第2章 日米の債券市場
この章では、導入部分として、運用モデルを構築するには必要不可欠な日本の債券市場と世界最大の規模を誇る米国債券市場を紹介し、両者を比較する。具体的には、日本と米国における債券市場の歴史、債券の種類、各々の市場を紹介する。そして、投資家の立場から各々の市場を分析する。
T.日本の債券市場
1.債券市場の歴史
戦後の日本で初めて発行された債券は、1953年発行の加入者受利付電電債(満期10年)である。当時は電話に加入する際、設備投資に協力するため10万円の債券購入が義務づけられていた。その債券を購入した加入者の大部分が多少の損を覚悟で直ちに売却していたため、電電債の流通市場が自然と発生し、拡大していった。この電電債流通利回りは、77年ごろまで長期金利の指標となっていた。
電電債の発行から約10年後の1965年度の補正予算により、戦後初めて特例国債(赤字国債)が66年1月に期間7年、クーポン6.5%、価格98.60円、最終利回り6.795%で発行され、年度内に額面合計2,000億円(うち、市中公募1,000億円)が発行された。そこには、64年の東京オリンピック後の景気後退対策として、財政支出促進策がとられたために、国庫の資金繰りが逼迫した背景がある。その後、66年度から、景気回復と社会福祉の充実のために建設国債を原則毎月発行することになった。
72年1月からは、それまでの満期7年物から10年満期の国債が発行されるようになった。そして、1973年の第一次石油ショックを迎えた。原油価格の高騰により、日本経済はインフレと不況を同時に経験することになった。その後、インフレは抑制できたものの、高度経済成長に終わりを告げた。安定成長への移行に伴い、社会資本や公共サービスの充実で歳出が増加する一方、税収は伸び悩んだ。そこで、国や地方の財政均衡を保つために国債、地方債の大量発行が定着していった。この大量発行により流通市場は急速に発達し、金融機関にとって債券は“保有するもの”から“運用するもの”へと変化していった。その流れで、82年4月には銀行による窓口販売、ディーリングが認められた。
このように、日本の債券(公債)市場は、政府の果たす役割に比例して急速に発達してきた。当時は、未成熟な流通市場にために規制が強く、価格決定のプロセスが不透明であった。しかし、発行量、流通量の増大に伴い規制緩和が進み、現在では非常に安定した市場になり、資金運用において重要な位置を占めるようになった。
2.債券の種類
国内で発行されている債券を分類してとらえる場合、図2‐@に示す分類方法が一般的である。
(@)国債
国債とは、国が財政上の必要に応じておこなう借り入れないしは負担のうち、証券代行を伴うものである。国債には普通国債、政府短期証券、出資国債及び交付国債があるが、現在流通市場で取引されている国債の大半は普通国債および政府短期証券である。出資国債、交付国債は一般に譲渡禁止であるため、ここでは触れない。また、2000年6月末現在における国債及び借入金現在高を表2‐@に示す。
@ 普通国債
普通国債は、一般会計の財源として所要資金を調達する目的で発行される債券で、償還期限によって超長期国債、長期国債、中期国債及び短期国債に分類される。
イ.長期国債 長期国債は、建設国債と特例国債(赤字国債)に分類される。建設国債とは、財政法第4条第1項の但書に基づいて、公共事業費の財源に充当するために発行される国債である。言うなれば、正当な理由に基づいて発行される国債である。一方特例国債(赤字国債)とは、必ず毎年度の特例法に基づき、一般会計経常部門の歳入不足を補填するために発行される国債である。まさに赤字国債である。
前に述べた1973年秋の第1次石油ショックを契機として、税収の落ち込みが深刻化した75年度に(65年度発行以来の)特例国債の発行が再開された。その後、国債は大量発行時代を迎え、現在では脆弱な財政のために、赤字国債は満期を迎えた国債の償還費用を捻出するために発行される借換債としての性格が増えつつある。
長期国債は全て利付形式で発行され、71年12月までは償還期限7年、それ以降は10年で発行されている。
表2?@ 日本債券の分類
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政府短期証券
割引短期国債
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国債 中期国債 中期利付国債
中期割引国債
長期国債
超長期国債
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公共債 地方債 公募地方債
非公募地方債
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債 政府関係機関債
券
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金融債 利付金融債
割引金融債
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民間債 社債 事業債(普通社債)
転換社債
ワラント債
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国外債 円建外債(サムライ債)
外貨建外債(ショーグン債)
ロ.中期国債 中期国債は、国債の円滑な発行・消化を進める目的で、1977年以降発行された債券である。中期国債には、割引形式の中期割引国債と利付形式の中期利付国債がある。
中期割引国債は、77年1月から個人投資家の国債保有を促進するために導入された期限5年の割引債で、現在のところ年5回程度(3月を除く奇数月)発行されている。最近の発行規模は縮小傾向にある。また、2000年11月30日に3年割引国債(期間3年、価格97.60円、最終利回り0.813%)がはじめて発行された。
一方、中期利付国債は、中期割引国債と同様の目的で78年6月に償還期限3年物が初めて発行された。その後、市場は順調に拡大し、償還期限において2年物、4年物、6年物と種類も豊富になり、投資家にとって扱いやすい債券となった。そしてついに、2000年2月21日、財政法第4条第1項に基づき、初めて5年利付国債(期間5年、クーポン1.0%、価格100.25円、最終利回り0.948%)が発行された。5年利付国債は、それまで金融債(五年利付債が中心)との競合を避けるために、発行を禁止されていた。しかし、近年の財政難に伴う国債大量発行の、円滑な市場消化に対する懸念が高まったために、ついに発行に踏み切られたのだ。
図2?@ 国債及び借入金現在高(2000年6月末現在)
|
区 分 |
金 額(単位:億円) |
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内 国 債 |
3,485,760 |
||
|
|
普通国債 |
3,374,273 |
|
|
|
長期国債(10年以上) |
2,489,829 |
|
|
中期国債(2年から6年) |
560,675 |
||
|
短期国債(1年以下) |
323,769 |
||
|
交付国債 |
4,721 |
||
|
出資国債等 |
26,105 |
||
|
預金保険機構特例業務基金国債 |
22,099 |
||
|
日本国有鉄道清算事業団債券等承継国債 |
58,562 |
||
|
借 入 金 |
1,038,968 |
||
|
|
長期(1年超) |
726,781 |
|
|
短期(1年以下) |
312,187 |
||
|
政府短期証券 |
498,959 |
||
|
合 計 |
5,023,687 |
||
ハ.超長期国債 国債多様化の更なる推進及び中期国債導入の結果短期化してきた満期構成を平準化する等の観点から、1983年2月、初めて15年満期の変動利付債が信託銀行向けに直接発行された。その後、同年9月、20年満期固定利付国債が直接発行された。
超長期国債の公募発行がはじめて行われたのは86年10月である。満期20年の固定利付債で、87年9月債から公募入札形式に移行された。
1999年9月20日には、30年利付国債(期間30年、クーポン2.8%、価格99.20円、最終利回り2.847%、)がはじめて発行された。
参考のため、現在発行が計画されている15年変動利付国債の概要を以下に紹介する。
利率=基準金利(10年国債の金利)―?(スプレッド;入札により決定、満期まで不変)
利払いは年2回。利率は0.01%刻みで、券種の最低額面は10万円(通常の利付国債の表面利率は0.1%刻みで、最低額面は5万円)。
最近では、利付債は2年と5年と10年が毎月、4年と6年が隔月、15年(変動利付)と20年が3ヶ月に1回、30年が年に2回、5年割引債は3月を除く奇数月に発行されている。
ニ.短期割引国債(TB) 1985年度以降の大量の国債償還に対応するため、85年6月の国債整理基金特別会計法の改正により、従来中長期債で発行されていた借換債に、割引短期国債が導入された。これは短期の借換債であり、TBとも呼ばれている。
国債が発行される根拠法には、前述の財政法、特例法に加えて、国債整理基金特別会計法があり、これに基づいて国債の整理、償還のために起債されるのが借換債である。
割引国債は、満期6ヶ月以内の割引形式で発行される。短期金融市場の中核商品という位置付けのため、その保有は法人に限られる。
A 政府短期証券(FB)
国庫における一時的な資金繰りのために、一般会計あるいは特別会計の負担において発行される割引形式の国債を、政府短期証券(FB)という。現在、大蔵省証券(蔵券)、食糧証券(糧券)、外国為替資金証券(為券)の3種類が、それぞれ財政法(第7条)、食糧管理特別会計法、外国為替資金特別会計法に基づいて発行されている。
それぞれの償還期限は、大蔵証券が同一年度内、他の二つの政府短期証券は1年以内となっている。通常は60日と非常に短い償還期限で発行される。政府短期証券の太宗は日銀引受けとなっている。また、政府短期証券は、1999年4月より完全公募入札発行に移行した。
(A)地方債
地方債は、地方公共団体(表2参照)が1会計年度を超えて負担する長期債務であり、証券形式をとるものと、証書借入形式をとるものがある。債券市場で取引が行われているのは証券形式の地方債であるため、地方債といえば通常、証券形式の場合をさしている。
地方債を発行できる団体は、@都道府県および市町村、A東京都の特別区、B地方公共団体の組合、およびC地方開発事業団(宅地増設事業、土地区画整理事業等の特定事業の財源とする場合)である。
現在、債券市場で取引が行われている地方債は、対象を広く一般に求める形で発行されている公募地方債と、指定金融機関や関連する共済組合などに依存した形で発行される非公募(縁故)地方債とに分けられる。公募地方債は一般に期限10年の利付形式の債券であるが、稀に5年物利付債が発行されることがある。参考のために平成12年度市場公募地方債月別発行条件を表2‐A、Bに示す。これに対して非公募地方債は、利付形式で発行されるが、償還期限や償還方法はさまざまで、償還期限の非常に長いものも発行されている。
非公募地方債の発行額は公募地方債の1.2〜2倍近くに達しているが、近年、非公募地方債発行額は減少する傾向にある。
表2?A 平成12年度市場公募地方債団体別 月別発行額(8〜11月) (単位:億円)
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8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
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10年債 |
10年債 |
10年債 |
5年債 |
10年債 |
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北海道 300 千葉県 360 東京都 400 横浜市 200 名古屋市 150 京都市 150 ‐ |
東京都 400 大阪府 300 福岡県 300 札幌市 200 仙台市 200 千葉市 200 ‐ |
東京都 500 静岡県 340 愛知県 310 横浜市 200 大阪市 300 福岡市 250 ‐ |
東京都 300 札幌市 200 川崎市 200 横浜市 100 名古屋市 200 神戸市 100 ‐ |
北海道 300 埼玉県 250 東京都 500 神奈川県 220 新潟県 200 大阪府 300 京都府 150 |
|
合計 1,560 |
合計 1,600 |
合計 1,900 |
合計 1,100 |
合計 1,920 |
表2?B 平成12年度市場公募地方債月別発行条件
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10年債 |
5年債 |
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表面利率 |
発行価格 |
応募者利回り |
表面利率 |
発行価格 |
応募者利回り |
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4月債 |
1.9% |
100円00銭 |
1.900% |
‐ |
‐ |
‐ |
|
5月債 |
1.8% |
99円60銭 |
1.847% |
‐ |
‐ |
‐ |
|
6月債 |
1.8% |
99円90銭 |
1.811% |
‐ |
‐ |
‐ |
|
7月債 |
1.8% |
100円00銭 |
1.800% |
1.1% |
99円95銭 |
1.110% |
|
8月債 |
1.8% |
99円65銭 |
1.841% |
‐ |
‐ |
‐ |
|
9月債 |
1.9% |
100円00銭 |
1.900% |
‐ |
‐ |
‐ |
|
10月債 |
1.9% |
99円35銭 |
1.977% |
1.2% |
99円65銭 |
1.274% |
|
11月債 |
1.9% |
99円60銭 |
1.947% |
‐ |
‐ |
‐ |
(B)政府関係機関債
政府関係機関債は、公団、公庫、事業団など政府関係機関の発行する債券である。これには、元利返済に関して政府の保証が付与されている政府保証債と、政府保証が付与されていない非政府保証債(公社公団公庫債)がある。
@ 政府保証債
政府保証債(政保債)は、政府が元金及び利子の支払いを保証している債券で、期限10年の利付形式で発行されている。
政保債は財政投融資計画(財投)の原資となっており、各期間の発行限度額については国会の議決が必要である。しかし、各期間が民間から直接に資金を調達するという点が他の財投原資と異なっている。
A 非政府保証債(公社公団公庫債)
政府関係機関が発行する債券のうち、政府保証が付与されないものを非政府保証債(公社公団公庫債)という。非政府保証債の大部分は期限10年の利付形式で、非公募に縁故債として発行されている。
(C)金融債
金融債とは、日本興業銀行、旧日本長期信用銀行(現新生銀行)、旧日本債券信用銀行、農林中央金庫、商工組合中央金庫、東京三菱銀行、全国信用金庫連合が発行している債券で、毎年一定の利息が支払われる利付金融債と、割引価格で発行され額面で償還する割引金融債がある。
利付金融債は、5年物が主流だが、東京三菱銀行だけは3年物を取り扱っている。最低預入単位は1万円以上1万円単位。利払いは年2回。20%の源泉分離課税が課される。
割引金融債は、償還期限1年で、毎月2回発行されている。18%の源泉分離課税なので、多少優遇されている。購入単位は、額面1万円である。
金融債の発行は、大企業の設備投資など、産業育成のための長期貸付の際、安定的な資金を調達する目的で、上記のような特定の金融機関に認められた。高度経済成長期には、これらの金融機関ならびに金融債が大きな役割を果たした。しかし昨今では、都市銀行が莫大な資金を手に入れることができるようになり、長期融資も可能となったために、上記の金融機関ならびに金融債のあり方が問われて始めている。それでもなお、金融債の市場規模は約60兆円と、国債流通市場に次ぐ規模となっている。
(D)事業債
事業債は民間の事業会社が発行する債券で、社債とも呼ばれている。通常、9電力会社が発行する電力債、85年度から民営化されたNTT債、その他一般の事業会社が発行する一般事業債の三つに分類される。
事業債は利付形式で発行され、償還期限は多様化が進み6年から15年まで多岐にわたっている。現存額に占める割合は電力債が最も高い。
公募事業債の発行には、適債基準の充足、発行手続きの煩雑さなど様々な制約があり、問題となっていたが、近年では見直されつつあり、都市銀行も発行に踏み切るようになった。
事業債投資にあたっては、米国の格付け会社(ムーディーズ、S&P等)が提供する格付け(信用度)をチェックする必要がある。
(E)転換社債
転換社債はCB(Convertible Bond)とも呼ばれ、ある一定期間(転換請求期間)に債券から株式に転換する権利が付された、事業会社の発行する利付形式の債券である。株式への転換券が付されているため一般に事業債より低い利率で発行される。
株式への転換は、発行当初に決められた転換価額によって行われる。この転換価額は募集開始前の時価を基準に決定されるが、通常は時価を5%程度上回る価額(この率をアップ率という)となっている。
転換社債の起債市場は一般の事業債に比べ、発行基準も緩く無担保化も進むなど規制緩和が進展しており、償還期限も4〜15年と多様化されている。上場会社発行の転換社債は原則としてすべて取引所に上場されている。業種別では金融、電気機器、化学工業の比率が高い。
(F)新株引受権付社債(ワラント債)
新株引受権付社債はワラント債とも呼ばれ、社債に新株引受権(ワラント)が付与されたものである。新株引受権とは、発行企業の一定数の新株式を、あらかじめ定められた期間(行使請求期間)内であればいつでも、あらかじめ決められた株価(行使価格)で購入できる権利である。転換社債と同様、利率は事業債より低くなるのが普通である。
新株引受権付社債には、非分離型と分離型の2種類があり、非分離型はワラントと社債券を分離して譲渡することができないが、分離型ではこれを切り離して譲渡することができる。海外市場においては、この分離型におけるワラントのみの取引が活発に行われている。
日本では1981年の商法改正時に新株引受権付社債が導入されたが、当初は非分離型のみの発行であった。その後85年11月から分離型の発行が認められ、それ以降の発行はすべて分離型となっている。
(G)円建外債と外貨建外債
@ 円建外債
円建外債は,外国の発行体が発行する債券(利付き形式)で、払い込み、償還、利息の支払いなど全て邦貨で行われる。サムライ・ボンドとも呼ばれる。
円建外債の発行体の大半は国際機関や外国政府、政府関係機関である。また、公募発行された円建外債の大部分が東京証券取引所に上場されている。
A 外貨建外債
(東京)外貨建外債は、非居住者が東京市場で発行、日本国内で募集する外貨建債券で、通称ショーグン・ボンドとも呼ばれている。東京外貨建外債の第1号は85年8月の世界銀行債だが、ユーロ市場に比べ発行コストが高いことなどから年々先細りとなっている。
(H)ユーロ円債
海外の市場で円建てで発行される債券をユーロ円債といい、主にヨーロッパで発行されている。ユーロ円債は非居住者ユーロ円債と居住者ユーロ円債に分けられる。
ユーロ円債がはじめて発行されたのは77年欧州投資銀行債であった。当初は、非居住者、それも国際機関と外国政府にしか発行が認められていなかった。その後、円の国際化が進むにつれて1984年12月には民間企業も発行が可能となった。
居住者のユーロ円債は85年4月に第一号が発行された。89年6月には、非居住者ユーロ円債についてのみ償還期限の制限、適債基準が撤廃、自由化された。このようにユーロ円債市場が拡大した最大の理由は、発行手続きが簡単で機動的かつ弾力的に起債が行える点にある。
U.米国の債券市場
1.
債券市場の歴史
1970年以前の米国における債券運用は、保守的運用が主流であった。つまり、購入した債券を償還まで保有し続けるバイ&ホールドが主流であった。安定的金利状況の中、債券の価格変動が小さく、運用による工夫の余地が少なかったことがその背景にある。この時代の運用方法の代表は、ラダー型、バーベル型運用のように、債権ポートフォリオの満期構成を一定に保つものであり、その運用目的は主に流動性の確保に置かれていた。
1973年の第1次石油ショックを契機として、金利が上昇すると同時に変動的な推移を示すようになった。この頃から金利変動をとらえた債券の積極運用が注目されるようになった。
80年代に入ると、当時の10%台の高金利を背景に、その時点でのきわめて高い利回りで、資産を長期にわたって安定的に運用しようというニーズが台頭してきた。より高度なイミュニゼーションやキャッシュ・フロー・マッチングといった運用手法が注目された。
しかし、70年代から浸透した積極的運用が、市場インデックスと比較して必ずしもかんばしいものではなかったことから、85年ごろに債券インデックス運用が台頭し始めた。たとえば、債券インデックス運用の台頭を報じた86年1月のウォールストリート・ジャーナル紙によると、「最近のいくつかの調査によると、投資マネージャーの3分の2以上が債券インデックスを下回った」としている。
次に、日本の投資家の立場から分析してみる。邦人投資家の米国に対する投資は、1976年までは株式中心だった。1977年以降、ニューヨーク市場の不振、日本国内における円建外債の発行増大、外国政府短期証券等の短期証券の取引制限撤廃という3つの原因により、債券投資中心の米国投資へと移行した。その後の外国為替管理法改正(1981年)も手伝い、米国債券投資はますます拡大していった。
しかし、日本経済のバブル崩壊による株価急落、債券市場の低迷、円安により邦人投資家は手元資金を確保するために米国債の利害売りにはしり、投資全般に消極的になった。当然、米国投資は減少した。
最近では海外の情報も用意に手に入るようになり、リスク分散そして相対的な高金利という観点から米国債券投資はポートフォリオ構築の上で欠かせない存在になった。
2.債券の種類
米国債券市場は、周知のとおり世界最大の債券市場である。ここでは、米国内で発行されている債券を図2‐Aのように分類してとらえる。
(@)財務省証券
財務省証券とは、日本では国債にあたるもので、その発行は国庫の収支尻を補填するために行われる。しかし、日本のような建設国債・特例国債・借換国債といった区別はない。財務省証券は、市場性証券と非市場性証券とに分けられる。非市場性証券には、合衆国貯蓄国債(U.S. Saving Bond)、預託債券(Depositary Series)、州・地方政府向け発行債(State and Local Government series)などがあるが、運用するにあたってはほとんど関係ないので、ここでの説明は差し控える。
また、2000年11月末現在の米国政府の債務残高を表2‐D(英語版)に示す。
@ 財務省短期証券(T-Bill:Treasury Bill)
財務省短期証券(以下T-Bill債)とは米国政府が発行する1年未満の国債で、現在T-Bill債はすべて割引方式で発行されている。T-Bill債の発行残高は他の短期金融商品と比べてもはるかに大きいため、流動性が高い。T-Bill債は、安全性・換金性の観点から、キャッシュの代用として用いられている。
現在米国財布が発行するT-Bill債は、表2‐Cに示すように4種類あり、その全てが公募の競争入札方式によって発行・販売されている。また、連邦準備制度の公開市場操作は、このT-Bill債を対象にしたものが大半を占めている。
図2?A 米国債券の分類
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債券
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財務省証券
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財務省短期証券(Treasury Bill)
財務省中期証券(Treasury Notes)
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財務省長期証券(Treasury Bond)
ストリップ債(Strips:Separate Trading of Principal &
Interest Payment of Securities)
政府機関債(Agency Bond)
地方債(Municipals)
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一般財源保証債(General Obligation Bond)
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特定財源債(Revenue Bond)
事業債(Corporate Bond)
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一般事業債(Industrials Bonds)
公益事業債(Utilities Bonds)
運送機関債(Transportation Bonds)
金融機関債(Banks & Finance Company Bonds)
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転換社債(Convertible Bond)
ワラント債(Warrants)
モーゲージ債(Mortgage Bond)
ヤンキー債(Yankee Bond)
表2?C T-Billの種類
|
種類 |
発行頻度 |
入札要領の公示日 |
入札日 |
受渡日 |
|
3ヵ月物(91日) |
毎週 |
毎週火曜日 |
翌週の月曜 |
翌週の木曜 |
|
6ヵ月物(182日) |
毎週 |
毎週火曜日 |
翌週の月曜 |
〃 |
|
1年物(364日) |
毎4週 |
毎4週の金曜日 |
翌週の木曜 |
〃 |
|
CMB(1日〜364日) |
未定 |
未定 |
未定 |
未定 |
CMB債(Cash Management Bill≒納税引当債)は不定期的に発行され、一定の償還期日をもっていない。ただし、発行される時期は毎年だいたい同じで、通常四半期ごとの納税予定日後の木曜日に満期を迎えるように、税収の少ない時期に発行される。すなわち、CMB債は財務省の経常収支の季節的なばらつきを相殺させるために発行されている。日本で言う政府短期証券(FB)のようなものだ。通常の償還期限は1週間から6ヶ月ぐらいまでとなっている。
表2?D SUMMARY OF PUBLIC DEBT OUTSTANDING IN U.S.(NOVEMBER 30, 2000)
|
Title |
Amount Outstanding ($1=\110) |
|||
|
In millions of Dollars |
In billions of Yens |
|||
|
Interest-bearing Debt |
$5,700,007 |
¥649,765 |
||
|
|
Marketable |
3,036,727 |
356,804 |
|
|
|
Treasury Bills |
682,134 |
75,666 |
|
|
Treasury Notes |
1,589,592 |
197,622 |
||
|
Treasury Bonds |
629,012 |
70,806 |
||
|
Treasury Inflation-Indexed Notes |
82,106 |
7,488 |
||
|
Treasury Inflation-Indexed Bonds |
38,883 |
3,573 |
||
|
Federal financing Bank |
15,000 |
1,650 |
||
|
Nonmarketable |
2,663,279 |
292,960 |
||
|
|
Domestic Series |
29,996 |
3,299 |
|
|
Foreign Series |
25,111 |
2,762 |
||
|
State and Local Government Series |
152,731 |
16,800 |
||
|
United States Saving Securities |
178,142 |
19,596 |
||
|
Government Account Series |
2,277,298 |
250,503 |
||
|
Noninterest-bearing Debt |
9,693 |
1,066 |
||
|
|
Not Subject to Statutory Debt Limit |
525 |
58 |
|
|
Subject to the Statutory Debt Limit |
9,167 |
1,008 |
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Total Public Debt Outstanding |
5,709,699 |
650,831 |
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A 財務省中期証券(T-notes:Treasury Notes)
財務省中期証券(以下T-Notes) とは米国政府が発行する1年超10年以内の利付国債である。現在定期的に発行されているのは、2年物、3年物、5年物、10年物の4種類のみである。いずれも満期一括償還され、期限前償還されることはない。
T-Notesは、政府資金調達の主力手段であり、市場性国債残高で占める比率は約60%、また政府債務残高に占める比率は約40%となっている。
B 財務省長期証券(T-Bond:Treasury Bond)
財務省長期証券(以下T-Bond) とは米国政府が発行する10年超の利付国債である。現在は期間30年債が利付債で発行されている。過去には15年及び20年債の発行も行われていた。
1960年度末には市場性国債残高の44%を占めたが、1991年度末には12%まで低下した。しかし、T-Bondは米国の長期金利の指標とみなされており、依然米国国債の中心として位置付けられている。
C ストリップ債(Strips:Separate Trading of Principal & Interest Payment of Securities)
ストリップ債とは、財務省が発行した債券を、元本部分と利息部分(6ヵ月後とのクーポン)とに分離させ別々に登録したゼロ・クーポン債のことである。元本部分のゼロ・クーポン債はプリンシパル債(Principal)と呼ばれ、利金部分はストリップ債(Strips)と通常呼ばれている。
米国国債の元利金分離登録を財務省が正式に認可したのは1985年2月のことだ。当時財務省がストリップ適格証券に指定したのは、当時の10年物だった11.25%1995年2月15日(償還)債と、当時の30年物の11.25%2015年2月15日(償還)債だけだったが、その後既発債の一部にストリップ化を認め、新規発行の10年物と30年もの全てを適格債券に認定することによって、順調に市場を拡大していった。
(A)政府機関債(Agency Bond)
政府機関債にはGNMA(Government National Mortgage Association)のように、政府保有機関(Federally Owned Agency)として、政府の直接保証を受けられる発行機関もあるが、通常の一般債市場(モーゲージ債を除く)において流通するAgency債は、正確には政府系関係機関債(Federally Sponsored Agency)であり、連邦政府の直接保証は受けていない。これらのAgency債は政府の特別立法に基づいて設立され、政府の監督下に経営管理されている民間の政府系機関によって発行されている。一般的にこれらの政府系機関の発行する債券には、政府の救済保証が付されているとされ、米国政府債に次ぐ高い信用力をもっている。政府系機関債は連邦準備銀行借入れの適格担保証券であり、連銀の公開市場操作の対象にもなっている。また、格付け機関からもトリプルAの格付けを取得しており、高い評価を受けている。
(B)地方債(Municipals)
@ 一般財源保証債(General Obligation Bond)
通常、地方債とは、州や自治体及び地方政府管轄の公団が発行する一般財源保証債を示し、これらの地方債は行政区の公共設備の設立や改善を目的に設立されている。発行主体となる州政府には、原則として均衡財政が義務付けられているので、地方債の発行には様々な規制が課されている。このため、州地方政府保証の一般財源保証債の信用力は高いとされている。また、これらの州地方政府が発行する地方債の利子所得には、連邦所得税が免除されているため、他の国債や一般債と比べ、税金免除分利回りが低くなっており、非居住者の投資には適していない。
A 特定財源債(Revenue Bond)
特定財源債(以下レベニュー・ボンド)とは、その債券に対する元利金払いの財源を、州地方政府の自治体および公団が取り組む公共事業からの収益に限定しているため、州政府の保証は有していないのが一般的である。このため、これらのレベニュー・ボンドは非保証債とも呼ばれ、特性上プロジェクト・ファイナンス的要素が濃くなっている。また、レベニュー・ボンドから発生する利子所得には通常の連邦所得税が課されており、流通市場においても一般事業債の一部として区分けされている場合が多い。
(C)事業債(Corporate Bond)
事業債とは、日本と同様、民間の事業会社が発行する債券である。米国の事業債市場には、様々な発行体が発行する多種多様の債券が流出しており、米国の一般債券市場の中で最も複雑なマーケットである。
事業債の発行期間は、通常2年物から10年物が大半を占めるが、1年物から100年物までと幅が広い。一般的に公益事業債の発行期間は10年以上30年ぐらいまでと、他の一般社債よりも長く、金融機関債の満期期日は3年物から5年物が中心となっている。今日までに数社が発行している100年物の普通社債は、デュレーション・ターゲットの長い年金基金などを中心に人気を集めている。
ここでは、主に発行体別に図2‐Aのように分別する。転換社債(Convertible Bond)とワラント債(Warrants)に関しては、日本の債券市場のところで説明した内容と大差ないので、以下ではそれ以外の社債について説明する。
@ 一般事業債(Industrials Bonds)
一般事業債の発行業種は、最も幅の広い分野で、サービス業、小売業、製造業、食品、採掘事業等様々な業類を含む。業種が多種多岐にわたることから、発行残高も大きく、社債市場の中心的役割を果たしている。
A 公益事業債(Utilities Bonds)
公益事業債は、電力、ガス、電信・電話などの公益事業会社(民有)や水道事業会社(通常は公営)などの発行体による。公益事業会社の公共性および、大半の公益事業債は担保付債券であることから、一般社債よりも低い利回りで取引される。
B 運送機関債(Transportation Bonds)
運送機関債の発行体は、鉄道や航空事業会社、および運輸関係などである。鉄道会社の債券の大半が設備担保債券であることと、発行数が少ないことから、他の運用機関債よりも割高感がある。一方、航空事業会社の社債は米国航空産業の規制緩和を背景に、一般社債市場で割安に取引されている場合が多い。
C 金融機関債(Banks & Finance Company Bonds)
金融機関債の発行体には、銀行、保険会社、証券会社、および一般事業会社の金融子会社等が含まれる。銀行や金融子会社の業績は、景気によって収益が変動する可能性が高いため、これらの社債スプレッドは一般事業社債より広くなっている。近年、一般製造業の金融子会社(たとえばGMの子会社のGMAC社等)の資金調達が増加しているため、金融機関関係債の新規発行は上昇傾向にある。

(D)モーゲージ債(Mortgage Bond)
モーゲージ債は、日本では馴染みが薄い債券であり、存在するのかも定かではない。また、参考書にも適当な説明が付されていなかったため、ここではモーゲージの概念を世界大百科事典より抜粋しそれに簡単な説明を加える。
―― モーゲージ(Mortgage)とは、簡単にいえば、住宅などの不動産を担保とする貸付債権に有価証券性を付与したものである。モーゲージは、不動産の所有権を、抵当権設定者(債務者)が抵当権者(債権者)に、債務返済により無効となる条件付きで移転する契約である。しかし同時に、モーゲージは、債務者から債権者へ交付される書類一式(借入金額記載の約束手形、権原保険証書、火災保険証書など)を指す概念でもある。債務者から債権者に対して、上記の書類一式を交付することによりモーゲージ金融が行われる。モーゲージには、抵当権の目的物件である不動産に瑕疵があった場合、その損害を補填するために権原保険が付されており、これがモーゲージの譲渡性に重要な役割を果たしている。――
以上が、辞典による説明(前半部分のみ)である。誤解を恐れずに言うならば、不動産を証券化したようなものだ。
次に、モーゲージ債の出で立ちを紹介する。モーゲージは、アメリカの住宅金融制度の中で生み出されてきた。住宅建設資金の借り手である個人や建設業者に対して、貯蓄貸付組合、相互貯蓄銀行、商業銀行等が、住宅貸付資金を供給する。この際、債務者は担保としてモーゲージを発行する。モーゲージは譲渡可能の性格を有しており、貯蓄貸付組合などのモーゲージの第1次取得者は、必要に応じて、生命保険会社や年金基金などに転売することができる。この第2次取得者も転売が可能である。こうして発生した市場は、モーゲージ買取りを専門とする公的機関である連邦抵当金庫(Federal National Mortgage Association)などの登場により順調に拡大していき、1994年の米国債券に占めるモーゲージ債の市場規模比率は約3割に達している(図2‐B参照)。
最後に、モーゲージ債が抱えるリスクについて話しておこう。モーゲージ債の最も大きなリスクは、住宅ローンの借り手(個人)が早期に償還することである。市中金利が下がると、ローンの借り手はローンを早期に償還して、安い(低金利の)ローンに借り替えてしまうのである。しかし、この問題は金融工学の発達により解決され、現在では詳細な潜在リスクを把握することができるようになった。
(E)ヤンキー債(Yankee Bond)
ヤンキー債とは、非居住者である国際機関、外国政府、および外国の民間企業が米国市場で発行する債券のことである。通常ヤンキー債はドル建てで、米国の一般事業債同様に、年2回の利払いがあり、経過利子も30/360ベースで計算されることから、米国の事業債市場の一部として扱われている。
また、ヤンキー債の大半が世界銀行(IBRD:International Bank For Reconstruction and Development)やアジア開発銀行(ADB:Asia Development Bank)のような国際機関を発行体としているため、知名度が高く、流動性も事業債に比べ高い。ただし、近年これらの優良、かつ知名度の高い発行機関はヤンキー市場からグローバル市場(Global Market)へと発行形態を変更しており、資金調達頻度の比較的に多い優良発行体にヤンキー市場離れが懸念されている。
ここでグローバル市場について簡単に説明を加える。グローバル市場とは、二つ以上の資本市場(通常ユーロ市場、米国市場、およびアジア市場)において同時に発行・販売される債券、つまりグローバル債券(Global Bonds)の発行・流通市場のことである。グローバル債は、発行されるすべての市場の流通および決済特性を包括しているので、すべての発行市場および各市場間の取引が可能な債券である。
V.日米債券市場の比較
これまで、日米の債券市場を紹介してきた。ここでは以上のことを踏まえ、日米の債券市場に関して各々の債券に対する比較ではなく、債券(特に国債)市場の発展と特性という観点から、金融技術の発展も含めて比較していく。
現時点における日米の国債発行残高の数値ならびに特性は、非常に似通ったものとなっている。双方とも、10年物国債の発行が中心となっているのが特徴である。しかし、現在にいたる発行残高の推移には、大きな隔たりがある。
日本国債の発行残高は、バブル崩壊による後遺症からなかなか立ち直れない日本経済を再び軌道に乗せようとする日本政府の政策により、年々増加傾向にある。具体的には、バラマキと批判されている公共事業投資や銀行への公的資金注入による財政収支の不均衡(赤字)を修正するための国債発行である。正直なところ、現在もなお先が見えない状況である。
これに対して、米国国債の発行残高は、史上空前の好景気による税収増のために、年々縮小傾向にある。しかし、1980年代のアメリカはそうではなかった。1980年のカーター政権当時は、インフレ、高失業率、そして貿易赤字と財政赤字といういわゆる双子の赤字という問題が深刻化していた。そこで、1981年にアメリカ合衆国大統領に就任したロナウド・W・レーガンにより、新しい経済政策が打ち出された。これが俗に言う“レーガノミックス”である。この政策の目標は、それまでの「大きな政府」から「小さな政府」への転換により、米国経済を回復軌道に乗せることだった。その経済再建プログラムの骨子は、@財政支出の大幅削減、A減税、B規制緩和、Cマネーサプライのコントロールであった。残念ながら双子の赤字は解消されず、この経済政策は失敗に終わった。しかし、この政策は金融市場の歴史における大きな転機であったに違いない。それは、ケインジニアンの(マネタリストによる)敗北とともに進んだ規制緩和である。アメリカ経済は日本経済より10年以上も早く規制緩和に踏み出していたのである。それにより、企業競争は激化し、企業の競争力が増大したのは、言うまでもない。金融技術も同様である。
確かに今現在における日米の債券市場の扱い易さという格差はほとんどなくなっているが、金融技術に限って言えば、大きく遅れをとっていることは間違いない。これからは、債券の発行種類を増やし、その市場を複雑化するだけでなく、投資家や発行体ならびにその流通市場に携わる人々の金融知識を増やし、金融技術を磨くことが重要である。