接ぎ木入門  倉方さんに教わった 腹 接 ぎ side-grafting

 「腹接ぎ」とは、台木の中途側面(腹)に穂木を接ぐものです。同じ位置に接ぎますが、穂木から芽を削ぎとる(芽の上か下から)のは「削ぎ芽接ぎ」(chip budding、Forkert method、フォルケット芽接ぎ、ホルケット法、あるいはフォッケルト方とも)と呼ばれます。接ぎ穂の下部だけを削った場合(これが普通)と、芽の反対側等全長を削った場合(takが採用)が腹接ぎである、と解釈しています。

 倉方さんは穂木は3芽程度と長い方が力があると言っていました。しかし、「形成層同士を全面的に接触させた、1芽での腹接ぎ」をすることが多くなっています。以前の資料には見当たらないので、タネツギ式と言えるかと思っています。

 バラやモモは、削ぎ芽接ぎでも容易に着きますが、果樹、特にカキ、ビワ、かんきつ類は、芽の反対側を削り捨てた穂木による腹接ぎが活着しています。

  このページ09/04/24 更新     ■は、台木について

  8月下旬から10月までと、春は芽出し直前に行っています。高接ぎにも向き、失敗に備えて1枝の何箇所にも接げます。この接ぎ木方法は、果樹育種家であった故倉方英蔵さんから手ほどきを受け、自分なりの工夫を加えて実践しています。接ぎ木一般について、Wikipediaの接ぎ木の項に加筆しております。

倉方さんから受け継いだ腹接ぎの特徴 
@接いだ部分をポリ布で覆い、縛っておく。
A台木を施術部より上部に残し、穂木からの発育芽を結びつける添え木とする。しっかりした添え木がないと、接ぎ木に成功しても、強風時に外れる危険大。※

※上部部分から発芽する台芽は、発芽抑制濃度のオーキシンを下降させ、穂木が伸びにくいので、見つけ次第爪先でえぐりとっている。  
高接ぎでは、地面からの支柱より、台枝による支柱が、容易かつ確実。その代わりに、台芽かきは、おろそかにできない。この上部台芽処理は、刃物で削り取ると1度で済むが、それでは水分上昇力が弱まりそうで、脇芽を出させてはえぐりとっている。これを繰り返す間に穂木が伸長し始め、台上部は、翌年には枯れている。

  接ぎ木についての参考図書  どれも絶版かと思います。1は、アマチュアにとって接ぎ木のバイブルです。植物別・技法別にその道の先達が詳しく執筆しているので、当てになります。多くの自治体図書館で備えています。リクエストすれば、その館になくても、他館から見つけてきて貸してもらえるはずです。

          1 町田英夫編『接ぎ木のすべて』 (誠文堂新光社 S53)・・・倉方さん執筆「果樹を接いで五十年」を含む)
          2 藤波昌明著『上手な接ぎ木法』 (農林統計協会 S49)

          3 園芸手帳編集部編『花と植木のふやし方百科』 (誠文堂新光社 S41) 
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農耕と園芸別冊『図解 植木のふやし方』 (誠文堂新光社 S47)        

1 倉方さんによる30年以上前の実例と、現在の愛用具 
倉方さんが来訪時に作った、カキ穂木と台木の切り方見本。形成層が当初の黄色から濃い茶色に変色。 約30年を経過した今も、はめるとピッタリと収まって落ちない。上の写真は、資料として保存するために台木(右側)上端を短切していますが、実際には、30cmは残します。 接ぎ木道具 切り出しナイフ、接ぎ木テープ、透明ポリ布、紐、吊りラベル、鉛筆<以上は箱にまとめて保管>、剪定鋏 (割接ぎには木槌、ドライバー、ポリ袋、紙袋も)  


  A B C
2 穂木の保存 春接ぎ用の保存開始は、落葉樹は1月下旬ころ、常緑樹は3月上旬ころが理想かと思う。ただし、穂木提供を受ける場合は、その方の剪定時期で大丈夫。

入手した穂木は、名称を確実に付して冷蔵する。ポリ袋内に空間があり過ぎると、穂木用枝が乾く。右の方法で4月に保存した柑橘枝を10月に接いでも活着した。

穂木用枝数が数本しかない場合は、穂木としない枝も加えて10本以上程度の束にする方が、保湿しやすいかもしれない。

3画像とも拡大できます。

葉付き枝は、葉柄を残してカット。品種名を枝上端(写真右端)に油性ペンで書き込む。充実した下部から穂木として使うので、残った枝の品種名が確実に分かる。枝が複数ある場合は、粘着テープか接ぎ木テープにも品種名を書いてまとめる。 穂木用枝同士が密着するように束にし、ややしっかりしたポリ袋に入れる。袋の中の空気がなるべく少なくなるように包む。輪ゴムで両端を留める。さらにポリ袋を重ねる。これから接ぐもの、接ぎ終えたもの、活着したものなどに分けて冷蔵。 左の一つを接写して見える水滴。冷蔵すると、自然に水滴が内部に溜まる。意図的には濡らさない。濡れ新聞紙を使っていると読んだことがあるが、枝からの蒸散で適度に保湿される。ビシャビシャに濡れている場合は、拭き取る

 

3形成層の位置
 形成層は木部外周にある。黒インクを塗った部分の延長線が形成層。黒塗り部分を、下に敷いた定規下端に合わせ置いて撮影。
 左から、ビワ2年枝、アマナツ1年、同2年枝、サンショウ1年枝、カキ2年、同1年枝、モモ2年、同1年枝。

 1年枝の形成層は表皮のすぐ内側にある。台・穂とも1年枝なら、表皮同士を合わせれば形成層同士もほぼ合うので、視力が落ちても作業しやすい。

 そのためには、台とする木を前年に強剪定して、勢いの良い1年枝を確保しておきたい。

 

 施術の手順  氏のトゲナシサンショウを穂木例に  

腹接ぎ一般並みの部分 倉方氏独自の考案と思われる部分   自分なりの工夫

 生えている台木に実際に接いでいる画像を載せたいのですが、本番の際は、写真を撮る暇がありません。画像は、台木も穂木も倉方トゲナシサンショウです。

 倉方さんは、自分のトゲナシサンショウは朝倉山椒とは別のものです、と言っていました。どちらも雌木です。実際、国分寺の山林で、自生するサンショウに棘のない2株を見たことがあります。棘がないので、剪定枝の処分も楽にできます。その種子からの発芽と思われる小苗がいくつも生えますが、すべてトゲアリです。

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1  穂木は、中央より下の、充実した部分から、葉柄を残して切除しておく。 2  接ぎたい下芽の20mmほど下を、剪定鋏で切る。一芽腹接ぎの場合、普通は芽と同方向に。 何回もナイフで削ぎなおす。 4  台木に沿う側の形成層(緑と白の境目)を切り出す。数回の削りなおしも可。画像拡大可
   
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5  4の側面。ここまでは、上端を切らずに、余分な部分を摑んで作業する。 6  芽の20mmほど上で切り離す。乾燥しないように、唇で含む。 7  接ぐ芽の大きさに合わせて台木を舌状に切り下げる。削りなおし可。※1 8  切り口の中央より少し下で、ナイフを台木に直角に当てて、舌の上部を切り捨てる。  
   
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9  穂木をはめてみると、隙間ができている。上端が、邪魔をしている。密着させたい。 10  枝は普通くの字状に伸び、尖った部分に芽を付ける。穂木の上部を少し削ぐ。 11  全面的に密着した。形成層を合わせる側の、下端密着が、ポイント。 12  二芽接ぐときは、下芽の側面ぎりぎりを切り下ろす。画像拡大可
   
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13  台木が湾曲しているすぐ下を使うと、長い穂も、継ぎ易い。 14  反対側の形成層は、合わせなくてよい。もっと太い幹には、2穂入れてもよい。 15  接ぎ木テープを30〜40cmに切り取り、芽を出して縛る。軽く引っ張りながら、下方から重ねて巻き上げ、下へ戻って普通に縛る。 16  長い穂の場合は、上部には巻かない。接ぎ木テープに油性ペンで品種名を書いておく。
                                                           
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17  品種名を書いたポリエチレン布を2〜3重に巻く。「倉方式」と言いたい方法。ゆとりを持たせないように巻くためか、蒸れない。 18  紐で上下はきつく縛る。湿気がたまり、翌日以後は水滴(無害)が見られる。画像拡大可 19 09年4月冷蔵穂木を、10月1日に倉方方式で一部密着数芽腹接ぎ。台木には、昨春失敗した傷跡が。
左下の全面密着一芽腹接ぎは、伸びが止まっている。
 
   
9 果樹を接いで五十年」から抜粋  

春の接ぎ木 落葉穂木を2月にビニール等で包み、冷蔵。カキは、冬に貯蔵した枝で、6〜7月まで可。常緑の採穂は、3月下旬に、葉柄ごと切り捨てて。
 ウメ、モモ、アンズ、スモモ、ナシは3月、カキ、クリは4月、カンキツ、ビワは4月中旬(一般に発芽のころ)から適期。1月遅れも可なので、接ぎなおしができる。クルミ、ブドウは4月末(例外で発芽の20日〜1月後)
■台木の上部と枝葉は、添え木とする部分を残して、接ぎ木直前〜発芽前に除去する。常緑大樹の接ぎ替えは、葉を少し残す。

秋の接ぎ木  8月下旬から10月まで。
 接げるものはモモ、ウメ、スモモ、アンズ(以上は尖った葉芽を確認して)、ナシ、リンゴ、カンキツ類、クリ、オウトウ、ブドウ、キウイ、サクラ、カイドウ、モクレン類、バラ(6月から)、ハナミズキ、モミジ等。
 方法は、春の延長。10日後に穂に生気がなければ接ぎなおす。

■共台を用いるのが無難。1〜3年枝部分に接ぐ。高接ぎでは、前年から心がけて低位置から徒長枝を育て、1年枝部分を台木とすると、作業しやすい。

■台木上部と枝葉は、除葉・枝切りせずに、そのままで施術。翌春、添え木とする部分を残して発芽前に除去する。


接いだ芽を伸ばすために   施術より重要な After Care

■台枝特に施術部分付近と先の芽は、伸び始めたらかき取ります。これを3月中旬から始め、特に4-5月中は確実にすることで、活着した芽が伸びます。

■ポリ布の内側で接ぎ芽が伸びてきたら、ポリ布を巻き直します。紐は、上下端以外は緩い目に、芽先を避けて巻きます。

■接ぎ芽から葉が開き始めたら、ポリ布上端だけを紐で巻くように直します。ポリ布はスカート状になります。

■樹液の流れを感じ取って、接いだ芽が頂芽(多品種接ぎの場合は、主枝か亜主枝の頂芽)としての地位を得るように、余分な台木枝を切除します。

■接ぎ芽からの枝が、スカート状ポリ布を押し広げ始めたら、ポリ布を除去します。

■伸び始めた枝を、台木の枝先に縛りつけます。これで、強風時も、伸び始めた枝が吹き飛ばされません。つまり、台木の枝先を、確実な添え木(支柱)として利用するわけです。後日伸長先で再度縛ります。伸長方向が同じとなり、まっすぐな1本の枝のようになります。

             

 

 

 

     
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 2006.4.4に2芽接いだのが伸び始めた倉方黄桃(4月27日)。ポリ布をスカート状にしばらく残して、乾燥・過湿・強風・晩霜への対策とする。
 台木の準備なく、照手水密下枝に接いだが、勢い良く伸びてくれた。
 左写真でポリに包まれていたのが、上写真最下部に見える台木横枝。穂芽は、期待以上に旺盛に伸びている(6月10日)。台木横枝が短切されていて支柱役に不足なので、やむなく次のようにした。左芽延長枝は、主幹を支柱代わりに。右芽延長枝用には、専用に支柱を立てた。

 

 3種5芽接いで2種2芽伸長。最上端穂は不発芽の次郎。2番穂は同じく次郎で、左上に赤く伸びている。3番穂は中央から伸びている、雄花を豊富に着ける中型長渋。4番穂(甘百目)は、伸長開始後枯れかけた状態で停止。5番穂も同種で、不発芽。
 下二つの不成功は、上部で伸びた穂木から降りる、生育抑制ホルモンの影響か。

■台枝は、年内に接ぎ穂伸長枝基部によって包み込まれ、枯死します。その後に、台枝先を元から切除します。


Q 冷蔵保存に際しては、穂木を濡れ新聞紙で包むとか、切り口に濡れミズゴケを当てがうなどして、穂木の乾燥を防ぐべきではないでしょうか。

A 気密包装して冷蔵(1〜3℃)された穂木は、自然に湿ってきます。水分を加えると、過湿になって、芽がかびたり腐ったりします。

Q 大木の柿を1mで切って、接ぎ替えたいのですが。この方法でできますか。

A できるはずです。1種類だけ育てるのなら、もっと低位置で切るほうが、接ぎ木後の作業が楽でしょう。台木から芽吹かせて翌々春接ぎます。いままでの柿がそのまま成る主枝を、別方向に出させるのも面白いでしょう。太い部分に直接接ぐよりも、結実は1年遅れますが、接ぎ木作業と養生が容易です。2005年開始として書いてみます。

05初冬に地上50cm〜1mで切る→06春たくさん芽吹く→方向が好ましい芽をいくつか残して継続的に芽かき→支柱を立て(特に2種類以上育てる予定なら、斜めに)誘引する※→07.4に接ぐ→以降は上記→09:結実開始
※太い枝から狭い角度で出た枝は、折れやすいので、角度をつけて結束したほうが安全。

Q  活着の目安は。

ポリ布の内側で芽が伸びてきたら、ポリ布をスカート状に巻きなおします。その直後から勢い良く伸びてくれれば、成功です。接ぎ木をしようのページにあるキウイの項に画像を載せてあります。

Q 接ぎ木一般について活着の経過は。

A 穂木が、台木の形成層から養水分供給を受けて生存している(この段階で芽が動き出すと、枯れる)
→双方の形成層から分泌されたカルス同士が癒着し、これを介して穂木は台木から養水分供給を受け、芽が動き出す
→気温上昇につれて穂木は葉を展開して同化作用を行い、篩管が連結して養分を台木に送ることで、双方が肥大して結合する

Q 他からも新芽が出てくると思いますが、接いだ枝以外は無視していればよいのでしょうか。

A接いだ芽が主枝か亜主枝の頂芽となるように、また、その下部にも台枝を出さないように芽かきします。


Q 接木に失敗した枝から、強い新枝が伸びています。来年腹接ぎしやすい枝に育てるには、このすごい勢いで伸びてきている枝をそのままにしておけば良いのでしょうか?


A良い方向に強く伸びだした新枝を数本残して、かき取ります。カンキツは、今年の晩夏〜秋にもやってみてください。次期接木に備えて台木を調整していくことも、大切ですね。

Q  樹木が折れました。ぶらぶら状態ですが、つながってはいます。復活できますか。

A この時点で次のようにすれば、救える場合が多いでしょう。
 1 折れた部分より上の枝葉を、折れ方に応じて切り詰める。
  2 折れた部分を復元するようにガムテープ(細い場合以外は、接ぎ木テープは不可)で固定する。
 3 支柱を、折れた部分より下の枝・幹を延長する形で結びつけ、これに折れた部分を固定する。
 4  ポリ袋で覆い(蒸散防止)、さらに紙(日よけ)で覆う。

Q 台木の削り部上側にベロを残したい場合、真ん中から上下方向にそれぞれカットすると、中間を平らにしにくいのでは。
A 削り上げが要る場合、真ん中からでなく、上端近くから少しだけ削っています。それも、平に削るのではなく、上端が少し深くなるようにします。1芽穂木は、芽を頂点に曲がっているのが多いので、台木は、こうして微調整しています。穂木も上部を深い目に再カットすることで、全面が密着します。ただ、真冬からの施術でも、かつ、ポリ布縛り覆いもなしで、高い活着率を得ている宮ちゃんサイトの場合、上からもベロ状に被せることで得られる保湿効果が大きく寄与しているためかと思います。一般の腹接ぎでも、適期にやれば、芽より上は削らなくても活着するものです。


接木経験 最初は、学生時代にした、バラの切接ぎとサボテンの乗せ接ぎでした。学校近くのとどろきばらえんからのモハベが接木部分からはずれ、吹いた台芽を育てたらトゲナシノイバラでした。この種をガーデンライフ誌の交換欄を通じて多くの方に送りました。申込者の中に、ノラクロ漫画家の田上水泡氏も、いらっしゃいました。カット入り申込書は、家に保存してあるはずです。

 勤務後じきにサボテン自体をやめ、バラはフォルケット芽接ぎにより、ブッシュローズやスタンダード仕立てを作っていました。並行して椿3本に50品種ほどを数年にわたり順次各所に割り接ぎしました。その3本は、家の建て替えで区役所に引き取ってもらいました。直径35mmほどのヤブツバキを低位置で切っての皮接ぎは、爆発的に伸びてくれました。

 日本ばら会会報に、バラ栽培者なら果樹は容易との記事を見て、果樹を増やし、倉方さんとの出会いにも恵まれました。接木に成功した果樹の種類は、栽培中の果樹・欲しい穂木のページなどに載せております。


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