニール
・排尿筋作用剤:ウブレチド
・漢方薬:猪苓湯合四物湯・四物湯
・健胃剤:ムコスタ・セルベックス
 膀胱容量が小さく、診察時の尿流測定検査ができませんから、排尿障害の確認ができません。取り合えず、治療を始めました。これまでの治療は無効なので、異なる観点から進めます。まず、解熱鎮痛剤坐薬を試みました。極端な頻尿(1時間に6回)は少し改善し30分〜1時間に1回に減りましたが、直腸過敏のためか下痢症状が出現しました。そのため解熱鎮痛剤坐薬の治療は断念しました。 
 次に、仙骨神経ブロックを行い膀胱鏡検査と膀胱拡大術を試みました。膀胱鏡検査で膀胱三角部炎と膀胱頚部の狭いことが判明しました。膀胱拡大術で膀胱は400mlまで拡張でき、術後コンスタントに1時間に1回の頻尿になりました。でも彼女は覚悟を決め、手術をすることになりました。
 手術後、尿意頻拍は消失、頻尿も改善し波はありますが1時間〜5時間に1回になり大喜びです。嬉しいことがもう一つあります。それはクラシック・オーケストラのメンバーであるボーイフレンドの演奏をトイレが近いためにホールで一度も聞いたことがなかったのですが、手術後、初めてジッと聞くことができたとメールで喜びのお便りがありました。
 患者さんもそうですが、医師である私も結構根気よく治療しているのがお分かりでしょう。でも患者さんが私について来てくれるから出来るのです。
●総合評価:
頻尿のため尿がためられずにウロフロ検査は手術前には出来ませんでした。膀胱三角部を治療し、膀胱頚部を開いたところ、手術後のウロフロでは尿が十分にためられるので見事なオシッコの勢いです。

★下記に実例4の患者さんのお礼のメールを原文のまま掲載します。参考にご覧になって下さい。

「こんにちは。○/○に膀胱三角部炎の手術を受けました○○○子です。
 去年の1月に初めて急性膀胱炎になって以来、治ってもすぐ再発し症状は残りどこの病院に行っても、菌はいないから気のせい、の繰り返しでした。いろいろな薬を処方されましたが、薬を飲むと気分が悪くなりボーっとしてしまい、仕事にも遊びにも支障が出るし、毎日暗い気持ちでした。
 先生のサイトを見つけたときは、治療内容、方針とも他の病院とは全く違う印象を受け、希望が見えたように感じました。手術を受け、症状が実際に改善されたのには感動です。なにより人生に対し前向きになることができました。私の仕事は○○○で、普段はオフィスにいるのですがセールの時ショップにヘルプに行きます。これからは堂々と行くことができます。
 また、彼はクラシックの○○○なのですが、これで安心してコンサートにも行くことができます。まだ残っている感じはあるのですが、昨日言われた通り、少し我慢して、トイレに行く間隔をなるべくのばそうとしています。今後は、定期的に水圧拡張をお願いしたいと思っています。宜しくお願いいたします。本当に、どうもありがとうございました。
 先生は私の人生を変えてくれたと言っても過言ではありません。なんだか大袈裟になってしまいましたがお礼を言いたくてメールしてみました。」


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