競バカたちが集まって 2008『南の楽園編』
おバカどもの馬券奮戦記です!登場人物
500円のタク
この話の主人公。会社員。1レース500円、G1レースは1万円で勝負する天才馬券師。2005年は圧倒的勝利。2006年もディープインパクトをけり続けたがわずかなマイナス。座右の銘は『本命は切り』ハード&クール、そしてセクシーな43歳。マスター
「鉄馬」のマスター。500円のタクとは同級生。姓は北。愛称はけいちゃん。趣味は競馬と自動車競技ジムカーナ。ダイ
全レース万馬券狙いのような激しい馬券を買う男。カミさんのサイフから金をちょろまかして、いつもカミさんと戦っている。カミさん
ダイのカミさん。いつもサイフからお金をちょろまかすダイと戦っている。スピード、スタミナ&テクニックに秀でたファイター。ダイの永遠のライバル。
2月22日(金)、午前7時の東京駅。通勤中のタク。
実はタクは1月中旬からずっと体調不良が続いていた。風邪がずっと抜けず、持病の花粉症を抑える薬を1月からずっと飲み続けているのも原因のひとつのようだ。競バカがオンエアの時は、レギュラー魂で元気にふるまっているが、平日は体がだるく、倦怠感が抜けない。フィットネスでエアロビクスをしている時だけは元気だが、家に帰ればビールもそこそこに寝てしまう。
仕事の方もうまくない。タクは会社の中では傍流的な仕事、タクいわく『お肉屋さんが、おまけでコロッケ売っているような、コロッケの方の仕事』を担当しているのだが、このところその『コロッケ業界』も競争が激化して非常に厳しい状況なのだ。
タク、駅の構内を歩きながら、仕事のあれやこれやを考えてため息をつく「はあ。」
タクは基本的に早起きだが、この日は眠りが浅い分、朝起きても朝食を作る気になれず、食べずに出てきたのだ。こういう時は東京駅の地下にある「出来立てのおにぎりと味噌汁を出すお店」で朝食をとるのだ。
その「おにぎり屋さん」にいくと、午前7時頃なら、店内はスカスカのはずなのだが、今日は空いているのは2席だけだ。奥の席を『スキーかスノボ帰りの若者たち』が占拠していた。
タクが、おにぎりを食べていると、若者たちが大きな声で『あいつがどーした、こーした』、『こんどクルマ買うんだ』、『アタシって、そーいうのチョー苦手だから…』
タク(「お前ら基礎代謝が高いんだから『ビック・メタボ・バーガー』3個食べても太らないだろ。なら『なんとかかんとかバーガー』とか『なんとかかんとかコーヒー』に行けよ。」)
タク、食べ終えて店を出て「今日は朝から間が悪いや。」
会社に行ってもやはりついていない。海外の仕入先から『部品***が遅れているから、納期が遅れる』と言ういやなメールだ。社内・社外に急ぎの調整が必要だ。各方面に謝りまくり、午前11時頃、なんとか収拾がついた。
正午、昼食をとりに出る。駅のキオスク前を通る。ふと見ると、キオスクのスポーツ新聞の見出し『ダイワスカーレット 眼に外傷、フェブラリーステークス回避!』
タク、あわててスポーツ新聞を買う。(「眼を怪我したのか、大丈夫か?!」)
なじみの中華料理屋に入りスポーツ新聞を広げる。新聞によると、調教中に小さな異物が眼にあたったそうだ。フェブラアリーステークスも海外競馬の最高峰のひとつドバイワールドカップ挑戦も調教師の『小さな怪我でも眼だけはどうなるか分からない、失明の不安もなくはない』という主旨の談話が載っていた。
タク「眼の負傷はやばいよな。」過去に眼を負傷してしまった馬たちを思う。
タクは、日曜日のフェブラリーステークスでは、初のダート挑戦でもダイワスカーレットで大勝負するつもりだったのだ。ダイワスカーレットがフェブラリーステークスを勝って、ドバイのドバイワールドカップで優勝することを望んでいた。かつてドバイの地に散った砂の女王ホクトベガの思いを引き継ぎ、あらたな砂の女王としてドバイワールドカップの歴史にその名を刻んで欲しかったのだ。<ホクトベガ>
1990年生まれ 父:ナグルスキー 母:タケノファルコン 母の父:フィリップオブスペイン 生涯成績 42戦16勝 '93年 中央競馬でG1エリザベス女王杯優勝、'95年より公営競馬と中央競馬のダート交流競走10連勝という奇跡的な記録を達成する。'97年 第2回ドバイワールドカップで競争中止、安楽死処分。タク「やっぱり今日はツイていない。」小さくつぶやく。(「いや、そうじゃない。もしも片目を失明してしまっても生きて牧場に帰れるのならダイワスカーレットにとって幸せなんだ。ドバイに行けとか、ドバイで勝てなんてことはオレたちの勝手な思いなんだ。」)
(「ん?」)店のBGMに懐かしい曲が流れている。アン・ルイスの『天使よ故郷を見よ』だ。(「『天使よ故郷を見よ』か…、『天馬も故郷を見よ』だな)午後4時30分、F沢南口商店街。ダイとカミさんが戦っている。ダイは会社を午後半休して、自宅に忍び込み、カミさんのサイフを抜いて逃げた。カミさんもすぐ気がついて追いかけた。商店街で追いついて2時間を超える壮絶な殴り合いとなった。まわりは血の海、2人の出血量は通常の人間の10人分を超える。超人的な2人の体力も限界を超え、2人を支えているのは精神力だけだ。
2人は『必殺の間合い』を髪の毛1本分だけかわしてにらみ合う。
ダイ、肩で息をしながら、ごほっと血を吐く。「残っている力は…もはや拳一撃だけだ。貴様もそうだろう。後は…、後は…、魂の熱さだけの勝負だ!」
カミさんもひざをぐらぐらさせている。いきなり右ひじで右ひざを叩く「動け!」
ダイ「はああああ!」
カミさん「おおおおお!」
渾身のクロスカウンター、血の海に沈む2人。午後5時、開店直前の鉄馬。マスター、いきなりトロトロに冷やしたズブロッカを飲む。
シェフの前田、驚いて「どうしたんですか?」
マスター、ふうーとため息「自分でいうのもなんだけど、この店はいいお客さんが多い。でもずっとカウンターでお客さんの『喜び・悲しみ・愛・別れ』という感情のうねりを見続けていると、たまに船酔いみたいに酔ってしまうんだ。そういう時は強い酒でその『感情酔い』より酔ってしまうしかなんだよ。」
前田「そうですか。」心配そう。
そこにタクが来る。「よう、北。お前もなんだか冴えないみたいだな。」
マスター「お前ほどじゃない。ハイネケンか?」
タク「ああ。なあ、他のお客さんが来る前に、このCDかけてくれないか?」とCDをわたす。
マスター「天使よ故郷を見よか…。なつかしいな。」
タク「だろ。」
『天使よ故郷を見よ』を聴きながら。
マスター「ダイワスカーレットは、無事ならもうそれでいいな。」
タク「うん。」
そこに血だらけボロボロのダイが来た。「ダイワスカーレットよ、無事であれ!。オレたちの思い、天に届け、ファイヤー!」* 3月8日現在、ダイワスカーレットは眼も無事に競争生活を続行出来そうです。よかったですね。