「競バカたちが集まって 2002」
「鉄馬」というスナックに集まるおバカどもの馬券奮戦記です!

登場人物

500円のタク
この話の主人公。鉄馬の常連。1レース500円玉1個で勝負するせこいサラリーマン。G1レースだけは1万円買う。馬券は単勝の中穴狙いが多い。

マスター
「鉄馬」のマスター。500円のタクとは同級生。姓は北で愛称はけいちゃん。馬券は馬連の本命サイドを買うことが多い。

ダイ
競バカ3人組の中で最も激しい馬券を買う男。超人気薄から総流しが多い。ほとんど金をドブに捨てているようなものだが、昨年はヘア・ヌード写真集「競馬場から、愛」を出版して、周囲をパニックにさせた。

 

 

7月19日(金)、開店直後の鉄馬。客はタク1人だ。
タク「北九州記念は、トッププロテクターの単をとったよ。やっぱり馬券の中心は単勝だな。」
マスター「買い方を変えて、知らないうちに出費が増えない様に気をつけないとね。」
タク「函館記念はミヤグロドリゴをもう一回狙おうと思ったんだけど、予想以上に人気になりそうなので、トウカイポイントとギャンブルローズの単。」
マスター「ロードクロノスはどう?」
タク「いいよね、今回騎手は岡部さんだし、でも今回は目をつぶって切り。」
そこにダイがやってきた。「マスター、ハイネケン。マスターとタクにも1本ずつおごるぜ。」
タク「なんだよ、景気いいじゃん。」
マスター「3連複でもとったのか?」
ダイ、ぐいっとハイネケンを飲み干して、「実はな、重版になりそうなんだ。」
タク「じゅうはん?何の話?」
ダイ「本をまた印刷するんだよ。」
マスター「何の本?」
ダイ「オレの写真集「競馬場から、愛」だよ。

室温が2度下がった。
タク「お前…、今、何て言った?」
ダイ「だからオレの写真集が、また重版になりそうなんだよ。」
「競馬場から、愛」とはダイの友人のお金持ちのアマチュアカメラマン渡辺さんが製作したダイのヘア・ヌード写真集である。渡辺さんによるとダイの競馬にかける情熱や男の悲しみを表現したかったらしいのだが、なぜ東京競馬場やバリ島でダイが全裸で仁王立ちでおでんやもつ煮込み食っているのか理解不能である。当然、完成直後には周囲の人間がパニックになったことは言うまでもない。
マスター「なんであんな物、また印刷すんだよ?」
タク「お金持ちの渡辺さんの税金対策なのか?」
ダイ「売れているんだよ。
タクとマスター「ウソ!
ダイ「発売してからしばらくは全く売れなかった。オレの男気を理解するには時間が必要だったんだな。そして今、時代がオレに追いついたんだぜ。」
タク「信じられない。」
ダイ「オレの男気に共感する奴等からメールだって来てるんだぜ。」とプリントアウトした紙を出した。
マスター「「僕のお兄さんになってください。」「地方に住んでいます。あなたの近くに行って身の回りの世話をさせてください。」って、これ…。」
タク「「一緒にお風呂に入って、背中を流させて下さい。」って、おい。」
不安そうに顔を見合わせるタクとマスター。
ダイ「みんな、硬派な一本筋の通った奴等に違いない。だけど、この画像だけは意味がよく分からないんだが、何なんだ。」と1枚の写真を出した。
タクとマスター「ああああ!
美少女と見まごうばかりの美少年が芸能人のような超ミニのウエディングドレスを着て、うるんだ目をこちらに向けていた、そして短すぎる超ミニからすらりと伸びた2本の脚の間からタクたちにとって見慣れたものが顔を出していた。
マスター「これはもう疑う余地がない。」
タク「ダイ、よく落ち着いて聞いてくれ、このメールは全部、ファンレターじゃない、ラブレターだ。
ダイ「何だって?」
マスター「この人たちは、男を愛する男の人たちなんだよ。」
ダイ「ばかな、自慢じゃないがオレは美少年じゃないぞ。」
タク「この人たちはデブ専なんだよ。」(注:太った人が好きな事。デブ専門の略。)
ダイ「そっ…それは、大変な事じゃないか、君たち。
マスター「やっと事の重大さに気がついたか。」
ダイ「オレはサイン会までやっちゃおうかと思ってたんだぜ。」
タク「取り返しのつかない事になるところだったな。」
ダイ「男と男の愛もあるだろう。女と女の愛もあるだろう。そういう自由を否定する気はさらさらないが、オレは…、オレは彼らの気持ちを受け止める事は出来ないぜ。」
タク「キャバクラ王だし、裏ビデオコレクターだし、お前女好きだもんなー。」
ダイ「オレはどうすれば良いんだ?」
マスター「きちんとお断りするんだよ。まじめにね。」
タク「みんな本気なんだから、中途半端に思わせぶりな態度は可哀相だよ。丁寧に心をこめて、お断りするんだ。」
ダイはマスターの持っているノートパソコンを借りて、返事を打ち始めた。「メールありがとうございます。あなたのお気持ちはもったいなく思っていますが、私には…。」
それを見ながら、タク「色んな愛があるんだねえ。」
マスター「お前には、何も無いけどな。」
タク「うるさい、黙れ!」

はたして函館記念の勝馬は?

 

 

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