「競バカたちが集まって 2002」おバカどもの馬券奮戦記です!
登場人物
500円のタク
この話の主人公。1レース500円玉1個で勝負するせこいサラリーマン。G1レースだけは1万円買う。マスター
「鉄馬」のマスター。500円のタクとは同級生。ダイ
最も激しい馬券を買う男。昨年はヘア・ヌード写真集「競馬場から、愛」を出版して、周囲をパニックにさせた。写真集以来何かというと全裸になることが多い。カミさん
ダイのカミさん。お金をちょろまかすダイといつも戦っている。得意技は飛び膝蹴り。10月12日(土)、開店直後の鉄馬。カウンターにはダイ、3連休の初日のためか、テーブル席も約半分はお客さんがいる。
そして、フロアの真ん中で、スキップでクルクルと回るタクとマスター。
「G1!」
「G1!」
「待ちに待った秋華賞だー!」
「G1!」
「G1!」
「犬は?」
「ウー、ワン!」
タク「決まった。」
マスター「ばっちりだぜ。」
やはりこの2人もかなりのバカである。ダイは競馬新聞をにらんでいる。
タク、カウンターに戻って、「今回はファインモーションがたぶん…きっと勝つと思うけど、単勝1.0倍じゃ話にならないから、ここは目をつぶって(たぶん外れるだろうけど)タムロチェリー、シリアスバイオ、オースミコスモ、シャイニンルビーの単。」
マスター「オレは今回は馬券を買わないで、ファインモーションがどんな勝ち方をするか見るよ。」
タク「それが一番正しいかもな。ダイ、お前ならファインモーションを切ったとんでもない馬券買うんだろうけど、お前、金ないもんな。」
ダイ「確かにオレは金はない。(*注:何度もカミさんのサイフから金をちょろまかしたので、現在1日300円のおこずかいで生活している。当然鉄馬の飲み代も普通には払えないので、マスターのお許しをもらって、紙パックの焼酎をもちこんで、水道の水で割って飲んでいる。)カミさんのサイフから大金をぶっこ抜くのはジャパンカップの大勝負まで待っているんだ。だがな、これほどファインモーションが1本かぶりの人気なら、ファインモーションが消えれば超大穴馬券だぜ。メジロベネット(超人気薄)からニシノハナグルマとカネトシディザイア(ともに超人気薄)に千円だけ勝負だ。」
マスター「その千円はあるの?」
ダイ「今朝な、カミさんのサイフから500円玉を2枚抜いてきたんだ。あの金の亡者(カミさんのこと)も札を抜けば気がつくだろうが、ジャラ銭までは気がつかな…」
「つくわよ。」入り口にカミさんが、いつもの戦闘用の黒の皮ジャン姿で立っていた。
ダイ「てめえ、いつの間に?」
フロアの真ん中でにらみあうダイとカミさん。
カミさん「家計簿をしっかりつけている私には、お前がいくらちょろまかしたか、全てお見通しよ。いますぐ千円を返して土下座して謝るなら、許してあげるわ。いやなら飛び膝蹴りよ。生まれてきたことを後悔させてあげるわ。」
ダイ「ほう、じゃあ、後悔させてもらおうか。」いつになく余裕だ。
「はっ!」カミさんが飛ぶ、そして飛び膝蹴りが炸裂する…かと思ったらダイが紙一重でかわした。
カミさん「なぜ?」
ダイ「ボクシングジムの山田(ダイのスケベ仲間)に秘蔵の裏ビデオコレクションをにぎらせて、再特訓したのよ。(*注2:以前にも特訓したことがある。)今のオレは、ボクサー並みの動体視力とゴキブリ並みの敏捷性を身につけたんだぜ!お前の飛び膝蹴りなど完全に見切ったわ!」
タク「ゴキブリ並みの敏捷性って…」
マスター「まさにゴキブリ亭主だな。」
カミさん、ニヤリと笑って「ゴキブリなら捕獲しなくちゃね。」ポケットからライターのような小さな物をだしてスイッチを押した。次の瞬間、天井からダイの上に大きな網が落ちてきた。
「うわっ!」訳が分からず、もがくダイ。すかさずカミさんのまわし蹴り。倒れるダイ。カミさん、網の端のひもを引く、ダイは完全に網の中に捕らわれてしまった。
マスター「ちょっと待ってよ。なんでうちの店の天井から網が落ちて来るんだよ?そんな仕掛けあるわけないだろ!」
タク「まあ、いいんじゃないの。コントだから。」
マスター「そんな基本設定をこわすような事をするなよー。」網の中でもがくダイに、カミさんが情け容赦のない蹴りを入れる。1発、2発、3発…。
ダイ「ぐはっ…、ひっ…卑怯者…、鬼!」
カミさん「お前を倒すためなら、手段は選ばん!」さらに本気の蹴りが続く。
タク「どんな夫婦なんだよ。」
マスター「競バカって、バイオレンス物じゃないんだけどなー。」
「きゃあ!」入り口の方から悲鳴。
タクとマスターが見ると、今日初めて鉄馬に来たらしい若い女の子2人組みが、この惨状を見て、凍りついている。
マスター「あっ、お客さん。大丈夫ですよ!この人たちは皆さんには危害を加えませんから…」
「きゃー!」階段を駆け下りる女の子たち。
「待ってー、お客さーん!お客さーん!うちは変な店じゃないからー!」後を追うマスター。
「いやー!助けてー!」泣きながら逃げる女の子たち。フロアの真ん中では、網に捕まったダイをカミさんが蹴りつけている。テーブル席の常連客は平気で飲み食いしている。今日初めて鉄馬に来た女の子2人組は泣きながら逃げている。マスターは追いかけて走っている。
タク「もう、めちゃくちゃだな。」はたして秋華賞は?