(初出:2003年9月16日)


ソニーレコード(SRCS-9080) 発売中

(c)1978 1979 1980
Sony Music Entertainment Inc.
Manufactured by
CBS/Sony Group Inc.


JOURNEY(1979〜1980)

ニール・ショーン Neal Schon
(guitars,vocals)

グレッグ・ロウリー Gregg Rolie
(keyboards,harmonica,vocals)

ロス・ヴァロリー Ross Valory
(bass guitar,bass pedals,vocals)

スティーヴ・ペリー Steve Perry
(lead vocals)

スティーヴ・スミス Steve Smith
(drums,percussion)


{SIDE A}
01. Any way you want it /お気に召すまま (3:21)
02. Walks like a lady /ウォーク・ライク・ア・レディ (3:16)
03. Someday soon /いつの日か… (3:32)
04. People and places /感じてほしい (5:04)
05. Precious time /至上の愛 (4:48)



{SIDE B}
06. Where were you /消えたあの娘  (2:59)
07. I'm cryin' /泣きぬれて (3:42)
08. Line of fire /バイバイ、スージー (3:04)
09. Departure /ディパーチャー  (0:39)
10. Good morning girl /グッドモーニング・ガール (1:43)
11. Stay awhile /僕のそばに… (2:48)
12. Homemade love /ホームメイド・ラヴ (2:53)


Produced by Jeoff Workman & Kevin Elson





*文中のリンクをクリックすると、別窓で脚注が開きます。



■アルバム概要

1980年発表。
スティーヴ・ペリー氏の加入によって劇的な変身を遂げた"INFINITY"(1978)、そしてその可能性を名前通り受け継いだ"EVOLUTION"(1979)に続く、グレッグ・ロウリー氏とペリー氏のダブル・ヴォーカルが印象的な第2期ジャーニーの「決定版」とも言うべき通算6作目のアルバム。コーラスを積極的に取り入れたメロディアスなハード・ロックを独自の持ち味としつつ、かつR&Bやジャズの風味を踏襲した実験的な楽曲も収められている野心作。その多様性溢れる展開は、直前の2作をも上回る形でバンドのポテンシャルを明示し得たものであると言えるでしょう。
因みに、今やバンドのシンボルマークとして知られるスカラベがアートワークへ本格的に組み込まれたのはこの時期が最初だったようです。

なお、結成メンバーのグレッグ・ロウリー氏は健康上の理由および家庭の都合によりこの年を最後にバンドを離脱しており、オリジナル・アルバムとしては今のところこの"DEPARTURE"が彼の最後の参加作ということになっています……。「ジャーニーのアルバムは3作ごとに作風が大きく変わる」という神話めいた風説の発祥はこのあたりかしら?



■曲解説

01. Any way you want it /お気に召すまま

"♪Any way you want it, That's the way you need it〜"という合唱で始まる、「これがジャーニーの音だ!」と威風堂々喧伝しているかのようなアルバム最初の先制パンチな曲。軽快で馴染みやすいギターのリフもさることながら、全編を通じて用いられる合唱がこの曲のイメージを決定付けていると言っても過言ではないでしょう。この合唱パートはライヴでも見事に再現されていたようですが、各種ライヴ版ソフトで聴けるその模様は観客の唱和を交えつつ奏でられるハーモニーがスタジオテイクとは一味違う趣を醸し出しており、ひとつの楽曲がコンサート・ツアーの中で磨き込まれていく過程を検証する上で多くのヒントを提供してくれます。ご興味をお持ちの方は巷のライヴ・アルバムや海賊盤を聴いてみるのも一興かと存じます。なお、一説にはスタジオ版におけるあの荘厳さは偶発的なもの(具合の良くないメロトロンにオルガンの音をオーバーダブした)だったとか?

そういえばシェイクスピアの戯曲で同じ邦題のものがありましたっけか。あっちの原題は"As you like it"。ついでに言うとKISSの曲で"Any way you slice it"っていうのがありますけど、三者とも内容には関連ない模様。普通そこまで考えねーよ、って? もしかしたらそうかもしれませんね。はっはっは。て言うかKISSにはまんま同じ題名の曲が(中略)のっけから見当違いな話題へ飛び込みすぎるきらいがありますね、今回は。まあ作為的なんですが。上に書いたスカラベについての脚注なんかモロそうですね。最終回一歩手前にしてちょっぴり迷走気味。

……それはさておき。
ジャーニーはこの曲を、お披露目となった1980年以降はほとんどすべての公演にてエンディングにセットしており(86年のツアーを除く)、ある意味においては"Open arms"よりも人気が高いライヴの名物曲となっているようです。



02. Walks like a lady /ウォークス・ライク・ア・レディ

作詞・作曲ともペリー氏。彼のミュージシャンとしての感性に多大な影響を残したとされるサム・クック氏の芸風を継承したような軽やかさが特徴的なラヴ・ソング。オルガンによるイントロと伴奏が小粋でイイ感じ。



03. Someday soon /いつの日か…

いわゆる出世3部作のアルバムでは、それぞれ1〜2曲ずつロウリー氏とペリー氏のダブルヴォーカルによる曲が収録されているという共通した特徴があります。当該"DEPARTURE"でそれにあたるのがこの曲で、前半は2人が1フレーズずつを交互に歌うデュエット、そして後半は厳かなバックコーラスを伴ってショーン氏のギターソロが轟きます。前半あたりのパートは淡々とした印象が強く、ややもすると短調ですが、でも歌詞をよく確かめながら聴いてみるとあたかも応援歌のような暖かさが胸に染み入ります。題名通りとてもポジティヴな曲。



04. People and places /感じてほしい

ショーン隊長がリードヴォーカルを務める曲。サビ部分ではペリー氏が交代して歌っているあたりなど曲全体の構成は"Feeling that way"や"Anytime"と似ているので、聴き比べてみるのも面白いかも。

輪唱によるイントロとか聴いているとあからさまにアルバム向きの内容かと思いきや、実は"DEPARTURE"ツアーのライヴで演奏された事もありました。あらまあ(参考:当サイト海賊盤コーナーの"Messin' with the kid"の項)。それを聴いた時、ふと私は「もしかしたらこのテイクはかのライヴ・アルバムの候補曲として収録されたのかも……?」なんて考えてました。悪口言う訳じゃないけど、私としてはあの"CAPTURED"アルバムって内容的に惜しい気がしてたまらんのです。この曲が外されてるのも惜しいし(なんてったってリーダーのショーン氏がリードヴォーカル張ってる曲ですし)、「何故"Winds of march"が入ってないかな」という気もするし。嗚呼。

この邦題見てて「……と言われてましても?」って気がするのは私だけなのかしら(^-^;)。まあ、このアルバムだけ日本語の曲タイトルがやたら多いのは、恐らくはこのアルバムに掛ける当時の日本側スタッフの熱意の賜物(と、営業的メイクアップの一環)だったんだろうなあとおぼろげながら推察してはいます。因みに、ウチにある版が直輸入品だったせいか、私は比較的有名な1曲目と6曲目以外の邦題は本稿を書き始めるまで完全に忘れていました。



05. Precious time /至上の愛

ブルース&ブギー・ロック調メロディ(かな?)とジャーニー的叙情性とが融合した軽妙なナンバー。ギターがリフ中心にメロディライン を築く中、ロウリー氏がソロをとって奏でるブルース・ハープの音色が爽やかな余韻を楽しませてくれます。



06. Where were you /消えたあの娘

1曲目の"Any way you want it"と同様に簡潔明瞭なロックンロールを聴かせてくれる快作で、どちらもリフのみならずコーラスを活用した曲構成がまさにジャーニーの面目躍如といったところ。

この曲は80年〜81年のツアーで概ねオープニング、あるいは序盤にセットされていた模様。ライヴではスティーヴ・スミス氏が猛烈に叩きまくるマシンガン・ドラム・ソロを経てスタートする事例が多く、その様子は"CAPTURED"アルバムに収録されているテイクでも堪能する事が出来ます。

レコード盤ではB面の1曲目にあたります。最初に買ったレコード盤どっか行っちゃって久しくて、近頃はCDかシリコンプレイヤーとか使って聴く事の方がほとんど当たり前の状態になっちゃってたせいか、私は今回この紹介記事を書くにあたって全曲聴き直しているうちに「買って間もない頃は”表裏どっちから掛けてもノリの良い曲からスタートするレコードって個人的には好きだなあ”なんて思ってたっけか?」と唐突に思い出したりしてました。
……それにしても、第一印象さっぱりすっかり忘れるかね普通(^-^;)。ああ間抜けな私。



07. I'm cryin' /泣きぬれて

題名そのままに始終荒れ狂うヘヴィなバラード曲。ジャーニーがこれほどまでに激しく生々しいスタイルで”悲しみ”を掲げた例はきわめて少なく、この曲の他には映画「夢、夢のあと」オリジナルサウンドトラックのラストに収められた"Little girl"か、さもなくば"ESCAPE"アルバム以降のバンドラインナップで再結成した際の記念盤"TRIAL BY FIRE"の2曲目"One more"くらいしかないように見受けられます。慟哭にも似たペリー氏のシャウトと、ショーン氏の「泣き」のギターと、そして重鎮ロウリー氏のオルガンと、三者が悲壮なイメージを手加減なしに突きつけてくる終盤のクライマックスは圧巻。

私としてはこの曲を”バラード風の曲をロック畑で突き詰めていったら自ずとこうなるわな”という具体例のひとつとして認識しています。極端すぎるかな? えー、あたしとしてはそのように考えるようになった事例が二つありまして、ひとつはマイケル・ボルトン氏の"How am I supposed to live without you"を初めてラジオで聴いた時、もうひとつは友人からKISSの"I still love you"という曲を紹介された時でした。感情を込めて歌うことの素晴らしさを感じ取り、かつその難しさを思い知らされた事例として個人的にはとても思い出深いところです。

余談。
どういう訳か、私は常日頃から海外作品(映画や音楽など)に充てられた日本語タイトルのうち変なのを選び出してはことごとく笑いのネタにしたがるという悪癖が身に付いてしまって久しいのですが、でもレッド・ツェッペリンの"Whole lotta love"(「胸いっぱいの愛を」)と当該"I'm cryin'"には特に惚れちゃいましたので、ゆえに例外視してたりするのです。表現の絶妙さに脱帽。同じ評価軸でいくとTHE BUGGLESの"Video kill the radio star"(「ラジオ・スターの悲劇」)とかも好きかな。
……何だかんだ言ってキリなさそうだから、いっそのこと何処かでまとめて書こうかしら、そのへんのお話は(^-^;)。



08. Line of fire

なまら恥ずかしいので邦題表記は割愛。ええ、割愛しますとも。
男が恋人の前で横恋慕の相手を射殺する様子を綴った暴力的な歌詞はジャーニーの曲としては珍しく、同じハード・ロックでもひとつ前のトラックとはかなり趣が異なっています。まさに「怒り」そのもののような曲。攻撃的な主旋律で脇を固めるようにギターを弾くショーン氏がソロ後半に3連符で延々押しまくるあたりは荒々しくも奔放で小気味よし。

んでもってギターソロ直後、最終パートが始まる前のほんの一瞬に銃声を模したSEだけが鳴り響くシーンがあります。どうやらこのSEはスティーヴン(歌詞の中で、間男に向かって散弾銃を構えているのであろう人物は自分をそう呼んでいます)が恋人の制止を無視して引き金を弾いてしまった事を示唆しているようなのですが、SEのたった1音だけで表現されたそのシーンは殺伐とした雰囲気を漲らせているプレイヤー各位の演奏と比べると不気味なほどそっけなく、私としてはこのあたりの表現方法のクールさに感嘆して久しい次第であります。

ライヴでは、初披露の1980年から83年までのツアーにおいて開演直後のスタートダッシュ中によく演奏されていたようです。例の銃声のところはステージ袖へ仕掛けられていた複数本の花火に置き換えられて見せ場のひとつとなっていた模様。超特大の単発式ドラゴン花火みたいなそいつらがドラムの合図で一斉に火柱を吹き上げる様子を、当時のいくつかのライヴ映像で観る事が出来ます(例:1983年の日本武道館公演)。こういう辺りはライヴ慣れしてるプロならではの工夫なのでしょう。流石。



09. Departure /ディパーチャー

前の2曲が情念を包み隠さずぶちまけてくる物騒な曲だったのに比べて、それらともまた極端に趣を異としているインストゥルメンタル曲。ショーン隊長主演。曲全体をリードする夢見心地のぽややんムードなギター演奏はあたかも清涼剤のようであり、わずか1分にも満たない小曲ながら存在感を強くアピールしていると言えましょう。



10. Goodmorning girl /グッドモーニング・ガール

ストリングスのエフェクトを交えて、ギターとヴォーカルを中心に奏でられるアコースティック調の小曲。リズム隊、もちょいお休み。中盤からサビにかけてミュージカルのスターさながらにダイナミックに歌い上げるペリー氏のヴォーカルが魅力的。

雄叫び系の曲も好きだけど、私としてはもしかするとペリー氏自身はこういうタッチの曲が最も得意なのかなー、と推測している昨今。ワーナー発のアニメ映画「キャメロット」に挿入された"I stand alone"や3作目のソロ・アルバム("Greatest hits + 5 unreleased")に収められた"What was"を聞いていると、特にそう感じます。「パワー・バラード」という呼称はジャンルとしてではなく、彼のように非凡なヴォーカリストの技能を持つ人そのものを指して使ったほうが穏当なのかな……とも思いつつ。



11. Stay awhile /僕のそばに…

ライヴでは"Lights"に引き続いてメドレー形式で演奏される事の多い恋歌。80年代しかり、近年しかり。

こう書いちゃうと3代目ヴォーカリストのスティーヴ・オウジェリ氏に対して失礼かもしれませんけど、誤解を恐れずあえて述べるならば、ことこの曲に関してはペリー氏の「ハマり曲」かなという気がしています。それは、かつて"INFINITY"アルバムの1曲目冒頭で"♪I wanna be there in my city〜"と放たれたパワフルなハイ・トーンと、それに勝るとも劣らぬ絶唱を披露している"Stay awhile"のクライマックスとが、あたかも最初から一緒に生まれた曲であるかのように和合している様に感じられ、そのあたりをして深い感銘を覚えたが故であります。



12. Homemade love /ホームメイド・ラヴ

アルバムの最後を飾るのは、ジャズ風味の効いたリフが印象的なナンバー。ちょいとばかりマッドに愛し合っちゃってる男女達を描いたとおぼしき恋愛歌で、スティーヴ・スミス氏が在籍中唯一作曲に参加した曲とされています。映画「黄金の腕」の主題曲を髣髴とさせるようなスリリングなリズムがイカしてます。

"Lady luck"とかと同様にライヴで盛り上がるタイプの曲だと個人的には思っていたのだけど、巷の海賊盤などで聴く限りではどうやらステージで演奏された事例は皆無の模様。




*参考にしたもの*
このアルバム
ボックス・セットの解説書
エジプト文明と映画と楽器に関する書籍やあちこちのwebサイト
ビルボードの年間ヒットチャート
巷の海賊盤数種
記憶

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