競バカたちが集まって 2007『スターゲイザー編』
おバカどもの馬券奮戦記です!

登場人物

500円のタク
この話の主人公。会社員。1レース500円、G1レースは1万円で勝負する天才馬券師。
2005年は圧倒的勝利。2006年もディープインパクトをけり続けたがわずかなマイナス。座右の銘は『本命は切り』ハード&クール、そしてセクシーな43歳。仕事も適当にフィットネスと競馬に日夜努力している。

マスター
みんなの溜まり場「鉄馬」のマスター。500円のタクとは同級生。姓は北。愛称はけいちゃん。趣味は競馬と自動車競技ジムカーナ。競バカ開始当初は、タクより常識人だったが、最近はすっかり同レベル。仕事も適当で職場を放棄することもしばしば。

ダイ
全レース万馬券狙いのような激しい馬券を買う男。カミさんのサイフから金をちょろまかして、いつもカミさんと戦っている。いわゆる『人の話を聞かない奴。』仕事しているのか?というより彼を雇用している企業があるのか?という位ゴーイング・マイ・ウェイを貫く男。アダルトビデオ・DVDのコレクションは無尽蔵。興奮すると裸になるクセがある。口ぐせは「ファイヤー!」

駅前のお姉さん
F沢駅南口、Y浜銀行前で営業するインチキ占い師。鉄馬の常連。

 

  

12月9日(日)、午後1時半の鉄馬。
今日も「競馬ファンのお客さんも、毎週日曜日に家を空けるのもまずいから、2歳G1は我慢しましょう。」ということでパーティーではなく『レンタルの大型モニターはないよ、小さいテレビしかないからね、それにシェフの前田さんもお休みで、乾き物とレンジでチンのものしかないからね、それでも良ければおいで』というシステムなのだ。
カウンターにはタクとダイ、競馬新聞をにらんでいる。

ダイの携帯が鳴る。ダイ「もしもし。ああ、お前か。」
電話(駅前のお姉さん)「ちょっとあたしの守備範囲じゃないって言うか、相手にしたくない客が来たのよ。だから、そっちにまわしたから面倒見てやってよ。」
ダイ「なんだ、急に?」
電話(お姉さん)「金はたくさん持ってるから、いくらでももらえるわよ。それにどうなってもいいから好きにして。」
ダイ「そうか、ならまかせろ。オレは、このあたりじゃあ『人生すきま風』と呼ばれてるんだぜ。」電話終わる。
マスター「どうしたんだ?」
ダイ「なんだか知らないが、オレたちに人生相談したい奴が来るそうだ。」
タク「ちょっと待て、なんだそりゃ。そんなことオレたちが出来る…」
カランと入り口が開いて、女が入ってきた。一気に視線を集めるほどの美人だ。身長も高く、ブランド物のコートの上からでもスタイルの良さが分かる。
女、店内をさっと見回して開口一番「安っぽい店ね。」
(「カチン」)マスターとタクの心の中の音です。
ダイ「あんたが相談の人かい?」
女「杉崎さんですか。」
ダイ「ああ。こっちがマスターで、こっちが500円のタクっていうケチな野郎だぜ。」
女「500円?」さげすむ目線。
タク、営業用のうすら笑顔をしていますが、むかついてます。
ダイ「大丈夫だ。こう見えてもオレたちは『F沢南口商店街の三賢者』と呼ばれてるんだぜ。」
女、カウンターのダイの横に座る。「私は埼玉麗子と言います。」
ダイ「変わった苗字だな。」
女「はい、でも実は東北の由緒ある家柄なんです。父が某★★銀行の重役なので、私は小さい頃はニューヨークで育ちました。帰国してからは、このとおり才色兼備で英語も堪能だったものでみんなの羨望の的でした。中学校、高校と生徒会長を務めました。」
マスター(タクに)「お前も中学校で生徒会長だったよな。」
タク「そうなんだよ。あの頃がオレの人生のピークだったなあ。あとは坂を転がり落ちるがごとく…って、うるさい、黙れ。」
女「でも、中学校で生徒会長だっただけでしょ。」
タク、てれ笑い「はあ。」(「てめーにそんなツッコミ入れてもらわなくてもいいんだよ。」)
女「大学は帰国子女枠で某J大学の英文科に入りました。英語研究会のリーダーを務めながら、J大のミス・キャンパスにもなりました。」
マスター「はあ。」(「そら、ご立派ですねえ。」)
女「卒業後は、丸の内の某有名商社に勤務し、得意の英語を生かして同期の出世頭です。3月に、丸の内の超高級スポーツクラブで知り合った、F沢の片瀬山の開業医と結婚することになりました。会社は退職し、地元の小学生にニューヨーク仕込みの英語を教えるプライベート・レッスンをやるつもりです。このF沢から『湘南セレブ』という新しいライフスタイルを発信していきたいと思っています。」
タク(「なんでF沢の開業医が丸の内の超高級スポーツクラブに通うんだよ。ナンパ目的じゃん。」)
マスター(「自分で自分のこと『羨望の的』とか『セレブ』って言うセンスってどうよ。」)
ダイ(この人は『鋼の無神経』なので細かいことにむかついたりしません。)「話は大体分かった。だが、今の話ではアンタの人生は順風満帆のようだぜ。何か悩み事があるのかい?」
女「苗字のことなんです。」
ダイ「苗字?」
女「『埼玉』家は、由緒ある家柄なんですけど、子供のころから『ださいたま』、『ダサい玉麗子』ってからかわれるんです。本当は『白鳥麗子』になりたかったのに、くやしー。」
タク「そんな事なんですかあ。」
マスター「これだけ『人生勝ち組』なんだから、そんなの気にしなくてもいいじゃないですか。」
女「あなたたち庶民には分からないんです。私にとっては、完全無欠のセレブライフを完成させるために『画龍点晴』(何かを完成させるための絶対必要な最後の仕上)なんです。」
タク&マスター、ここで『てめえは人間じゃねえ、たたっ斬ってやる!』モードに入りました。
ダイ「だけど、あんたは3月に結婚するんだろう。ダンナの苗字に変わるんじゃないのか。それとも婿入りするか、夫婦別姓なのか?」
女、目を潤ませて「偶然に…、本当に偶然なんですけど、婚約者の苗字も『埼玉』なんです。私は一生『ダサい玉麗子』から離れられないんです。」
タク、共感するようにうなずきながら(「ざまーみやがれ」)と思っています。
マスター、同じくうなずきながら(「一生やってろバーカ」)と思っています。
ダイ、深くうなずきながら、「よく分かった。埼玉さんという苗字は相当少ないはずだ。しかしその埼玉さんと埼玉さんが出会ってしまったという、確立論の悲劇だな。残念ながら戸籍を変えることは難しい。ここは芸名と言うか、愛称を変えるしかあるまい。」
女「それでは、やはり芸名を『白鳥麗子』に…」
ダイ「いや。確かに芸名は自由につけられるが、由緒ある『埼玉家』の痕跡がまったくないというのもさびしいだろう。『埼玉』の玉を残して、幸せ一番なら金メダルということで『金玉麗子』ってのはどうだい。
「き…金玉麗子…ですか。」
パチパチパチ、タク&マスター拍手。
タク「すばらしい。」
マスター「泣けました。」
女「でも…、でも…」
ダイ「大丈夫だ。オレを信じろ。」
マスター「はい、じゃあ相談料はひとりあたり1万円で3万円。」
女「私、現金ほとんど持ってないのでカードでいいですか?」
マスター「大丈夫ですよ。はい、カードちょうだい。」端末に入れて「はい、じゃあ、暗証番号押してね。」
タク「衣装さーん。小道具さーん。」
スタッフが小物を持ってくる。
タク「はいコレかけて、コレ持って。」と『私は金玉麗子です』と書いたタスキをとノボリを渡す。
女「本当にコレで大丈夫なんですか?」
ダイ、まったく根拠のない自信に満ち溢れて「もちろんだ。」
マスター「これはサービス。背中に背負って。」小型DVDプレーヤー。『♪わたしはー、きんたまー、れいこーだよー♪』エンドレスで繰り返します。
タク「これで完璧だ。」
マスター「じゃあ。」無理やり追い出す。
女、F沢商店街を歩いていく。『私は金玉麗子です』というタスキをかけ、ノボリを持って、背中には『♪わたしはー、きんたまー、れいこーだよー♪』を繰り返すDVDプレーヤー。
ひきまくる周りの人々。
ダイ、階段の上から見送って「人助けすると気持ちがいいな。」
タク、どす黒い笑顔で「許せぬ奴を仕置きする。」
マスター、同じくどす黒い笑顔で「いずれも仕置きして、仕損じなし。」
タク&マスター、がっちりと握手。

1時間後、駅前のお姉さんが来る。
お姉さん「やるじゃん。きっちりハメてやって。」
ダイ「ああ、人助けは気持ちがいいな。」
タク&マスター、こっそりとウインク。
マスター、お姉さんとタクを手招きする。
タク「どした。」
お姉さん「なに?」
マスター「ダイには1万円。あとはオレたちで山分けだ。」カード支払いの記録を見せる。30,000円ではなく300,000円だ。
タク「でかした。」
お姉さん「素敵!」マスターのほほにキス。
マスター「へへ。」
合言葉は、『いかれた奴にはダー!』

<予想コーナー>
朝日杯フューチュリティーステークス

タク「ギンゲイの単!」

1着:ゴスホークケン

  

 

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