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友有り遠方よりウォーホール

私の高校1年の時からの親友、水野啓は、とにかく妙な奴でして、私にとっての大きな出来事には必ず何らかの形で干渉しているのです。

たとえば、私が音楽を聞いて気絶した最初の体験に立ち会っていたのも彼でしたし、大きな恋愛(幸子に会う前の話ですよ、念のため)とその破局を同じ時期に同じように体験していたなんてのもありましたし、遠藤賢司のファンクラブを作ったのも彼といっしょならサンダーバードの8mm映画を作ったのも彼といっしょ。大学は別々だったけれど、大学で出会った私の親友にして師である上原敦郎君とはちゃっかり芸能山城組で一緒になってるし、社会人になってからもなんだかんだと、めったに会わない(彼は京都で私は東京)割にはここぞというときに世話になったり世話したり。いや、まったく、たいした人だよ、君は。

そんな彼からしばらく音沙汰がないと思ってたら、幸子がいきなり朝「水野さんが夢にでてきた」というじゃないですか。そのときはへえ、と思ってたんですが、会社に行ってメールを拾ったら、来てたんですよ、彼から。それも重量級の内容で……。

4 INET GATE kmizuno@kais.kyoto-u.ac.jp 1999/05/05 23:55
題名:久しぶり&相談

Date: Wed, 05 May 1999 23:55:11 +0900
From: Kei Mizuno <kmizuno@kais.kyoto-u.ac.jp>
To: "川村龍俊" <tk433@246.ne.jp>

京都の水野です。元気かい? 29日のWINDS CAFEにはぜひ行きたかったけど,妻が6月初旬に出産予定で身動きがとれず,じっと京都で我慢の連休でした。去年の今ごろは世界一周旅行してたんだけどね。

さて,用件を手短に。時間があったら返事ください。

相談:ウォーホルの「ミック・ジャガー」180万円は買いか?

(↓と同じエディションで,作者とミックのサイン入り)
http://www.park.org/Japan/128KTTH/BeroCity/stones/museum/bero/picture/andy.html

最近大津パルコにオープンしたバッタ画廊(倒産画廊や企業の放出品を格安で仕入れて,鑑賞空間などお構いなしにギッチリ並べて売ってる怪しい店)で見たんだけど,店いわく「市場価格300万」で,そもそもあまり出物がないとか。ついでに「いずれミックが死んだら値も上がる」だと。ますます怪しい。

こちとら美術はトーシロで,ウォーホルに格別の思い入れがあるわけでもない(妻は "Flower" が大好きなようだけど)。ただちょっとした事情でどうしてもカッコいい絵が欲しくなった矢先,たまたまこれに出会って「カッコいい」としびれた次第。が,相場をまったく知らないので,他に安く買える可能性があるのなら見送ろうと思う。「まず他では手に入らない」or「手に入ったとしてもずっと高い」のであれば,買ってしまおうかと。いずれにしても,資産として持つつもりはないので,売却相場は考えない。

ということで,美術品購入に対する姿勢についてはこの際目をつぶって,単にこの絵の値段として高いか安いか,意見をいただければ幸いです。

ちなみに「カッコいい絵が欲しい事情」とは,カッコいい家(マンション)を買ったから。ちょっと顛末(下記参照)があって引渡しは2〜3年先になるけど,引っ越したらぜひ来てください。昔さっちゃんと来てくれた古い下宿(北白川荘)と同じブロックにあって,当時から憧れていた建物でした。
http://www.lrp.kais.kyoto-u.ac.jp/kmizuno/realestate.htm

あと,最近「カッコいいクルマ」も買いました。
http://www.lrp.kais.kyoto-u.ac.jp/kmizuno/alfa.htm

じゃ,またそうのうち。

--
水野 啓
kmizuno@kais.kyoto-u.ac.jp

まあ、驚いたのなんのって、水野が絵に惚れたあ? それもよりによってウォーホールだあ? どうにもまいりましたね。

家を買う顛末記もおもしろかったけど、とにかくこういう話なら、すぐにでも調べなきゃ、ということで、さっそく GALLERY VOICE (東京都渋谷区神宮前4-26-35 ファームビル1F Tel:03-3796-8534)の女社長、松尾明子さんに電話して、相場を調べてもらいました。

それで、彼に出した返事がこれです。

水野啓様

>29日のWINDS CAFEにはぜひ行きたかったけど,妻が6月初旬に出産予定で
>身動きがとれず,じっと京都で我慢の連休でした。去年の今ごろは世界一周
>旅行してたんだけどね。

いやあ、ほんとに産まれたら教えてね。お祝いお祝い。ちなみに WINDS CAFE はとても、うけたので、テープおこししてホームページに乗せるつもりです。のんびり待ってて。

>相談:ウォーホルの「ミック・ジャガー」180万円は買いか?

さっそく、その筋の世界の人に調べてもらいました。状態がわからないのでなんともいえませんが、結論から言うと、「特に高くはないけど、別に安くはない」ということです。

ミック・ジャガーのシリーズは10通りくらいの絵柄がありますが、そのうちのあるものは、現状160万円で買えます。アメリカ等でのその他の種類のオークション落札価格は、日本円にしても200万円くらいが上限だそうです。

というわけで、ぜひその肉眼で確認した絵が欲しい、ということであれば、状態がよければ、という条件付きですが、まあ、妥当な価格だ、ということではないでしょうか。

もし160万円の方の絵が見たい、ということなら、写真を送ってもらえますけど、どうしましょう?

そうしたら、すぐに返事が返ってきました。やっぱりうずうずしてるな、ふふふ。

2 INET GATE kmizuno@kais.kyoto-u.ac.jp 1999/05/07 10:55
題名:Re: 久しぶり&相談

Date: Fri, 07 May 1999 10:55:21 +0900
From: Kei Mizuno <kmizuno@kais.kyoto-u.ac.jp>
To: 川村龍俊 <tatsutoshi.kawamura@nifty.ne.jp>

水野です。さっそく調べてくれてありがとう。

>ミック・ジャガーのシリーズは10通りくらいの絵柄がありますが、そのうちのあ
>るものは、現状160万円で買えます。

今回の出物(FS143)はシリーズ中でも好きなほうです。でも,「コノサーズ」というネットのオークションでは80万円で落ちてることが判明。
http://www.egg.or.jp/auction/sold-07.htm

状態の差でここまで値段も変わるものなのかな・・・他の絵柄では50万台で落札したオークションもあるようです。

>というわけで、ぜひその肉眼で確認した絵が欲しい、ということであれば、状態が
>よければ、という条件付きですが、まあ、妥当な価格だ、ということではないでし
>ょうか。

素人目にはかなりいい状態に見えました。装丁も,フレームには入れずに樹脂のパネルに貼ったもの全体を,紙の縁まで見えるように全面アクリルの箱に入れたおもしろいものでした。そのせいか,紙の縁の一部がちょっと焼けているけどそれもまた味かなって感じ。

>もし160万円の方の絵が見たい、ということなら、写真を送ってもらえますけど、
>どうしましょう?

とりあえず絵柄を知りたいので,シリーズの番号,または下記にある連作を並べた画像の何番めかがわかれば教えてください。
http://www.a2gallery.com/html/ANDY/gal2/famous4.html

大津にあるブツは,別の買い手も狙っているようで今日中にはツバを付けないと持ってかれちゃうかもしれません。夕方まで考えます。

--
〒606-8502 Kei Mizuno
京都大学大学院農学研究科地域環境科学専攻 Lab. of Regional Planning
地域計画学研究室 Graduate School of Agriculture
水野 啓 Kyoto University Kyoto 606-8502 Japan
Email:kmizuno@kais.kyoto-u.ac.jp Tel:+81-75-753-6368
http://www.lrp.kais.kyoto-u.ac.jp/kmizuno Fax:+81-75-753-6370

そう言われたらしょうがない。とにかくもう一度松尾さんに電話して、在庫の絵がこのURLの上段右から2番目であることを確認しました。

夜遅く、帰宅してからそのことを水野に電話で伝えたのですが、なんと競合者がいて、月曜日(5月10日)の午前中までに入金しないと、買われてしまう、というのです。この日(5月7日)は金曜日なので、躊躇している暇がない。とにかく明日(5月8日)に画廊に行って、オーナーと話す、というので、傷の検証の仕方について調べてみるよ、と返事をしました。

さっそく、私の親友にして美術の先生である芳野明氏に連絡して、傷んでいる個所の修復が可能かどうか、教えてもらいました。

芳野氏の回答:ケースからはずせるか? 本体を傷めずにシートの状態に戻せるか? テープで貼ってあったとしたら、それをシートから剥せるか? そして、現状以上に悪くならないような額装をしなければならない。現在の修復技術なら、これ以上悪くならないようにすることは可能。修復家に頼めば見積もりを出してくれる。ただ、自分が知っている信頼できる修復家は関東以北の人だけだ……。

そして、芳野氏が、「京都なら篠原猛史先生がいるじゃないか」と思いついたことで、いきなり光が差してきたのでした。篠原先生と芳野氏は、川村龍俊コレクション展メモリアルCD-Extraの編集でついこの春まで仕事をした仲でしたし、もちろんそれ以前から知己の間柄。私と幸子にとっては篠原猛史・芳子ご夫妻は、1996年春の出会い以来、何度となくお互いの家を行き来している、いわば義兄弟のような関係なのです。

夜遅い電話であったにも関わらず、篠原先生は快くお話をきいてくださいました。それどころか、先生の版画の刷り師(関西在住)は、ウォーホールの版画の刷り師でもあったというではありませんか! これはもう、神のお引き合わせだ、とばかりに、無理を承知で、明日、水野といっしょに画廊へミック・ジャガーの状態を見に行ってくださいとお願いしてみましたら、快くOKの返事(それも明日だけたまたまスケジュールが空いていたというのです!)をいただきました。

もう一度水野に電話して、芳野氏からのアドバイスと、篠原先生宅の連絡先を教え、明日を楽しみに床についたのでした。

そして明くる日。水野からメールがきました。

5 INET GATE kmizuno@kais.kyoto-u.ac.jp 1999/05/08 14:30
題名:結論:見送りました

Date: Sat, 08 May 1999 14:30:35 +0900
From: Kei Mizuno <kmizuno@kais.kyoto-u.ac.jp>
To: tatsutoshi.kawamura@nifty.ne.jp

水野です。昨夜はお疲れのところ相談や手配に尽力してくれてほんとうにありがとう。持つべきものは(顔の広い)友だと,つくづく思いました。

せっかくの厚意を無駄にして申し訳ないけど,結論として土曜朝の時点で購入を見送りました。篠原さんには大津行きのキャンセルとお詫びの電話を入れました。

理由は,はっきりとは言えないけれど「どうも引っかかる」から。例のシミ(技術的には進行阻止が可能だけれど),店の姿勢(作品の価値とは無関係だけれど)など,自分の中で払拭しきれないものを抱えたまま買うことにためらいを感じていました。で,迷うならやめかな,と。そうした事柄に目をつぶれるほど,作品に惚れ込んでいなかったということかもしれません。

篠原さんも賛成してくれました。「少しでも気になることがあると,やがてそれはどんどん増幅するもの。買わないで正解」と。

あと,家の中をよくよく見回してみると(今さら気付くのもお粗末だけど)「飾る場所がない」というのも買えない理由。新居にはぴったりでも,それまでの2〜3年間箱にしまっておく(しかも保管場所として好条件ではない)のは,もったいないし作品に申し訳ない。

君の「買ってくれ光線理論」に照らしてみれば,これだけ君の手を煩わせるまでもなく初めから自分で出せた結論かもしれないけれど,結果的にはいろいろ考える時間や材料が手に入ったことで僕にはよい経験になりました。あらためて,どうもありがとう。

これから,いろいろな作品に出会う機会を積極的に求めていくことになると思います。コレクターを目指すつもりはないけれど,ようやっと手に入れた僕らにとって理想の空間に,命を吹き込んでくれる作品を見つけ,ともに暮らしたいと願っています。それは,「建物のための絵」でも「絵のための建物」でもない。建物という器の,その中にあったり外から入ってきたりするあらゆる事物を−家具も,絵も,音も,光も,料理も,会話も−ひっくるめた「場」を,妥協することなく作りあげること,とでもいうか。ま,そんな気を起こさせてくれる建物と出会ったわけです。建物自体が主張しすぎず,いいものはすべて受け止めてくれるような。まさに,僕らに向かって「買ってくれ光線」を発していたんだろうな。

とりとめなくなってしまいましたが,ご報告&お礼&お詫びまで。

ところで,篠原さんは7月に京都市内,それもうちの近所に引っ越してくるそうですね。現在新築中で,完成予定が7月15日(私の誕生日)だとか。場所を聞いたらほんとうに近くで,「そう,そのパン屋の2軒となりだよ」てな具合。「あそこは周りの建物がおもしろくていいですよね」(向かいは川崎清設計の英国タウンハウス風公団住宅)「そう,まさにそれが気に入ったんですよ」と,短時間ながらも電話で盛り上がりました。ぜひ遊びに来いと誘われたので,そのうち会える機会があるかもしれません。楽しみです。

--
水野 啓
kmizuno@kais.kyoto-u.ac.jp

……まあ、そういうことだったのです。でも、結果はオーライだな、と思いました。会社が忙しかったこともあって、返事を出したのは少し間があいてからでした。

水野啓様

あんまり忙しくてぜんぜんメール書く時間がとれなかった。ごめん。

>建物自体が主張しすぎず,いい
>ものはすべて受け止めてくれるような。まさに,僕らに向かって「買ってくれ
>光線」を発していたんだろうな。

実は、建物こそが主人公であるということは、最初のメールからわかっていましたよ。だから、住み始めるまでは、逆になにも考えたりする必要はないんだと思うのです。あと3年。

>ところで,篠原さんは7月に京都市内,それもうちの近所に引っ越してくる
>そうですね。現在新築中で,完成予定が7月15日(私の誕生日)だとか。

まず、篠原先生の作品、見せてもらってください。すごくいいからさ。6月には東京で個展が開催されますから、もし東京に出てくることがあったら見てみるのもいいかもね。渋谷です。

その返事。

9 INET GATE kmizuno@kais.kyoto-u.ac.jp 1999/05/21 21:44
題名:Re: 結論:見送りました

Date: Fri, 21 May 1999 21:44:33 +0900
From: Kei Mizuno <kmizuno@kais.kyoto-u.ac.jp>
To: 川村龍俊 <tatsutoshi.kawamura@nifty.ne.jp>

水野です。まずは,ありがとう。

>あんまり忙しくてぜんぜんメール書く時間がとれなかった。ごめん。

とんでもない。こちらこそ手間をかけさせて本当に申し訳ない。

>実は、建物こそが主人公であるということは、最初のメールからわかっていました

君がわかっていることも,僕はわかっていたよ。念のため,というか自分自身への言い訳みたいなもん。

>よ。だから、住み始めるまでは、逆になにも考えたりする必要はないんだと思うの
>です。あと3年。

ところが,またもやエライもんに出会ってしまったんだよね。安藤忠雄。直感的に「買い」なんだ,これが。

例のミック・ジャガーをあきらめた後,カミさんが散歩がてら画廊めぐりをしてたら,ウォーホルの"kiku"を見つけたんだって。今度はまともな画廊ね。で,さっそく一緒に見に行ったら,けっこう良かった。でも,見た瞬間に決断できるほどの魅力はなかった。

で,絵を見ながら画廊の主人と雑談をしていて,何となしに「建築家のドローイングって興味あるんですよ。とくにコルビジェとかライトとか」って言ったら,「安藤忠雄のがあるよ」って。どひゃー。

ブツは,大阪・中之島の中央公会堂改築デザインコンペに出品したもので,建物の内部に卵型のカプセルをすっぽり埋め込んでしまうという,斬新だけど実に安藤らしいアイデア。僕も以前に安藤忠雄展で見て一番印象に残っていたもの(当然採用はされずに「幻のデザイン」で終わった)。

なんでも,画廊の主人は若い頃に安藤忠雄とシベリア鉄道で一緒に旅行をしたとかで,家を設計してもらうほどの付き合いだとか。その縁で手に入れた作品で,手元に置いておくつもりだったけど欲しけりゃ売ってくれるそうな(自分用は別にとってあるらしい)。

限定55枚の白黒シルクスクリーン。けど,なにしろデカい。額装するとタテ1.2m×ヨコ2mほど。しかも平面図と立面図があって,各50万。今回の「迷い」は,「飾る壁があるかどうか」だけ。それさえクリアすれば,値段や「引っ越すまでの保管場所」は問題にならない。もちろん状態は完璧(顎装せずにしまってあった)。

ってなわけで,近々実物大の型紙作って「まだ他人のもの」の我が家に検分に出向く予定です。結果が出たらまた報告するね。

>まず、篠原先生の作品、見せてもらってください。すごくいいからさ。6月には東
>京で個展が開催されますから、もし東京に出てくることがあったら見てみるのもい
>いかもね。渋谷です。

そうか,ぜひ行きたいな。5月末に学会で東京方面に出るんだけど残念。6月に入るといよいよ「いつ産まれるかわからん」ので難しいかな。

--
水野 啓
kmizuno@kais.kyoto-u.ac.jp

うわあ、ですね。おめでとう、水野。

……で、その翌日、こんなメールがきたのです。水野からじゃなくて、 "♪原 ★人" なる、まったく知らない人からでした。

1 INET GATE hatu@******.ne.jp 1999/05/22 17:20
題名:はじめまして

Date: Sat, 22 May 1999 17:21:18 +0900
From: "♪原 ★人" <hatu@******.ne.jp>
To: <tatsutoshi.kawamura@nifty.ne.jp>

 ウォホールで検索していたら、たどり着いたので・・・。

 実は今年の2月に結婚1周年記念でL.Aに行ったんですが、渡米中に運がよく僕が好きな「ローリング・ストーンズ」のコンサートがあり妻と一緒に、生まれて初めて海外でのコンサートを見ることができて感無量だったのですが、その公演を見た翌日の夜にあるデザイナーショップのお店の中で「ローリング・ストーンズ」のパーティーをやっていて前を通りかかって思わず、英語もまともに喋れない二人が他の外国人(当然ですが^^)のプレスやファンと一緒にそのショップの前で、メンバーの姿を見れるかもしれないと、2時間くらいウロウロしていたんですが、さすがに退屈になってそのショップの隣のギャラリーの奥にウォホールの「マリリン」があったので、バンドのメンバーにはどうせ会えないだろうから、目の保養にでもとそのギャラリーに入っていくと、そのギャラリーの店員が日本語で話しかけてきたので、妻と僕もビックリして思わずその店員のペースになって、こっちも日本語でコンサートのことやウォホールの事を色々話しているうちに、「パーティーをやっているショップの社長がうちのギャラリーからミック・ジャガーのシルクスクリーンの10枚のシリーズを買ってくれたんだよ。たしかその内の4枚がショップに展示してあるはずなんだ。」の一言で再び驚愕し、その店員と僕らでショップのショーウインドの前まで行きいろいろ説明をしてもらっている内に、「ウォホールのシルクスクリーンでさえ日本で買えるかわからないし、それもミック・ジャガーなんかはやっぱりアメリカにしかないんじゃないだろうか?」と絵画にまったく無知な私は、「日本ではもっと高価になるし、いまならうちのギャラリーにストックがあるはず。それに約$20,000のプライスから10%ダウンするからどうです?」と言われ昔からいづれは、手に入れたいなと思いもあったのし、妻も「この絵だったらカッコイイし、値打ちもあるんじゃないの。」と快く同意してくれたので$500の手付を置いて購入する事にしました。

 そして、先月、空輸で自宅に届いてから本当に「高すぎる買い物をしたんじゃなかいだろうか?」、「マーチンローレンスっていうギャラリーって信用できるのか?」、「どうやって管理してけばいいのか?」、「本当に本物だろうか?」とどんどん不安になってきてしょうがありません。

 HPを見させて頂いて、河村さんならそういった絵画のいろんな事にお詳しいと思い長々と書いてしまいました。

 もしお時間があれば、アドバイス等を頂ければ幸いです。
 
 ♪原 ★人
hatu@******.ne.jp

なんでこういうタイミングでこういうことがおきるんでしょうか? 大いなる意思の働きなのか? とにかく、これを水野に転送してみました。

"♪原 ★人" さんからのメールを転送します。妙だな。

それに対する水野からの返事は……

19 INET GATE kmizuno@kais.kyoto-u.ac.jp 1999/05/24 22:11
題名:Re: FW:はじめまして

Date: Mon, 24 May 1999 22:11:55 +0900
From: Kei Mizuno <kmizuno@kais.kyoto-u.ac.jp>
To: 川村龍俊 <tatsutoshi.kawamura@nifty.ne.jp>

>"♪原 ★人" さんからのメールを転送します。妙だな。

いやほんと,同じようなこと考える奴っているもんだ。2月に結婚一周年ってもの我々と近い(笑)

自分で同じようなこと聞いといてナンだけど,こういうのって答えようがないよね。

にしても,ちょっと高めか。吹っかけられたんだろうね。RSファンとして欲しがる人にはそれでも構わないのだろうけど。

p.s.
篠原さんの新築現場,この前通りかかったときに見てきました。まだ骨組みしかないけど,鉄骨三階建てのずいぶん広い家だったよ。中で馬でも飼えそうなぐらい。

p.ss.
先週末京都国立近代美術館に行ったので,ライト展の図録を探したけど当然のことながら完売でした。以前僕が持っていたものを貸した覚えがあるのだけれど,そのまま川村コレクションに寄贈します。

--
水野 啓
kmizuno@kais.kyoto-u.ac.jp

……なるほど。水野らしいや。私から"♪原 ★人"さんへ出した返事はこんな感じです。

♪原★人様

はじめまして。ホームページをご覧くださいましてありがとうございました。

さて、あなたの状況やお気持ちについてはおおよそ理解できましたが、すでに手付け金を払ってしまった(つまり購入を決めてしまった)絵について、どんなアドバイスができますでしょうか? 購入前でしたら何らかのお話も可能だったかもしれませんが、今の時点ではただひとこと、「絵と結婚したつもりで末永く大切にしてあげてください」と申し上げるしかないと思います。少しでも迷いがあったなら、絶対に買うべきではありませんでした。

とはいえ、せっかくのご縁ですから、私の考えを書かせていただきます。

「高すぎる買い物をしたんじゃないだろうか?」

高いかどうかは何と比較したかによるのではないでしょうか。どうしても欲しければ命を投げ出しても欲しい、というのが芸術品を買う基本だと思いますので……。ただ、お買いになられた絵は「版画」なので、(厳密には同じじゃないけれども)同じ絵が複数存在しますから、それらとの比較は不可能ではありません。ミック・ジャガーは新作ではないので、絵がそれぞれにたどった歴史と関わった人や店によって価格は大きく変わってしまいますし、絵の痛み方にも影響されますから、適正な価格というのは存在しないと思いますが、一応私が知っている情報を申し上げますと、私の知り会いの画廊(原宿)ではミック・ジャガーのシリーズのうちのある1枚(下記URLの上段右から2番目)は本日現在160万円で買えます。また、別の1枚(下記URLの下段一番左)は、2週間ほど前に滋賀県の大津市で180万円で買った人がいます。ご参考まで。
http://www.a2gallery.com/html/ANDY/gal2/famous4.html

「マーチンローレンスっていうギャラリーって信用できるのか?」

たった2.5%しか手付金を払ってないのに、海を越えて絵を送ってくれたことを考えてみれば、信用してもいいように思えます。もしその他に信用度という点でご心配することがあるなら「ボラれたのではないか」ということでしょうけれど、上記の他の店の金額設定と比較してみたらいかがでしょう。1ドル125円として2万ドルは250万円ですから、マーチンローレンスの金額設定は高いといえば高いですが、絵には相場があって時期によって変動するので、マーチンローレンスがいくらで仕入れたかが問題です。ミック・ジャガーを10枚セットで持っていたとするとそれは新作販売時(1975年)に一括購入した可能性が高いので、当初の販売価格に24年分の物価変動指数と利率をかけて、その上に画廊の取り分(良心的なら1割〜2割)を上乗せした金額と考えれば、極端な高値とは言えないような気がします。確かに高いんですけどね。セールストークの中で「日本ではもっと高価になる」と言ったことが、結果的には事実ではないという点だけちょっとひっかかりますけど、画廊も不況ですからね……。あるいは本当に心から日本じゃもっと高いと思っていたのかもしれないし……。

「どうやって管理してけばいいのか?」

直射日光があたらなくて、湿度が低くて(お風呂場や流しから遠いこと)、温度の差が激しくなくて(玄関とか、エアコンの近くはだめ)、電灯に極端に近くないところに、掛けて観賞するのがベストでしょう。絵は見られてナンボです。もししまいたいのであれば、上記の条件に加えて、ほこりっぽくなくて、垂直における場所(立てかけると長い間に額が歪みます)へ、箱に入れて(なかったらダンボールで作るか、額屋さんか画材屋さんにサイズを言って作ってもらいましょう)おきましょう。お金に余裕があったらテラダトランクルームに電話すれば相談にのってくれます。

「本当に本物だろうか?」

<左下端に作品のナンバーリングと右下にアンディ・ウォーホルの直筆サインがえんぴつで書かれていて、左下に緑色のペンで書かれたミック・ジャガーの直筆サイン入り>というのが基本条件ですが、250枚もエディションがあるし、ミック・ジャガーが肖像権にやかましいので、まずにせものという線はないと思います。どうしても気になるのであれば、公立の現代美術館に相談して鑑定してもらうのがいいと思います。でも、真贋を気にする前に、その絵に「惚れているか」どうかの方が重要だと私は考えますが……。

アドバイスというよりは知っていることを書き散らしただけになってしまいましたが、何かのお役にたてば幸いです。

------

なお、これは本筋とは関係ありませんが、あなたはご自分の情報を私に教えてくださっていませんね。名刺情報程度のことは、人にものを尋ねるときは明らかにすべきではないでしょうか? 住所や電話番号までとはいいませんが、どのへんにお住まいでおいくつくらいでご職業や社会的な立場はなにでくらいは、ふつうは先に名乗るものではないかと思うのです。というのも、この出会いがもしどこかで実際にお目にかかったということだったら、最初に名刺を交換しているからです。私の方ではホームページで自分が何者かをオープンにしていますよ。

------

ということで、お返事をお待ちしています。

すぐに返信がありました。

7 INET GATE hatu@******.ne.jp 1999/05/26 19:30
題名:ありがとうございます

Date: Wed, 26 May 1999 19:31:14 +0900
From: "♪原 ★人" <hatu@******.ne.jp>
To: "川村龍俊" <tatsutoshi.kawamura@nifty.ne.jp>

 川村 龍俊 様

お忙しいなかさっそくご返事いただき本当にありがとうございます。

>少しでも迷いがあったなら、
> 絶対に買うべきではありませんでした。

おしゃっる通りです。でも、自宅にある版画を見ていると購入した事は、一切後悔しません。ゲンキンな性分な者ですから。

> 「高すぎる買い物をしたんじゃないだろうか?」
> 高いかどうかは何と比較したかによるのではないでしょうか。どうしても欲しけれ
> ば命を投げ出しても欲しい、というのが芸術品を買う基本だと思いますので……。

 これもその通りです。たしかに命までとは言えませんが、「死ぬまでには絶対に!」と思って買ったので・・・。ただ、いろんなHPで購入した人達のを見ていると芸術品に素人な自分には「猫に小判」常態かなと不安になってしまいまして。けれども今は、値段や価値よりも自分がこのシルクスクリーンと出会えた事に感謝しています。

 L.Aにいかなかったら自分みたいな人間はこの版画と出会いもしなかっただろうし買う方法さえ解らなかったのだから、いま手元にあるのが自分とこの版画の縁なのだから出来るだけ、可愛がってやろうと思ってます。

 河村さんが教えてくださった、その他の版画のプライスをみても、160&180万だったらマーチンローレンスのプライス標と照らし合わせても、妥当な金額だったし、今となれば金額の事は完全に吹っ切れました。

> 250枚もエディションがあるし、ミック・ジャガーが肖像権にやかましいの
>で、まずにせものという線はないと思います。
 
 やはり、ミックは肖像権にはうるさいんですね。僕もいろんは雑誌とかで海外の有名人は自分の写真やサインに対し、それを悪用して商売にしているブロカーがいるので、皆ナーバスになっていると聞いたことがあります。

>でも、真贋を気にする前に、その絵に「惚れているか」どうかの方
> が重要だと私は考えますが……。

That''s all right! その通りですね。なんだかんだいって、アンディにもミック(ストーンズ)にも魂ごと持って駆れている自分を再認識できました。(^^)

> アドバイスというよりは知っていることを書き散らしただけになってしまいました
> が、何かのお役にたてば幸いです。 
> なお、これは本筋とは関係ありませんが、あなたはご自分の情報を私に教えてくだ
> さっていませんね。名刺情報程度のことは、人にものを尋ねるときは明らかにすべ
> きではないでしょうか? 住所や電話番号までとはいいませんが、どのへんにお住
> まいでおいくつくらいでご職業や社会的な立場はなにでくらいは、ふつうは先に名
> 乗るものではないかと思うのです。というのも、この出会いがもしどこかで実際に
> お目にかかったということだったら、最初に名刺を交換しているからです。私の方
> ではホームページで自分が何者かをオープンにしていますよ。

 この件に関しては、なんとお詫びしてよいか。

 河村さんを信用してなかったのではなく、単純にネット上での礼儀と言うものをわきまえていない自分がとても恥ずかしいです。言われる通りに 社会人として先方の方に自己紹介をすることは、当たり間のことですよね。

 遅れ馳せながら、自分は富山県××町と言う、新潟県との県境の人口16,000人程の街の役場に勤めています。仕事は主に町主催の文化事業イベントのプロデュサー的なことをしていて、税務課、農林水産課、医療事務を経験してきました。学生時代は、都内の某大学を入学式に行ったきり、そのまま卒業(←たんなる中退です(^^)し、2年間ほどライブハウス等でのスタッフアルバイトをして、地元の町でこの経験を生かした仕事をしたく、10年前にUターンして富山にすんでます。

 今回は、いろいろご相談になっていただき、本当に力強く思っています。

 今はさすがに、2枚、3枚とは購入は出来ませんが、いずれこのミックのシリーズや、他のミッキーマウスなんかを買えたらいいなと真剣に考えていますし、これをきっかけに少しずつ絵画のこともいろんな知識を得ていきたいっておもってます。

 かさねがさね、本当にありがとうございます。

     ××町役場 総務課付け 主事 ♪原 ★人(1969年11月11日)

いやあ、芸術って、本当にいいものですね。では、さよなら、さよなら、さよなら。

1999.05.28記


text by 川村龍俊 KAWAMURA, Tatsutoshi home up pagetop