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文責/市立小樽文学館・玉川薫 |
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■11月24日 前に書いた日記、ぶり返すようですまないのですが、江ノ島に下見にいったとき。ホテルのフロントの方とご相談。到着予定が3時30分頃になりますので日没まで1時間。しかもホテルから江ノ島まで、やや思いがけないくらい遠い。 『ピンポン』ぱらつかせて、ペコの特訓シーン、あの神社の石段は、竜口寺ホウフツす。寺だけどこの辺みんな神仏混淆みたいなもんだし。石段のぼりつめたとこから江ノ島遠望できるのもそっくりです。映画でロケしたのは、やはり海岸近くの上諏訪神社というところだそうですが。 その映画と原作。いちどメモしておきたかったマンガのセリフ(ネーム)と映画の台詞の、ほんのわずかの、でもとっても大きな違い。 以下は敗北を覚悟しながら全力で打球続ける風間の内面の声 (ペコのスマッシュを打ち損じる風間。その打球が一瞬はるか頭上を飛び去る鳥に見える) この風間の最後のセリフがポイントで、映画ではつぎのようでした(ウロ覚えですが)。 風間の内面の声は無論省略。けれども鳥の幻影はしっかり表現。一瞬、茫然と逸れていく打球を見上げる風間。 ね、2、3文字だけで深みがもの凄く違うでしょう。脚本のクドカン宮藤官九郎氏、映画の限界百も承知の上での「改竄」だったろうと思う。辛かったろうと思うけど。 いくら傑作とは言え、同じマンガを飽きもしないでひっくり返しひっくり返しも、我ながら何ですが、『ピンポン』繰り返すに連れても、江ノ島、江ノ電、鎌倉懐かし、でした。 ■11月17日 90歳になる私の母親は、江ノ島から夕陽にピンクに染まる富士山を見たことがある、という。あんたぐらいの歳に、と言ったような気もするが、そんなはずはありません。ずっと八百屋のカミさんでしたからね。江ノ島から富士山を見たというのがほんとならば、70年以上前の話のはず。 羽田に向かう飛行機のなかからは、確かに富士山見えました。やっぱり富士山が見えるとテンションあがります。お江戸方面に向かっているのだな、と。実はそれぐらい、はっきり富士山を見たという記憶がない。 ホテルについて、タクシーに分乗して、江ノ島直行。「エスカ」(エスカレーターそのものです)に乗り、もひとつ「エスカ」に乗り、江ノ島展望灯台の展望台までエレベーターで一直線。薄青っぽい伊豆の山々、箱根の山々のシルエット。なるほど、確かにあれは富士山のカタチ。でも飛行機からみたときのほうが、それっぽかったな。平面シルエット、いまいちもの足りません。 つまりお天気が良かった。恵まれた。とっぱじめに江ノ島から富士山みえたことが、今回の文学散歩のすべてといっていいくらい。 ホテルが江ノ島で良かった。江ノ島界隈のビミョーな俗加減。廃れ加減。射的とスマートボール。江ノ電モナカ。シェイプ中途で出かけたままのサーフボード屋。街角から顔出す江ノ電。これこそ江ノ島。江ノ島から北鎌倉、で良かった。逆じゃつまらない。 案内してくださった鎌倉シルバーボランティアのカシワギさん。が、また江ノ電な感じなんだな。聞けばまもなく80歳とのことだが、ジャンパーに手を突っ込んで、うつむき加減にスタスタ歩く。早くないけどね。稲村ヶ崎の海岸も、大佛次郎邸のあるお屋敷町も、円覚寺の石段も、寿福寺の墓地も、扇ガ谷の切り通しも、まったくペースを変えずにスタスタ。「きのうと今日とで3万歩超えてるよ」とヒロカワさん。ほとんど70歳超ながら健脚ほこる面々も、さすがに音を上げかけました。 江ノ電、いいですね、とカシワギさんに話しかけます。カシワギさん、フフンと鼻で笑う。「あんな電車だけどね、正確に10分置きに走るからね。分かりやすいです」。なるほどね。 散歩の詳細はいずれチバさんにアップしてもらうとして(おいおい)、私は下見と本番の数日で、すっかり江ノ電ラヴ。先頭車両にたむろする「テツ」の少年達。改札口で携帯灰皿片手に、腕時計ちらちら眺め、電車の着く時間を待つカシワギさん。 鎌倉駅の江ノ電ショップでいろんな小物をためつすがめつ。狭いところにあんまり長くいたせいか、とうとうお姉さんに声を掛けられ、こんなもの買ってきてしまいました。 (小さい声で)ローゴは(私にそれがあるならば)、江ノ電沿線住みたいな。カシワギさんみたく、ポケットに手を突っ込んでスタスタ歩いたり、電車に乗ったり、人の庭先のサザンカ眺めたり。 ■11月13日 気がかりではあったが、お金もヒマもなくて、鎌倉下見ずっと迷っておりました。肝心な中日は鎌倉シルバーボランティアガイドという心強そうな方がご案内くださるし。あとはとりあえず連れていって、連れて帰れば、何とかなるか。 でも。やっぱり。不安だ。だって代理店通してないからね。貸切バスじゃないからね。JR、江ノ電、フツウのバスを使った移動。15人のなかには元気とはいえ、80歳超。それよりは若いとはいえ体力に不安ある者(そりゃ私か)、多々入り混じっておられる。だいたい鎌倉、ほんとに暖かいのか。 不安に耐えず、苫小牧からフェリーに飛び乗り、いってまいりました。鎌倉まで。 行って良かった。行かなきゃ、初日からパニクるとこだったかも。 だいたい大雑把な人間だから、ホテルが駅から至近といえば漠然と歩いて5分か。水族館も至近といわれれば手の届きそうなところに大水槽があるのか、などと。 実はそんな距離ではないのですが、初めて訪ねるところ、実に遠く感じます。ああ、向こうに水族館が見える。なるほど立派な、楽しげな。でもホテル、どこ? 橋のたもとの観光センターに尋ねてようやく判明。ホテルって、駅の反対側ですが。 すなわち何事につけてもやっぱり予習が必要でした、ということでした。 中日案内してくださるカシワギさんからも詳しい行程うかがって、大いに安心。カシワギさん、きっと遠来の客きづかってくださり二日に分けて案内してくださるそうな。先達あらまほしきかな、ってこのことね。安心した、ほっとした。など気楽ってると、集合時間に寝坊したりしてね。 ■11月4日 週間天気予報では、ずっと11月3日は雨・曇り、アンド、ぐっと冷え込む。すなわち最悪。 観念して早め出勤。ボランティアさんもすでに2、3人。するとにわかに(とは言わないな)黒く厚ぼったい雲が途切れ、薄日さしだし、その切れ間みるみる広がり、えっ、快晴?! その点、文化の日は変わらず。小樽文学館開館記念日も変わらず。年に一度の大古本市の日も変わらず。もう黙っていても、皆さん、午前10時開場を待って並んでくださる。 ボランティアさんといい、お客様といい、もうすっかり安心なので、唯一気がかりだったお天気も神懸かり的秋晴れね。 古本市のほうは、ときどき様子見に行くだけで、私は、塚田敏信先生の「小樽探見日和」展・手みやげ講座「銭湯は地球を救う」の準備にかかる。 銭湯関係は、ケロリン湯桶、たまごシャンプー、モントン・ポマード、パンチソーダ、その他たっぷり(と私は思った)展示をしてあります。 サブタイトルが風呂屋モノ語りですから、モノに語らしめようとなさる先生。会場(展示室)講師の足下に並ぶ脱衣カゴに湯桶、ノレンに大看板。これだけで、もひとつ銭湯展ができやしませんか?だいたい同じケロリン湯桶が、なぜ大量に? お話はもう風呂上がりに(腰に手を当て)一気に飲み干すビンの飲み物、に移っております。ファンタをパクったとコカコーラ(株)からクレームつけられ、2億円なんて払ったら会社つぶれる、ここはひとまず、と平謝りに謝って、許してもらった?「クィンタ」(だったかな)など私はみたこともない清涼飲料水がつぎつぎと。会場は暖房不足、肌寒いのに風呂上がりのお湯の匂いが立ちこめるよう、細かい水滴つけた冷たいガラスビンがくちびるに触れるよう。 先生の語り口が熱いわけではないのに、溢れ押し寄せるのは「銭湯愛」。番台、下駄箱まで譲り受けたという塚田先生。わかっていたつもりでも圧倒された一時間。 古本買ったら、JJ's Cafe で開こう。15ページ読んだら、街に出よう。銭湯で本読んでたら叱られるから、温まったら家へ帰って続きを読もう。 小樽文学館はそんな文化サイクルを支援するものです。 ■11月2日 会場は札幌、ベッシーホール。懐かしい。うん?入ったことあったかな。でも懐かしい。70年代末〜80年代の典型的なライブハウス。もちろん椅子などどこにもなし。 モモヒキ、セーター着こんだ上にスーツ、コートさえ着こんだオヤジは、まず立ち位置どこにする。ここ極めて大事。前方出れば、メ・ザ・ワ・リ、コール浴びかねない。うしろに、うしろに、ハジに、ハジに、じりじり下がります。 あ、このあたり、ひときわ暗いな。ここいいかも。ぼんやり立っていたら、いきなり肩つつかれる。あ、ごめんなさい。ここスタッフの通り道?始まるまえから汗にじみ出す。 ああ、やっと始まった。あれ、写真とずいぶん違ってけっこうイケメン、かっこいいじゃん、と思っていたら前座(いや、ごめんなさい。それなりに人気、実力兼ね備えたバンドらしい。じっさい悪くなかったんだけど、50回転が出てきたとたんに、吹き飛んだ感、否めず。気の毒……)でした。 私の立っていたハジッコの細い階段を、細身の黒いパンツに真っ白な太いベルト、フリルのついた白いシャツにブラックタイ、マッシュルームカット(70年代!)の3人が出入り始める。いったんステージ静まり、さっきの3人、乱入、即ライブハウス炎上のごとき熱狂!私たじたじ。 私、だいたい音楽全般極薄極浅くしか分かっていないのだけど、何これ?大音響のロケンロール? 今、ひたすら端正、静寂なJJ's Cafe で、これを書いてるのですが、この文学館、音楽に例えれば何だろう。ボサノバ、フレンチポップス、マヌーシュ・ギターあたりなら当たり前。バッハの落ち着きも、演歌の深淵もたまにチラリと。 でもね、ベッシーホールの真似するわけじゃないけど(できるわけないけれど)、ロケンロール。その火照り、そのユーモア、その希望!それ忘れちゃ何もかもなしに等しい。 いつまでも永遠のロケンロール文学館(スピリッツの話ですよ)、そうあらしめることを、改めて(小声で)宣言するものです。 追記;明日は文学館一年間の最大イベント(地味だけどね)大古本市!準備作業すでに始まり、のぞいてみたら思いがけずコージ君の姿が。短い休暇とれたんだろうけど、ボランティアの人たちの顔つきが違います。私も何も聞かない。頼むよ。「あい」。これだけで十二分に通じる。 小樽の11月の空は時雨模様でも、気分は正真正銘、ロケンロール!ね。 |