■佃煮のはじまり
小豆島における佃煮産業発祥の歴史は昭和二十年九月二十六日、苗羽出身の武部吉次氏が「いもずる」を原料とした佃煮五十貫余を炊き、阪神方面へ出荷したのが始まりである。時は、第二次世界大戦直後、国民は虚脱状態に陥り、深刻な食糧難と社会不安が日えお追って高ぶる有り様であった。厳しい経済統制の下、原材料の入手難が続き、閉塞状態にあった小豆島醤油業界に、一縷の望みと活路を見出したのが、武部氏による佃煮の生産出荷であった。武部氏は、永年醤油業に携わった経験を活かし、醤油を調味料とした佃煮生産を思い立ち、その原料には、島に豊富で入手容易な「いもづる」に着目した。かくて小豆島佃煮は、非凡な閃きと周到な計画、武部氏の信念と情熱によって創業されたが、成功の陰に、武部氏の盟友松下公平、上藤公平両氏の販売・生産両面にわたる協力のあったことを忘れてはならない。その後小豆島佃煮は、伝統ある醤油に支えられ、業界の結束、努力によって年々発展し、今や我国屈指の佃煮産地としてその声価を高めるに至った。