競バカたちが集まって 2009『不況編』
おバカどもの馬券奮戦記です!

登場人物

500円のタク
この話の主人公。会社員。1レース500円、G1レースは1万円で勝負する天才馬券師。
現在、勤務先の業績が不調のため、月・火のみ出勤、あとはアルバイト生活。
お給料は激減。
今年は馬券はいくらずつ買うのか?ハード&クール、そしてセクシーな44歳。
キャラの元ネタは、あたりまえだけど作者。でもまったく同一人物ではない。
例:作者は本当はG1レースでも1万円は買わない。500円のタクはマンガは描かない。など微妙な仕様(スペック)が異なっている。ごくまれに500円のタクと作者が同時に登場することがある。

マスター
「鉄馬」のマスター。500円のタクとは同級生。姓は北。愛称はけいちゃん。趣味は競馬と自動車競技ジムカーナ。あたたかいお客さんに恵まれるも、現在は不況で厳しい状況。
キャラの元ネタは、作者の大学時代の同級生の★★さん。最近このHPの存在を知り、『勃起するマスター人形ネタ』に憤慨している(笑)

ダイ
全レース万馬券狙いのような激しい馬券を買う男。カミさんのサイフから金をちょろまかして、いつもカミさんと戦っている。現在、不況のあおりを受け休職中。生活費を稼ぐためにイサム、駅前のお姉さんと『杉崎探偵事務所』を開業。
キャラの元ネタは、作者の大学時代の同学科でマージャン仲間のSさん。通称『大佐藤』さん。

シェフの前田
「鉄馬」のシェフ。最近悪い友達(タクやダイ)に感化されて、どんどんダメ人間になっていくマスターに代わって鉄馬を支えている

イサム
タクとマスターの学生時代の旧友。公務員。パチンコと競輪の鬼。競バカのレギュラーになりたがっている。競バカのレギュラーになるために公金を使ったことがバレ。現在休職中。

駅前のお姉さん
F沢駅南口のY浜銀行前で営業しているインチキ占い師。金と男への煩悩が強い。不況でお客がいなくなったので現在休業中。

 

 

<コントの前に>
このコントは、狩撫麻礼&かわぐちかいじの名作コミック『ハード&ルーズ』の『聖家族』を元ネタにしています。

<ここからコントです>
前回の『陰謀』はアップまで3ヶ月もかかってしまいましたが、(すみません。)6月の出来事でした。

7月の初旬から、鉄馬にあたらしい常連さんが出来た。イズミさんという女性だ。ショートカットで、どことなく歌手の中森明菜に似た雰囲気の35歳(きさくにマスターに自己紹介した)、F沢市役所に(現在は)勤務している。日本海に面するS県で生まれ育って、故郷の市役所に就職した。市役所の公務員でも、少数だが転勤があるそうだ。そういう転勤はあまり希望者はいないそうだが、『気分をかえたくて』という理由で、手を上げてF沢市に転勤してきたのだ。

イズミさんは週に1回か2回、開店直後に来てビールかカクテルを2,3杯飲んでいく。マスターや隣のお客さんともきさくに話をするので、あっという間に鉄馬になじんでしまった。タクとも時々話をする。イズミさんはサボテンを育てていて、ランを育てているタクとは園芸話で盛り上がるのだ。また、ほとんど仕事の依頼がなく、鉄馬の寄生虫状態の『杉崎探偵事務所』の3人のために、わざと大盛りのつまみを頼んで、それを残して3人にあげたりもする。心優しい女性なのだ。

9月4日(金)、午後7時の鉄馬。カウンターにはタクとイズミさん。いつものように園芸談義をして、イズミさんは帰った。またダイたちのために大盛りの鳥のから揚げをほとんど残してくれた。
イサム、涙ぐみながら「うう、おいしいよう。」
駅前のお姉さん、言葉もなく必死に食べている。
ダイ、思いっきりから揚げをほうばりながら「イズミさんは女神だ。」

タク「あんたたちねー、もう少し落ち着いて食べなさいよ。」
マスター(ダイたちを無視して)「なあ、タク。」
タク「ん、なんだ?」
マスター「誰がどこで、何しようとオレの知ったこっちゃないが。イズミさんには惚れるなよ。悪いけど、お前には無理だ。」
タク「ばーか。いくらさびしい45歳のオレでも、それぐらいの分別はあるよ。って言うか、イズミさんて、男がいる気配がないけど、まわりの男性を、恋愛の対象の候補っていうか、可能性のあるものとして見ていない気がするんだ。」
マスター「そうか、お前でも分かるか。」カウンターから山ほどの色恋沙汰を見ているマスターも同じ事を思っていた。
タク&マスター(言葉にださずに)(「忘れられない人がいるとか。その人が、もうこの世にはいないとか…」)
駅前のお姉さん
「んなことないわよ。女なんて身持ちが固そうに見えても、頭の中はチ★ポの事しか考えてないんだから。」
タク&マスター
「それはお前だけだ。」

翌5日(土)、午後5時半。F沢駅南口。スポーツクラブでたっぷり汗をかいたタクは自宅へ向かっていた(「さー、DVDで必殺シリーズ観ながらビール飲もー」)
そこに向こうからイズミさんが歩いてきた。
タク「あっ、ども」
「こんにち…!!!」会釈しかけたイズミさんが絶句して固まった。どこかの男がタクを追い越して、イズミさんの横を通り抜けていった。イズミさんが、崩れるようにしゃがみこんだ。
駆け寄るタク「イズミさん!」
タクはマスターに電話する。駆けつけるマスター、ダイ、イサム、駅前のお姉さん。ダイとイサムが支えるようにして、放心状態のイズミさんを鉄馬に連れてきた。
入り口に『本日臨時休業』のプレートをシェフの前田がかける。
ダイとイサムがイズミさんをテーブル席に座らせる。シェフの前田が、ミネラルウオーターのボトルを出す。
マスター「大丈夫ですか?」
イズミさん(水を一口飲んで)「生きていたなんて…」
タク「えっ、何ですか?」
イズミさん「彼が…、生きていたなんて。」

イズミさんは、自分の数奇な過去について語った。
5年前、イズミさんは婚約した。相手は同じ市役所に勤務する同僚だった。サーフィンなどのマリンスポーツが趣味だったが、どちらかというとあかぬけない『地味で朴訥な男』だった。イズミさんはその誠実なところを好きになったのだ。
イズミさんの人生の中でもっとも幸福な時期に、突然不幸が襲った。婚約者が、結婚を3ヵ月後に控えて、海の事故で消息不明になったのだ。当時は彼女たちの事情も考慮して、警察も役所も必死の捜査をしたが、遺体もみつからないまま、捜査は終了せざるを得なかった。
イズミさん談「その事実を受け入れて、普通の生活に戻るまで3年かかりました。なんというか、幸せ100%から、不幸のどんぞこマイナス300%に落ち込んで、やっとプラスマイナス0のスタートラインまで戻ってきたんです。」
しかし、そこから新しい何かをを「愛する男でなくても、何か一歩踏み出せるものを」探そうとしたが、そう簡単に見つかるものではない。それから2年近くが、ただなんとなく過ぎてしまった。
だからイズミさんは、自分で志願して転勤して、新しい土地F沢で新しい生活を始めたのだ。
そして今日、そのF沢で『死んだはずの婚約者と瓜二つの男』とすれちがったのだ。

壮絶な人生を語り終えたイズミさんは、疲れきったようにテーブルにうつぶせた。
みんな、どう声をかけていいか、とまどっていた。
タクが先陣を切る「イズミさん、あなたのつらい出来事は、本当に…本当に大変だったと思います。だけど、どうか落ち着いて聞いてください。あなたがさっき見た男は、ただあなたの婚約者とよく似ていただけだと思うんだけど。」
マスター「うん。」
イズミさん「そんなことありません。顔つきがただ似ているんじゃありません。歩くときの足の動き、手の振り方、筋肉の動きだって、絶対彼なんです。」
ダイ「イズミさん、怒らないで聞いてくれや。あんたはそう言うが、もしも、もしもだぜ、あんたが見た男が、あんたの婚約者だったとしたら、あんたを見たら、なんか反応するんじゃないかい。」
イズミさん、手で顔をおおって
「だから私も、何がなんだか分からないんです。」
お姉さん
「分かったわ。この件、アタシたちで調査するわ。」
イズミさん「お願いします。お礼はいくらでも。」
マスター「いや、それは…」
「大丈夫!」イサム&ダイ。「金はいらねえ。まかしてくれ。」
お姉さん「イズミさんには、食い物の恩がいっぱいあるからね。」
イズミさん(目がうるうる)「ありがとうございます。」
タク&マスター&シェフの前田(「この人たちが、役に立つとは思えないけど、タダならまあいいか。」)

ハードでクールで、ちょっとエッチな探偵物語、続きます。

 

 

<予想コーナー>

タク「スプリンターズステークスは、トレノジュビリーの単」

結果:6着

 

 

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