競バカたちが集まって 2007『スターゲイザー編』
おバカどもの馬券奮戦記です!登場人物
500円のタク
この話の主人公。会社員。1レース500円、G1レースは1万円で勝負する天才馬券師。2005年は圧倒的勝利。2006年もディープインパクトをけり続けたがわずかなマイナス。座右の銘は『本命は切り』ハード&クール、そしてセクシーな43歳。仕事も適当にフィットネスと競馬に日夜努力している。マスター
みんなの溜まり場「鉄馬」のマスター。500円のタクとは同級生。姓は北。愛称はけいちゃん。趣味は競馬と自動車競技ジムカーナ。競バカ開始当初は、タクより常識人だったが、最近はすっかり同レベル。仕事も適当で職場を放棄することもしばしば。ダイ
全レース万馬券狙いのような激しい馬券を買う男。カミさんのサイフから金をちょろまかして、いつもカミさんと戦っている。いわゆる『人の話を聞かない奴。』仕事しているのか?というより彼を雇用している企業があるのか?という位ゴーイング・マイ・ウェイを貫く男。アダルトビデオ・DVDのコレクションは無尽蔵。興奮すると裸になるクセがある。口ぐせは「ファイヤー!」
このコントは、前回「雨」の続きです。
9月16日(日)、ダイとマサヤのペアはDVDファイト首都圏ブロックで優勝。一躍9月23日(日)のDVDファイト全国大会の有力候補となった。
17日(月)、午後6時。またダイは鉄馬で、ごきげんで祝杯をあげた。
同じ頃、自宅で祝杯をあげるマサヤ。ストイックなマサヤは、全国大会終了までダイと飲むことを控えているのだ。
マサヤの携帯がなる。知らない電話番号だ。「もしもし。」翌18日(火)、午前10時55分。マサヤは南F沢交差点近くのファミリーイタリアンレストラン『G.G.』にむかっていた。
店に入る。前日の電話で指定されたテーブルに向かう。そこにはダイとほぼ同年代と思われるおやじ2人がいた。
マサヤは、一目みて感じた。「こいつらもDVDファイターだ」と。同時に「同じおやじでもダイにはない、腐った匂いがする」と。
おやじ1「ああ、石田さん、どうも。」
おやじ2「急がしいところ、ありがとうございます。」
マサヤ、座りながら「なんだかよく分からないけど、『全国大会に関係するとても重要なこと』って言うんで来ましたけど。いったい何ですか?」
おやじ1、にやりと笑って「君もぐだぐだした話はいやなタイプのようだから。単刀直入に言おう。今週末の全国大会では中京ブロック選抜の『きしめんキッズ』に負けてもらいたい。」
マサヤ「はあ?」
おやじ2「彼らは、われわれ(DVDファイト)協会が数年前から育ててきたアイドル候補なんだ。能力もあるし、あのルックスだ。この大会で優勝させて、一気にマスコミにアピールして、DVDファイトをメジャー競技として認知させる計画なんだ。」
おやじ1「もちろん、ただ見かけがいいだけの奴らを持ち上げるつもりはなかった。あいつらなら圧倒的な強さで、史上最年少で全国制覇を出来るはずだった。ただ一つの誤算が君たちだ。」
おやじ2「ここで彼らに譲ってもらえれば、来年の全国大会優勝は保障しよう。あんな汚いおやじじゃなくて、かっこ良いパートナーをつけて。そうすればいくらでも…」
マサヤ、席を立って「お断りします。オレの相棒は、あのおっさんだけです。協会もDVDファイトを盛り上げるために必死なのは分かります。だから今日の話は聞かなかったことにします。でも試合では全力で戦って、絶対に勝ちます。」
おやじ1、ため息をついて「そこまで言うなら仕方がない。でもきっと後悔することになるぞ。」9月23日(日)午前9時。東京★ックサイトでの『2007年DVDファイト全国大会』の会場。各地域ブロックを勝ち上がった精鋭たちの晴れ舞台だ。試合開始は午前11時からだ。
マサヤとダイも、他の出場選手も、準備運動に余念がない。(同じ頃)
出場選手のロッカールーム。マサヤとダイのロッカーの前でこそこそと不審な動きをする男2人。
「やめなさい。」凛とした声がひびく。
不審な男2人組。びくっとして振り返る。
そこには、まるで女性のような美青年。『羊を象徴とするゴールドクラスの表ビデオファイター』の吉田だ。(友情出演です)「試合用のDVDを粗悪品とすりかえようなんて卑怯ですよ。」
不審な男1(驚いたが、吉田がスリムで見たところあまり強そうじゃないので)「なんだ、てめえ。」
もちろん吉田は余裕で…、その時。
「お待ちなさい。」
「こんな奴らに、あなたが手を汚すまでもありませんよ。」
裏家老と影太郎だ。(ともに友情出演です)
不審な男2「なんなんだ、てめえらは?」
吉田、くすっと笑って「知りたい?でも知ると、びっくりして、おしっこちびっちゃうかも。」
襟もとから光輝く黄金の羊の飾りを出す。「羊を象徴に持つゴールドクラスのビデオファイターです。」
不審な男1&2「ビデオファイター!」パンツの中でおしっこちびりました。
吉田「こちらのお2人はF沢の裏家老と影太郎さん。」
不審な男1&2「あああ…」かなりおしっこちびってズボンから湯気が出てます。
影太郎「お前たちの後ろにいる奴らに伝えろ。杉崎さんたちの試合を汚す者は、表と裏のビデオファイターが絶対に許さん。」
不審な男1&2、涙&鼻水&おしっこぼろぼろで、「わがりまじだー。」全国大会は、マサヤ&ダイが、「きしめんキッズ圧倒的有利」という下馬評を覆して優勝。「きしめんキッズ」との決勝戦もマサヤ&ダイの圧勝だった。
その夜はシェフの前田に無理を言って、鉄馬を開けてもらい祝勝会を開催した。会にはマサヤの草DVDファイト仲間と、イサム、駅前のお姉さん、居酒屋「ろくでなし」の大将、ギャンブレンジャーが集まった。全国大会の賞金100万円が入ったので、マサヤとダイの大盤振る舞いで、盛況だった。
*ちなみにマスターとタクは「こんなくだらねえ事につきあえるか。」という理由で欠席です。翌24日(月)から、一般社会では誰も知らないが、DVDファイト界においてはマサヤとダイは一躍有名人となった。DVDファイトサポーターたちを驚かせたのは、全国大会優勝ペアのいきなりの解散だった。マサヤは、活動の拠点を東京に移し、プロファイター契約をした。一方ダイは引退だ。ダイの引退を惜しむ声も多かった。
9月29日(土)、今日はマサヤが東京に行く日だ。午前10時45分、ダイはまたシェフの前田に頼んで、鉄馬を開けてもらった。
11時。マサヤが来た。カウンターのダイ「よう。」
マサヤ「よう、おっさん。」
ダイ「まあ、すわれや。」
マサヤ、ダイの横にすわる。
ダイ「前田さん、あれを。」
2人の前にカクテルが置かれる。
前田「今日のため、今日だけのスペシャルカクテルです。名前は『旅立ち』です。」
マサヤ「…。」
ダイ「乾杯だ。」
乾杯。
マサヤ、ゆっくりと飲んで「とってもおいしいよ。」
ダイ、目を細めて「そうか。」
前田「ありがとうございます。」マサヤ「なあ、おっさん…。」
ダイ「おっと、その話はなしだ。オレはここまで。オレはもうずいぶんくたびれちまったし、守らなければならない愛娘もいる。さびしいが、今の仕事を捨てるほどの冒険は、もう出来ないんだぜ。」
マサヤ「…。」
ダイ「だが、お前は違う。お前には若さと夢と情熱がある。お前には無限の可能性があるんだぜ。信じた道を進めばいい。」
マサヤ「うん。」
ダイ「お前はこれからたくさんの人と出会うだろう。早くいい奴を見つけて、新しいペアを組め。オレのことは気にするな。」
マサヤ、首をふって「いや、オレはこれからピン(シングルプレイ)でいく。オレは誰とも組まない。オレの相棒はあんただけだ。」
ダイ「そうか…。お前は、若いのに律儀というか、頭が硬いというか。だけど…」照れながら「オレは、そんなお前が大好きだよ。」
マサヤ「オレだって、大好きだ。たまには(F沢に)戻ってくるから、また草ファイトで、一緒にやろうな。」
ダイ「もちろんだ。」(前田に)「前田さん、あれをかけて下さい。」
前田、CDをかける。
エドワード・エルガー 行進曲「威風堂々」
ダイ、席から立って「どこまでも『威風堂々』と進んでくれ。」
マサヤも席から立つ、胸がいっぱいで言葉にならない。マサヤ、一息ついて、「じゃあ、行くよ。」右手を出す。
ダイ「元気でな。」かたい握手。
マサヤ、階段をおりて陽にあふれた商店街を歩いていく。
ダイは階段の上から、マサヤの姿を、見えなくなってもずっと見送っていた。DVDファイター編(完)。