「競バカたちが集まって 2001」

この物語は、鉄馬というスナックに集まってくる馬券ベタたちのバカ模様です。

登場人物

500円のタク
この話の主人公。1レース500円玉1個で勝負するせこいサラリーマン。G1レースだけは1万円買う。単勝で中穴を狙うのが好き。今年は年間収支プラス。

マスター
「鉄馬」のマスター。500円のタクとは同級生。姓が北で、愛称がけいちゃん。予想は馬連ボックス買いが多い。

ダイ
競バカ3人組の中で最も激しい馬券を買う男。ほとんど金をドブに捨てている様なものだが、たまに当たるとデカイ。姓が杉崎。最近ヘア・ヌード写真集「競馬場から、愛」を作って、周囲をパニックにさせた。

ダイのカミさん
金をくすねるダイといつも闘っている。得意技は飛び膝蹴り。

 

  

いきなり話は先週に戻る。どしゃ降りの中でのダイとカミさんのバトルだ。ばしゃと水を切ってカミさんが飛ぶ、そして飛び膝蹴り・・・。
その瞬間ダイは心の中でつぶやいた。「だめだ、まだ見切れない。」

さらに話は3週間前に戻る。ここは鉄馬と同じ商店街にある居酒屋「ろくでなし」だ。ダイは鉄馬の他にもF駅商店街に馴染みの店をいくつか持っている。ここにはダイの飲み仲間でボクシング・ジムをやっている元ボクサーの山田がよく来る。
山田「それで杉崎さんよ。おりいって頼みって何だい?」
ダイ「実は、オレを鍛えてほしいんだ。」
山田「鍛えるって、まさかボクサーになりたいって言うんじゃ・・・。」
ダイ「ボクサーじゃない。ただボクサーの様に優れた動体視力(動くものを見る力)とスリのように素早く動く右手がほしいんだ。」
山田「あんた、一体・・・。」
ダイ「もちろん世間様に迷惑をかける事はしない。頼む。」
山田「しかし、オレも商売だから・・・。」
ダイ「金はないが、この秘蔵の裏ビデオベストセレクション10本でどうだ。」と紙袋をどさっとおいた。
山田「オレも男だ。どんとまかせろ。」
と、言う事でダイの秘密特訓がはじまったのだった。

さて、やっと今週。11月23日、開店直後の鉄馬。客はタクとダイ。
タク「ジャパンカップ・ダートはリドパレスの単。ジャパンカップはゴーラン、パオリニ、ギャグニーの単。日本馬が人気になるなら、外国馬から勝負だ。」
マスター「パオリニのお父さんは95年にジャパンカップを勝ったランドか。これとテイエム、ドトウのボックスにしよう。」
珍しくダイがしんみりと語りだした。「かつて、公営船橋のロッキータイガーがジャパンカップでシンボリルドルフの2着に来た時、オレたちは船橋競馬場から世界の風を感じたもんだ。」
タク「オレその頃競馬やってなかったけど、そうなんだろうね。」
ダイ「砂の女王ホクトベガ(交流競争で大活躍)がドバイに散った時は本当に悲しかった。」
マスター「うんうん。」
ダイ「そして昨年、トゥザビクトリーがドバイワールドカップで2着に入った時、日本の競馬もドバイワールドカップに本当にあと一歩まで来たと思ったぜ。」
タク「確かにそうだ。」
ダイ「そして、今年ダートの武蔵野ステークスでレコードを出したクロフネがジャパンカップダートをステップにドバイを目指そうとしているんだぜ。」
マスター「頑張って欲しいねえ。」
ダイ「だからオレも、命懸けでカミさんの金をいただいて、ジャパカップダートで大勝負だ。
タク「そこだけ全然共感しないぞ。」
マスター「よしなさいって。」
ダイ「もう、サイは投げられたのだ。」とポケットから杉良太郎年末公演「ご存知遠山の金さん+歌のオンパレード」のゴールドチケットを出した。ダイのカミさんは杉良太郎の熱烈なファンなのだ。
ダイ「これがある限り、奴は必ず来る。奴はオレと戦わずにはいられない。」
タク「どんな夫婦なんだよ。」

そこに全身真っ黒の戦闘用皮ジャンをまとったカミさんが入ってきた。フロアの真ん中でにらみ合うダイとカミさん。
ダイ「来たか。金は持ってきたんだろうな。」
カミ「私のへそくりは全部ここに入っている。」と10万円の入った封筒を見せてから尻ポケットに入れた。「だが、お前がこれを手にすることはない。お前は私の最も大切なものに手を掛けた、お前は私がぶちのめす!」
ダイ「お前の大事なものはオレが持っている。オレの大事なものはお前が持っている。これで5分と5分、あとは魂の熱さだけの勝負だ!
タク「全部カミさんのもんじゃないか。
マスター「なんちゅうわがままな奴。」
カミさん「行くぞ!」飛び膝蹴りの助走に入る。
「おおお!」ダイも走り出す。
カミさんの体が宙に舞い、飛び膝蹴りがダイの顔に真正面から入った。(ここからスローモーション)カミさんの膝頭がダイの顔に当たってから、離れるまでのごくわずかの瞬間にダイの右手がすべるように動いて、カミさんの尻ポケットから封筒を抜いた。(スローモーション終わり)ダイが鼻血を吹き出しながら後ろへ倒れた、と思ったら、そのままものすごい勢いで入り口に走った。
ダイ「金はいただいたぜ!」鼻血をだらだら流しながら入り口のところで叫ぶ。
カミさん「しまった。」
ダイは階段を駆け下りようとして、1歩目がすべって最上段から思いっきり転げ落ちた。
ドダダダガラガラガッシャン!
カミさん、タク、マスターが階段の上に駆けつける。階段の下にはボロボロになったダイが立っている。
ダイ「見たか、正義は必ず勝つのだ。武士の情けだ、これは返してやる。」と杉良太郎のチケットを階段に置いた。「このカネをクロフネの単にぶっこんで、ジャパンカップではダイワテキサスから総流しだ。」そしてダイは商店街を駅に向かって走り出した。
それを見送る3人。
カミさん「もう、家に入れないからね。」
マスター「また、この店に住むのね。」ため息。
タク「クロフネはともかく、ダイワテキサスはきついだろ。」

激動のジャパンカップ・ウィークにバカもヒートアップするのでありました。はたして結果は? 

 

 

前回のレース

第18回マイルチャンピオンシップ(G1)

1着:ゼンノエルシド(ペリエ) 1.33.2
2着:エイシンプレストン(福永)
3着:タイキトレジャー(横山典)

タクの予想:はずれ

 

 

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