(3)リンバンで森の夢を見るか
〜クラビツ族の村2〜
サラワク北部の都市リンバンは、サラワクにとって象徴的な町である。
ほんの10数年前まで、小さな港町だったところ、この奥地で木材伐採が始まったことから、一躍木材輸出基地として大きくなったのだ。その当時は、儲けた人々が毎晩金を湯水のように使い、ゴールドラッシュのようだったと語られる。現在はかなり落ちついているが、今回の旅の出発点としては悪くないシチューエーションである。
マレーシアは華人が多く住むため、地名も漢字表記することが多い。リンバンは、林夢と書く。私はリンバン第一夜に森林の夢を見ることを期待していたが、あいにく何も見なかった。目が覚めると頭が重い。体がだるい。昨夜の深酒がたたったらしい。二日酔いだった。
そうはいっても、今日はいよいよロングセリダンへ出発である。7時に全員集合してロティ・チャナイ(注1)朝食をとった。そして買い出し。ロングセリダンへ持っていく食料その他を買い込む。段ボール箱10個以上にもなった。これをタクシーに積んで郊外のあるポイントまで運ぶ。じつは昨夜、ロングセリダンからトラックが到着しているのだが、あまりの車両のため街を走ると整備不良で捕まるとかで、郊外に隠してあるのである
(^^) 。 そこでタクシーからトラックへ荷物を積み替えて、いよいよ出発である。
ここでメンバーを紹介しておこう。
まずフジオカ氏。今回の主役である。十数年前、サラワクに渡った彼は、少数民族クラビツ族の女性に惚れて、結婚。ロングセリダンに暮らし始め、私財を投げうって水田や果樹園など農園づくりに着手した。残念ながら資金が足りなくなり中断して、3年前に妻子を伴って帰国した。今回は先に帰した妻子に続いての里帰りである。クラビツ族名バララヤを持つ。
ショウコさん。元青年海外協力隊員で、マライ語の達人。現在、某大学で非常勤講師を勤める一方で、某大学博士過程の学生。
ヒサコさん。国際協力関係の団体に勤務する英語の達人。
そして私。フリーの失業者である。
この4人が今回の隊員だ。隊に名前はない。
さて、トラックというのは、トヨタのハイラックス。一応4輪駆動車だが、ガソリン節約のためギリギリまで使わないことになっている。予備のガソリンも荷台に積んでいる。それに、酷使されていることは、一目でわかる車体だ。その荷台に荷物を積み込むと、助手席に女性2人を詰め込み、荷台に板を渡してそこに我々2人と、便乗してきたクラビツの老人が座る。手は運転席の屋根のバーを掴む恰好だ。運転するのは、フジオカさんの義理の弟になる青年。我々の迎えのため、昨日5時間かけて山を下りてきた。
もともとロングセリダンは、インドネシア国境にも近い山奥で、交通の便は山中の踏み分け道を除くと、ヘリか軽飛行機でしか行けなかった所である。だがフジオカさんがクラビツ族の一員になったことで、近くまで伸びていた林道につながる自力(フジオカさん個人と言ってよい)で道をつくった。おかげで今回のように車で行けることになったのだ。
ただ道と言っても日本の林道などとは基準が違う。とてつもない悪路だと聞いていた。しかも炎天下だ。荷台で5時間揺られるとは、いかなる旅になるか、ちょっぴり不安で、ちょっぴり楽しい気分だった。
注1 インド系のスナック的な食べ物。カレーをつけて食べる。
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