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■ 開業の日々
第69回 図書カード

 「図書券ください」
 「図書券は販売を終了しました。いまは図書カードだけです」
 お客さまは一瞬たじろいだ後、こう聞いてくる。
 「カードはどの店でも使えるの?」
 「ほとんどの店で使えると思いますよ」
 「お釣りは出るの?」
 「いえ、お釣りは出ません。カードに金額データが残りますので、残額があるうちは何度でも使えます。テレホンカードと同じです」
 ここまで説明すると、お客さまはやっと購入を決断される。
 図書券から図書カードへの切り替えはずいぶん前からPRされており、当店でも送られてきたポスターを目立つところに張り出してきたつもりだが、周知徹底が図られたとは言い難いというのが実感だった。
 それでも、年明けにはお年玉代わりにもらったらしい子供たちが図書カードを使うケースが急増した。
 それに伴って、困った問題が発生した。図書券だと枚数を手早く数えるだけだったが、500円カード4枚で2000円の商品代を精算するには、カードリーダーで500円ずつ代金を引き落とさなくてはならない。結構時間がかかり、立て込んでいるときはお客さまに待っていただくことになる。時には、カード本体やデータの破損で使えず、あわてて財布を取り出すお客さまもいらっしゃる。
 残額がわかりにくいのも難点だ。「いくら残っているかな」と言いながら、おずおずと図書カードを差し出すお客さまは多い。1000円のカードを持参したが実際には100円しか残っておらず、やむなく買い物を中止したかわいそうな子供もいた。
 カードは、企業や学習塾、学校のPR需要が当て込めるから、発行側にとってはメリットがあるだろう。しかしお客さまにとっては、図書券に比べて不便になったと思う。

    

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坂井 真一
(さかい しんいち)
1953年生まれ。山口県出身。中古車輸送業、タクシー業界紙編集者などを経て、2000年6月1日から神戸市西区にある喜久屋書店西神南店を経営。
2003年11月から近所ブックフォーラム・セリオ店(116坪)へ拡大移転。



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