「競バカたちが集まって 2002」おバカどもの馬券奮戦記です!
登場人物
500円のタク
この話の主人公。1レース500円玉1個で勝負するせこいサラリーマン。G1レースだけは1万円買う。マスター
「鉄馬」のマスター。500円のタクとは同級生。
ダイ
最も激しい馬券を買う男。昨年はヘア・ヌード写真集「競馬場から、愛」を出版して、周囲をパニックにさせた。カミさん
ダイのカミさん。お金をちょろまかすダイといつも闘っている。得意技は飛び膝蹴り。ロジータ
ダイの娘。前回までのあらすじ
ダイは波乱続きのG1戦線で次回の天皇賞(春)に大金を賭ける事を計画している。しかし、いつもどおり金がないのでカミさんのサイフから金を抜こうと思っている。カミさんのチェックは厳しいので、先週から競馬は小額で楽しむことを宣言し、前非を悔い、よきマイホームパパになることを宣言し、カミさんの油断を誘おうとしている。4月20日(土)。ダイは好きな競馬もやらず、娘のロジータちゃんと横浜ドリームランドへ行った。翌21日(日)、ダイはPAT(通信投票)で1レース500円ずつ馬券を買った。
「1レース500円でも、熱くなるもんだぜ。」ダイはカミさんに聞こえるように独り言を言った。内心は「こんな線香花火みたいな馬券じゃ、燃えられないぜ。」と思っていたのだったが。(ここからスペシャル版で、タクとマスターのつっこみが実況中継で入っています。)
4月26日(金)深夜、ダイの自宅。ダイとカミさんとロジータちゃんは寝入っている。がばっと起きるダイ。ロジータちゃんの寝顔を見つめる。
ダイ「ロジータ、すまない。また父ちゃんは、しばらく家に戻れないぜ。」(やめなさいって。)
ダイ「オレはまた、天皇賞という戦いに向かわなければいけない。」(無理に戦うことないって。)
ダイ「普通のカミさんなら、ありったけの金を用意して「あんた、これで思う存分勝負してください。」ぐらいの事はいうもんだ。」(言わないよ。)
ダイ「こんな鬼のような女を母にもってしまったお前が不憫でならないぜ。」(お前が父親なことが最大の不憫だろうが。)
ダイ「そんな逆境にもめげず、闘い続ける父の後姿が、いつかお前の心の糧になることを信じているぜ。」(ならない、ならない。)
ダイはカミさんのサイフからキャッシュカードを抜いて、24時間営業のATMコーナーへ走った。最大の課題は暗証番号だが、ダイはカードで現金を引き出すカミさんの後姿の肩と右腕の動きから暗証番号を見切っていたのだ。(だからその努力と情熱を他の事に使いなさいよ。)ダイはキャッシュカードからありったけの7万8千円を抜いて、夜の街に消えた。(だめだこりゃ。)
(実況中継終わり。)4月27日(土)、開店直後の鉄馬。客はタクとダイ。ダイは今日は8千円だけ馬券に使って、残りは天皇賞にとってある。
タク「ここは大穴狙いで、ボーンキングとホワイトタフネスの単。」
マスター「きつい馬券だねえ。ところでダイ、どうしてもカミさんに金を返して謝る気はないのか?」
タク「金を返して謝っちゃった方がいいぞ。」
ダイ「オレと奴の間に、謝るとか許すとかいう言葉はないんだ。あるのは倒すか倒されるかだけだ。」
タク「どんな夫婦なんだ。」
ダイ「そろそろ奴が来るころだ。マスター、ちょっとトイレを借りるぜ。」と言って大きなスポーツバックを持ってトイレに入っていった。
マスター「何だ、何やってんだ?」そこにカミさんがやってきた。いつもの戦闘用の黒い皮ジャン姿だ。
カミさん「あのバカはどこ?どこに隠れているの?」
ダイ「オレはここだ。逃げも隠れもしないぜ。」
タクとマスター「何だ?」
トイレの前にダースベイダーのような鉄仮面をかぶり、すもうのまわしのような鉄製のパンツをはいたダイが仁王立ちしていた。
タク「何なんだよ、それ?」
ダイはずいずいと歩いてきてカミさんとにらみ合った。
ダイ「居酒屋仲間の板金屋の桐沢田に裏ビデオをつかませて作らせたんだぜ。お前の飛び膝蹴りは、顔面か股間を狙ってくるからな。ここさえ完全防備すれば、他の部分は決定打にはならないぜ。つまりお前はオレには勝てないのだ!」
カミさん「どんな防具を付けようと、あたしの怒りが打ち砕く!」
2人は互いに助走の距離をとるためにじりじりとさがっていった。
ダイ「勝負だ!」走り出す。
カミさんも助走をつけて飛び上がった。いままでの飛び膝蹴りよりもはるかに高く飛んだ。そして前方に2回転して加速をつけて全体重をかけてかかとを鉄仮面に打ちおろした。
「かかと落とし!」
ガキン!激しい金属音がして鉄仮面が真っ二つに割れた。衝撃で尻餅をつくダイ。
ダイ「てめえ、靴に何か仕込みやがったな。」
カミさん「いつかお前がヘルメットでもかぶってくると思ったから、特注でつま先とかかとに鉄板を仕込んでおいたのよ。」カミさんは靴を脱いだ。「防具なしで正々堂々と勝負しましょう。あたしには飛び膝蹴りがある。あんたにはもう何もないわね。」
ダイ「後は…、後は、勇気だけだ!」
「はっ!」カミさんの体が飛んで飛び膝蹴りがダイの顔面に炸裂した。鼻血を吹き上げて倒れるダイ。カミさんはダイのサイフを抜いて中から1万円をだすとマスターの前に置いた。「すいませんが、これでしばらくここに泊めてやってください。」
マスター「やっぱ、こうなるのね。」ため息。
カミさんは帰っていった。
床にのびたまま、ダイがつぶやいた。「この世には、正義が勝つって事はないのか?」
タク「少なくともお前は正義じゃないよ。」はたして天皇賞(春)は?