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■ 定有堂雑記
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| 第39回 本屋的人間 |

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「本屋」の話をするときに、いつも、かすかなすれ違いのような思いがある。
きっと、物事を考えるときに、生きることの意味を必要以上に重ね合わせるからだと思う。
「本屋」は一つの仕事なのだから、人の営みのレベルで考えればいいのだけど、それでは、「本屋」の仕事をしていることに必然性はない。他の仕事でもいいわけだし、「効率」的に考えれば、立ち居地そのものも、さしてなんら重要なものでもない。
しかし、「ここにある」(定有)ということの周縁性を、必然と思えるならば、きっとそこには、なにかしらの「生きる意味」がある。いまはそのように思える。
そんな、「ここ」の感覚を伝えたくて、「本屋的人間」というメモを記してみた。
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「本屋的人間」とは?
・ シンプルに考えれば、往来にあることを拠点として、人と人との関わり合いの「濃さ」を特徴として、生業の根拠、基盤とする生き方。
・ 商うものは「本」。「屋」というのは、ある一つのモノやことがらをもっぱらとして行うことによって、なりわいを立てる人。
・ 書店というのは、大店(おおたな)とかいうごとく、「書物」という商品を扱い陳列してある「空間」。広いほどがいいし、立地(アクセス)も単純明快な方がいい。
・ 「屋」というと、主体が場所なのか人なのか、不分明なあいまいさがうかがえる。ふろしきに包んで商いに来る人などは、たぶんこの「〜屋」。小金を貯めて、「店」を構える、という夢があるかも知れない。しかし、そうすると、「人」から「場所」へと主語が変わる。
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・ 「普通の本屋」というのが、本屋的人間の、よって立つ立場なのだが、「普通」と「本屋」は同義語。普通でないのが「書店」。書店は普通からの「超越」。変わり、そして進化しつづけるというレールに乗ってしまっている。定型がないゆえに、競争原理の渦中に変態(メタモルフォーゼ)し続ける。書店は「場」の論理。「本屋」は「人」の生理、いきづかい、そして「身の丈」の世界。
・ 普通の本屋は「往来」に居場所を据える。往来とは、互いに行き来すること。traffic とか comings and goings とか。でもtrafficには、ちょっといかがわしい意味があるみたい。(不正に)交渉を持つ、とか。…「往来に生きる」という言葉に、多少のいかがしさのニュアンスがあるのは、きっと、人と人との関わり合いの濃さに起因するのでは?
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・ では、なぜ、往来に生きようとするの?
…コミュニケーションへの渇望、というものが、動機にあるのではないかと思える。
・ 本が好きな人間は、「自分」という存在への関心が高い。というか、自分に関心が高いから、「本」にのめりこむ。そして、そんな動機から出会う本について、人と語り合いたくなる。つまり、「人」とのコミュニケーションを求める。ここに形成されるのは、「本」をいつも媒介にした交流。「本」を間においての人と人との触れ合いの心地よさにのめりこむ。つまり「人」にのめりこむ。周辺の人から、やがて遠くの、時間の彼方の「著者」との「濃い」時間も始まる。そうすると、ステージが上がるので、さらに「人」との付き合いも濃くなる。
・ ところで、「本屋好き」という人間もいる。「本」の気配の中でしか「人」に出会えない、という人たち。
・ 往来での出会い。自分を語るところから始まる出会い。だから、「濃く」なる。「モノ」を介しての自分語り、というとフリーマーケットみたい。@自分が作ったものを売るA自分がかつて買ったものを売る。フリーマーケットには、作った物語、そして買った物語が「付箋」のように付いてくる。
・ 本屋的人間なら、自分が選んだ「本」についての物語、が中心となるだろう。やはり「付箋」をつけることだろう。そんな付箋を、わたしは「本屋トーク」という。つまり、自分が選ぶ「本」の周辺のことだったら、異常に能弁になるのだ。(日頃は異常に無口なのだけど…)
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・ 繰り返すと、本屋的とは書店志向でなく生きる人。縮み志向。
・ 「書店」とは、大店と言うように、商品の置いてある陳列空間。当然広い方がいい。「店」の物語が主となる。
・ 「本屋」=「本」だけをもっぱら(専ら)な、生業(なりわい)として行う人。「人」の物語が主となる。
・ 普通の「本屋」=この本屋の語義通りに、率直に生きる。
(「屋」というのは、辞書によれば、それを専門とする人や、そのような性質の人である意を表す、と。)「本」屋、つまり、自分の物語を本に託して人に手渡す「てれ」屋とか。
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このように考えたがる根底には、きっと、生きることのナイーブな感性が抜けきらないからかも知れない。アルカイックな心性だろうか。
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