競バカたちが集まって 2006「ルート246 午前3時編」
おバカどもの馬券奮戦記です!

登場人物

500円のタク
この話の主人公。会社員。1レース500円、G1レースは1万円で勝負する天才馬券師。
2005年は圧倒的勝利。ハード&クール、そしてセクシーな41歳。
尊敬する人:荒川静香選手
好きな人:荒川静香選手
あこがれの人:荒川静香選手

マスター
「鉄馬」のマスター。500円のタクとは同級生。姓は北。愛称はけいちゃん。趣味は競馬と自動車競技ジムカーナ。

ダイ
全レース万馬券狙いのような激しい馬券を買う男。カミさんのサイフから金をちょろまかして、いつもカミさんと戦っている。(ほぼ全敗)

 

 

4月15日(土)午後2時の鉄馬。今日と明日は『中山グランドジャンプと皐月賞観戦パーティー』が開催されている。フロアにはレンタルの大型プラズマモニターが設置されている。
テーブル席には競馬大好きの常連さんがいっぱいだ。みんな競馬新聞をひろげて、赤ペンや蛍光ペンで思い思いに印をつけて検討している。
G1レースにも個性がある。お祭りのダービー、年末の独特の風情がある有馬記念が代表的だが、今日の中山グランドジャンプは年末の中山大障害とともに最も過酷な、まさに『命がけのレース』なのだ。鉄馬にもいつもと違う厳粛な雰囲気が流れる。
カウンターのタク「(昨年の)中山大障害を制したテイエムドラゴンは確かに強いが、ここは去年儲けさせてくれたカラジの単!なんと11歳、おっさんの希望の星だぜ。」
マスター「オレは素直にテイエムドラゴンから馬単3点流しだな。」
ダイ「オレはローレルディフィーから総流しだぜ。」

3時35分、いよいよ中山グランドジャンプの発走だ。誰が声をかけるともなく全員が席から立ち上がった。
「ジャンプレースG1」のファンファーレが流れる。ゲートが開いてレースが始まる。
タク(「どうかみんな無事に!」)
しかし、バルトフォンテンが急に減速する。
みんな「ああ!!!」
みんな、こういう時には重大な骨折などが多いと経験から知っている。そしてフォンテラも落馬。
難関だらけの芝4250mというコースを克服して優勝したのはカラジ。テイエムドラゴンはクビ差の2着。

タクは馬券を取ったが、苦味のある馬券だ。
みんな席につく。
マスターがテーブル席の方をずっと見ている。
タク「?!」振り返ると、窓側のテーブル席で若い女性が立っている。口を真一文字にかみ締めて、その瞳は必死に涙をこらえて、大型モニターを見すえている。
 
マスター「お客さん。バルトフォンテン…」

<バルトフォンテン>
2001年4月17日生まれ。父ダンツシアトル、母モリュウエルキング
30戦5勝そのうち障害2勝。
中山グランドジャンプでバンケット手前で故障発生し競争中止。左第一趾骨粉砕骨折を発症し、予後不良(安楽死処分)

女「はじめて競馬場にいったとき好きになったんだ。瞳やしぐさが、なんとなく昔飼っていた犬に似ていたから…。だからずっと応援してた。休んでいるときに牧場に会いに行ったこともあったんだよ。とってもかわいかった。グランドジャンプに出るって聞いたときには本当に心配だったけど、無事ならいいと…」もう言葉にならない。こらえきれずに涙がこぼれる。「もう…もう…、競馬はいやだ!」

みんな絶句。競馬はまさに「熱くて、美しくて、楽しくて、そして残酷な淘汰のゲーム」、それに加担しているオレたちに何が言える?

ダイが女に近づく、いきなり抱きしめる。それは本当に(スケベ心が微塵もない)優しさに満ち溢れた『抱擁』だった。
ダイ「泣きたい時は泣けばいい。思いっきり泣けばいい。たしかに競馬は残酷だ。だけどいいこともある。アンタとバルトフォンテンの楽しかった思い出は変わらないだろう。だから…、その…オレには難しいことは分からないが、ファイヤーだぜ。」
女、号泣。

<レース結果>
1着 カラジ
2着 テイエムドラゴン クビ差
競走中止 フォンテラ、バルトフォンテン


 

   

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