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遺言書作成のための知識
1.はじめに
ここでは、遺言書を作成する際に必要と思われる事項について解説しています。
相続制度は、民法の最終章五編に規定されています。この中に、相続、遺言、遺留分の順で、詳細な条文(民法882条~1044条)があります。遺言は、遺産承継の問題に限定されないため相続とは別のものとされることがありますが、その内容はやはり遺産の継承が中心になっています。遺言書を作成するに当たっては、相続及び遺留分の理解が前提になりますので、この概要を簡単に説明した後、遺言の説明を行います。
2.相続
(1)相続の一般原則
①相続は、人の死亡によって、亡くなった人(被相続人)の住所で始まります。
②相続権が侵害されたときに、5年間放置していると時効で権利が消滅します。(侵害の事実を知らなくても、20年経過すると、権利は消滅します。)
③相続に関する費用は、相続財産により支払います。
(2)相続人
①子供
子供は、相続人となります。胎児は、相続においては、生れたものとされます。
子供が、既に亡くなっているとか、相続欠格や排除を受けている場合は、直系のその子が代襲します。
②子供のいない場合
③配偶者は、相続人となります。
④相続人は、その資格を剥奪されることがあります。(欠格、排除)
(3)相続の効力
①相続人は、被相続人の財産に属した一切の権利義務(一身専属権を除き)を承継します。
②系譜、祭具及び墳墓の所有権は、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継します。
③法定相続分
(1)子及び配偶者が相続人であるときは、各2分の1。
(2)配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者3分の2、直系尊属3分の1。 (3)配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1。 (4)子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分等しい。(例外も)
④指定相続分 遺留分を侵害しない限り、遺言で相続分を定めることが可能です。
⑤寄与分
⑥遺産分割
(4)相続の承認と放棄
①期間 承認又は放棄は、3ヶ月以内に行います。
②承認 単純承認と限定承認があります。
3.遺留分
遺留分とは、死亡した人(被相続人)の一定の近親者に保留される財産の一定の割合であり、誰も(被相続人も含めて)奪うことのできないものです。
①兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次割合に相当する額を受けます。
(1)直系尊属のみが相続人の場合 被相続人の財産の3分の1
(2)前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の2分の1
②遺留分権利者は、遺留分の限度で、遺贈及び贈与の減殺を請求することができます。
③遺留分減殺請求権は、相続の開始知った時から1年間行使しないと時効消滅します。
相続開始から10年を経過したときも時効消滅します。
④遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けます。
4.遺言
(1)遺言の一般原則
①遺言は、法律の定める方式で行わなければなりません。
②15歳以上の者が、遺言できます。
③遺言では、財産を、包括又は特定名義で処分できます。
しかし、遺留分を侵害することは出来ません。
④遺言事項(遺言で行える事項)は一定のものに限定されています。
(1)相続に関する事項
相続人の廃除・排除の取消し
相続分の指定・指定委託・特別受益者の相続分指定
遺産分割の指定・指定委託・分割禁止・共同相続人間担保責任指定
遺留分減殺方法の指定
祭祀主宰者の指定(遺言でなくてもよい)
(2)相続以外の遺産処分に関する事項
遺贈
財団設立のための寄付行為
信託の設定
(3)身分上の事項
認知
未成年後見人の指定・未成年後見監督人の指定
(4)遺言執行に関する事項
遺言執行者の指定・指定委託
(2)遺言の方式
①普通方式と特別方式(緊急の場合の特例方式―説明省略)があります。
②普通方式には、自筆証書、公正証書、秘密証書があります。
③自筆証書によって遺言をするには、
遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、押印しなければなりません。
加除その他の変更は、その場所を指示し、変更した旨を付記してこれに署名し、変更の 場所に印を押さなければ、その効力を生じません。(民法968条)
④公正証書遺言は、次の方式に従わなければなりません。(民法969条)
(1)証人2人以上の立会いがある。
(2)遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授する。
(3)公証人が、筆記し、読み聞かせる。
(4)遺言者及び証人が、これに署名押印する。
⑤秘密証書遺言は、次の方式に従わなければなりません。(民法970条)
(1)遺言者が、その証書に署名し、印を押す。
(2)遺言者が、証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印する。
(3)遺言者が、公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提出する。
⑥共同遺言はできません。(民法975条)
(3)遺言の効力
①遺贈を受けた者は、いつでも放棄できます。
②遺贈を受けた者が、遺言者の死亡以前に死亡したときは、効力はありません。
(4)遺言の執行
①遺言書は、相続の開始後、家庭裁判所で検認を受けます。(公正証書遺言を除く)
②遺言者は、遺言で、遺言執行者を指定できます。
③遺言執行者の指定の委託を受けた者は、これを相続人に通知します。
④遺言執行者がないときは、利害関係人の請求によって家庭裁判所が選任します。
⑤遺言執行者は、相続財産の目録を作成して、相続人に交付します。
⑥遺言執行者は、相続人の代理人とみなされます。
⑦遺言執行費用は、相続財産で負担します。ただし遺留分を減ずることはできません。
(5)遺言の取消
①遺言は、撤回することができます。
②前の遺言と後の遺言が抵触するときは、後の遺言が優先します。
(6)作業着手の際の注意点
遺言については、その制度の重要性が広く認識されるようになりましたが、自分のこととして具体的に実施しようとすると、準備や法解釈が簡単でないことに気付かれるでしょう。厳格な要式行為の故ばかりではありません。財産の内容が時代と共に変化します、関連する法律は頻繁に改正されます、人々の行動範囲も広がってきています。従って、自分で着手する前に、専門家の助言を受けて、要点を絞り、適用する法令や方法を確認されることも必要です。
各人の身分関係や交流関係の広がりによって、それぞれの遺言の形式や内容は多種多様になります。後のサンプルはあくまでも制度の理解のためのものとして掲載しました。自分に相応しい遺言形式・内容でなければなりません。「自分は何をするために遺言書を作成しようとしているのか」を自問自答した上で着手して下さい。また、全てのことを対象にするよりも、特定の気になる部分について遺言をする方法が現実的です。また、遺言は、後になって新しいものを何度でも作成しても構いません。新旧の遺言内容が矛盾する場合は、日付の新しい遺言のものが有効になります。
ところで、相続や遺言について、その手続きの煩雑の故か、関係法令の理解を簡単に諦めてか、またはその種の広告や噂を鵜呑みにされたためでしょうか、全てを専門家に委ねようとされる方が少なくありません。これには賛同しかねます。遺言者はもとより相続人においても、自らが主体的に処理する姿勢を堅持すべきです。専門家の知識や手続能力は、自分が主体的処理を行う際の補助として利用するようにしたいものです。
さて具体的に着手する時点では、専門家に相談する価値は十分にあります。(この段階での費用は、1回分の相談料を見込めば十分でしょう)。専門家の意見を聞いた上で、自分で十分納得のいく方法や方式を決めて下さい。
(7)遺言書作成の準備作業
遺言書作成の実務では、以下の準備作業が必要になります。極めて簡単な内容の遺言(例えば、特定の土地だけについて、特定の相続人のことについてだけの遺言)であれば別ですが、この作成は欠かせないものと理解してください。
①財産目録(財産一覧表)の作成
財産の一覧表は、土地、家屋、預貯金、有価証券、貴重動産(装飾品、骨董品)、その他、の項目を記載するのが一般的です。個々の財産内容の記述は、登記事項ほど厳格である必要はありませんが、その財産が特定できるようにして下さい。負債も明確にする必要があります。
ここでは、遺言事項を意識して、一覧表を作成するようにして下さい。(前述のように)遺言事項には、相続に関する事項以外に、祭祀主宰者の指定、遺贈、信託、身分上の認知、遺言執行者指定等があります。
血族・姻族の一覧表を作成しておく必要があります。その上で、相続順位の高い順に法定相続人を確認しておきます。
③法定相続人以外の関係者一覧の作成
法定相続人以外で、相続に関連をもたせる為には、対象者を特定することが欠かせません。
④遺言書作成の趣旨を明確にしておく。
例えば、特定財産を特定の相続人に継承させたい、相続人以外の者に遺贈したい、相続分割合を変えたい、祭祀承継者を指定したい、そのために遺言を行うのだという、遺言書作成の趣旨を明確にしておかなければなりません。この趣旨によって、遺言の方式や、当然内容が異なってきます。
(8)自筆証書遺言
遺言の方式は、幾つかありますが、どの方式に従うかは、通常は、自筆証書遺言か公正証書言のどちらの方式を選択するかの問題になります。それぞれメリットやデメリットの解説が行われているものの、簡便さや経費に重点を置いたものが大半です。法的効力に差異はないことは認識しておく必要があります。私は、次の世代に積極的な関わりをもつ意味合いから、また詳細な意思が伝わり易いようにも考え、自筆証書遺言を勧めることが多くなっています。
(9)遺言書のサンプル
自筆証書遺言の要式を規定する民法968条を確認して下さい。「自筆証書の遺言は、遺言者が、文章全部と、日付も、氏名も自分で書き、押印しなければなりません。」
《事例》 自筆証書遺言書のサンプルを提示しておきます。
遺言者の主な財産としては不動産がある。負債はない。
家族構成は、妻(同居)、長男(同居)、長男の嫁(同居)、長女(別居)
遺言の内容は、①不動産について(妻、長男、長女にそれぞれ相続させる。)
②祭祀に主宰者について(長男に指定する。)
③遺贈について(長男の嫁に遺贈する。)
④その他の財産について(法定相続分で相続させる。)
⑤遺言執行者を指定する。
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遺 言 書 遺言者德田大吉は、以下のとおり、五点について遺言する。 1.不動産の相続について 3.遺贈について 4.その他の財産処分について 2005年8月26日 横浜市中区水町4-170 遺言者 德田 大吉 ㊞ |
(注)1.不動産の表記については、厳密に登記簿にあるように(所在・地番・地目・地籍・家屋番号・床面積・種類等)記述する例がありますが、基本的にはその不動産が一般的に特定できる程度でかまいません。
2.密封について
遺言書は、封筒に入れ密封し、封筒に①「遺言書」であること、②死亡時に家庭
裁判所に提出する旨の注意書き、③作成日付と氏名を記しておきます。