新しい年金制度、日本版401k


1.はじめに

新しい年金制度、日本版401k

「日本版401k」という耳慣れない言葉が、最近、新聞紙上などに盛んに登場するようになりました。名前の響き(ちなみに「ヨン・マル・イチ・ケー」と読みます)からも推測できると思いますが、これはアメリカで誕生した私的年金制度です。「401k」という名前は、米国の法律の条文名に由来します。同じような制度を日本にも導入しようと、厚生省などの関係省庁や自民党が中心になって、来年1月のスタートを目指して新たな法律制定をはじめとした準備が進められています。

401kは、確定拠出型年金とも呼ばれ、これまでの日本には無かった新しい年金制度です。確定拠出というのは、拠出(=掛け金)が確定しているという意味で、将来受け取る年金の額は、掛け金の運用益が多ければ増加しますが、株価の下落などにより運用が失敗すれば年金額も減少します。一方、年金には確定給付型と呼ばれるタイプもあり、こちらは給付(将来受け取る年金額)が決まっています。国民年金や厚生年金など現在の日本の年金制度は大半が確定給付型です。

このように説明すると、「年金は老後の大切な生活資金なのだから、給付額が決まっている方がいいに決まっているじゃないか!」?そんな声があちこちから聞こえてきそうです。確かに、前もって給付額が決まっている方が安心ですし、生活設計が立てやすいことは間違いありません。それではどうして、このような年金を導入する準備が進んでいるのでしょうか。401kには何のメリットもないのでしょうか。米国では、確定拠出が確定給付と肩を並べるほどに大きく成長していますが、どんな理由からでしょうか。

401kセンターでは、まず「日本版401k入門編」として、制度導入の背景や現在検討されている制度案の具体的内容、メリット、デメリットなどをわかりやすく解説します。

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2.確定拠出年金制度の全体像

掛け金には税制優遇、運用には自己責任

来年1月スタートに向け準備が進んでいる日本版401kですが、年金の具体的な 仕組みは結構複雑です。
そこで、制度の全体的な姿を、政府がまとめた法律案「確定 拠出年金法案」に沿って簡単に見ておきましょう。

まず、401kの位置付けですが、 既存の制度が無条件に401kに切り替わるわけではありません。
この点に関して一 部には誤解もあるようですが、401kの登場により、年金制度に新たな選択肢が増 えることになります。

次に日本版401kは、「企業型」と「個人型」の2つのタイプに分かれ、掛け金 の負担方法や加入手続きなどにかなりの違いがあります。
企業型は、サラリーマンな ど企業の従業員が加入者になるものですが、掛け金は企業が支払います。

一方、個人 型は自営業者のほか、 企業の従業員でも勤務先の企業が401kを導入しない場合、個人型に加入することができます。
掛け金は、個人で支払います。いずれのタイプも 掛け金は非課税扱いで、給付を受ける時も税制上の優遇措置があるので、個人が自分 で資産を積み立てるよりも有利になる面があります。ただし、この制度は「貯蓄」で はなく「年金」ですから、払い込んだ掛け金や運用益は60歳になるまで引き出すこ とはできません。

また、年金資産は個人別に管理されます。
この点が401kの非常に大きな特徴で、 自分の持ち分が明確になるので、転職した場合には新しい就職先に年金を「持ち運ぶ」 ことができます(専門用語で「ポータビリティ」と言います)。ただし、積み立てた 掛け金を株式や投資信託、預貯金、保険などにどのように投資するかは、基本的に加 入者が決めなければなりません。401kが「自己責任」に基づく年金制度だと言わ れるのは、そのためです。個々の加入者は資産運用についての知識が求められますし、 企業には加入者向けの投資教育を行うよう定められています。(了)



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3.既存年金との関係

日本版401kは、新たな選択肢のひとつ

日本版401kは、既存の年金制度に「新しい選択肢」を加えるという位置付けでスタートする予定です。日本では1961(昭和36)年から、全国民が年金に加入する「国民皆年金」が実施されています。自営業者や個人事業主の方は国民年金、サラリーマンやOLの方は厚生年金あるいは共済年金に加入しているはずです。公的年金制度が現在の姿になったのは85(昭和60)年。専業主婦も「第3号被保険者」として、直接掛け金は負担しませんが、夫の年金に加入します。こうした年金の現状を理解した上で、401kを考える必要がありますので、現在の年金制度をまず整理しておきましょう。

公的年金と一口に言っても、その仕組みはなかなか複雑です。「年金と聞くとなんだか難しそう」との反応が返ってきます。大ざっぱに説明すると、公的年金は、自営業者の人を中心とする「国民年金」と企業の従業員が対象の「厚生年金」、公務員などが中心の「共済年金」−の3種類で、それぞれの関係は図のようになります。国民年金はもっとも基礎的な部分をになうもので「基礎年金」、年金の「1階部分」とも呼ばれますが、厚生年金や共済年金は、さらに「2階」「3階」を上積みした形です。その他に厚生年金基金、適格退職年金などの企業年金や退職一時金があります。



公的年金の支給開始は段階的に65歳に引き上げ

 掛け金は国民年金が月額1万3300円の定額制で、厚生年金は月収の17・35%とボーナスの1%(これを会社と従業員が半分ずつ負担します)です。受け取る年金は、夫婦とも国民年金だけの場合は、2人合計で月額13万円。夫が厚生年金に40年間加入していた場合は、基礎年金が夫婦合計で13万円と夫の厚生年金が月10万1千円で合計23万1千円が標準的なケースです。年金の支給開始年齢は、今回年金関係の法律が改正されましたので、2025年までに65歳に引き上げられます。多くの会社では60歳定年が一般的ですので、年金の支給開始までの生活費をどうするか、また公的年金やその他の資産を合わせて、どの程度の老後資金が確保されるかを含めて、401kを考えることが大切です。(了)

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5.企業型−加入

企業型の実施は労使合意が大前提

 今回からは、政府が国会に提出した確定拠出年金法案などに沿って、日本版401kの具体的内容を見ていきます(注=この法案は6月2日に国会が解散したので、廃案になりました。しかし、今後の臨時国会などで成立すると見られています)。

 401kでは企業型と個人型の2つのタイプがありますので、まず、企業型から紹介します。サラリーマンやOLを対象とする企業型の場合、大前提になるのが労使の合意です。つまり、会社側だけの判断で401kを導入するのは不可能で、「従業員の過半数で組織する労働組合」があるときは労組と、それがない場合は「従業員の過半数を代表する者」の同意が必要です。その上で、@掛け金の額Aどの金融機関に業務を依頼するかB運用方法の提示や指図C401kを実施するのに必要な費用の負担方法−などを定めたルール(規約)を作り、厚生労働大臣(2001年に厚生省と労働省が統合されます)の承認を受けることが義務付けられています。

 年金は老後資金の柱ですから、年金の負担を減らしたいといった会社側の都合だけで、401kを導入することはできないことを十分理解しておくことが大切です。


新入社員だけを対象にすることも可能

 規約の中できちんと明記すれば、加入者に一定の条件を付けることも認められています。例えば、既存の社員は対象外にして新入社員から適用するとか、工場や支社など事業所別の導入なども可能です。

 また、希望しない人は401kの対象から外すかわりに、掛け金分を現金で受け取るというルールにすることもできます(ただし、現金受け取りの場合、所得税はかかります)。この他にもいろいろなケースが考えられますが、特定の人だけを対象にする場合は「不当に差別的でない」ことが条件で、男性だけあるいは女性だけを対象にすることは明らかに法律違反になります。  

 労使による合意で規約ができると、その企業での401k制度がスタートします。当然のことですが、会社が401kを導入しない場合や労使が合意できなかった場合、企業型401kは実施できません。(了)


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6.企業型 − 掛け金

掛け金は非課税、企業年金の有無で違い

 前回は企業型401kの加入について説明しましたので、今回は掛け金(拠出とも言います)を取り上げます。401kは、掛け金や運用時、給付時に税の優遇があることが大きな特徴です。日本版401kへの税制優遇措置については、昨年末の税制改正で、自営業者や企業の従業員など加入者別に、非課税で拠出できる金額(拠出限度額と言います)が決まりました。

企業型401kの場合は、勤務する会社が厚生年金基金あるいは適格退職年金を導入しているかどうかで、拠出できる金額が違いますので注意が必要です。  掛け金の具体額は、企業年金を実施していない企業の従業員は、月額3万6千円(年額43万2千円)まで、企業年金のある従業員の場合はその半分の月額1万8千円(年額21万6千円)です。

企業年金制度の有無で拠出限度額に差がつく理由を説明しましょう。厚生年金基金などの企業年金では、企業が従業員の掛け金を払っていますが、その分は非課税扱いとなっています。一方、企業年金を導入していない会社は、こうした税の恩恵は受けていません。こんため、税金の公平性の観点から、企業年金のない会社の方が拠出限度額が大きくなっているわけです。

掛け金は全額会社が負担

拠出限度額は非課税で拠出できる上限金額で、必ずこの金額になるとは限りません。実際の掛け金は、会社と従業員の話し合いによってこの範囲内で決めることになります。企業型の掛け金は、全額を企業が負担します。

仮に、企業年金のある会社が年間10万円の掛け金で401k制度を導入することになったとして、拠出限度額との差額11万6千円をサラリーマンやOLの方が「自分のお金」で払うことはできません。拠出限度額については、経済団体などから、金額そのものの引き上げや会社が負担する掛け金のほかに、従業員自身が掛け金を上乗せすることを認めるべきだとの声が上がっています。(了)


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8.個人型 − 加入

個人型は希望者だけが加入

 今回からは個人型401kの説明に移ります。企業型はサラリーマンやOLの方が対象でしたが、個人型は主に自営業者の方が対象になります。ただし、勤務先の会社が401kを導入しないうえ、厚生年金基金や適格退職年金を導入していない場合に限って、サラリーマンでも個人型401kに加入できます。別の言い方をすると、401kは導入しないが、厚生年金基金か適格退職年金を実施している企業に勤めている人は、401kに加入する道はありません。また、公務員や専業主婦についても個人型の加入は認められません。企業型と個人型を設けて、「転職しても自分の年金を持ち運べる」というポータビリティが特徴の401kです。しかし、厳密には今説明したようにカバーする範囲に若干の“穴”があいているので注意が必要です。


 一方、個人型401kを始めるかどうかは、その人自身が判断します。自営業者など個人型の対象者が強制的に401kに加入させられることはありえず、あくまでも希望した人だけが始めることになります。個人型は「国民年金基金連合会」(国基連)という団体が中心になり、希望者は国基連に申し込めば加入できます。ただし、実際の申し込み手続きは都市銀行や地方銀行、郵便局、証券会社など「運営管理機関」と呼ばれる金融機関で行うことになります。企業型では、各企業ごとに労使合意に基づく規約を定めますが、個人型の場合は、国基連が規約を作ります。


 国基連は個人型401kに参入を希望する「運営管理機関」の全ての商品を扱わなければなりません。つまり、個人型の場合は、さまざまな金融機関の商品が目の前に並ぶことになり、それらの中からどの金融機関の商品にするかは、加入者自身が選択することになります。

国民年金保険料を支払ってることが条件

 加入に当たって、もう一つ気を付けなければならないのは、個人型の場合は、国民年金の保険料を払っていることが条件になります。加入者が保険料を支払っているかどうかは国基連でチェックされます。個人型401kで国基連が中心的存在になっているはそのためです。(了)


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