「競バカたちが集まって 2002」おバカどもの馬券奮戦記です!

登場人物

500円のタク
この話の主人公。1レース500円玉1個で勝負するせこいサラリーマン。G1レースだけは1万円買う。

マスター
「鉄馬」のマスター。500円のタクとは同級生。

ダイ
最も激しい馬券を買う男。昨年はヘア・ヌード写真集「競馬場から、愛」を出版して、周囲をパニックにさせた。

イサム
タクとマスターの旧友。レギュラーの座を狙っている。

暗い女
男運が悪い。いつも男に逃げられている。マスターに惚れている。

 

4月6日(土)、開店直後の鉄馬。客はカウンターにタクとダイ。

タク、競馬新聞を赤ペンで真っ赤にして「今年の桜花賞は難しい。どこから狙っていいのか分からん。」
ダイ「穴はどれなんだ?」

そこにイサムが入ってきた。
マスター「いつも、隣の駅から大変だね。」
イサム「気にするな。」
イサムは競バカのレギュラーになりたいので、隣の駅からよく来るのだが、作品にならない日が多いのだ。

ひゅう、と冷たい風が吹いた。
タク「来るな。あの女が。」
マスター「やめてくれー。」
からん、とドアの鈴が鳴って、暗い女が入ってきた。カウンターの端に座って、競馬新聞を出した。

イサム「あの人も常連さん?」イサムは暗い女は、初対面だ。
マスター「まあね。」

暗い女は、見た目はちょっといい女なので、イサムは近づいて声をかけた。まるで2年前のタクのように。
イサム「桜花賞は何を買うんですか?」
「逃げたのよ。」暗い女が、ぼそっとつぶやいた。
イサム「えっ、なんですか?」
暗い女「彼が・・・彼が、若い女作って逃げたのよ。だから、だから若い3歳牝馬ばかりの桜花賞が、憎いのよ!

イサム、タクに「この人、どういう人なの?」
タク「そういう人なんです。」

暗い女「2年前に、同棲していた男に逃げられ、マスターに捨てられて、その後、何も良い事なんて無かったわ。あたしの人生なんて、どうせ、どうせ、そんなもんなのよ。」
イサム「そうだ、オレだって、どんなに努力しても、レギュラーにはなれないんだ。オレの人生なんて、どうせ、どうせ、そんなもんなんだ。」
2人で号泣。

タク「いかん、暗い女のオーラにイサムの精神が共鳴している。このままでは果てしなく落ち込んで行くぞ。」
マスター「感情のデフレスパイラルだ。」
タク「この暗さを吹き飛ばせるのは、鋼の無神経だけだ。行け、ダイ!」

ダイ「そこの2人、何をぐだぐだ言ってるんだ。いいか、オレはな、結婚して子供もいて、また競バカの主人公だけどな・・・」
タク「違う、主人公はオレだ。」
ダイ「そうか、まあいい。とにかくな、所帯を持って、競バカのレギュラーなんだ。しかしカミさんは鬼のような女で、こづかいは少ししかくれないし、馬券はなかなか当たらないから、好きなキャバクラにもちっとも行けなんだぜ。男がいるとか逃げたとか、レギュラーになるとかならないとか、そんな事は、小さな事だ。大事なのは燃える熱い心だけだぜ。
暗い女「あんたは結婚して、幸せな家庭があるから、そんな事が言えるのよ。」
イサム「そうだよ、レギュラーには、レギュラーになれないオレの気持ちは分からないよ。」
ダイ「オレの熱い男気を見て、目を覚ませ!」
ぎゃああああああ!
ダイが出したのは、またしてもダイのヘア・ヌード写真集「競馬場から、愛」だ。
イサム「はっ、オレは何をしていたんだ?」
タク「よかった、正気をとりもどしたぞ。」
暗い女「尻が、なにが、汚い、汚い!」
ダイ「この男気が理解出来るようになれば、あんたも一皮むけたいい女になれるぜ。」
タクとマスター「無理だって。」

暗い女が帰った。
タク「桜花賞は、スマイルトゥモロー、タムロチェリー、ブルーリッジリバー、サンターナズソングの単。」
ダイ「オレはキョウワノコイビトから総流しだ。」

果たして、桜花賞は?

そして午前0時過ぎ、タクたちはみんな帰って、客はテーブル席に2組だけだ。そこに男が1人入ってきた。マッカランのストレートを頼んだ。

男「この店に、500円のタクという男が来るか?」
マスター「常連ですが。お知り合いですか?」
男「混戦の桜花賞だから、タクは逃げと追い込みの両方の単勝を買うんだろう。タムロチェリーとサンターナズソングの単勝あたりか。」
マスター「当たってる。」
男「また来る。」

マスターは男を見送りながら「また、変なのが出て来ちゃったなー。」と思うのであった。
 

 

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