東洋のベニス「バンジャルマシン」への旅
古賀 多嘉子
10月21日 晴れ
夫の出張先カリマンタンの州都バンジャルマシンに行くために、ジャカルタに一泊、朝8時に飛行機に乗るために、朝5時に起き、予約していたタクシーで空港へ向かった。飛行機は満員、2時間半の飛行、カリマンタンの上空へさしかかった。瞬間あまりにも無残な光景に唖然とした。緑一色に見えるはずの森林が白く、まるでマッチ棒が立っているかのように見える。森林火災の惨さを見せつけられた。まだあちこちで煙が立ち昇っていた。空港に到着、造船所の方が迎えにくるとのこと、出口で待ったが見当たらないので
タクシーで造船所に向かった。幹部一同暖かく迎えていただいた。しばらくすると、若い二人の方が部屋に駆け込んできた、空港に行ったが見当たらないので、帰ってきたとのこと、どっかですれ違ったらしい。気の毒になるくらい、謝られた。しばらく仕事の話があり、その後造船所見学、バリトー川に沿って作られた造船所で珍しかった。造船所といっても江戸時代にタイムスリップしたような造船所である。ゴムぞうりを履いて錆を落としている人、履けでペンキを塗っている人、船は古く、よくぞここまで使っているなと思うくらいの船が繋がれていた。安い賃金で、身の安全も考えず働いている人、これぞまさしくインドネシアの下層階級の働く場を見たような感じがした。日本の最新技術のもとで働いてきた夫がいまここで何を学び取ったのか、質問して見たくなった。会社見学後、町のレストランで川魚料理をご馳走になった。午後時間があったので、タクシーで町を見学して回る。料金を決めて、タクシーに乗り込むと、運転手が昨年できたバリト橋を案内、その後、町で有名な織物の店に立ち寄り、カリマンタンの名産の布を2枚買った。絞り染めの素敵な模様に見とれ、心がときめいた。夜は造船所の方々数名と夕食をともにした。町一番のレストランとのよし、舞台では、バンドつきのプロの歌手が歌っていて、楽しい雰囲気であった。かれらはきれいに食べ、私は肉とパンを少し残した。帰るときに店の人が、私の残したものをきれいに包んでもって帰れという。自分だけかなと思ったら、周りのお客様にもそのようなサービスをやっていた。素晴らしいことだと思った。食べ物を大切にしようとする人たちの心遣いに頭が下がり、口先だけでなく、実際に行動しているのを見て、インドネシアにも素晴らしい宝物があるのに気づき、バンジャルマシンでとれるダイヤモンドよりももっと輝いているように思えた。造船所の方々の暖かいもてなしがありがたかった。
10月22日 晴れ
今日は造船所の方が水上マーケットを案内してくださるというので、朝6時に出かけた。車で船着場まで、そこでボートをチャーターした。川では男の子をつれた父親がマンディ(沐浴)をしていた。子供の背中を石鹸で洗ったり、自分の背中を洗ったりと、ほほえましい光景だ。その横には洗濯したばかりの服が置いてある。ボートで水上マーケットが行われているところまで、走らせた。一際川幅が広くなったところに沢山の小さな手漕ぎ船が行き来している。物を買う人、売る人、手漕ぎで巧みに船を操って小さな隙間をスイスイと通り抜けて行く。上手いものだ。私たちも果物を売っている船に近づき、買う。店で買うように、品定めも出来る。今度はケーキを売っている船に横付け、この船は朝食をとる人たちでごった返している。遠慮していると船を横付けできない。さっと他の船が横付けする。手の届かないところにある菓子は竹の先端につけられた釘に引っ掛けて取り寄せる光景は面白かった。時には値段の交渉で言い争ったり、あちこち動き回って売り、買いしている姿は活気に満ち溢れている。生活を支える物流の場を直に見て、400年も続いている水上マーケットの息の長さに感動した。私たちは支流のほうへ足を伸ばした。この支流はバンジャルマシンの街中を縦横に走り、人々の交通手段に使われているとのこと、早速その支流に入る。朝のひと時、人々の生活が手にとるように見える。サロン姿の男女が川の中で歯を磨き、洗濯をし、食器を洗っている。マンディしている子供もいる。川沿いの住居はウリン(ulin)という水に強い木が使われているという。ボートはバンジャルマシンの町をほほ一周する。東洋のベニス、水の色はどす黒いが、活気さはベニス以上ではなかろうか。午後は造船所の方が車で2時間ほどのダイヤモンドがとれる町へ案内してくれた。宝石店がづらりと並ぶ。財布が軽くなっていたので買えなかったが、輝くダイヤモンドの品々を眺めての帰路であった。あまりの安さにしまったと後悔しています。このことがただ一つの心残りです。つきっきりで案内していただいた造船所の方、有難うございました。
追記:この造船所はジャカルタの造船所の分工場で所長さんはジャカルタ時代の主人の教え子、そのときは出張で不在でしたが、なにからなにまでの気配りに感激しました。