あなたの声





部屋には黒い革製品の椅子に腰掛け本を読んでいる男がいた。
その男は左腕に“風紀”とかかれた腕章をつけ漆黒の髪と目をしている。

雲雀 恭弥――

その男の名である。
雲雀は風紀委員長ながら最強の不良と言われ恐れられている。
その恐れからか皆からは“雲雀様”やら“雲雀さん”などと呼ばれている。
ある一人を除けば―

「恭弥〜!!」
威勢よくドアが開き大声で言ってきた男は跳ね馬ディーノのというマフィア界で はちょっとは名の知れた奴らしい。
しかし、そんな事は雲雀には関係なかった。
「何回言えばわかるの?名前で呼ばないでくれる?」
雲雀はディーノの喉元にトンファーをつきつけた。
「悪りぃ悪りぃ…これからは注意すっから!」
ディーノは苦笑しながら両手を上げ、お手上げのポーズをして、雲雀をなだめた 。
それを見た雲雀は喉元につきつけていたトンファーを引く。
「…で?何しに来たの?」
雲雀はまだ手に持っているトンファーを机の上に置いて聞いた。
「恭弥に会いたくてさ…!」
ディーノはおもいっきり笑顔を見せて言ってきた。
「…そう…」
雲雀は凛とした表情をし言う。
「ツレないねぇ〜恭弥は俺に会いたくなかった!??」
ディーノは雲雀にずぃっと顔を近づけた。
「べ、別に…?」
(ヤバい…顔が熱くなってる…)
そう自覚していても照れるということは押さえられない。
恥ずかしくなり雲雀は顔を背けた。

「恭弥…顔紅いぞ…?」
ディーノは雲雀の顔を覗き込んで言った。
「だから恭弥って呼ばないでって何度言えばわかるの?」
机の上に置いてあったはずのトンファーはいつの間にか雲雀の手の中にありディ ーノにトンファーが当たるバキッという音が部屋中に響いた。
「ったぁ…!いきなり何すんだよ!」
ディーノはトンファーが当たって赤くなってきている頬をさすっている。
「あなたが名前で呼ぶからでしょ?今度呼んだら…噛み殺すよ…?」
雲雀はディーノに背を向け赤くなっている顔を隠した。
「……じゃあ…1つ聞くけど、お前なんで顔赤くなってるんだ…?」
「そ、それは…」
「それは…?」
「……」
言葉に困ってしまって部屋の中がシンと静まりかえってしまう。
それに耐えられずにディーノは口を開いた。
「俺はお前のことが好きだよ…恭弥…だから傍に居たい…!」
そう言うとディーノは後ろから雲雀を抱き締めた。
いきなりの告白に驚いてしまい声も出ず雲雀はただ抱かれているだけだった。
「恭弥は…俺の事どう思ってる…?」
「…僕は……」
言葉に詰まる。
素直になりたいけど、こいつは僕の事をもてあそんでいるのかもしれない…
自分 ばかり舞い上がってしまっているみたいで馬鹿みたいだ…
そんな事をぐるぐる考えながら雲雀は言葉を探していた。
「…嫌いか…?」
「…えっ…?」
「だから俺のこと嫌い…?」
「……べ、別に嫌いって程でもないよ…今までは一人でいることが一番好きだっ たのに…今はこの状態になっていることを…望んでいる自分がどこかにいる…ん だ……」
と雲雀は顔を紅に染めつつ言った。
「…そっか…恭弥…ありがとう…」
ディーノは雲雀の耳元でそう囁いた。
「な、何であなたが礼をいうの!?」
「ありがとう…」
「もう…言わなくていいよ…!」
ますます紅くなっていく雲雀の頬はまるでこれから沈もうとしている夕陽の様だ った。




end