「競バカたちが集まって 2002」おバカどもの馬券奮戦記です!
登場人物
500円のタク
この話の主人公。1レース500円玉1個で勝負するせこいサラリーマン。G1レースだけは1万円買う。マスター
「鉄馬」のマスター。500円のタクとは同級生。ダイ
最も激しい馬券を買う男。昨年はヘア・ヌード写真集「競馬場から、愛」を出版して、周囲をパニックにさせた。写真集以来何かというと全裸になることが多い。カミさん
ダイのカミさん。お金をちょろまかすダイといつも戦っている。得意技は飛び膝蹴り。
10月19日(土)、開店直後の鉄馬。テーブル席は3割くらいお客さんが入っている。カウンターはタク1人だ。
タク「先週の秋華賞は、ファインモーション強かったねえ。完敗だよ。」タクは断然1番人気のファインモーションを切って、他の馬の単勝を買うという暴挙に出て、大外れだったのだ。
マスター「今週の菊花賞は、混戦模様で馬券的には面白いよね。」
タク「1番人気のノーリーズンも距離とか不安材料もあるよね。岡部さんはローエングリンで先行するんだろうなあ。ここはローエングリンとダンツシェイクの単。」
マスター「ダンツシェイクか。」
そこにダイがやって来た。入り口できょろきょろしている。
マスター「ダイ、何やっているんだよ?」
ダイ「いや、また天井に網があるんじゃないかと思ってな。」先週、カミさんのサイフから1000円ちょろまかしたダイは、またカミさんと鉄馬で戦った。その時天井から網が落ちてきて、網にかかったダイはカミさんにやられ放題だったのだ。
マスター「あのなー、うちの店は忍者屋敷じゃないんだから。もう網はないよ。ああいう話の基本設定をこわすような事はされちゃ困るんだよ。」
ダイ「もしかして床に落とし穴とかないか?」
マスター「ある訳ないだろー。」
タク「お前、先週カミさんに蹴られまくってたけど、大丈夫?」
ダイ「ああ、ひでえ目にあったけど、ちょっと首と背骨にひびが入っただけだ。」
タク&マスター「それって、ちょっとな事なの?」(汗)
ダイ「ああ、暖かくして寝てれば大丈夫だ。」
タク&マスター「そういうもんなの?」(汗)
ダイ「しかし、あの鬼のような女(カミさんのこと)は、許しちゃおけない。亭主を網にかけて蹴りつけるなんてまさに鬼の所業だぜ。オレはボクシングジムで鍛えて、ボクサー並みの動体視力とゴキブリ並みの敏捷性を身につけたんだぜ、網さえなければ負けるわけがないんだ。」ポケットから千円札を出した。「奴のサイフから抜いてきたぜ。」
タク「バカお前、また性懲りもなく…」
ダイ「オレ達は、どちらかが倒れるまで戦うしかない宿命なのだ。」
マスター「どんな夫婦なんだよ。」
その時、戦闘用皮ジャンに身を固めたカミさんが入ってきた。
ダイ「早かったじゃねえか。」
リングじゃなかった、フロアの真ん中でにらみ合うダイとカミさん。
カミさん「お金を抜いたサイフを堂々とテーブルに置いてくるなんて、ずいぶん度胸があるじゃない。」
ダイ「あのサイフはオレの挑戦状だ。お前も卑怯な手を使わないで、正々堂々と勝負しろ!」
カミさん「いいわ、体だけで戦うと約束しましょう。そして30秒以内で勝負をつけると約束するわ。」
ダイ「愚かな!お前の飛び膝蹴りはもう見切ったんだぜ!いくぜ!」
「はっ!」カミさんが飛ぶ。しかしダイは紙一重でかわして、飛び膝蹴りは空を切る。
ダイ「わははは!」
カミさん「秘奥義!飛び膝蹴り3連打!」
1発、2発、3発、右に左にとかわすダイ。
プチッ!タク「何だ、今の音?」
「うぎゃあ!」倒れて、うめくダイ。
マスター「どうしたの?何があったの?」
カミさん「アキレス腱が切れたのよ。あたりまえでしょ、準備運動もしないで、あんなデカイ体でゴキブリ並みのスピードで動き回ったら、故障するに決まっているわ。」
のたうつダイの顔をカミさんがぐりぐりと踏みつける。
カミさん「どお?約束どおり、30秒以内に終わったわね。」
ダイ「うう…、お…鬼!」
カミさん「まだ、そんな口がきけるのか!」
以下、蹴る、踏む、蹴る、踏む、蹴る、踏むが延々続きます。
タク「陰惨だなー。」
マスター「やめてよー。」「きゃあ!」入り口の方から悲鳴。
タクとマスターが見ると、入り口に、先週ダイとカミさんの大ゲンカの惨状を目撃して逃げていった若い女の子2人組みがまた凍り付いている。
マスター「あっ、お客さん。大丈夫ですよ!本当にこの人たちは皆さんには危害を加えませんから…、だから逃げないで…」
「きゃー!」階段を駆け下りる女の子たち。
「待ってー、お客さーん!お願いだから待ってー!」後を追うマスター。
「いやー!助けてー!」泣きながら逃げる女の子たち。フロアの真ん中では、カミさんがダイを蹴りつけている。テーブル席の常連客はいつものように平気で飲み食いしている。先週来た女の子2人組みは、また泣きながら逃げている。マスターはまた追いかけて走っている。
タク「今週もまた、めちゃくちゃだな。」はたして菊花賞は?