よもやま日記

過去の日記へ

文責/市立小樽文学館・玉川薫
直接メールくださるときは、こちらへ。


■3月31日
珍しく、美術館のお仕事で出張。会津若松駅前のホテルで書いています。差し障りある言い方かもしれませんが、出張って、一息つける。それも地方都市。首都圏なら、時間経費、どうしてもムダにしたくなくて目一杯歩き回ってしまう。メインの用事が片づけば、サブのお仕事。アポ無しでも、先のことにつながりそうなところ飛び込む。でも会津若松市。星田さんから託された用事すませたら、後、何やって良いか分からないもの。
きのう、小樽から千歳行きの列車、千歳から福島空港までの機内、福島から郡山駅行きのバス、ずっと爆睡しておりました。
ルートはインターネットの「駅前探検倶楽部(駅探)」で調べてあったから、迷うこと無しに乗り換え。時刻表も開かないと、バカに磨きがかかるわね。郡山から会津若松まで、ン、JR磐越西線下り、か。郡山駅のドトールで遅い昼飯食べながら窓の外見れば、雪など全くなし。列車に乗り込み、しばらく亀井秀雄氏の『感性の改革』読み耽り(難しいな。でも亀井さんの一貫した言行一致、20年以上前に出たこの本でも、なるほどなあ、と納得されます)、窓外ふとみてびっくり。列車雪深い山中、ひた走っておりますが。会津若松って、福島、郡山よりも北なの?そういや、下りって。
会津若松は小さな駅。降り立ってみると、あれ、雪はありません。駅前のホテルに入り、ちょっと落ち着いてからロビーに飾ってあったレリーフの地図を眺める。そうかあ、福島県の主立った都市って、みな盆地にあるのね。福島盆地、郡山盆地の真西の方角に、磐梯山、猪苗代湖をはさんで会津盆地があり、その南東部に会津若松市が位置してるんだ。列車は磐梯山のふもと、猪苗代湖のほとりを通ってきたのね。吹雪気味だったのも不思議じゃないね。そういや斎藤清さんの版画の風景にそっくりでした。その斎藤清さんの展覧会の用事で、ここに来てるんだけど。
インターネットで、ますます方向音痴に磨きをかけておりますが、思い出すのは伊藤整。どなたか詩人のエッセイで読んだことあります。あるとき、伊藤整が北海道の東部の街だったと記憶してますが、夜遅く、地元の方々と列車に乗り込んだんですって。窓の外、ほとんど真っ暗な闇をぼんやり眺めていた風な伊藤整氏、列車動き出した瞬間、不思議そうな声をあげたそうな。「この列車は、どちらに向かっているのですか」って。
これだけでは何のことか分からぬし、私も肝心なところ例のごとくすっかり忘れていますので、うまく説明できないのですが、詩人は伊藤整氏の質問に、内心びっくりしたそう。確かにその列車は、何か地形的な理由で、一種不自然なルートを余儀なくされているので、常識的には逆方向へ動き出したように思われるのだそうです。けれども、窓の外も見えない深夜に、そのことに気づく人間、まずいない。詩人は伊藤整氏のことを「動物的な方向感覚持った人だな」と思ったそうです。先日文学館で講演された都市工学専門家の伊藤滋氏、「自分はオヤジの能力何ひとつ受け継いでいない。人間関係たくみに作って世渡りする術くらいかな」と笑われましたが、この特殊な能力、受け継がれたのかもしれません。そういえば、伊藤整氏が小樽のことを紹介するエッセイの冒頭、「この街に宿泊する人は、まず、朝日が海から昇るのにびっくりするだろう」と書いておりました。なるほどねえ、小樽は日本海に面しております。なのになぜ、海から日が昇る。この一節だけで、北海道の特殊な地形と、小樽の位置が見当つくわけね。もっとも、私は25年も小樽に住んでて、朝日が海から昇るのに何の疑念も抱きませんでしたが。
で、会津若松は、さすが豊かな歴史ある城下町。良い街ですよ。弘前みたいね。じっくり歩いてみたいけど余裕ないな。いちばん小さい赤ベコでも買って帰るかな。

■3月25日
小樽港埠頭の倉庫(正確には倉庫ではなく上屋というもののだそうです by 港湾部)内につくった映画「天国の本屋」(竹内結子さんとか主演)のロケセットが解体されることになり、そのセット内で使われた古本を文学館にもってくるために、さきほど箱詰め作業をしてまいりました。解体そのものは、昨年末頃に決定したわけで、もっと早くに本ももらってくれば良かったのですが、せっかく作られた立派なロケセット(私は原作読んだものの、できあがった映画そのものは見ておりませんが、天国の本屋そのものね)、どうせなら解体する前に、天国の本屋閉店セール、大たたき売り、をやりたかったのだけど、なんやかんやで伸び伸びにしているうちに、ついにタイムオーバーになってしまった。
きのうなら早春らしい陽気であったのですが、きょうは冬に逆戻り、いつもの小路君、ハリマ君ともなって、ナウシカ帽かむった私が薄暗い倉庫のなかで、ごそごそやっている様は、天国の本泥棒ね。寒いけれどメルヘンね。よくよく見れば、たいした本はないなあ。
やってることはともかくも、こんな行為も、ま、春ならでは。本泥棒、って春の季語?虫けらみたいにごそごそやってるから、啓蟄みたいもの?

北国の春といえば、氷割り。さすがの大雪もおおかた溶けたのですが、最後に固く地面に凍り付いた雪を、ピッケルとか使って剥がしていく作業ね。きのう、プロレタリア画家の大月源二の資料を調べにひょいと顔を出したノーマ・フィールドさんがカウンターの私に声をかける。「あちこちでやってますね、氷割り。タマガワさんは」。やりません(きっぱり)。「そうでしょうねえ。私もやらない。雪もすっかり消えていくのは惜しい気がする」。ほうっておいても、あと十日もすれば消えてなくなります。でも氷割り作業やらずにいられない気持ちはわかる。北国の長い冬、一日でも早く春の肩先に手をかけたい。私はやりませんが、氷割ってるの眺めてるのは、けっこう好きです。パカパカ氷が剥がれていくの見てると楽しい(見てるんだったら手伝えよ、って話ですが)。

天国の本ドロボーの成果本(人聞きわるいな。ちゃんと関係各位に了解をえた正規ルート品です)は、5月の文学館古本市でお蔵だし。古本はともかくね、この古本市での超目玉は、伝説の古書店主、須雅屋さんの御主人、須賀章雅氏(第四回古本文学大賞受賞作家)の講演「古本屋その日暮らし」(すみません、また勝手にタイトルつけてしまった)ですよ。期待が高まりますね。

ここで突然のお知らせです。
かとうかなこアコーディオンコンサート
17歳で全日本アコーディオンコンクール総合優勝。フランスのコンクールで3度1位に輝いた世界のトップ奏者です。
かとうかなこ(クロマチック・アコーディオン)・笹子重治(ギター)・向島ゆり子(バイオリン)
▲とき/5月21日(土)午後6時開場 7時開演
▲ところ/小樽文学館展示室内
料金 前売券2000円/当日券2500円(コーヒー付き)
お問い合わせ、文学館(32-2388)

その、かとうかなこさん、3月30日(水)HBC「朝ビタTV」AM9:55〜に生出演。生演奏あり。もちろん5月のコンサート告知もします、とのこと。以上、キコキコ商店さんから飛び込んだメールです。

春ですねえ。

■3月20日
昨日の夕方、お寄りくださったのは町田市立図書館文学館開設準備担当学芸員の山端さん。時間も遅くなられましたので(これは私の手落ち。この日に来てくださること聞いていながら、「『本』のよもやま話」第2講・米谷祐司さんの「タウン誌づくり40年」、小田節子さん曰く、「あの人が若かったころ、小樽の街を肩で風切って歩いててね、それ見て、私たち、ああ、小樽の街も生まれ変わるんだな、って思った。そのくらいカッコ良かったの。さすがに年とられたけどね」。いいえ、今でも変わらずカッコいい。活力ジカに注入されるようなステキな講座でした。いや、要するにダブルブッキング、山端さん、ごめんなさい)、館のなか十分見ていただけなかった。それでも、このJJ's Cafe ご覧になっただけで、「HR見ていても、他の文学館と違うな、と思ってましたが、ここをみて納得できました」っていってくださいました。
「どこへ行っても、『このご時世に、文学館、ですか』って顔されましてね」。私も、そう思った。でも、山端さん、実に真剣。実に真剣に悩んでおられる。山端さん目指しておられるのは、ウチと同じベクトル。地域に根ざし、市民に愛され、なおかつ「高いレベル」を保つ場所。不可能かも知れぬが、可能性は、ある。それは今現に「文学館学芸員」である私がいうんだから、確か。
JJ's Cafe に納得された山端さんも、私が常時カウンターにいる、と申し上げたときには、いささか衝撃を受けたご様子。「あの……、企画もぜんぶこのカウンターのなかで?」。ええ、まあ。「うーん、僕にはできないなあ」。いくら何でもこのスタイルを他館に強くお薦めする気は毛頭ございませんが。「学芸員が、いわゆる学芸員室にこもり、来館者と接する機会がひじょうに限られているのは、良くないのかも知れないな、とは思ってるんですよ」。6、7年くらい前までは、私がそうだった。奥の部屋から出てきたら、来館者どころかスタッフもみんな帰った後だったりしてね。でもねえ、JJ's Cafe の(偽)マスターみたいにカウンターで仕事やってる今は、思う。学芸員が来館者見ない、来館者も学芸員見ない、それ絶対に良くない。
「例えば展示室からみえるところに大きなワークデスク置いて、ときにはそこで仕事をしている様子をみていただく、なんてのは」。いいじゃないですか、それ。「ただ、こうしたことを提案するとなると、学芸スタッフ、事務スタッフ、さらに役所の組織的にどう納得させるか、僕には自信がない」。私は、ほとんど、ひとりでしたからね。昔も今も。恵まれてた、のかな。寄る年波に、息も切れるが。
「あと、子供たちをね、どうやって呼び込むか」。「青春日記(中学生日記)」ご覧になってくださったらしい。「ひとつ、できそうなのは、ガラス張りの防音ルーム。いちおう文化サークルのミーティングルームなんですが、子供たちがいくらオシャベリしても、ほかに迷惑かからないような、そんな部屋にも」。いいじゃないですか、それ。「マジ怖」のときの中学生スタッフonlyルームね、部外者(先生、保護者、その他、オトナ一般)立ち入るべからず、の。だいじです。「自分たちの場所だよ」って実感。
そんなこんな、あれこれ話し込んで、すっかり日も暮れたわけですが、いい文学館になりそうだな、町田市立。それにしても、萬鉄五郎記念館の学芸員さんに続いて二人目、そんなに衝撃的か、カウンター学芸員。

■3月15日
このあいだ中央市場に連れていった色内小学校の子どもが、またやってきました。きょうは何の用だっけ。あ、そうか。これは私が頼んだんだった。世話焼きましたからね、多少の見返りを私は求める(大人げない学芸員51歳です)。校歌を歌ってくれないか。二人、顔を見合わせて「うーん、いいよ」。あれ、案外かんたんな。ちょっと待ってね、ビデオカメラ取ってくる。あら、バッテリー切れ……(もう、最低)。ということで、日を改めて、きょう来たわけだ。思い出すだけで手間取る初老学芸員ね。

「仰げ大空 明かるい行手
正しい道踏み 知識をみがく
努力の瞳の かがやく六とせ
いざいざ学び舎 我らを見よや」

なるほどね、小学三年生女子が歌う文語体の歌か。こりゃ確かに「校歌」だけか。はい、OK。

私、この「校歌斉唱」展に向けて、ほんとはあちこちの学校へ出向き、生徒が校歌を歌っているところ撮りまくってくるつもりだった。初夏から、夏、そして秋、アンド冬。そろそろね、と思いつつ、あっという間に一年が経ちました。何も撮れなかった……。
今のところ手元にあるのは、数年前の末広中学校の卒業式の校歌斉唱の映像、そして図書館の石塚さんから貸してもらった潮陵高校合唱部OBの方々が先生の還暦のお祝いに集まり、その二次会で校歌を歌い上げておられる場面、そしてきょうの色内小学校の二人が歌った校歌、と。
今度の日曜日、私は教育委員会の祝辞を携えて花園小学校の卒業式に臨むのだが、もちろん許可得て校歌斉唱のシーンを撮らせていただくつもり。これで4校。
ん、さっき3階へ上がる階段から挨拶してたのは、「青春日記」のメンバー(だった)S君だな。そうか、いま桜陽高校の美術部の展覧会をやってるんだね。あ、じゃ、そこで歌ってもらうかな、桜陽高校校歌。嫌がりそうだが。えーと、彼は菁園中学校だったか、西陵中学校だったか、なら中学校校歌も思い出してもらおうか。これで6校。
何だ、それならここにいる人たち、みんな歌えますね。館長は群馬県立前橋高校校歌?私は福井市立光陽中学校校歌?

これ、ほとんど何年か前にやった思いつき企画「行きずりの朗読」の校歌ヴァージョンだな。「行きずりの校歌斉(独)唱」。誰も聴かない?いや、少なくとも歌う人は、それなりの感無量。10人歌えば、10人は感動だ。こんなに打率の高い企画は、ちょっとないでしょう。明日から撮影開始ね。

3月8日
■この土曜日(12日)から始まる企画展「校歌斉唱」の準備、遅々として進まず、というのは正確でなく進めず、すなわち全ての責は私にあり。市内小中学校のほうは、とりあえず集められるものは集めたつもり、むろんまだまだ不足なのですが、これはいつもの手で、開催している間にも、ものは自ずと寄ってくる(まずいな、初めは斬新なアイディアだったのが、常套化して私のサボリの口実になってしまったか)。
きょうは、高校。この期に及んで、やっと市内の各高校にファックスでお願い。さっきはそれで北照高校まで行ったのですが、大通はすっかり雪が消えて三輪バイクで飛ばせるものの、学校へ上る小道に入れば、三輪バイクの最大の敵、ワダチにはまり、スリップ、尻振り、立ち往生。何とかたどりつき、90周年誌と校歌のCDをいただきました。それから、これは借り物ですが2001年の卒業アルバム。なぜこれか、というと、2000年春のセンバツ大会で、北照高校は初勝利を上げた。すなわち、史上初、甲子園に小樽の高校の校歌が流れた。そのときの写真が掲載されているのです。今も昔も、おそらく校歌の最高の晴れ舞台ですね。今回の企画展のために、亀井館長が書いてくれた「校歌を見直そう」という一文にも、「甲子園での校歌斉唱」が取り上げられています。パンフレット、これから作りますから(爆)、ご期待の程。
ワダチの雪道を滑り落ちるようにして、館に戻ったら色内小学校の女の子が二人。しまった、約束忘れてた。二週間前だったかな、「市場の話を聞きたいんですが」。私は市場ハカセじゃないよ。「小樽市場物語」って、展覧会はやりましたけどね。「博物館の石川さんに紹介されました」。そうか、しかたがないね、じゃこれから中央市場に行ってお話聞こうか。「きょうは私たち忙しいので」。そう、じゃ明日にする?「塾だったり、ピアノだったり、ずっと予定があるので」。おいおい。
その子から、先日電話あり、「火曜日なら時間とれます」。そう、こっちがつき合ってもらってるみたいね。じゃ、火曜日4時頃においで、って、すっかり忘れてました。どっちもどっち、だな。
急遽会議をキャンセルし(おいおい)、二人を連れて中央市場の事務室に。思い出しますね、一年前のガンガン屋台。あのときお世話になった若い事務長さん(組合長さんだったかな)が、きょうもていねいに説明してくれました。この子たちが来るのは二度目だったらしいのだけど。「子どもに説明するのって難しいですね」。そうですよね。「このあいだ、別の男の子たちが来たのだけれど、予想もしない質問される。この市場はどうして機械が少ないのですか?って」。ああ、市場はもう古びて、お店のご主人たちもお年を召された方が多いのだけど、いくら何でも皆さんレジは使っているし、肉屋さんでは大型のスライサーも使っている。でも、子どもがフシンに思うのも分かるのね。これは事務長さんも説明しようとされたようだけど、同じレジを使っていても、スーパーマーケットや、コンビニではそれが「端末」であって、直接は見えないがそれがいくつもの階層にシステム化されているのね。個々の機械そのものより、店舗が巨大な機械に見える。市場のご主人たちが使っているレジやスライサーは、機械というより何か古めかしい道具に見えるのね。実は、そのあたりに市場の起死回生のポイントが見えかけてもいるのですが。事務長さんと、思わず市場の現状と近未来の話になってしまっているうちにも、二人は懸命にメモを取っている。どんなメモなのか、見当もつきませんが。遅くなったから、きょうは失礼しよう。昔の市場の写真は、文学館でも前にコピーさせてもらっているから、こんど探しておくよ。「ありがとうございました!」。うーむ、さて、次は何をするのだったっけ。