よもやま日記

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文責/市立小樽文学館・玉川薫
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■11月24日
ここ数日、1月か、2月か、というくらいのドン冷え状態だったので、さっきようやく覗いた青空がとても嬉しい。江ノ島の青空が懐かしまれる、って3、4日間滞在しただけのエセマニア。
松本大洋の『ピンポン』(またかよ)パラパラみてて、そういえば主人公のペコ、スマイルが通うのは片瀬高校。つまり江ノ島の対岸のどこか。マンガの随所に江ノ島遠望するカット、江ノ電のカット、頻出します。懐かし。

前に書いた日記、ぶり返すようですまないのですが、江ノ島に下見にいったとき。ホテルのフロントの方とご相談。到着予定が3時30分頃になりますので日没まで1時間。しかもホテルから江ノ島まで、やや思いがけないくらい遠い。
「なら竜口寺など散策されたらどうですか。仏舎利塔まで上がれば眺めもよろしいですよ」。そうか、そういや途中にありました。古めかしい大きなお寺。日蓮上人法難の、とか大きな標柱が建っていたような気がします。
そうか、じゃ本番ではその辺、ご案内いたしましょう。石段上がって仏舎利塔まで上れば、夕暮れの江ノ島一望できるのですね。近場が何より。正面からまずお寺をめざします。えーと。うん、それなりの勾配、かな。皆さん大丈夫かな。やっとお寺に着きました。右の石段さらに上れば五重塔、左が仏舎利塔か。この……石段か。これって。あの、凄い勾配じゃないかな。途中で顔あげていられなくなる。手すり頼りに足もと一歩ずつ踏みしめて、まだたどり着かない。
仏舎利塔についたときには息も絶え絶え。壊れかけた滑り台みたいなのが目に入りましたが、これが展望台かあ。確かに江ノ島遠望できますけどね。一行のうち何人がたどり着けるでしょうか。途中でギブアップしたかたが、はたして無事に帰れるでしょうか。
断言してもいいですが、竜口寺の石段2往復もしたらビリーズブートキャンプ並みに効きます。平均年齢60〜70代の一行には酷すぎる。下見しといて、ほんとに良かった。

『ピンポン』ぱらつかせて、ペコの特訓シーン、あの神社の石段は、竜口寺ホウフツす。寺だけどこの辺みんな神仏混淆みたいなもんだし。石段のぼりつめたとこから江ノ島遠望できるのもそっくりです。映画でロケしたのは、やはり海岸近くの上諏訪神社というところだそうですが。

その映画と原作。いちどメモしておきたかったマンガのセリフ(ネーム)と映画の台詞の、ほんのわずかの、でもとっても大きな違い。
クライマックスのペコ星野とドラゴン風間の試合の最終盤。ちょっとマンガをそのまま引用。

以下は敗北を覚悟しながら全力で打球続ける風間の内面の声
しだいに引き離されてゆく……徐々に置いてゆかれる感覚。優劣は明確。しかし、焦りはない。全力で打球している。全力で反応している。怯える暇などない。怯える必要などっ……

(ペコのスマッシュを打ち損じる風間。その打球が一瞬はるか頭上を飛び去る鳥に見える)
ペコ「どうしたんか?」風間「いや……」/風間「いい気分だ。……実に……」/ペコ「へへ……そうな……うん」/ペコ「オイラ マッチポイントだぜ、ドラゴン」風間「ああ」/風間「私はここまでだ、ヒーロー……」/ペコ「あらら」/風間「また、連れて来てくれるか?」

この風間の最後のセリフがポイントで、映画ではつぎのようでした(ウロ覚えですが)。

風間の内面の声は無論省略。けれども鳥の幻影はしっかり表現。一瞬、茫然と逸れていく打球を見上げる風間。
ペコ「マッチポイントだぜ、ドラゴン」風間「勝つのか?まあ、いい……。楽しかった。また連れてきてくれ」。ペコ軽くうなづくように微笑む。
このときのペコ、クボヅカ君の笑顔が実に綺麗なので、この場面および映画全体、まあ良いじゃんか、って認めてしまうのですが。
原作。
風間「また、連れて来てくれるか?」、ペコ「……」(無言でうつむく)、風間「そうか……」。ペコ、微笑む。

ね、2、3文字だけで深みがもの凄く違うでしょう。脚本のクドカン宮藤官九郎氏、映画の限界百も承知の上での「改竄」だったろうと思う。辛かったろうと思うけど。
原作は、残酷。残酷だけど真実。至福の時、は勝利のときだけではない。敗北の時、にも訪れる。ただし、そこには、二度と戻れない。皆それを分かっていながら、全力で打球する、しかない。

いくら傑作とは言え、同じマンガを飽きもしないでひっくり返しひっくり返しも、我ながら何ですが、『ピンポン』繰り返すに連れても、江ノ島、江ノ電、鎌倉懐かし、でした。

■11月17日
真白き富士の嶺緑の江ノ島、というくらいだから江ノ島からは富士山が見える、のだろうか。

90歳になる私の母親は、江ノ島から夕陽にピンクに染まる富士山を見たことがある、という。あんたぐらいの歳に、と言ったような気もするが、そんなはずはありません。ずっと八百屋のカミさんでしたからね。江ノ島から富士山を見たというのがほんとならば、70年以上前の話のはず。

羽田に向かう飛行機のなかからは、確かに富士山見えました。やっぱり富士山が見えるとテンションあがります。お江戸方面に向かっているのだな、と。実はそれぐらい、はっきり富士山を見たという記憶がない。
いちばん記憶に鮮やかなのは、西荻に住んでいたころ、1月、2月ごろかな、前の晩木枯らし吹き荒れて、翌朝はどこまでも澄み渡った蒼空。西荻窪駅のホームの端っこにコートの襟たてて震えながらつったっておりましたら、真っ白な雪をかむった小さな富士山がカッキリみえる。え!ここから富士山見えるんだ。なんとなくトウキョーに慣れたような気になっていたときだから、不意打ちね。
西荻窪のホームからは富士山が見えます。見えたの、一度だけだったように思うけど。

ホテルについて、タクシーに分乗して、江ノ島直行。「エスカ」(エスカレーターそのものです)に乗り、もひとつ「エスカ」に乗り、江ノ島展望灯台の展望台までエレベーターで一直線。薄青っぽい伊豆の山々、箱根の山々のシルエット。なるほど、確かにあれは富士山のカタチ。でも飛行機からみたときのほうが、それっぽかったな。平面シルエット、いまいちもの足りません。
そうこうしているうち、日が沈む。富士山あたりに棚引く雲が淡く色づく。確かにほのかなピンク、そしてオレンジに。なーるほど、江ノ島から、確かにみえます。夕焼ける空にたたずむ富士山。

つまりお天気が良かった。恵まれた。とっぱじめに江ノ島から富士山みえたことが、今回の文学散歩のすべてといっていいくらい。

ホテルが江ノ島で良かった。江ノ島界隈のビミョーな俗加減。廃れ加減。射的とスマートボール。江ノ電モナカ。シェイプ中途で出かけたままのサーフボード屋。街角から顔出す江ノ電。これこそ江ノ島。江ノ島から北鎌倉、で良かった。逆じゃつまらない。

案内してくださった鎌倉シルバーボランティアのカシワギさん。が、また江ノ電な感じなんだな。聞けばまもなく80歳とのことだが、ジャンパーに手を突っ込んで、うつむき加減にスタスタ歩く。早くないけどね。稲村ヶ崎の海岸も、大佛次郎邸のあるお屋敷町も、円覚寺の石段も、寿福寺の墓地も、扇ガ谷の切り通しも、まったくペースを変えずにスタスタ。「きのうと今日とで3万歩超えてるよ」とヒロカワさん。ほとんど70歳超ながら健脚ほこる面々も、さすがに音を上げかけました。

江ノ電、いいですね、とカシワギさんに話しかけます。カシワギさん、フフンと鼻で笑う。「あんな電車だけどね、正確に10分置きに走るからね。分かりやすいです」。なるほどね。
「このへん歩いてると、よく散歩途中の川端康成に会いました。眼がギョロっとしててね。黒いマント着て、何かいつも寒そうだったな」。ん、今すれ違ったのは川端先生、なんて気にさせる、こういうのこそ文学散歩。ところどころ間違えたり忘れても全然ヘーキ。それが文学散歩のいいところ。

散歩の詳細はいずれチバさんにアップしてもらうとして(おいおい)、私は下見と本番の数日で、すっかり江ノ電ラヴ。先頭車両にたむろする「テツ」の少年達。改札口で携帯灰皿片手に、腕時計ちらちら眺め、電車の着く時間を待つカシワギさん。

鎌倉駅の江ノ電ショップでいろんな小物をためつすがめつ。狭いところにあんまり長くいたせいか、とうとうお姉さんに声を掛けられ、こんなもの買ってきてしまいました。

(小さい声で)ローゴは(私にそれがあるならば)、江ノ電沿線住みたいな。カシワギさんみたく、ポケットに手を突っ込んでスタスタ歩いたり、電車に乗ったり、人の庭先のサザンカ眺めたり。
拝啓、鎌倉文学館サマ。こんなオジイさんボランティアに雇ってくださいますか?

■11月13日
週間予報では、北海道は木曜日から連続して雪だるまの印。おお怖ろしい。
私は明日から16日まで、小樽文學舎会員15人を引率して鎌倉文学散歩。寒さ募れば南へ移動する養蜂家みたいね。羨んでくださるな。これでも気を遣う。胃が痛む。

気がかりではあったが、お金もヒマもなくて、鎌倉下見ずっと迷っておりました。肝心な中日は鎌倉シルバーボランティアガイドという心強そうな方がご案内くださるし。あとはとりあえず連れていって、連れて帰れば、何とかなるか。

でも。やっぱり。不安だ。だって代理店通してないからね。貸切バスじゃないからね。JR、江ノ電、フツウのバスを使った移動。15人のなかには元気とはいえ、80歳超。それよりは若いとはいえ体力に不安ある者(そりゃ私か)、多々入り混じっておられる。だいたい鎌倉、ほんとに暖かいのか。

不安に耐えず、苫小牧からフェリーに飛び乗り、いってまいりました。鎌倉まで。

行って良かった。行かなきゃ、初日からパニクるとこだったかも。

だいたい大雑把な人間だから、ホテルが駅から至近といえば漠然と歩いて5分か。水族館も至近といわれれば手の届きそうなところに大水槽があるのか、などと。
江ノ島駅を出てあたり見まわす。うーん、と……。とにかく江ノ島めざそっ。歩く方向は見当つきます。へんな土産物屋ならんでいておもしろい。なるほどどこの食堂にも「しらす丼」大きく出てる(チバさん、吐きそうだよ!って言ってたかな)。
でも、歩けど歩けど、江ノ島、まだ?

実はそんな距離ではないのですが、初めて訪ねるところ、実に遠く感じます。ああ、向こうに水族館が見える。なるほど立派な、楽しげな。でもホテル、どこ?
ええっと、この大橋を歩いて江ノ島に渡るの?ところでホテル、どこ?

橋のたもとの観光センターに尋ねてようやく判明。ホテルって、駅の反対側ですが。
そりゃ大股で歩けば10数分、おおむね至近と言えないことはないけれど。こっちは15人でおろおろ歩く。まごまご歩く。鎌倉といえど、秋の日没午後4時30分。暗い、寒い。いきなり意気阻喪。

すなわち何事につけてもやっぱり予習が必要でした、ということでした。
ホテルの場所も確かめて、落ちついて見直せば、江ノ島まで歩くの、悪くありません。たとえ暮色迫ろうと江ノ島タワー(っていうの?)は7色に光る。「エスカー」(エスカレーターあるんじゃん)も午後5時までは動いてる。何より、江ノ島、こんなに俗だとは知らなんだ。ウケます。テンションあがります。

中日案内してくださるカシワギさんからも詳しい行程うかがって、大いに安心。カシワギさん、きっと遠来の客きづかってくださり二日に分けて案内してくださるそうな。先達あらまほしきかな、ってこのことね。安心した、ほっとした。など気楽ってると、集合時間に寝坊したりしてね。

■11月4日
昨日、文化の日、というよりも、小樽文学館開館記念日、で恒例の大古本市の日。

週間天気予報では、ずっと11月3日は雨・曇り、アンド、ぐっと冷え込む。すなわち最悪。
相当精密になってきたとはいえ、週間予報は、まま外れます。祈るような気持ちで当日。
朝になっても予報変わらず、雨・曇り。それ見よ、といわんばかりに空かきくもり見るから冷たげな雨降ってまいりました。

観念して早め出勤。ボランティアさんもすでに2、3人。するとにわかに(とは言わないな)黒く厚ぼったい雲が途切れ、薄日さしだし、その切れ間みるみる広がり、えっ、快晴?!
私は東京オリンピックを思い出しましたよ(古いな)。開会式の前日まで予報は雨だったはず。それが一転奇跡か、日本晴れ。1964年10月10日のその日こそが「体育の日」の由縁だったのに、ハッピーマンデーとかで今年は10月8日、「体育の日」って何の日だったか、みんな忘れてしまいましたが。

その点、文化の日は変わらず。小樽文学館開館記念日も変わらず。年に一度の大古本市の日も変わらず。もう黙っていても、皆さん、午前10時開場を待って並んでくださる。

ボランティアさんといい、お客様といい、もうすっかり安心なので、唯一気がかりだったお天気も神懸かり的秋晴れね。

古本市のほうは、ときどき様子見に行くだけで、私は、塚田敏信先生の「小樽探見日和」展・手みやげ講座「銭湯は地球を救う」の準備にかかる。

銭湯関係は、ケロリン湯桶、たまごシャンプー、モントン・ポマード、パンチソーダ、その他たっぷり(と私は思った)展示をしてあります。
ところが、塚田先生、数日経って脱衣カゴを5つほども抱えてくる。数日経ってケロリン湯桶また一箱持ってくる。折り畳んだ色あせたノレンらしきものも持ってくる。巨大な看板もってくる。
講座当日、開講2時間前、先生現る。「日ノ出湯に行ってました」。今日ですか?「ものすごいお宝いただきましたよ」。……。

サブタイトルが風呂屋モノ語りですから、モノに語らしめようとなさる先生。会場(展示室)講師の足下に並ぶ脱衣カゴに湯桶、ノレンに大看板。これだけで、もひとつ銭湯展ができやしませんか?だいたい同じケロリン湯桶が、なぜ大量に?
お話始まり、謎とけました。ケロリン湯桶に歴史あり。木桶、アルミ、ステンレスを経て、軽量ヘコまずのプラスチック湯桶、いっきに全国に普及した数万のプラ湯桶のスポンサーに名乗りをあげた富山の製薬会社の大英断。何年経っても色あせぬ「ケロリン」文字の印刷技術は北海道の会社が確立した入れ墨方式。なるほど、そりゃすごいや。
「ところがですね」と先生。「ケロリン湯桶の全国制覇途上にヤクルト湯桶が進出うかがっていた時期があったというのです」「けれども、そのヤクルト湯桶、私は探し出すことができなかった」「しかし今日、ついさっき錦町の日ノ出湯さんで」「ついに巡り会うことができました。幻のヤクルト湯桶」。ものすごいお宝って、その薄汚れたっぽいプラ桶ですか?
先生のお話、途切れなし。手品の万国旗のように繰り出す風呂屋のノレン。私はまことに自然にマジシャンの助手。ついでに最前列に座っていた田中マリちゃんにも手伝いを半ば強制。
風呂屋ノレンに大阪タイプ、京都タイプ、東京タイプに北海道タイプあり。その丈の長さ、切れ込みの数、土地の寒暖、住民の気質に関係あり。江戸っ子は濡れた髪にノレンが触れば「えい、うるせえや!」なんてね。
私思わず笑った最後のノレン。ピンクでトンネルのようなカーブに中程を切り抜かれたなんて不思議なカタチ。「これは、小樽の潮ノ湯さんのノレンです。奥様がお客の顔にかからぬようご自分で工夫し文字も縫いつけたものです。全国歩きましたが、手作りノレン、私は初めてみました。これこそ伝統から学んだ創造、文化そのものではないでしょうか」。うーん、まったくそのとおり。でも私、笑ったのを撤回しない。だって真のオリジナルは「いい笑い」を必ず伴う。これは経験から学んだ、私の定義。

お話はもう風呂上がりに(腰に手を当て)一気に飲み干すビンの飲み物、に移っております。ファンタをパクったとコカコーラ(株)からクレームつけられ、2億円なんて払ったら会社つぶれる、ここはひとまず、と平謝りに謝って、許してもらった?「クィンタ」(だったかな)など私はみたこともない清涼飲料水がつぎつぎと。会場は暖房不足、肌寒いのに風呂上がりのお湯の匂いが立ちこめるよう、細かい水滴つけた冷たいガラスビンがくちびるに触れるよう。

先生の語り口が熱いわけではないのに、溢れ押し寄せるのは「銭湯愛」。番台、下駄箱まで譲り受けたという塚田先生。わかっていたつもりでも圧倒された一時間。
こんな先生にめぐりあった生徒さん、もう一生楽しくてしょうがないはず。だって街を歩くこと、街に生きることがこんなに尽きぬおもしろさ。そこから知った歴史の確かさ。

古本買ったら、JJ's Cafe で開こう。15ページ読んだら、街に出よう。銭湯で本読んでたら叱られるから、温まったら家へ帰って続きを読もう。

小樽文学館はそんな文化サイクルを支援するものです。

■11月2日
たいへんにプライベートな話で恐縮ですが、昨夜、ライブに行ってまいりました。
家の娘たちが夢中になってる「ザ・50回転ズ」という3人のグループ。むろん聴いたことも見たこともありません。ただ、娘たちの話や、いっしょに撮ってもらったという写真があまりにも楽しそうなので、というかその3人の顔があまりにも面白いので、こりゃいちど体験すべきだな、と直感はたらく。

会場は札幌、ベッシーホール。懐かしい。うん?入ったことあったかな。でも懐かしい。70年代末〜80年代の典型的なライブハウス。もちろん椅子などどこにもなし。
つぎつぎ入ってくるワカモノは、みんな軽装、半袖、なかにはTシャツ。

モモヒキ、セーター着こんだ上にスーツ、コートさえ着こんだオヤジは、まず立ち位置どこにする。ここ極めて大事。前方出れば、メ・ザ・ワ・リ、コール浴びかねない。うしろに、うしろに、ハジに、ハジに、じりじり下がります。

あ、このあたり、ひときわ暗いな。ここいいかも。ぼんやり立っていたら、いきなり肩つつかれる。あ、ごめんなさい。ここスタッフの通り道?始まるまえから汗にじみ出す。
始まれば会場暗くなるのが救いなんだけど、皆さんご存じ、ああいうコンサート、ときどきステージから客席にライト浴びせられますのでね。小さく小さく縮んでいる。

ああ、やっと始まった。あれ、写真とずいぶん違ってけっこうイケメン、かっこいいじゃん、と思っていたら前座(いや、ごめんなさい。それなりに人気、実力兼ね備えたバンドらしい。じっさい悪くなかったんだけど、50回転が出てきたとたんに、吹き飛んだ感、否めず。気の毒……)でした。

私の立っていたハジッコの細い階段を、細身の黒いパンツに真っ白な太いベルト、フリルのついた白いシャツにブラックタイ、マッシュルームカット(70年代!)の3人が出入り始める。いったんステージ静まり、さっきの3人、乱入、即ライブハウス炎上のごとき熱狂!私たじたじ。

私、だいたい音楽全般極薄極浅くしか分かっていないのだけど、何これ?大音響のロケンロール?
ひたすら邪魔にならないように、身じろぎもしないように念じていたのだが、体がかってに火照り出す。リズム感もないのに、足が動く。我を忘れまい、初老の文学館副館長(まったく関係ないけどね)たる身の程をわきまえよ、とは思いながら、我を忘れた。
一曲だけバラードっぽいのがあったのですが、不覚にも、涙ぐんだ。

今、ひたすら端正、静寂なJJ's Cafe で、これを書いてるのですが、この文学館、音楽に例えれば何だろう。ボサノバ、フレンチポップス、マヌーシュ・ギターあたりなら当たり前。バッハの落ち着きも、演歌の深淵もたまにチラリと。

でもね、ベッシーホールの真似するわけじゃないけど(できるわけないけれど)、ロケンロール。その火照り、そのユーモア、その希望!それ忘れちゃ何もかもなしに等しい。

いつまでも永遠のロケンロール文学館(スピリッツの話ですよ)、そうあらしめることを、改めて(小声で)宣言するものです。

追記;明日は文学館一年間の最大イベント(地味だけどね)大古本市!準備作業すでに始まり、のぞいてみたら思いがけずコージ君の姿が。短い休暇とれたんだろうけど、ボランティアの人たちの顔つきが違います。私も何も聞かない。頼むよ。「あい」。これだけで十二分に通じる。

小樽の11月の空は時雨模様でも、気分は正真正銘、ロケンロール!ね。