第二 当事者

一 原告

1 自然人
 別紙原告目録1記載の原告らは、
 圏央道新設工事が行われる八王子市裏高尾町に居住する者、
 圏央道新設工事が行われる八王子市裏高尾町876−4を含む数筆の土地に、所有権、賃借権、立木所有権を有する者、
 圏央道新設工事が行われる八王子市高尾町2513番山林および同市南浅川町2586番地所在の山林を所有する者、
 高尾山・八王子城跡を中心とする自然環境等を守ろうとする自然保護団体に所属する者、
 その他高尾山または八王子城跡を訪れた経験を有する者で高尾山・八王子城跡を中心とする自然環境等を守ろうとする者、
である。

2 自然保護団体
 別紙原告目録2記載の原告は、高尾山および八王子城跡を中心とする自然環境等を守ろうとする自然保護団体である。
 これら自然保護団体は、法人格を持っていなくても、規約で自然保護活動を目的とし、団体としての組織を備え、代表を定め、総会の運営や財産の管理等団体としての主要な点が確定している団体であり、権利能力なき社団としてその名において環境を守るための訴訟を提起できる。
 以下本件原告である自然保護団体を簡単に説明する。

(一) 高尾山自然保護実行委員会
 圏央道から高尾山とその周辺の自然を守ることを目的に、1985年5月東京都内の自然保護団体が集まって結成された。現在会員は24団体と30名の個人で構成している。現在の代表は吉山寛である。
 裏高尾で自主環境アセスメントに参加し、それをもとにした環境アセスメント意見書提出運動を繰り広げ、86年には圏央道計画撤回を求める署名を13万余名集めて都議会に提出した。89年にはブックレット「高尾山が危ない」を発行し、93年には長年にわたる高尾山の自然環境調査を「高尾山健康度調査」として発表し、97年にこの調査結果を含む自然観察ハイキングガイドブック「私の高尾山」を発行した。また88年から「高尾山を世界遺産に」連続講座を開き、高尾山の価値の再認識活動を進めている。この講演会の記録を99年発行した。

(二) 高尾山の自然をまもる市民の会
 高尾山の自然をまもり、緑の街づくりをすすめるために、1988年6月に八王子市始め首都圏、全国の市民団体、住民運動、労働団体、婦人団体、自然保護団体、学者、研究者、文化人等多くの団体および個人が集まって結成された。現在会員数は、34団体と1000名の個人で構成されている。現在の代表は橋本良仁である。情報交換と啓蒙、教育のための機関誌(1992年6月第三種郵便物認可)を毎月発行し、市民講座、シンポジウム、イベント等を行っている。
 1995年から都市計画道路や高規格幹線道路等と対応している首都圏道路問題連絡会の事務局団体を担当している。

(三) 高尾自然体験学習林の会
 1989年から裏高尾町の地主の協力を得て、圏央道予定地内の土地に借地権を設定し、賛同者の共同の借地権として登記するナショナルトラスト運動として発足、運動を進めている。1992年からは2千数百本の梅林、雑木林およびスギ林を購入し、販売する立木トラスト運動も展開している。
 年1回の総会を決議機関とし、代表1名、会計2名、事務局若干名の機関を置いている。会員は、個人のみとし、現在の会員数は、180名である。
 現在の代表は、吉山寛である。
 収入は、会費と寄付金で、会費は年間1口2000円としている。土地の賃借料は、会費から支払っている。
 土地や林の中で自然に接する自然観察、管理作業を行うほか、高尾山をフィールドに自然観察会を開く等高尾山の豊かな自然の学習、保全の啓発活動を行いながら、圏央道計画の問題点を訴えている。高尾山型ナショナルトラスト、梅の里トラスト、猪ノ鼻山(いのはなやま)雑木林トラストとして、圏央道から高尾山を守る活動をしている。
 会で借りている土地は、八王子市裏高尾町884(2360u)、同町876−4(72u)、同町876−7(403u)、同町1050−1(4019u)、同町1050−2(858u)の5ヵ所、合計7712u等である。  現在の立木トラストは、雑木林トラストとしては八王子市裏高尾町1069−2所在の立木、梅の里トラストとしては同町944−1、944−2、945−1、945−1の外、885−8、所在の梅の木を所有している。

(四) 国史跡八王子城とオオタカを守る会
 八王子城跡を開発破壊から守る運動は、1965年5月のアシダ曲輪の破壊以来地元の歴史研究団体を中心に行われてきたが、本会は史跡と希少生物オオタカの生息を圏央道トンネル計画から守ることを目的として明確に打ち出した研究・保存運動団体である。多摩考古学研究会の有志、八王子城研究会、八王子・城山のオオタカを守る会等からなり、1999年12月5日に結成が決まった。
 2000年1月8日に発足総会を開いて規則や役員を決め、会報の発行・見学会・観察会・講演会などを行っている。6月末現在の会員数は104名であり、会費1000円。役員として会長、副会長、事務局長を置く。現在の会長は、椚國男である。

(五) 地権者の会・むさゝび党
 「高尾山の自然および関連地域の住環境を守る」ことを目的とし、そのために、「圏央道およびそのアクセス道路関連の土地を収得し、トラスト運動を行う」(会則)こととして1995年結成した。現在、高尾山南側山麓の八王子市高尾町2513番山林および同市南浅川町2586番地所在の山林に共有地を所有している。圏央道トンネル反対の100万人署名はじめ高尾山の自然を守る運動に積極的に参加している。
 会が取得した土地の共有権者をもって会員とし、現在会員89名。そして、会員については、共有地の各自持ち分を会の承認なしに他人に譲渡してはならないとし、譲渡のやむなき事情が生じた場合は、会の役員会が指名する者に譲渡することとしている。また、会員が死亡した場合には会の代表者に譲渡し、代表者は速やかに役員会が指名する者に譲渡することとしている。
 会の日常の運営は、定期総会で選出する役員がおこない、代表1名、事務局長1名、事務局員若干名、会計1名、会計監査1名が置かれている。現在の代表は、山田和也である。
 会の活動方針の基本、会則改定などは、年1回の定期総会と臨時総会で行い、総会の決定は原則として全員一致制としている。
 財政は、地代とともに納入した活動費をもって収入としている。

(六) 高尾・浅川の自然を守る会
 高尾山の前山金比羅山を学校造成による破壊から守るために1985年に結成された。開発撤回により目的が達成されたため、以後高尾・浅川地区の豊かな自然を保護し、安全で美しい生活環境を育成することをもって目的とし、現在は圏央道開発計画から高尾山・浅川の豊かな自然を保護し、安全で美しい生活環境を育成することに力を入れて活動している。
 現在、会員232名である。
 また、役員として、会長、副会長、事務局長、専門委員、会計監査、および顧問を置き、支部選出の幹事も置く。  そして、年1回以上開催する総会で、会則の改廃、予算および決算、年度運動方針などの会の基本事項について、審議決定をする。日常の運営は役員会で行うなどの構成となっている。現在の代表は市川秀雄である。
 また、会の経費は、年額500円の会費および寄付金その他をもってし、4月から3月までを会計年度としている。 

3 自然
 別紙原告目録3記載の原告らは圏央道によって、その生存や繁殖、生態系の維持を脅かされているものである。

(一) 高尾山
 都心の西に存する約599m、小仏層からなる山。周囲は原生林に近い森林で覆われている。標高が低いにもかかわらず、ブナの大木が80本、イヌブナが約800本あることは貴重である。ここでは冷温帯と暖温帯の樹木が住み分けているがこれは関東地方では例がないうえ、1300種以上の質・量ともに豊富な植物相が形成されている。この植物の多様性を受けて野鳥・昆虫など動物も多様に存在し、特にムササビは有名である。さらに、頂上近くには、奈良時代に行基が開いた真言宗別格大本山薬王院有喜寺があり、関東一円の信仰の中心となっている。そして、1967年、明治の森高尾国定公園に指定され、自然保護が図られている。「21世紀に残したい日本の自然百選」にも選ばれ、年間250万人もの市民が訪れている、世界でも希にみる自然の宝庫である。

(二) ムササビ
 齧歯目の獣で、肢間には皮膜があり、木から木へ滑空する。 高尾山のムササビは高尾山薬王院の周辺に約200頭がいる。木の洞を棲み家にしているので、大木の無い山では住めない。
 今日、ムササビ観察会なども行われ、ムササビを知る人も多い。

(三) ブナ
 ブナは冷温帯を代表する樹種で、高尾山周辺の山には全く存在していない。しかし標高わずか600mにすぎない高尾山には、大木が80本も自生し、最大のものは胸高周囲340cmに達している(通称「元禄ブナ」)。これは江戸時代の小氷河期に、高尾山まで南下して自生したブナが、その後の気象温暖化にもかかわらず、そのまま残ったものであり、きわめて珍しい現象である。都心に最も近く、最も低い所にあるブナ林である

(四) 八王子城跡
 八王子城跡は、高尾山の北側に位置し、滝山城主北条氏照(1540〜90)が天正年間に深沢山を本体にして築いた新城で、小田原城とともに戦国時代最大規模の城域を持っている。
 八王子城跡からの出土遺物は落城によって時間が止まり、下限が明確であるため資料としての価値が高く出土量も非常に多い。八王子市教育委員会による発掘調査や個人の採集により、貴重な資料として保管されている。
 このように八王子城跡は、城郭史的にみても、遺構群の保存状態、出土品の資料価値、周囲の景観、自然環境の点から見ても、国の特別史跡に値する貴重な史跡である。そのため、1951年(昭和26年)6月9日、国は八王子城跡を国史跡に指定した。

(五) オオタカ
 オオタカは肉食動物であり生態系の頂点に位置する猛禽類で、環境指標生物として良く知られている。「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」による「国内希少野生動植物種」に指定されている。環境庁の作成した「緊急に保護を要する動植物の種の選定調査」の、「我が国における絶滅の危機に瀕している野生動植物のリスト」(日本版レッドデータブック)の中でも、オオタカは、「絶滅の危険が増大している種または亜種」として「危急種」に指定されている。
 このようなオオタカが、1996年から毎年、圏央道八王子城跡トンネル坑口付近で営巣していることが確認されている。オオタカの営巣木は、圏央道八王子城跡トンネル北側の坑口と同じ斜面にあり、距離は約200mしかないため、このままトンネル工事が進み圏央道が貫通すればオオタカの営巣地は狭められ、オオタカの繁殖に重大な影響が出ることは明らかであり、さらに、営巣地を失うおそれがある。

二 被告

 国および日本道路公団は圏央道新設工事およびそれに伴う付帯工事を行う者である。

 

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